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東海道五十三次美人OLスキー旅ミケタマ珍道中  作者: いもたると


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41/52

日坂

「うわあ、暗くなってきたわね」と、ミケコは言った。

 道は徐々に狭くなり、いよいよ峠越えに差し掛かる。

「冬の日は、あっという間に暮れちゃうわ」

 そうタマコが言い終わるか終わらないかのうちに、日はとっぷりと暮れてしまう。


 二人は、小夜さよ中山なかやまと呼ばれる地域に入っていた。

 ゴーン。

 山の方で、重々しい、鐘の音が鳴った。

「今の音、何?」

「お寺よ。久延寺きゅうえんじっていう、お寺があるみたい」


 ここは急な坂道が続く、東海道の難所の一つ。

 昔は山賊が出て、旅人を悩ませたという。

「ねえ、ミケ。峠の手前で宿を取った方が良くなかった?」とタマコは言った。

「今さら、遅いわよ。どうしても掛川城まで行くんだから」

 そう言ったミケコも、内心、少し後悔していた。


 すると。

 おお〜ん、おお〜ん……。

 地獄の底から響いてくるような、重苦しい音が聞こえてきた。

「ひいっ、な、なによ、今の音!」

「か、鐘じゃないのっ!?さっき近くにお寺があるって」


 おおーん、おおーん……。

「ど、どう考えても、鐘の音じゃないわっ」

「だ、だったら、なんだって言うのよっ」

 恐怖に怯えながら、暗い山道を急ぐ二人。

 とにかく、こんな薄気味悪いところは、早く抜けるしかない。


 そのうちに、小さな明かりが見えてきた。

「あ、あそこ、お茶屋さんがあるわ」

「良かった。誰か人がいるわよね」

 ほっと一安心。

 すがるように、休憩所に入った二人。


「いらっしゃい……」

 と、出てきたのは、若い女性だ。

 だが、顔の色は透き通るように白く、体も哀れなほどに痩せ細っている。

「日坂名物、わらびもちはいかが……」

 と勧められるので、それをいただくことに。


「ね、ねえ、お姉さん。掛川までは、あとどのくらいかしら?」とミケコ。

「はい……、もうちょっとですよ。無事にこの峠を越えられたら……」

 なんだか不気味なものの言いようである。


「あの、私たちさっき、変な物音を聞いたんだけど」とタマコ。

「はい……、あれは、夜泣き石と言いまして」

 と言うと、お姉さんは奥に引っ込んでしまった。

「夜泣き石?」

「夜泣き石?」

 怪訝そうに顔を見合わせる二人である。


 やがて、わらびもちが運ばれてきた。

 それは美味しかったのだが。

「実は、以前、ここで不幸がありまして……」

 と、お姉さんは唐突に語り始めた。


「久延寺に安産祈願に来た妊婦さんが、帰りに山賊に襲われて殺されてしまいまして。あれは、そう、今日みたいな寒い冬の日でございました。こんな暗い夜のことでありました。その妊婦は寺に埋葬されたのですが、それからというもの、墓の方から、夜な夜な女の泣き声が聞こえてきます。不審がった寺の住職が墓を掘ってみますと、中から赤ん坊が出てきまして。その赤ん坊は、こんな飴で育てられたと言われています……」

 と、お姉さんが飴を二人に渡そうとしたのだが……。


「ご、ご馳走さまーっ」

「お代はここに置いとくわっ」

 ミケタマの二人は、慌てて席を立って、店を出ていってしまった。


「あ、あのお姉さんが、その殺された妊婦さんだわっ」

「幽霊になって、飴で赤ん坊を育てる話よっ」

 スキーのジェットエンジンを全開にして、ひた走りに滑っていく。


 一方、峠の茶屋では、お姉さんが不思議がっていた。

「あら、サービスの飴玉、いらないのかしら……?変わった人たちだわ……」

 ちなみに、夜泣き石の伝説は諸説あるが、かわいそうに思ったお坊さんが、飴で赤ん坊を育てたことになっている。

 めでたし、めでたし……。

 よくある、幽霊が飴を買いに来た話とは別の話だ。

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