第2章:静かなおむすびと、嵐のような大樹
ガラガラと重い音を立てて、先生が教室の引き戸を閉めた。カチッという鍵の音は、僕の逃げ場がなくなった宣告のようだった。僕は完全に、見知らぬ視線と暗号のような言葉に囲まれたコンクリートの箱の中に閉じ込められたのだ。
それからの二時間は、黒板に並ぶひらがなと漢字を目で追うだけだった。何も考えずに線を引いて、メモをしているふりをした。辞書なしで空気を読み取ろうとするのは、脳が一番疲れる作業だった。
やがて、キンコンカンコンとチャイムが鳴り響いた。
「起立!礼!」
級長の号令に合わせて、全員が一斉に立ち上がった。僕は一秒遅れ、椅子をガタンと鳴らして慌てて立ち上がった。お辞儀を終えると、教室の空気は一気に和らいだ。椅子が引かれ、笑い声が広がり、お弁当の香りが漂い始める。
僕が一番恐れていた時間、休み時間が始まった。
前の学校ならすぐに友達と食堂へ行けたのに。ここでは皆、自分の席で小さなグループを作っている。僕はただ窓の外の静かな運動場を見つめ、賑やかな海の中の「孤島」になったような気分だった。
お弁当の包みを開ける音や、箸の音が響き渡る。卵焼きやソーセージの香りがお腹を空かせた僕を刺激する。
バッグの中を探ったが、何もなかった。今朝、自己紹介の練習に夢中で、用意していたお弁当をマンションのテーブルに忘れてきたことを思い出した。
お腹が恥ずかしい音を立てた。僕は必死にお腹を抑え、誰も聞いていないことを祈った。
文字も読めない日本の歴史の教科書を熱心に読むふりをして、うつむいた。僕は言葉が話せないだけでなく、ここで生き延びる(食べる)方法さえ知らないエイリアンのようだった。
突然、教科書の上に影が落ちた。顔を上げると、そこには肌が白く、長い髪に前髪を下ろしたスリムな女子生徒が立っていた。身長は一六〇センチくらいだろうか。彼女は二つの丁寧におむすびを手に持っていた。
彼女は、お弁当も持たずに黙っている僕に気づいたようだった。彼女の視線は僕の空っぽのバッグへ、そして僕の顔へと戻った。
「お弁当……忘れた?」と彼女は静かに尋ねた。
「あ……イエス。忘れた。ルパ(Lupa)。」僕は後頭部をかきながら、たどたどしく答えた。自分がまた馬鹿に見えて仕方がなかった。
彼女は笑わなかった。代わりに、僕の前の席に座り、ためらうことなくおむすびの一つを差し出してくれた。
「どうぞ。食べる?」
僕は固まった。この空腹と孤独の中で、見知らぬ誰かが差し出してくれた一つのおむすびは、どんな辞書よりも価値のあるものだった。
そのおむすびを手に取ろうとした瞬間、大きな影が机を覆った。
ドンッ!
大きな手が机を叩き、静香の飲み物が揺れた。僕は驚いて、おむすびを落としそうになった。
「OH! MY FRIEND! WELCOME TO JAPAN! HA-OU-A-YUU?!」
見上げると、身長一七〇センチ以上ある、髪を少し散らし、制服の第一ボタンを開けた男子生徒が立っていた。
彼は歯並びのいい、満面の笑みを浮かべていた。馬鹿にしているようではなく、ただその大きな声に教室中の視線が集まった。
机に「静香」と書かれたその女子生徒は、深い溜息をつき、疲れ果てたように何かを呟いた。
「ヘイ、ヘイ!恥ずかしがるなよ!」その男子生徒は僕の顔のすぐ近くまで顔を寄せた。イチゴガムの強い香りがした。「アイ・アム・タイキ。ユー……フロム……ウェア?」
彼はカタカナ英語の強いアクセントで話し、それが英語だと理解するのに三秒かかった。




