舞坂 その2
続いて現れたのは、フィギュアスケートロボットたち。
キラキラとした衣装に身を包み、シャーッ、シャーッと、氷の上に滑り出ていく。
ドーン、ドーン!
湖畔に花火が打ち上がった。
それに合わせて、ロボットたちが4回転半ジャンプを決める。
「さあ、ミケコさんにタマコさん。お渡りください。なんでしたら、僕がお手を引きましょう」
「私たち、自分で渡れますから!」
「もう〜、恥ずかしいわ。早く行きましょう」
一茶に余計なことをさせないうちにと、氷の上に足を踏み入れる二人。
心配していたが、意外とスケートはスムーズに行った。
ツーッと滑らかに滑っていく。
「あら、快適だわ」
「スキーで滑るのと、変わらないのね」
単純に気を良くした二人は、湖畔の人たちに愛想良く手を振ってやる。
「ねえ、アイドルになったときのことを思い出さない?」
「いい気分ね。私たち、OL辞めてアイドルになっちゃう?」
スイーッと、華麗に滑っていく二人であったが、一茶もそれを見ているだけではなかった。
「それでは、僕も行きますよ〜っ。華麗なテクニックを見てください!」
余計なことに、ミケタマの後から滑ってくる。
いつの間にかフィギュアスケートのキンキラの衣装に着替えて、本格的なスケート靴だ。
「あら、やだ。追いつかれちゃう」
「早く行きましょうよ」
だが、一見平和に見えるこの風景にも、実は恐るべき魔の手が迫っていた。
しばらくなりを潜めていた、十返舎開発に雇われた甲賀忍者、多羅尾ユラ。
彼はずっと、影からミケタマを見張っていたのだ!
「ククク、そろそろバグでも起こしてやるか」
と、ユラは不適な笑みを浮かべた。
すると。
ピシッ、ピシッ!
なんと、弥次喜多グループが誇る、この浜名湖スケートリンクの氷に、まるで稲妻が走るようなヒビ割れが!
「おわー!」ボチャン!
「おわー!」ボチャン!
氷の裂け目から、フィギュアスケートロボットたちが湖に落ちていった!
「キャ!どうなってるの!?」
「急いで向こう岸に渡らないと!」
ミケタマはジェットエンジン全開、慌てて滑って行く。
ぼやぼやしていたら、氷の裂け目から落ちて、そのまま太平洋まで流れて行ってしまう!
だがその様子を、目を細めて見守るユラである。
「ククク、そう心配しなさんな、お嬢さん方」
大丈夫、ミケタマが海に落ちたりはしない。
ユラの目論見は、少しだけバグを起こして、二人を早く京都まで行かせることにある。
だから、無事、二人は向こう岸にたどり着いたのである。
「ふう〜、セーフだったわね」
「一時はどうなることかと」
ほっとして、スケートブレードを外した二人。
だが、この人はどうなるのだろう?
「うわっ、なんで氷が割れるのだ!?」
まるで流氷のような氷の塊に、フィギュアスケート姿の一茶が乗って喚いていた。
「坊っちゃーん!」と、岸で鱒之助が慌てふためいているが、詮方なし。
無情にも一茶が乗った流氷は、すうーっと、沖の方へと流されていく。
「誰かーっ!助けてくれーっ!」
「あら、一茶さん!?」
「一茶さんは、どうなっちゃうの!?」
と、優しいミケタマは心配してくれるが、大丈夫である。
日本列島の南側には、黒潮が流れている。
だから、流氷に乗った一茶は、黒潮に乗って、ちゃんと東京湾付近まで帰って来れる……、はずである。
ちなみに、フィギュアスケートロボットたちも、100%自然に還る天然素材製。
魚の餌になった彼らは、美味しいウナギを育ててくれることだろう。




