江尻 その2
稚児橋を渡って、先に行く二人である。
やはりバグが起きていると信じ込む二人。
だが、本来東海道にはバグは起きていない。
今までのは、一茶がミケタマの気を惹くためにわざと起こした自演自作。
今のは、弥次喜多グループのライバル企業、十返舎開発が雇った、甲賀忍者・多羅尾ユラが起こしたバグである。
ユラの計画は、ミケタマに京都三条大橋の擬宝珠を替えさせること。
そのためには、バグが発生していると、彼女たちに信じ込ませなくてはいけない。
だから、小さなバグらしきものを、適当に起こすのである。
「よしよし。この調子で京都まで行ってくれれば、こちらのものだ」
と、陰からこっそり見ていたユラは、ほくそ笑んだ。
だが、陰と言えば、忘れてはならない。
この男がいたことを。
「ム!」
殺気を感じて、身をかわす、ユラ。
さっきまで彼がいた場所には、十字手裏剣が刺さっていた。
「むう、これは、風魔の者だな」
さすがに忍者、すぐにわかった。
「えいっ」
と、気配を感じた方向に、お返しの手裏剣を放つ。
ドスッと、彼が投げた棒手裏剣は、橋の欄干に突き刺さった。
「ム、逃げたか。しかし、我が手裏剣を逃れるとは、なかなかの腕前だな」
ひとまず、襲ってくる気配はないので、ユラはミケタマの後を追うことに。
「相手も風魔忍者を雇っていると見える。気をつけねばならぬな」
さっとどこかに姿をくらます、ユラであった。
一方、この男は。
「甲賀忍者か。厄介なのが出てきたな」
ご存知、日影ウスオである。
この道中、趣味のミケタマの観察をたっぷりしようと、下卑た妄想に胸を膨らませていたのに、飛んだ邪魔が入った。
「一茶などに、俺のミケタマを取られたくはなし。十返舎開発に、東海道を壊されたくもなし。ここは私が彼女たちを守らねばならぬ」
大変に迷惑な思い込みだが、ミケタマの知らないところで、様々な思い込みが交差することになる。
一茶は、十返舎開発が雇った風魔忍者から彼女たちを守るという口実で、ミケタマに近づきたい。
そして二人を自分のものに。
ユラは、疑われないように適当にバグを起こしつつも、ミケタマに京都まで行ってもらって、三条大橋の擬宝珠を、破壊プログラム入りのものに替えさせたい。
ウスオは、旅行中のミケタマ観察を楽しみつつ、一茶の邪魔をする。
また、擬宝珠を替えさせてはいけないし、ユラの存在も、邪魔になるなら倒さねばならない。
濡れ衣を着せられた風魔忍者の評判も回復させなくては。
そしてミケタマは、ただ旅を楽しむのみであった。




