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東海道五十三次美人OLスキー旅ミケタマ珍道中  作者: いもたると


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宮 その3


 夕食のメニューは、豪華名古屋グルメづくし。

 ひつまぶしに始まり、名古屋コーチン料理。

 水炊き鍋に手羽先、焼き鳥、卵を使ったスイーツまで、贅を尽くしたもの。


 そして、忘れてはならない、最近はすっかり影が薄くなった感があるが、その昔は、名古屋といえば、コレだった。


 エビフリャー、である。

 だが、このエビフリャー、地元の人に言わせると、名物という実感はないらしい。

 確かに、三河湾は、全国有数のエビの水揚げ量を誇るが、エビフライ自体は、どこにでもある。


 特に、名古屋が発祥ということでもない。

 そもそも地元の人は、エビフリャーなどという言い方はしない。

 なら、なぜエビフリャーが名古屋名物として認識されたかというと、タレントのタモリが、エビフリャー、エビフリャーと、方言を揶揄してジョークにしたから、だという。


 しかし、それを逆手に取って、後付けで名古屋の名物ということにしてしまった名古屋人の、逞しさのようなものも感じる。

「ですが、やっぱり僕はカレーが好きです!という人のために、カレーも用意してあります!」

 と、一茶は胸を張った。


「さすがは坊っちゃん、抜かりがない」とヨイショの合いの手の鱒之助。

 でもタマコは、

(そんな人、いるかしらね)と白けていた。

 でも、美味しいお酒も、ふんだんに用意してある。


(カレーもいいけど、お酒もね)

 と、いつもの通常運転に拍車がかかりそうだった。


 ところで、ミケコは、完全に自分を見失っていた。

 一茶のことを、これまでただのボンボンだと思っていた。

 変なドラゴンボートで大井川を渡らせたり、浜名湖をスケートリンクに変えたりと、余計なことをするやつだと、少々鬱陶しがっていたが、今は見直していた。


 岡崎城では、サプライズの花火大会を催す。

 そして、思いもよらなかった、まさかまさかの名古屋城宿泊である。

 このボンボンは、意外とデキる男なのかもしれない。


 ロマンティックなレストランにロマンティックな夜景、それにロマンティックなお城。

 目の前には、豪勢な料理と、まるで戦国大名のような、ロマンティックな男性(繰り返しますが、ミケコは完全に自分を見失っています)。


 そうだわ、小さい頃、自分は戦国大名のお嫁さんになりたかったんだ。

 と、昔を思い出す。

 子ども用のポケット戦国大名大図鑑を眺めて、胸を熱くしたときの、トキメキが蘇ってくる。


 このまま、ここに嫁いでもいいかもしれない。

 尾張徳川家のお姫様として、領民に慕われ、聖母のごとく崇められる人生が幕を開けても、いいんじゃないかしら?


 あれ、この人、尾張徳川家のお殿様だったかしら?

 そもそも、尾張徳川家は、戦国大名とは言えないのじゃないかしら。

 でも、まあ、いっか。

 エビフリャー入りのカレーは、とってもおいしいし。

 もう旅なんかやめて、このままここに住み着いちゃおうかしら……。


 だが、ここでミケタマに旅を終えてもらっては、困る存在がいることを、忘れてはならない。

 ミケコのリュックサックには、まだ例のアレが入っているのだから。


 ヒューン、ドーン!

 ババババババ……。

 窓の外には、打ち上げ花火。

 夜空に咲いた花に照らされて、金の鯱鉾も誇らしげに見えた。


「うん?打ち上げ花火?」

 と、一茶は訝しげに窓の外を眺めた。

「素敵だわ、一茶さん。名古屋城でも、花火大会を催してくださるのね」

 と、ミケコはトロンとした目で一茶を見つめた。


「ははは、そ、そうなんですよ。気に入っていただけたようだから、ここでもやろうと思いまして。絵になりますよねえ、お城に花火。あ、僕は少し用事がありまして。ちょっと失礼……」と席を立ち、暗がりの方へ行く一茶。

 鱒之助もついていく。

「いかがなされました、坊っちゃん?」


「花火の予定なんかあったか?」

「さあ?」

 部下を呼びつける。

「なんだ、この花火はどうしたんだ?」

 しかし、部下の誰も、このサプライズについて、知っているものがいない。


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