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東海道五十三次美人OLスキー旅ミケタマ珍道中  作者: いもたると


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52/53

御油

 基本的には、道なりに真っ直ぐの道。

 御油に向けて、快調に滑っていく。

 すぐ隣に見えるのは、名鉄名古屋本線だ。

 ここから名古屋まで、しばらく名鉄線と並走である。


「あ、名鉄の赤い電車よ」

「中から手を振ってくれているわ。こんにちわーっ」

 ミケタマの二人も、愛想良く手を振り返してやる。


「あら?あの人……」と、タマコは首を傾げた。

「何、どうしたの?」と聞くミケコである。

「いいえ、知っている人が電車に乗っていたように見えたものだから」

 ミケコは目で追おうとしたが、もう電車は通り過ぎて先に行ってしまっていた。


「気のせいなんじゃないの?」

「確かに見たと思ったのだけど」

 うーん、と首を捻ったが、考えたってわからない。

 タマコはスキーを続けた。


 一方、その電車の中では。

 どこにいても影の薄い男、日影ウスオが、車内の誰にも気づかれることなく、窓の外を放心状態で眺めていた。


 いわゆる撮り鉄と呼ばれる人たちは、いろんな角度から電車を撮影することを楽しんでいるようだが、ミケタマ観察が趣味の彼は、走る電車の車窓から覗き見るという、新しい変態を楽しんでいたのであったが。

(さ、さっきのは、何だったんだ……!)

 と、ドキドキする胸を必死に宥めていた。


(確かに今、タマコさんは、僕を見た。そして、手を振ったのだ!)

 風魔忍者の末裔である、ウスオの視力は人並み優れている。

 走る電車の中からでも、タマコの瞳に映る彼の姿を、はっきりと捉えることが出来た。


(タマコさんの瞳に僕が映って、その瞳の中の僕の瞳にタマコさんが映って、その瞳の中の瞳の中の瞳に僕が映って、その瞳の中の瞳の中の瞳の中の……)

 視力が良すぎて無限妄想に陥るウスオ。

 これ以上は鬱陶しい。


 それより、これは一大事である。

 悉平太郎しっぺいたろうカフェでの出来事が、彼の脳裏をグルグルと回った。

(やはり、タマコさんは僕を知っているのか!?いや、そんなはずはない……)

 ウスオは今まで、ほとんど人に知られることなく生きてきた。


 学生時代のクラス写真でさえ、そこにバッチリ写っているのにも関わらず、クラスのみんなから、その日ウスオは休みだったと認識されているほどである。

 卒業アルバムに至っては、なぜか誰だかわからない別人の顔が写っていた。

 そんな彼が、もし人に認識されるとならば、ウスオの人生史上、前代未聞のことであった。


 しかし、それより話をミケタマに戻そう。

 御油の本陣を抜けた二人は、御油の松並木と呼ばれる地帯へと入っていく。

 現代では、街道脇を飾る、距離にして600メートルほどのクロマツの並木であるが、近未来では、次の赤坂宿まで続いていた。


 しかも、コース一帯に、まるで大回転のフラッグのように植えられている。

「さあ、スキーの腕の見せ所よ」

「ねえ、どっちが早いか、赤坂まで競走しない?」

「いいわね。私は右よ」

「私は、左を行くわ」


 シュザッ、シュザアッ!

 風を切って、ピンクのウェアのミケコが、長い髪を靡かせて、右へ左へと滑っていく。

 白色ウェアのタマコだって、負けてはいない。

 松並木の間を華麗に縫って滑っていく様子は、まるで雪の妖精だ。


「あれが最後のマツ!お先!」

「負けないんだから!」

 結局、甲乙つけ難し。

 二人とも同じタイミングでフィニッシュした。

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