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【ゼータ・セクター戦役編】第三話

ジャックくん戦友たちとの顔合わせの巻。

来年まで何人生き残れるかな?

「ようやく…目的地のZ9-171基地に行けますね…」

「そうねえ…まさかあんな目に遭うなんて…はあ…本当になんであんな目に…」


 俺たちは兵員輸送車に揺られながら話をしていた。


 ヘリで救助された後、丸一日検査だなんだって言って軍医たちに体をあちこち調べられた。

 それで結果は異状なし…

 軍医は、メルツァロヴァ少尉には「あの状況で生存しているどころか…ほぼ無傷とは…これは奇跡だ!」とか言ってたのに、俺には「飛行機の墜落事故に遭って無傷。その後、猛獣を素手で仕留めるか…君は本当に人間なのかね?」とか言ってきた。

 失礼しちゃうよね!


 ま、そういう事でこれ幸いと厄介払いされて、地獄の一丁目に運ばれてってるってわけよ…


『少尉!伍長!そろそろ着きます!』


 噂をすれば、車内インターホンで基地に着くってお知らせが来たね…


「遂に…来ちゃったわね…」


 少尉も緊張なさっておられる…


 まあ、当然だよな。

 着任するのは、軍内でも有数の損耗率と練度の高さを誇る、あの第3独立機動遊撃大隊だもんなぁ…

 俺も胃が痛いし…スゲー怖いよ…

 どんなヤバい連中なんだろ…


 俺たちは緊張した面持ちで車を降りた。

 そこには、一個師団は駐屯できそうな上に輸送機の発着場まである、かなり大規模な基地があった


(おいおい…輸送機があるなら直接この基地に送ってくれよ…まあ、輸送ダイヤとかの都合もあるんだろうが…対空砲火が機体を叩く音を聞きながら、三日くらい不快な空の旅を味わった末に墜落事故だぜ?最精鋭部隊の一つなんだからさあ…そこへ着任する俺たちの扱いをもっと良くしてよね!)


 口に出したら滅茶苦茶角が立つだろうから言わないけどさあ…

 もう最悪だったよ…


「メルツァロヴァ少尉にギャレット伍長ですね?自分は、お二人をご案内させていただきます、ボセ上等兵であります!」


 お、案内の兵士が来た。

 さて…俺を地獄へ突き落としやがった、大隊長殿の無駄に整ったご尊顔を拝みに行こうじゃないの…


「よろしく!ボセ上等兵!」

「案内ありがとう、上等兵」

「は、ではこちらへ!」


 俺たちは彼に先導されて大隊長室へ向かう。

 確か…俺の辞令では、第3独立機動遊撃大隊麾下第13SAF中隊へ配属だったな…

 ま、どこだろうと我が女神!メルツァロヴァ少尉と一緒ならやっていけるさ!


「ここが大隊長室になります。この後の事は…大隊長から指示がある筈です」

「ありがとう!」

「助かるよ」


 ボセ上等兵は、大隊長室の前に来るとそう言って扉の横へ退いた。

 すると、メルツァロヴァ少尉は扉を三回ノックした。

 いよいよだな…大隊長…てめえがどんな面で俺を地獄に引きずり込んだか見てやるよ。


『入れ』


 部屋の中から女の声が聞こえた。

 おそらく、今返事したのは部屋の主であるレナータ・ザルムホーファー中佐だろうな。


「ふぅ…失礼します!」


 彼女がそう言って扉を開けて中に入っていく。

 俺もそれに続いて「失礼します!」と言って入室、彼女の隣に立つ。


 そこにいたのは…あの広報で散々見た顔の女。

 俺を見てニヤニヤ笑ってやがる…何が可笑しい?

 その隣には…中尉の階級章をつけた目つきの鋭い屈強な男がいる。

 …副官か?

