吉田
坂を登れば、後は道なりに真っ直ぐ。
一気に吉田の宿へと入っていく。
周りの景色は、だんだんと市街地になってきた。
吉田と言うと、馴染みが薄いが、ここは愛知の東の都、豊橋の中心部だ。
「見て、路面電車が走ってる!」
「城下町だわ。川が流れてるわね」
普段、東京で暮らしている二人にとって、地方都市の定番とも言える風景は興味深い。
「ねえ、タマ。地方都市って、独特じゃない?」
「そうよね。でも、地方都市と言ったって、いろいろよ」
「観光地じゃないところ。人口50万人以下で、路面電車があって、街の中心を川が流れている城下町なんてのは、どう?」
「ステキ!趣があるわ。その地方の中心都市だっていうところも、ポイントね」
ちなみに豊橋は、人口約40万人弱。
理想の地方都市の一つだと言えるかもしれない。
そんな地方都市で、今日は泊まる。
「ミケコちゃん、本日のお宿は、どちら?」
「良く聞いてくださいました。ジャーン!豊橋公園内にある、吉田城でございます!」
吉田城は、小ぶりであるが、綺麗なお城だ。
豊橋の街に良く似合っている。
チェックインを済ませた後、夕食を食べに出かける二人。
「豊橋名物って、何かしら?」
「ちくわが有名だわね」
他に、豊橋カレーうどんというのも、人気らしい。
早速、食べられるお店に入って注文する。
「美味しい!愛情がこもっているわね」
「あら、カレーうどんの下から、とろろご飯が出てきたわ」
豊橋カレーうどんの条件は、豊橋産のうずら卵を使用するなど、いくつかあるのだが、その中に愛情を持って作ること、という項目がある。
その夜は、吉田城にて、ゆっくり旅の疲れを癒した二人。
翌朝もまた、名物を味わうことから始まった。
豊橋に伝わる伝統的な郷土料理、菜飯田楽だ。
大根の葉っぱを混ぜ込んで炊いたご飯に、味噌田楽を合わせたもの。
もちろん、この辺で味噌と言えば、赤味噌だ。
「大根の葉っぱを混ぜたご飯って、美味しいわね」
「赤味噌の旨みと甘味が、お豆腐にぴったりだわ」
それを、赤だしの味噌汁とともにいただけば、お腹も心もほかほか満たされる。
「ねえ、タマ。私、味噌汁の具って、味噌の色に比例すると思っているのよ」
「どういうこと?」
「つまり、味噌の色が濃い赤だしの味噌汁には、具も色の濃いものが合うのよ。ワカメとか」
「なるほどね。じゃあ、合わせには?」
「中間色の、なめこ。色の白いジャガイモは、白だしに合うと思うわ」
「豆腐はどうなの?色は白いけど」
「豆腐は何にでも合うのよ」
好みはいろいろであると思うが。
さて、吉田城を出立した二人。
すぐに豊川にかかる豊橋に差し掛かった。
これは豊橋市の地名の由来となった橋。
この先に出会う、愛知県岡崎市の矢作橋、滋賀県大津市の瀬田の唐橋と並んで、東海道三大橋の一つである。
江戸時代は吉田大橋と呼ばれていたこの橋を渡ると、後は西へほぼ真っ直ぐ。
途中、豊川放水路とJR飯田線の線路を横切って、次の御油へと続いていく。




