箱根 その1
翌朝、小田原城の朝食会場で、モーニングを堪能した二人。
もう一つの小田原名物・梅干しで白いご飯をいただく。
小田原で梅干し作りが盛んになったのは、戦国時代のこと。その薬効と食べ物の防腐効能に目を付けた北条早雲が、奨励してからだ。
その早雲の居城で食べる梅干しの味は、格別である。
「あー、日本人で良かったわ」
「朝は、やっぱり、白いご飯と梅干しよね」
昨夜のお酒が残る胃腸にも嬉しい。
「あれ、今朝は一茶さんたちは、いないのね」
「仕事に行ったんじゃないの?」
「そっか、あの人たちは、私たちと違って休暇じゃなかったわね」
「そうそう」
そんなこんなで、城を出立した二人。
本日は、東海道一の難所、箱根越えである。
だが、急いで越すのではなく、箱根を登ったところにある、芦ノ湖畔で温泉にでも浸かって、ゆっくりして行こうという計画だ。
「さあ、行くわよ、箱根八里!」
「休養しっかり、充電もたっぷりだわ」
昨夜は旅先で社長の息子に遭遇するというハプニングがあったが、おかげで高級シャンパンをたらふく飲むことができた。
お酒はミケタマのガソリンである。
エンジン全開だ。
小田原城を出て、小田原宿の高札場へ。
実はここが箱根八里の起点である。
ちなみに高札場とは、幕府が発した法令などを記した高札(立て札のこと)が立てられていた場所のことだ。
天気は良好、二人は順調に滑り出した。
箱根登山鉄道の線路に沿って西進、箱根湯本へ。
ちなみに芦ノ湖畔までの登りを、箱根東坂、下りを箱根西坂という。
箱根の登りは、箱根駅伝でも山場としておなじみであるが、もちろんここも近未来的なゲレンデへと変貌を遂げている。
「エンジン全開!」
と、ミケコはフルパワーで、曲がりくねった山道を登っていった。
「登りじゃ、負けないわよ」
と、タマコも負けじとフルパワーだ。
「あら、ちょっと太ったんじゃないの?」
「そちらこそ、昨日飲み過ぎたんじゃなくって?」
どちらも真理を突いているが、心配ご無用である。
弥次喜多グループが誇るジェットスキー板のパワーは、たとえお相撲さんであっても軽々運ぶ。
クネクネと続くつづら折りの道を、あっちへターン、こっちへターン、山道大回転で登っていく。
「私、登り大好き!」
「私もよ」
「でも、下りも好き!」
「私もよ!」
坂を登った先は、少しゆるやかな笈ノ平。ここはモーグル地帯になっていた。
「私、モーグル大好き!」
「ジャーンプ!パーフェクトテン!」
見事にひねりを加えてジャンプを決める。
モーグル地帯の先には、峠の甘酒茶屋があった。
箱根の甘酒茶屋といえば、江戸の頃より、峠を越える旅人たちの憩いの場。
力餅と一緒にいただくのが、箱根八里の旅人の風景だ。
「甘ーい。ほっとするわ」
「温かくて、力が出るわ」
エネルギーを得て、もう一踏ん張りである。
「さあ、あとちょっとよ!」
「ねえ、どっちが先に着くか競争しない?」
最後の直線的な坂。
ゼロヨンレースのように、同時にスタート!
「負けた方は、勝った方の背中を流すっていうのはどう?」
「いいわね。私のきれいな背中を流させてあげるわ!」
結局、二人仲良く同時にゴールインした。
そんな二人に、自然がプレゼントを用意して待っていた。
「きゃあー、きれいー!」
「感動だわ。心が洗われるわね」
芦ノ湖には、見事な逆さ富士が映っていた。