 おっかなそうだからこの人の部下にはなりたくねえや…


「大隊長に敬礼!」


 少尉の号令で俺たちは敬礼する。

 大隊長たちがそれに答礼する。

 その後、彼らが答礼をやめて手を下ろすと、少尉の「直れ!」という号令で手を下ろした。


 メルツァロヴァ少尉が一歩前に出て口を開く。

 こういうのは最先任者から順番なんだよね。


「ユーリア・メルツァロヴァ少尉!本日付けをもちまして、大隊本部直掩小隊勤務を命ぜられました!GISDF最精鋭と名高い第3独立機動遊撃大隊の隊員として、不撓不屈の精神をもって任務に邁進する所存であります!よろしくお願いいたします!」


 え?は?今…え?

 あの…少尉?大隊本部直掩小隊…?

 え?第13SAF中隊じゃなくて…?


 あ、そうだ…じこしょうかいしなきゃ…


「続きまして、自分はジャック・ギャレット伍長であります!本日付けをもちまして、第13SAF中隊勤務を命ぜられました!一日でも早く部隊の戦力となれるよう、職務に全力を尽くす所存であります!よろしくお願いいたします!」


 そんなぁ…俺はメルツァロヴァ少尉の部下じゃないのかよぉ…

 そういや、少尉とお近づきになれたことで浮かれすぎてて聞いてなかった…

 もう終わりだよ…俺の軍隊生活…


「うむ、二人とも楽にしてくれたまえ。…輸送機の墜落事故があったというのに、よくぞ着任の遅れが三日で済んだものだ。いや、本当に大したものだよ」


 うるせえよ、さっさと本題に入れや。

 殺されてえのか?


 お前のせいで俺は地獄へ突き落されたんだぞ…!


「さて、君たちは栄えある第3独立機動遊撃大隊の一員となったわけだ。本来ならば、大隊朝礼で皆の前で紹介したいところだが…生憎今は戦時中でここは最前線…そんな暇はない。配属先の部隊との顔合わせの後、隊員たちの訓練に君たちも参加するように。いいな?」

「「は、了解であります!」」


 ふざけんなよ…碌に休めないまま訓練か…

 マジ滅茶苦茶で最悪だわ…

 何が最悪ってメルツァロヴァ少尉と引き離されるじゃん!


「さて、メルツァロヴァ少尉は、外で待っているボセ上等兵に小隊の元まで案内させるとして…ギャレット伍長、君にはここで直属の上官を紹介しよう」


 おい…まさか…

 この怖そうな厳ついおっさんが…


「私は第13SAF中隊麾下グレイブス小隊隊長、ギルバート・グレイブス中尉だ。ギャレット伍長…これから私がお前の直属の上官となる」


 俺の上官かよォ!


 メルツァロヴァ少尉は!?俺の女神は!?

 嘘だろ!嫌だ!

 望みが絶たれたァァァ!!!


 人生ってこんな筈じゃなかったって事の連続だよな。

 絶望させる前に希望をチラつかせるのはこの世で一番悪趣味な行為だと思うわ…


「本来であれば、お前のような新兵はここでのやり方に慣れるように、時間を掛けて一から鍛えたいが…時間が無い。故に、俺たちに必死に食らいついてきてもらう。なに、安心しろ!俺の指示にきちんと従い、後をなんとかついて来れば必ず生きて帰してやる!いいな!」


 …あれ?怒鳴らない?人格否定しない?

 政府に対して忠誠心を見せろとか、元老院のために命を捧げろとか命令してこない?

 それどころか生きて帰すとか言ってないか!?


 この人良い人!?

 い、いやまて!まだわからんぞ!

 メルツァロヴァ少尉以外にもまともな上官がいるかわからんし、なにより前世でも初対面は良い人そうだったのに、徐々に化けの皮剥がれたパワハラモラハラ上司とかいたし…


 取り敢えず返事しねぇと…


「は!格別のご配慮ありがとうございます!若輩者ではありますが、グレイブス隊長の下で必ずや一端の隊員になってみせます!ご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます!」


 こ、こんな感じでいいかな?


「うむ…期待しているぞ!」

(な、なんだ!?今までこの部隊に来た連中のほとんどと違って…凄く礼儀正しいぞ!?第3独立機動遊撃大隊は、腕は良いが素行に問題のある奴らの巣窟だからな…彼があの不良軍人共に染まらんように指導しなくては!)


