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東海道五十三次美人OLスキー旅ミケタマ珍道中  作者: いもたると


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江戸・日本橋 その2

 京橋を渡ると銀座に入る。

 ここはモーグル地帯だ。

 銀座のデパート群が見下ろす中、軽快にコブを越していく。

 日本橋OLの二人にとって、銀座は庭なのだ。


「タマ、この辺で朝ギンザして行くわよ」とミケコ。

 朝ギンザとは、ギンザで朝食を食べること。

「銀座とも、しばらくお別れだものね」とタマコ。

 この時間から営業している寿司屋の前でスキーを止めて、暖簾をくぐった。


 二人が注文したのは、赤身、漬け、トロ、中トロ、大トロ、鉄火巻きがセットになった、マグロづくし。

 それと、品川汁だ。

 品川汁とは、青森県むつ市の郷土料理。

 豆腐をすり鉢ですったものを、味噌やだし汁で伸ばして汁にしたもの。

 元々は、江戸時代に品川で食べられていたもの。

 その後、本家品川では、一度廃れてしまったが、現代では復活の動きがある。

 二人が食べているのは、その復活した品川汁。

 江戸野菜の品川かぶを使っているのが特徴だ。


「うーんと、お次はアワビにでもいっちゃおうかな?」

「ちょっと、ちょっと、ミケ」

 と、タマコに袖を引っ張られたミケコ。

「エヘン」と咳払いする大将に気づく。


「オホホホ、朝からたくさん食べるのもアレよね」

「ごちそうさま〜」

 と、店を出る。

 どうやら寿司屋で腹いっぱい食べるのは、江戸っ子としては様子のいいことではないらしいのだ。

 ちょっとつまんだら、パッと帰る。

 それが粋でいなせな江戸っ子の流儀である。


 店を出るやいなや、こんな会話。

「お昼は何にする?」

「テキトーに食べ歩きでいいんじゃない?」


 再びスキーにエンジンをかけて、滑り始める。

 道はJR新橋駅へと向かっていく。

 駅を過ぎ、芝大神宮の前を通り、浜松町駅を越える。

 金杉橋かなすぎばしをすぎれば田町駅だ。


 次の品川駅まで残り半分といった地点で、大きな門が見えてきた。

 ここが高輪大木戸たかなわおおきどである。

 かつてはここで旅人を見送り、別れの水盃みずさかずきを交わしたという。

 近未来では、休憩所になっていた。


 東海道各地に、こういった旅人のための休憩所やお茶屋が設けられていて、ご当地のグルメなどを楽しむことができる。

「別れの水盃、やって行くでしょ」と、ミケコはスキーの速度を落とした。

「こういうのは、儀式だものね」と、タマコもゆっくりになって、スキーを止めた。


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