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東海道五十三次美人OLスキー旅ミケタマ珍道中  作者: いもたると


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宮 その2

「ちょ、ちょっと、一茶さん!?」

「私たち、まだ桑名には……って、あれ?」

 伊勢湾に向けて進むと思いきや、船は、あさっての方向に進み始めた。

「今、遡っているのは、堀川です」と、一茶は説明した。

 堀川とは、名古屋市内を流れる川。

 伊勢湾と名古屋城を結ぶ、運河である。


「と、言うと?」

「そこを遡っていると言うと?」

 と、ミケタマの二人は顔を見合わせた。

「じゃあ、今、私たちが行こうとしているのは……」

「もしかして、名古屋城……?」


 船は名古屋の市街地の間を通り、あるところで止まった。

 見上げれば、悠々と聳える、巨大な天守閣。

 薄緑色の屋根の上には、睥睨する、二匹の金のシャチホコ……。

 他の大名とは格段の財力の違いを見せつける、徳川家の威容を示す城郭が聳え立っていた。


「ようこそ、お二人さん。弥次喜多グループ最新のリゾートホテルへ」

 と、異様な熱を帯びた調子で一茶は言った。

「リ、リゾートホテルって……?」

「一茶さん、私たち、今日はここに泊まるんですか?」

 勝ち誇ったように、一茶は頷いた。

 昨日、岡崎城で彼が言っていた、大きな仕事とは、堀川の用地買収、および、名古屋城のホテルへの改装であったのだ!


 広い敷地内を、上の空で、一茶の後を付いていく。

 特にミケコは、フワフワとまるで雲の上でも歩いているような心地であった。

「いらっしゃいませ」

「ようこそ、おいでくださいました」


 天守閣の玄関で、整列して出迎えてくれたのは、武者姿に扮装した、スタッフの人たち。


「うむ」

 と、戦から帰還した戦国大名のように、威厳たっぷりに頷いて、一茶は中に入っていく。

 案内されたのは、高層階にある特別客室、家康スイート。

 和で統一された雰囲気ながら、キングサイズのベッドがしっくり似合っている。

 大きな窓からは、眼下に広がる名古屋の街が一望できた。


 真冬の日はすでに落ち、都会のビル群のイルミネーションが、まるで星空を上から眺めたみたいに、中空に敷き詰められていた。

「信じられないわ。私たち、ただ東海道をスキーで滑っていただけよ。どうして名古屋城の天守閣にいるのかしら?」

 ミケコは熱に浮かされたように言った。


「あなた、大丈夫?ぼーっとして、変な男に引っかかったりでもしたら、いやよ」

 と、タマコは相方を気遣う。

 ベルが鳴って、ドアを開けると、そこには若い武者姿のスタッフが。

「お食事の用意ができました」


 食事会場は、最上階のレストランバーであった。

 照明は抑えられ、ロマンティックなムードを作り出していた。


 たおやかで、厳かなクラシック音楽が、控えめな調子で空間を包んでいる。

 そこに、正装した一茶が出迎えてくれた。

 鱒之助も、きちんとした格好に着替えている。


「ようこそ、おいでくださいました」

 恭しく、手を差し出す一茶。

「一茶さん……」

 ミケコは、彼に導かれるまま、白く細い手を預けた。


 静々と、窓際のテーブルまで進んでいく二人を、タマコは見送った。

「あの子、完全に目の焦点が合っていないわ」

「ささ、タマコさんも。私がエスコートいたしますぞ」

 と、ついでに調子に乗った鱒之助であったが、

「おかまいなくですわ。オホホホ」

 と、軽くいなされてしまった。


 一方、そのときの一茶は、こう思っていた。

(ミケタマの二人を嫁にするなどという、大それた野望を抱いていたが、あんなに酒を飲まれるとなると、こちらの身が持たない。ここは、少しでも脈のありそうな方を、確実にゲットする作戦に切り替えるか)


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