 これは…好感触なのかな?

 わかんねえ…いや、不安だな…


 本当にまともな上官だったらいいな…


「ふむ、ギャレット伍長はギルバートと上手くやっていけそうではないか。さ、二人とも自分の部隊の所へ行きなさい。時は金なり…だ。特に、この最前線では何もない時間ほど貴重なものはない。無作法ではあるが気にする事はない、すぐに配属予定の部隊に合流して訓練に参加したまえよ!じゃ、ギルバートはギャレット伍長を連れて中隊事務室へ行きなさい」

「「「了解です!」」」


「墜落事故から無傷で生還、猛獣を素手で仕留める…か。フフフ…期待以上の超人ぶり…流石に私が見込んだだけの事はある」


 大隊長がそう言ったので、俺たちは大隊長室を出て行った。

 …あのクソアマ最後になんかブツブツ呟いてたな。

 俺の耳で聞き取れんとか…相当小さい声だな…


 出て行く途中、この世の終わりみたいな顔でメルツァロヴァ少尉が俺を見てた気がする。

 美少女フェイスがムンクの叫びみたいな感じに…


 …ごめんね。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「失礼します」

「失礼します!」


 俺はグレイブス中尉に連れられて中隊事務室にやって来た。

 そこには11人のパイロットスーツを着た人たちがいた。

 彼らが…俺の先輩か?


 あ、そうだ自己紹介だ!


「本日付けをもちまして、第13SAF中隊に配属となりました、ジャック・ギャレット伍長であります!キャピタル下士官養成所での訓練課程を修了し、最精鋭と名高い第3独立機動遊撃大隊の一員となれたことを大変誇りに思います!(建前)」


 思ってるわけねえだろ!この“狂人部隊”めが!

 なんで、好き好んでこんな地獄の一丁目が実家です、みたいな連中に加わらにゃならんのだ!


「一日も早く部隊の任務に貢献できるよう、先輩方のご指導のもと、全力で訓練と職務に邁進いたします!ご指導のほど何卒よろしくお願いします!」


 こんな感じでいいだろ…

 少なくとも文句はねえよな?


 お?あの大尉の階級章の、最先任っぽいハリウッドで俳優やってそうな人が中隊長かな?

 驚いた顔した後、満足そうに頷いたし…かなり好感触か?


「まずは、第13SAF中隊へようこそ。中隊長のレイモンド・サリヴァン大尉だ。今大隊にいる将校の中では、大隊長を除けば俺が最先任だ。彼女が不在の間は、俺が指揮を執る事もあるからこのハンサム顔と声をよく覚えておけよ!現在我が中隊の主任務は、主に敵の防衛拠点や敵陣を地上から食い破る事だ。新兵の君には酷だろうが…ついて来られなければ命はない。頑張ってついて来てくれ」


 この人もまともそう?

 連続でまともそうな上官来るとかマジ?


「さて…先任順だから…ふむ、グレイブス中尉は既に済ませられたようですね…では、私ですね。私はアイヴァン・レスリー・ワイト中尉。あなたは真面目そうな子なので好感触です。…頑張って生き延びてくださいね?」


 なんか…生き延びてくれって所に色々籠ってたような…

 なんだろ?


「次は俺か…俺はマリヌス・バルトロメーウス・ボーイェン少尉…以上だ」


 名前だけ?

 なんか素っ気ない人だな…

 馴れ合う気はないってタイプか?


「マリヌス…ちと素っ気ないのではないか?お、すまん!俺はコウシロウ・ヤマダ少尉!俺の隊は皆8年以上この部隊にいる古強者揃い!なにかあったらカバーしてやれると思うぞ!よろしくな!ギャレット伍長!」


 この人で小隊長たちは全員かな?

 つーか、この部隊で8年もいるってヤベーな…

 とんでもねえ腕利きなんじゃね?

 ベテラン揃いなら頼りになるかもな!


