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第五話

 俺は“アルビオン防衛軍AL4αコロニー駐留基地”の司令室に名指しで呼び出された。

 マジでなんにもやってないよ?

 確かに、マクネアー大尉の豊満なバストを凝視したけど、ちゃんと目を胸に向けずに目線は別の方向に向けたまま、視野の端(周辺視野)で凝視してたよ?(高等技術の無駄遣い)


 それに、この世界にはパワハラやセクハラの概念なんてないし、いざとなればもみ消せ…ないな、サリヴァン総司令官は公明正大な正義漢だし…

 ほんとかっこいいわあの人…俺には絶対になれない高潔な人間だから憧れてる。


 しかし、パワハラ上等セクハラ上等とか最悪な世界だよな…


 しかし、何で呼び出されたんだ?

 …まさか、今度はランカーの海賊が率いる300隻の艦隊とかじゃないだろうね?

 それだと流石にキツイなぁ…


 そんな事を考えながら歩いていると、基地司令執務室の前までたどり着く。

 とりあえず、ドアを3回叩くと入室を促される。


「第1パトロール艦隊ジャック・ギャレット上級曹長、入ります」


 そう言って入室すると、応接用のソファに座る見慣れた顔があり、思わず驚きそうになった。

 俺はその敬愛する上官に敬礼した。

 入室した際は、部屋の主ではなく最も階級の高い者に敬礼しなければならないからだ。


「おっ!俺の顔を見ても驚かないか!」


 そう言って笑うのは我が軍の最高司令官…

 レイモンド・サリヴァン総司令官だ!

 その隣にはマクドナルド副指令官が座っている。


 おかしいな…本土防衛艦隊の艦隊司令はゲイリー・マクドナルド副司令官では?

 それに、司令官まで動かしたら軍務に支障をきたすって事で、サリヴァン総司令官は惑星AL2の本部に残ってるんじゃ?


 そんな事を考えていてもしょうがないので、二歩ほど前に進んで基地司令に敬礼。


「ジャック・ギャレット上級曹長、出頭いたしました」


 そんな俺に苦笑いをしながら、基地司令は言った。


「あぁ…ははは…いや、君に用事と言うのはだね?君に来客が来ているのだよ」


 どうやら、呼び出されたのはサリヴァン総司令官たちが、俺に用があったかららしい。

 先にそう言ってほしかった。


 サリヴァン総司令官たちが立ち上がって俺の方に歩み寄る。


「やあ、ギャレット上級曹長。今日は君に渡すものと通達事項があってね」

「はぁ…自分にですか?」


 え?なんだろ?この人のことだから、酷い事はしないとは思うけど…

 彼は困惑する俺を見て、悪戯が成功した子どもみたいにニヤニヤしている。


「いや、もう上級曹長ではなかったな」

「え゛ぇ゛っ゛!?」


 クビ?クビなんですかぁ!?

 いや、待てこの人がそんなことするわけねぇ!

 降格になるならもっと険しい表情の筈!

 俺の身に何が起きるの!?


 マクドナルド副司令官!?笑ってないでなんとか言ってくださいよぉ!

 基地司令!?なんですその態度!?アチャーって感じで手で顔を覆ってますけど!?


 やっぱマクネアー大尉の胸を凝視したのがバレた!?


 困惑しまくる俺に対して、意地の悪い顔でサリヴァン総司令官は告げた。


「先の戦いにおける貴官の献身と忠勇を称え、アルビオン名誉勲章とアルビオン防衛軍最先任上級曹長の階級を与える」

「これは、先の戦いにおける貴官の活躍を称えるだけでなく、これからの活躍に期待するが故のものである」

「…と、言う訳でクビじゃないから安心してくれたまえ!」


 なんだよ!もう!おどかさないでくださいよぉ!!!


「は、身に余る光栄です!」


 最先任上級曹長って、確か建前上の扱いだと士官どころか、将官並みの扱いじゃなかったっけ?

 そういうのは事前に通達してよねぇ!

 もう!相変わらずだよなこの人!

 上級曹長になった時もそれやったじゃん!


「全くこの悪戯小僧めが…」

「ハハハハハ!!!おいおい…最先任上級曹長にその仕打ちって…総司令官じゃなきゃ懲戒免職処分もあり得ますぞ?総司令官閣下!」


 なんかお二人とも知ってました?

 てか、基地司令ってサリヴァン総司令官と旧知の中とかそんな感じ?

 悪戯小僧呼ばわりが許されるって相当親密じゃね?


「こいつが勲章で、これが新しい勲章…の略章な!後日ちゃんと授与式やるから安心してくれたまえ。なにか質問はあるかね?」

「は、一つご質問がございます」


「うむ、なにかな?」

「最先任上級曹長は座席、宿舎、送迎、駐車場などに加え、正式な式典においても大将と同等に扱われますね?」


「ああ、その通りだ。それが?」

「その中に総司令官を一発殴る権利は含まれますか?」


「含まれないなぁ…そうなりそうだから事前に含まれないって明記させてある」

「畜生め!」


 俺たちのそんなやり取りを見て、基地司令は呆れて、副司令官は爆笑していた。


「あぁ!もう駄目だ!普段は堅物な奴らがこんなんやってるとか…ハハハハハハハ!!!!」

「はぁ…これが我が軍の総司令官と副司令官と最先任上級曹長の姿か?全く、いざって時には漢の中の漢になるというのに…いや、一人一人別々の時は真面目そのものなんだがなぁ…混ぜるな危険というやつだな」


 そんな二人を尻目にサリヴァン総司令官は続けて言った。


「あぁ、そうだ。重要な通達事項がもう一つあってな…これを見たまえ」


 彼はそう言って俺にIMLMAからの書類を渡された。

 これは!?


