島田 その1
藤枝から、JR東海道本線と並走する形で、島田へと向かっていく。
JR六合駅を過ぎ、JR島田駅の北へ。
大井神社のあたりまで差し掛かると、何やら騒がしい。
大変な人出である。
「今日は何かやっているのかしら?」
「こんな冬の日に、変ねえ?」
エッサ、エッサの掛け声。
法被姿の男女が、踊っている。
「鹿島踊り?」
「お祭りなの?」
お神輿が引かれ、巨大な屋台がやってくる。
屋台の上で、太鼓を叩いて踊っている人がいる。
「すいませーん、今日はお祭りか何かですか?」と、ミケコは近くにいた地元の人に尋ねた。
その人は答える。
「大井神社の帯祭りだよ」
「帯祭り?って、3年に一度あるっていう?普通は秋じゃないの?」と、疑問のタマコ。
「なんでも、弥次喜多グループ主催で、急に今日やることになったんだそうだ」
「弥次喜多グループ?聞いてる、タマ?」
「知らないわ、ミケ。私たちが旅に出てから決まったんじゃないの?」
島田の帯祭りは、他町村から嫁いできた娘を、大井神社に参詣した後、宿の人々に披露したのが始まりだ。
可愛らしい子どもたちの踊りが続いて、大奴と呼ばれる人たちが、女性ものの着物の帯を体の左右に突き出た大太刀に掛けて、練り歩いていった。
続いてやって来たのは、大名行列なのであるが……。
「ねえ、タマ。あれ、あの人たちじゃない?」
「もしかして、もしかしなくても、あの人たちね。本来は、子どもがやるんじゃなかったかしら?」
ミケタマの二人が絶望的な視線を向けるその先には、大名に扮した一茶がいた。
鱒之助も、ちゃんと爺やの役を与えられている。
「やあ、ミケコさんにタマコさん。旅は楽しんでいますか?」
と、一茶はにこやかに手を振った。
「一茶さん」
「何をやっているんですか」
「いつもお世話になっている住民の人たちを楽しませようと、季節外れの帯祭りを催してみたのです。たまには良いでしょう、こういうのも」
と、得意げに笑った一茶である。
一応の理屈をつけてみたが、実は、ミケタマの二人の気を惹こうと、急遽思いついたものである。
「ミケタマのお二人も、どうぞ楽しんでくだされよ」と、鱒之助も得意げだ。
「楽しむって言われても」
「面食らうって言った方がいいわ」
しかし、かえって逆効果、白けているミケタマであった。
「それより、早く大井川を渡っちゃいましょうよ」
「そうよね、行きましょう」
と、大井川のほとりに出てみると。
「うわあ、すごーい」
「大井川って、こんなに広かったのね」
と、実物を見て、驚く二人。
現代では、陸地が多く、それほどでもないが、ここ近未来では、大井川は、中国の黄河や長江も真っ青の、大河に魔改造されていた。
「で、どうやってここを渡るのかしら?」
「まさか、江戸時代みたいに、川越人足に肩車されてってことじゃないわよね?」
二人が呆気に取られていると、一茶が鱒之助を伴ってやってきた。
「ご心配は無用ですよ、お二人さん。こちらをご覧ください」
ジャーン、と示したのは、なんと竜頭を持つ、豪華客船である。
あっけに取られている二人に、一茶は自慢げに言った。
「どうです、驚きましたか。これは祭りのときだけ運行する、特別な船。その名も、弥次喜多グループが誇る豪華客船・越すに越されぬドラゴンボート号です。こちらに、お二人をご招待します!」
「ドラゴンボートって、あの、アジアで盛んな、みんなで一斉にオールを漕ぐやつ?」
「弥次喜多グループの誇りは、私たちだと思っていたわ」
状況を信じられないが、乗船する二人。
他にないのなら、しようがない。