「よーし、小隊長たちの自己紹介は終わったし…じゃ、俺の番だな?俺はグレイブス小隊所属のチャック・リー少尉だ!なあ、ジャック!お前は偉大なる古代地球文明の遺産…香港映画って知ってるか?俺はよぉ…あの壮大な叙事詩…達人たちの物語…謂わばカンフー・サーガに憧れ、独学による修行の末にカンフーを修め…かの偉大なるドラゴンのような──」

「おい、無駄に話長いぞ!」

「うるせえ!こっからが良いとこなんだ!」


「カンフーがどうのって言ってるだけじゃねえか!」

「しかも、てめえのカンフーはボクシングにカラテ、ジュードー、スペーステコンドーとか色々混ざった、なんちゃってカンフーじゃねえか!カンフーにコブラツイストはねえよ!」

「後が詰まってるんだ!早くしろ!」


「ア゛ア゛ア゛!!!(ブチギレ)わかったよ!!!(憤怒)」


 めっちゃ総スカン食らってる…

 しかも、士官なのに下士官からてめえ呼ばわりって…

 つーか、こいつ俺の事しれっと名前呼びしてる?

 俺の事下の名前で呼んでいいのはメルツァロヴァ少尉だけなんだが?


「俺はカンフーマスターだッ!以上ッ!(ガチギレ)」


「なーにがカンフーマスターだよ…てめえ最初カラテマスターとか言ってただろ」

「これで無駄に強いから始末に負えねえや」

「無駄のない無駄な動きが一々癇に障るんだよなあ…」

「ボクシングマスターはやめたのか~?」


「なんだとてめえら…」


 めっちゃディスられてる…

 同じ部隊だからこの後が怖いな…

 グレイブス中尉助けて…


「おい!時間は有限なんだぞ!さっさと自己紹介をしろ!次はビラール准尉だ!」


 お、サリヴァン大尉が喧嘩始まりそうなのなんとかしてくれたわ。

 リー少尉渋々の顔で座ってる。

 やっぱ事実上の次席指揮官には逆らえないんだな。


「へへっ!すんませんね!俺はマヌエル・ビクトリノ・コルレア・ビラール准尉だ。所属はワイト小隊。なあ、ギャレット伍長はギャンブルとかやるか?俺はやるぜ!特に命懸けのは最高だ!だからこの部隊は最高でなァ…命をチップにしたギャンブルが楽しめるんだ!お前も…いずれわかる!この──「新兵におかしな事を吹き込むな。その辺にしておきなさい」へいへい…」


 うわあ…これまた問題大有りな人が…

 マジでいるんだなこういう人…


「同じく、ワイト小隊所属のグレーム・バートランド・クリーヴズ曹長だ!新兵、お前酒とか好きか?俺は大大大好きだ!!!養成所卒なら、最年少の13で入ってストレートで卒業すると…16歳ってとこか?法律だと18歳以上から飲めるんでな!もし、戦争が終わった時にお前が酒を飲める年齢なら、戦後にみんなで飲みに行こうぜ!祝杯だぜ!祝杯!」


 あ、今度はまだまともそう…


 俺は15で下士官養成所に入って…飛び級で二年ででたから…

 今17歳か…

 日本と違って、この国はお酒は20歳からじゃなくて18歳からオーケーだし…

 あと、一年後か!


「ところでさあ…お前…ナンパとか得意?……できればよ、祝いの席に女の子連れて来てほしいんだわ!なあ、いいだろ?「良いわけないだろう…!新兵に何を言っている!お前たち二人は本当に…!」あー…気が向いたらでいいぜ!」


 この人も問題児だった…

 ワイト中尉はほんとに大変そうだな…

 平時なら両方とも独房にぶち込めたのにね。


 で、次は…怜悧な目つきの…銀髪のショートヘアの若い美女?

 この部隊って意外と女性いるんだね。


「私は…ボーイェン小隊所属…マリアーナ・イルマ・ハルトネン…階級は曹長…よろしく…」


 口数が少ない娘だね。

 シャイなのか…あるいは他の馬鹿どもにうんざりしてるか…


「……♡」


 なんかじっと見て来るんだが?

