金谷
「ふう、何とか大井川を渡ることが出来たわね」
「やれやれよ。本当に、もう」
あんなことがあっても、旅を止めるわけにはいかない。
その昔も、大井川を渡るのは、並大抵のことではなかったが、時代が下っても、また別の苦労がある。
何はともあれ、こんなところでじっとしていも始まらない。
今日中に掛川まで着かなくては。
今度は金谷宿を目指して、二人はスキーを滑らせた。
大井川鉄道本線を越えて、JR金谷駅へ。
だが、一難去ってまた一難。
そこで二人を待ち構えていたのは、急な登り坂。
なぜかゲレンデが緑色にカラーリングしてある。
「まあ、また何かあるの?」と、ミケコ。
「この辺はお茶の産地。それだけよ」とタマコ。
その通り、この登り坂を越えれば、そこはお茶の名産地として知られる、牧之原だ。
「早く登り切って、お茶で一服するわよ」
「甘いものも、食べたいわ」
ジェットエンジンを全開にして、急坂を登っていく。
だが、登り切った先には、二人が期待したような茶店はなかった。
「そろそろ休憩したいんだけど。ねえ、まだなの?」
「間の宿まで、行かないとね」
間の宿とは、宿場と宿場の間にある、町屋のこと。
宿間の距離が長いときなどに、お茶屋や旅の装備などを売る店が集まって、一つの宿のようなものとして発展した場所だ。
宿の保護のため、旅人が宿泊することは禁止されていたが、貴重な補給場所であった。
牧之原トンネルの上を越えて、道は山あいの地区に入っていく。
行くことしばらく、やがてようやく、間の宿・菊川が見えてきた。
転がり込むようにしてお茶屋に入った二人。
「ふいー、やっとほっと出来るわね」
「ありがたいわ」
熱い静岡茶を……、と行きたいところだが、今日は道中、すでにさんざん飲んで来ている。
「静岡の人には申し訳ないけど、ここは温かいコーヒーで一服ね」
「私、カフェオレ」
「お供には、東海道チョコレート。抹茶味もあるわよ」
「なんでも有りなのね、弥次喜多グループって」
スキー板の充電も抜かりなくやっておく。
しばらくの後、二人は旅を再開。
暮れかかった峠の道を行くのであった。