「ランカーへの昇格通知!」


 そこには、俺をランク48位のFランク帯ランカーとして認める旨が書かれていた。


「うむ、これで我が軍にランカーが二人所属しているという訳だ!これで益々この星系に手を出す愚か者が減るな!」

「この事は多分、この星系のマスコミも嗅ぎつけてるだろうし、すぐにニュースになるだろうな!ま、それはこっちが記者会見開いて対応しておくさ。それよりは、最先任上級曹長就任とアルビオン名誉勲章の授与式の事を考えておけ」

「多分、そっちは映像付きで報道されるだろうからな」


 そう言われると途端に実感が湧いて来るな。

 ん?なんか真面目な顔に戻った?

 どうしたんスカ?


「今回、このコロニーに住む罪なき善良な人々が君のおかげで救われた。感謝してもしきれない…本当にありがとう」


 そう言うとサリヴァン総司令官は帽子を取って頭を下げた。

 しかし、この人も大げさだな…

 軍人がいざって時に、命を放り出して市民の為に戦うのは当たり前だろうに…

 まぁ、死ななくて済むなら死にたくないけど…


「重ね重ね格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます!」

「しかし、私は自分の職務を果たしただけに過ぎません!」


 雑魚を蹂躙するだけの簡単なお仕事だったしね!

 しかし、序列だけなら中将以上の最先任上級曹長になったおかげで、仮に無能な上官に何か言われても、私最先任上級曹長ですけど?って言えるな!

 かなり多くの事に融通が効くぜ!


「さて、まぁ…ここからは個人的な話でな、お前に紹介したい人がいる」


 そう言って、彼が副司令官に目配せすると、副司令官は頷いて俺の前に歩み出た。


「こうして直接会うのは初めてだったかな?アルビオン防衛軍副司令官ゲイリー・マクドナルドだ。よろしくな」

「こちらこそ、よろしくお願い申し上げます」


 俺は副司令官が差し出した手を取り、固く握手をする。


「君の事はサリヴァン総司令官から聞いている。君は彼の右腕で、とても頼れる男だとな」

「そして、君はこうして前評判に違わぬ活躍を見せてくれた。その結果、俺たちが取りこぼす筈だった大勢の命を守る事が出来た」

「本当にありがとう」


 この前の、キルディザスター(笑)との戦いに関係する偉い人は、みんなそう言って頭を下げて来るんだよなぁ…基地司令もそうだったし…


「いえ、私はただ自分のすべきことをしただけです。その賞賛は私ではなく、散っていったアルビオンの勇姿たちに贈ってあげてください」


 凄いよね、俺よりクソザコなのに、死ぬとわかってて飛び込めるんだから…

 俺にはマジで無理!

 勝てるって確信してたから飛び込めただけだし!


 …本当、俺なんかよりもずっとずっと凄いよ


「ッ!あぁ…あぁ!そうだな!散っていった勇姿たちにももちろん厚く報いるさ!だが、それでもだ…」

「彼らの犠牲を無駄にはしなかったのは君だ」

「それだけは覚えておいてくれ」


 俺がねぇ?

 まぁ…言われて悪い気はしないよ


「ありがとうございます、副司令官閣下」


 その後、俺は二言三言くらい話してから戻った。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ジャックの去った執務室にて、三人の男が言葉を交わし合っていた。


「レイモンド、お前の言う通りだ。彼は正真正銘の高潔な男だった。まさか、真っ直ぐと俺を見据えて散っていった戦友の方が賞賛に値すると言ったのだからな…」

「思わず震えたよ…あれだけの事を成し遂げ、ここに住む多くの市民を救ったんだぞ?もっと調子に乗っていても罰は当たらないだろうに…」

「本当に凄い漢だ…」


 マクドナルドの言葉に、基地司令は深く頷いた。


「ああ、彼ほど他者を慮り、労れる者はそうはいまい…」

「以前の合同演習での、彼のパイロットたちへの指導の記録映像を見たが、一件特殊部隊並みのスパルタ教育のように見えたが…あれは、彼が最前線で培い、それを駆使して生き延びてきた知識や経験そのものだ」

「彼は戦友たちを死なせまいと、必死にそれを伝えようとしてくれているのだ」


 サリヴァンは二人を見て言った。


「本当に…彼が来てくれたことで、どれだけの尊い命を取りこぼさずに済んだことか…」

「だからこそ!俺たちはそれに応えなければならない!」

「彼だけに頼り!いざという時に彼抜きでは何もできない!そんな事になっては彼がいずれ潰れてしまう!」

「故に!彼に頼らねばならない軍ではなく、彼と共に肩を並べて戦える軍を作らねばならない!」


 彼のその強い言葉に、二人は力強く頷いた。

 “英雄”を一人孤独に戦わせてなるものか…必ず肩を並べて戦えるようになる!そんな強い決意を彼らは抱いた。



 一方その頃、執務室から廊下に出て、すぐ左に曲がったところで…


「あっ、ギャレット上級曹長!」

「これは…マクネアー大尉(いやぁ眼福!)」


「執務室に呼び出された帰りですか?…あれ、その階級票!」

「えぇ、正式に就任式はしていませんが、最先任上級曹長を拝命いたしまして(揺れた!ねえ!今でっかいのが揺れたよぉ!)」


 漢たちは英雄を孤独に戦わせてなるものかと決意を固めていた。

 しかし、英雄(笑)は無駄に高度な技術でマクネアー大尉の胸を凝視していた。

 多分、彼はマクネアー大尉の胸を凝視できればいくらこき使っても潰れないだろう…


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