 …ああ!俺のスーパーハンサムフェイスに見惚れてるのね!

 ここでニコッと笑い返すサービス!


「ッ!…♡」


 更に顔が赤くなった…これは間違いなく俺に惚れてる。

 いやあ…まいっちゃうよね!

 施設や養成所にいた時からこうなんだ!

 “ジャック・ギャレットに告ぐ。貴様に残された選択は我が物となるか死かである”とか書かれた怪文書が、養成所の寮のベッドにナイフでぶっ刺してあったことまであるんだよね!


 …あれ結局犯人わかってないのが怖い。


「いい気になりやがって…おい、カンフーマスター出番だぞ。やっちまえ」

「中隊のアイドルに…リー少尉、あのガキやっちゃってください」

「おう、任せろ。格闘訓練でフルボッコにしてやんよ」


 聞こえてるぞゴミ屑ども。

 フルボッコになんのはてめえの方だよ。


「次は私だな。私はセチャン・ソムン曹長。所属はヤマダ小隊だ。我々の小隊はベテランだ。任務中だけでなく、なにか困ったことがあったら頼ってくれていいぞ。グレイブス中尉もその時丁度いるとは限らんからな。特に、上官に相談するまでもない日常の困りごとなんかは、どんどん相談してくれても良いぞ?」


 あ、この人はまともそう。

 相談できる相手が増えたね!


「じゃ、次はアタシだね。アタシはリーシ・カイス・ラッパライネン曹長。所属はヤマダ小隊さ。ま、アンタがヘマしてもアタシたちができるだけカバーしてやるし、取り敢えずは自分が最前線で生き延びる事だけを考えるんだね」


 この人は気の良いおばちゃんって感じの人。

 見た目からして女子レスリングの選手みたいにガッチリしてる。

 カバーしてくれるとか、自分の事だけ考えろとか言ってくれるとか優しい…


「…え、あ!僕か!」


 あん?なんだこいつ…


 あー…金髪でそばかすのある芋顔のガキ?

 俺とそんな変わんない年齢に見える…

 見ようによっちゃ俺より下に見えるわ。

 こいつも新兵か?


 そうすっと…13歳で志願した口かな?


「僕はボーイェン小隊所属のフェルディナント・トゥルンヴァルト伍長です!ラドラリア下士官養成所の出身です!ギャレット伍長の着任の一週間前に配属になりました!同じ“ブレイカースクワッド”の仲間としてこれからよろしくお願いします!」


 ラドラリアか…あそこは地方星系の中じゃ比較的力のある部類だよな。

 星系内の企業が大企業に羽化できずに斜陽ではあるけど…

 レアメタル資源が枯渇したけど、なんとか金融とかで食ってる星系って聞いてるわ。

 規模がそれなりで、近辺の星系と比べると重要性も高いしでGISDFが駐屯してるんだったか…


 それにしても…同じ“ブレイカースクワッド”…ねぇ?

 お前それ意味わかってて言ってんの?

 一年後には歩兵分隊規模の人員しか残らないって事だよ?


 まあ、いいや…

 どうせあれだろ?

 俺と同じでマジに頭逝ってる教官にぶち込まれた同士だろ?

 精々仲良くしましょうや…フェルディナントくん?


「ふむ、ではこれで顔合わせは終わりだな?」

「ええ、既に私は大隊長室で済ませています」

「では、ふむ…トゥルンヴァルト伍長、彼をSAFのハンガーへ案内してやってくれ。なに、整備班長たちには話は通してある。新兵にこれからお世話になる整備士たちや愛機を紹介してやってくれ」


 サリヴァン大尉は新兵同士で打ち解けられるようにしてくれてるのかな?

 …それか馬鹿どものお説教タイム?


「はっ!了解しました!ギャレット伍長をハンガーへ案内!そして整備班の皆さんとの顔合わせを行い、彼の乗機を紹介します!」


 お、愛機とご対面か?

 中量級機ならいいが…軽量級機や重量級機は趣味じゃないんだよ…

 乗れなくもないけどさ?


