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東海道五十三次美人OLスキー旅ミケタマ珍道中  作者: いもたると


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島田 その2


 幸いなことに、中でオールを漕ぐ心配はなかった。

 この越すに越されぬドラゴンボート号は、胴体の脇を大勢の人足ロボットが担ぐようになっており、ロボットたちが川底を歩いて渡るようになっていた。


「船内には、美味しいワインも用意してあります。いかがですか?」

 と、一茶がお酒を勧めてきた。


「あら、気がきいていますこと」

「それじゃ、遠慮なく」

 グイグイと、素晴らしい飲みっぷりの二人。


「失礼ですけど、お代わりを頂けませんこと?」

「できれば、ボトルで」

「どうせなら、樽はないかしら?」

「それはいいわね」

「どうぞ、どうぞ」と、太っ腹なところを見せる一茶だったが、どことなしに顔が青白い。


 そんな彼に、鱒之助がこっそり耳打ちする。

「良いのですか、坊っちゃん。もし彼女たちと一緒に暮らしたら、これが毎日続きますぞ」

「だ、大丈夫だ。弥次喜多グループ秘蔵の酒蔵があったであろう?」

「あるにはありますが、このペースで飲まれたら、一年持たないと思われます」

「な、何とかなるだろう」


 しかし、一茶は改めてミケタマの飲みっぷりを目の当たりにして、内心身が縮こまる思いであった。

(だ、大丈夫だよな、大丈夫。きっと結婚したら、落ち着くはずさ。ね?)


 そんな一茶の心配をよそに、順調にクルーズを続けるドラゴンボートであったが、川の中腹まで差し掛かった頃であった。


「ぼ、僕は少し外の風に当たってきます。お二人は、どうぞこのまま船内でお寛ぎください」

 気持ちを落ち着けようと舳先まで出てみたとき、一茶は船の異変に気づいた。

「うん、これは?」

「どうされました?」

 心配して出てきた鱒之助。


「さっきから、船が一向に進んでいないのだが」

「何と?」

「これはどうしたことだ?」

 一茶が部下に聞くと、こう答えが返ってきた。

「人足がストライキを起こしています」


「何?ロボットがストライキを起こすわけないではないか」

「ですが……」

 しかしよく見てみると、一茶の目にも、本当に人足ロボットがストライキを起こしているように見える。

 ロボットたちが何やら言っているようだ。


「給料を倍にしてくれないと、動かねえ」

「さもなければ、川ん中、放っぽり出しちまうぞ」

「これは、何としたことか」と鱒之助は唸った。

「くうう、リアルに作りすぎたのがまずかったか」と、困る一茶。


 そこにミケタマがやってきた。

「ねえ、一茶さん。船内のワインがなくなっちゃったんだけど」と、手に持った空のグラスを振るミケコだったが。

「あ、い、いやっ」

 どうも一茶たちの様子がおかしい。


「もしかして、またバグが出たんですか?」と、タマコが察した。「そういえば、一茶さんはそのために来てらっしゃるのよね」

「そ、そうです。ま、また例のバグです」と、咄嗟に一茶はそういうことにした。「きっとまた風魔忍者のせいでしょう。でも、僕がいますから、お二人は大船に乗ったつもりでいてください」


 などと大きなことを言ってしまった一茶であったが、

(どうしよう。このバグは僕が起こしたものではないし。まさか本当に忍者の仕業だったら、どうする?)

 と、内心ビクビクものである。


 しかしそれをミケタマに悟らせるわけにはいかない。

「ふ、風魔忍者め!こんなことで我が弥次喜多グループを妨害しようったって、そうはいかないぞ!よし、いいかお前たち!全員で力をあわせて、このバグを解消するのだ!」

 と、カッコつけて部下に指示を出したはいいが、部下にしたって、どうしたらいいのかわからない。


 船内のコンピュータ室で、カタカタやってはみるものの、一向に改善の気配はない。

 ただ、右往左往するだけで、船は川の真ん中で立ち往生である。

 実はこれは、弥次喜多グループのライバル企業、十返舎開発に雇われた甲賀忍者、多羅尾ユラが起こしたものである。


 彼はミケタマに京都三条大橋の欄干の擬宝珠を、破壊プログラム入りのものに取り替えさせるべく、本物のバグに見せかけた様々な妨害工作を仕掛けているのだ。

 だから、このバグも、もうまもなく勝手に解消する予定であったのだが……。


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