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東海道五十三次美人OLスキー旅ミケタマ珍道中  作者: いもたると


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鳴海 その2

 一方、相方に付き合ってはやるものの、歴史にはさして興味のないタマコである。

 ブラブラと跡地内を見て回る。

「ふーん、今川義元のお墓があるのね」

 さぞ無念だっただろうなあ、と、いらんことを考えてしまった。


「あ、まずい」

 霊感の強い彼女。

 うっかり当時のことを考えたことで、土地が持っている記憶と共鳴してしまう。


「うう、羨ましい。義元様が羨ましい。……って、あれ、ここはどこ?私は誰?」

 気付くと、貴族のような装束に身を包み、大きな盃を持っている自分がいた。

 しかし、入っているのは、酒ではなく、水である。


「うう、こんな戦場でも義元様は本物のお酒を飲んでいるのに、それもとびきり上等な、駿河で一番上等なお酒を飲んでいると言うのに、影武者の私は、水しか飲ませてもらえないなんて。……って、私は何を言っているのかしら?それに、何よ、この格好。これじゃまるで今川義……」


 そのとき、ドドドドドッ!と、馬の駆ける音を聞いた。

 ワー、ワーと、鬨の声が上がる。

 ザーザーと、土砂降りの雨が降っていた。


「え、え!?もしかして、敵襲!?」

 向こうから、槍を構えた侍が突進してくるのが見えた。

「義元の首、打ち取ったりーっ!!」

 真っ直ぐこちらに向かってくる。


「ひええっ!わ、私は、義元じゃないわよおおっー!」

 盃を投げ捨て、尻尾を巻いて逃げ出すタマコ。

 だが、着慣れない貴族装束が煩わしい。

 どべしゃっ、と、ぬかるみに転んでしまった。


「か、勘違いしないで!本物の義元は、あっちよ〜!ちゃんとしたお酒を飲んでいる方よ〜!」

「義元、覚悟ーっ!!」

「ひ、ひえ〜っ、お助けをを〜っ!」

 槍の穂先がキラリと光った。


「……っと、ちょっと、タマコ!」

「……ひっ、ここは、天国!?」


 目を覚ますと、心配そうに覗き込むミケコの顔があった。


「あなた、大丈夫?急に倒れて、寝言を言うものだから」

「ね、寝言!?」

「そうよ。本物の酒が飲みたい、本物の酒が飲みたい……って」

 背筋がゾク〜っとするタマコである。


 ミケコの足に縋りついて言った。

「は、早く、宮まで行きましょ!宮まで行きましょ!熱田神宮でお祓いをしてもらうのだわ!」

「ど、どうしちゃったのよ、一体!?」

 ただならぬ迫力に、ミケコもタジタジである。


「取り憑かれたんだわ、きっと。影武者の亡霊に取り憑かれたのよっ!」

「か、影武者!?落ち武者じゃなくて?」

 よくは分からなかったが、タマコの勢いに押されて、跡地を出ることに。

「あ〜ん、早く本物のお酒が飲みた〜いっ!」

 と、スキーを飛ばして行くタマコの背を見て、ミケコは言った。

「あの子、影武者じゃなくて、お酒に取り憑かれたのだわ」


 ちなみに、桶狭間の戦いの場所であるのだが。

 ここではぼかしているが、跡地と伝えられて現代に残っている場所は、二つある。


 東海道沿いにあるのが、愛知県豊明市栄町南館《あいちけんとよあけしさかえちょうみなみやかた》にある、桶狭間古戦場伝説地。


 そこから徒歩15分ほどの、名古屋市緑区桶狭間にある、桶狭間古戦場公園。

 そのどちらにも、義元の墓がある。

 実際にどちらが本物かは、意見の分かれるところだが、案外と影武者がいたのかもしれない。

 ということで。

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