「それでは、失礼します!」

「失礼します」


 俺はフェルディナントくんに連れられて部屋を出る。

 出る前に、ハルトネン曹長が小さく手を振ってたから、ニコッと笑い返しておく。


「…♡」


 うーん、間違いないね…

 俺は彼女のハートを射止めちゃったみたいね♡

 やっぱ美しいって罪なのねぇ(誇らしげ)

 ハンサムでごめんね!


 なんか閉まった中隊事務室の扉からめっちゃ殺気を感じるんだが…

 皆は猛獣を素手で倒せるのかな?無理?

 じゃあ、返り討ち確定だわ。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 俺はフェルディナントくんに連れられてハンガーまで来た。

 音がすげえな…

 にしても…ここが第3独立機動遊撃大隊に割り当てられたハンガーか…


「おい!この機体マニピュレーターの電圧が安定しねえぞ!」

「そのパーツはそっちで!…はい!そうです!」

「リーの野郎また駆動系に負担かけるような機動を…ナニ!?宙返りしやがった!?」

「大隊長機の方はどうよ?」

「あー…こりゃあもうブースターが寿命だな…交換で」


 めっちゃくちゃ忙しそうなのに大丈夫…?


「あれ?フェルディナントくん?どうしたの…あら、隣の見覚えのない子…中々のイケメンじゃない!」


 なんか作業服を着た美人なお姉さん来た。

 美人と知り合いとかやるじゃん。


「あっ!アシュリー少尉!ほら、前に話してた新入隊員ですよ!」

「ジャック・ギャレット伍長です!よろしくお願いします!」


 上官だった。

 技術士官かな?

 若いし多分士官学校出たばっかかな?


「ルビオ班長!新入隊員の子です!フェルディナントくんが連れてきました!」

「おやっさん!新入隊員のギャレット伍長連れて来たよ!」

「おう!フェルディナント坊やか!待ってろ!すぐ他の連中集めて来るわ!全員集合!」


 なんかベテランっぽい整備士のおじちゃん…おじいちゃん?

 そんな感じの整備班長が整備士たち連れてやって来た…


「本日付けをもちまして、第13SAF中隊に配属となりました、ジャック・ギャレット伍長であります!これからお世話になります!何卒よろしくお願い申し上げます!」


 取り敢えず…みんな集まったっぽいし…挨拶はこれでいいかな?

 お世話になりますを言ってるから大丈夫な筈。


「おう、話は聞いてるぜ!レオ・ハッソ・ルビオ上級曹長だ!よろしくなジャック坊!」


 じゃ、ジャック坊!?

 いきなりそんな呼び方される?

 なんかあれだな…結構ユニークな人が多いね。


「よろしくお願いします!ルビオ上級曹長!皆さん!」


 しかし、上級曹長ねぇ…

 相当腕のいいメカニックなんだろうな。

 叩き上げの職人って感じ。


「まあ、本当ならゆっくりと親睦を深めたかったんだがな…生憎と…今は時間がねえ…取り敢えず、今回はジャック坊の愛車の紹介を優先するぜ?」

「はっ!ありがとうございます!」


 時間が無い…ねぇ…?

 自己紹介って大事だと思うけど…それより優先すべき事項があるとなると…

 上からの命令…?


 ふむ…どうやら…俺の初陣は相当デカい戦いになるんだろうな…


「おう、そんじゃついて来い!」


 俺はルビオ上級曹長について行く。

 そこには、灰色の“AE-04M-LAVORO”が鎮座していた。


「こいつがお前の愛車さ。アステリア製第四世代中量級機ラボロ…こいつはタイタン製のサイクロプスと並んで、我が軍の主力機を担っている名機だぜ?取り敢えず、まだ特には弄ってないが…なにか注文はあるか?」


 ラボロかあ…流石最精鋭ってだけあっていい機体回してもらえてんじゃん。

 安いサイクロプスと高いラボロって運用してて、コックピット内の居住性とかセンサー類の性能なんかはラボロのが上だから、パイロットにはこいつのが圧倒的に人気なんだよね。

