島田 その3
「ふむ、そろそろいいだろう。バグを解除してやるか」と、こっそり川の中から様子を見ていたユラは言った。
フッと、殺気を感じて、振り向く。
そこには、霞のような黒い影が。
「我が趣味を邪魔するものは、何人たりとも許すまじ」
現れたのは、ミケタマをこっそり観察するのが趣味の男、風魔忍者の日影ウスオである。
彼は持ち前の影の薄さを活かして、水遁の術を使って川の中に隠れていたのだ。
「またお主か。邪魔はさせぬぞ」
「邪魔をしているのは、そちらの方だ。甲賀忍者よ、引っ捕まえて、ミケタマの前で悪事を白状させてやる」
「そう、うまくいくかな?大井川の鮒の餌にでもなるが良い。甲賀忍法・水霞の術!」
モワモワもわ〜ん、と、川面に濃い霧が立ち込める。
忍者同士、忍術を駆使した戦いが始まってしまった。
船上のミケタマからは、水面の様子が見えない。
「ねえ、なんか、霧が出てきたんだけど?」と、驚くミケコ。
「大井川はどうなっちゃったの?」タマコも目を丸くする。
「くそっ、早くバグは直らぬか!?」焦る一茶であるが、どうしたものかわからない。
そんな船の上の三人を無視して、戦いを続ける、忍者二人。
「これでも喰らえ!」
シュッ!
ウスオの十字手裏剣が飛ぶ。
ドスッ!
「おわ〜!」
しかし、被害にあったのは、人足ロボット。
頭に手裏剣がつき刺さったまま、川の藻屑と消えていく。
環境のことを心配なさっている、意識高い系読者の皆さん、心配はいらない。
この人足ロボットは、100%自然に還る天然素材でできているのだ。
すぐに溶け出し、鮒の餌となる。
「なんのこれしき!」
シュパパッ!
ユラだって負けてはいない。
棒手裏剣乱れ打ちだ。
ドス、ドス、ドス、ドスッ!
狙いは外れ、またしても人足ロボットが犠牲になる。
「おわ〜」
「おわ〜」
次から次へと、川底に沈んでいくロボットたち。
さらに。
「忍法鎌ヌンチャク!」ウスオの攻撃。
スパ、パパパ!
「おわ〜」
「小癪な、こいつはどうだ、忍法真空派!」ユラの反撃だ。
シュン、シュン!
「おわ〜」
「くそっ、霧で辺りが見えない!人足ロボットはどうなっているんだ!?」
と、部下を怒鳴りつけた一茶である。
「ロボットの数がどんどん減っています!」と、部下は叫び返した。
「何で、そうなるんだ!?」
「原因不明です!」
「川底の小石は取っておけと、言ってあっただろうが!?」
「川は完璧に綺麗です!座礁の可能性はありません!」
それ以前に、小石で座礁したりはしないが、一茶はパニックに陥りかけていた。
「一茶さん、この船は大丈夫かしら?」
流石のミケコもちょっと心配になってきた。
いや、一茶の船に乗っている時点で心配かもしれないが、船の上から目を凝らし、水面の様子を見ようとする。
だが、ユラの忍法のせいで、白い霧に包まれて良く見えない。
時折、猛スピードで影のようなものが飛び回っているようにも見えるが……。
「し、心配いりません!そのときは僕が二人を肩車して、向こう岸までお運びします!」と、一茶はすでに壊れかけている。
「余計心配なんだけど」と、タマコは空になった酒樽を抱きしめた。
一茶の肩車よりは頼りになりそうだ。