 養成所でもこれに乗ってたよ。


「そうですね…じゃあ、操縦桿の遊びを少なめにして欲しいのですが…できますでしょうか?後、武装ってどういうのか見れます?」


 武装って、部隊によっては役割ごとに固定になったりするから、ちょっと今のうちにシミュレーターとかで慣れておきたいよね。


「おう、いけるぞ。ジャック坊の養成所時代のデータは貰ってるからな。同じ機体だからそれを基に調整すればいい。それと、武装はお前が許可されてるのはこの辺だな。決めたら、サリヴァンに報告するよう言われてるんでね…できればすぐに決めてほしいが…まあ、無理にとは言わん」


 えーと…端末にある武装のリストは…

 うん、いけるわ。

 養成所時代の構成でいけるな!


「じゃあ、右肩は六連誘導ミサイルで、左肩は大口径グレネードランチャー、右手はレーザーライフルで…左はうーん…レーザーブレードでお願いします!」

「あいよ!」


 レーザーブレードとパイルバンカーどっちにするかで迷ったわ…

 まあ、とにもかくにもこれでオッケーか?


「ああそうだ、ジャック坊」


 あれ?まだなんかあんの?


「機体のパーソナルカラーはどうする?この部隊じゃ皆自分で機体の色を決められるんだ…まだ思いつかないならこのままでいいぞ」


 パーソナルカラーかあ…

 他の皆はなににしてんだろ…


「他の皆さんは何色に?してるんです?」

「うーん…カーキやモスグリーン、サンドイエロー…迷彩色が多いな。なんでも、前の部隊にいた時の名残なんだとよ。実際、グレーの都市迷彩なんかはジャングルだと浮きまくってるしな…前の部隊の名残以外に意味はないだろうよ」

「そうなんですか…あんま派手な色はだめか…」


 出来れば赤にしたかったんだよなぁ…

 俺前世だとよくロボゲーで自機を赤く塗ってたし…


「トゥルンヴァルト伍長はなんにしたんです?」

「え?あ、僕!?」

「はい」


 お前以外いねえよフェルディナント。

 ついて来てんだから知恵くらい貸せや。


「僕は思いつかなかったからグレーのままかな」


 なんだよ使えねえな…


「そうですか…できれば赤にしたかったんですが…」

「赤に?…まあ、できるぞ。そもそも、この部隊は上の都合であちこち転属になるから、特定の迷彩色にしないんだ。ひでえ時は一週間ごとに別々の戦場に転属だったな…おかげで、迷彩色の塗り直しに次ぐ塗り直しで塗料が切れちまった。結局、浮きまくった色で戦場へ行く羽目になったんで、うちはパーソナルカラー自由になったんだよ」

「なるほど…」


「でも、赤だと大隊長と被っちまうぞ?いいのか?」

「大隊長はどんな感じなんですか?」

「ああ、深紅に銀のラインが入ってる」


 なんか格好いいな…

 あのクソ女はパーソナルカラーのセンスはあったらしいな


「それじゃあ、私の機体は…そうだなぁ…赤単色でお願いします!」

「あいよ!そんじゃ…思ったより武装決めるのが早かったしな…整備士たちに自己紹介させる時間が残ってるぜ。そんじゃ顔合わせ再開だ!」

「了解!」

「了解です!」


 さてと…愛機とのご対面も果たした…

 なんとか四年間生き延びねえとな…

 大丈夫…きっと生き残れるさ…

 俺は墜落事故すら生き残ったんだから!



女神と引き離されたジャック。

なんか美人に一目惚れされて調子こいてます。

メルツァロヴァ少尉が見たらなんて言うかな?


高評価とブックマークありがとうございます!

これを励みにこれからも投稿を続けていきますので宜しくお願い申し上げます!

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― 新着の感想 ―
ジャック坊wのフィジカルバグこの原因も気になりますね〜まさに種族、、だとしたら研究者ももう熱望して切刻みたくなるよね~、今まで無事だったのが奇跡的では?紹介された人たちのどれだけが生き残れるかドキドキ…
大隊長って。。。 アポーンなる人か
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