第三十七話
残敵の掃討中。
あと2~3話くらいでこの章も終わります。
数的劣勢を強いられるアルビオン防衛軍。
そこへ、アルバン・ファビウス撃破の報告が舞い込む。
もちろん、その知らせは第4パトロール艦隊にも届いた。
「こ、これは…誤報ではないのだな!?」
『はい!間違いありません!ギャレット最先任上級曹長がやってくれました!』
第4パトロール艦隊艦隊司令のアントシュは、その知らせを聞き思わず聞き返した。
返って来たのは当然、力強い肯定の言葉だった。
「敵艦隊に動きが!?これは…一部の艦が逃亡している!?」
「第1SAF中隊が立て続けに敵艦を撃沈!凄い…これで五隻目だ!」
「Eランク39位、“早撃ち” ベニーニョ・ポルヴェロージをサリヴァン総司令官が撃破!第9SAF中隊が三隻目の敵艦を撃沈!劣勢の友軍が徐々に盛り返しています!」
「レギュレーターズの艦隊が十隻規模の敵艦隊を殲滅!」
そして、彼の元に更なる朗報がどんどん舞い込んでくる。
「そ、そうか…そうか!勝てる!勝てるぞこの戦い!」
(第4SAF中隊の諸君…!君たちのおかげだ!君たちが命を賭して稼いだ時間が、このアルビオン星系外縁部…いや、今回の侵攻で亡くなるはずだったアルビオンの民を救ったのだ!)
彼は、力なき民のために散っていった戦友たちを想い、思わず零れそうになった涙を抑えると、再び力強い声で部下たちに指示を飛ばす。
「敵が動揺している今を逃すな!逃げていく艦は放っておけ!未だに戦おうとする気のある艦を集中的に狙うんだ!」
彼の号令と共に、第4パトロール艦隊は動揺する敵艦隊に砲撃や雷撃を加え、敵艦を撃沈していく。
「最後まで油断するな!手負いの獣程恐ろしいものはない!着実に敵を削っていけ!」
(SAF部隊は直掩機を残して壊滅的な打撃を受けたが…彼らの奮戦によって、第5パトロール艦隊以外はほぼ喪失艦なし…増援艦隊やレギュレーターズはほぼ無傷!雑多な海賊と傭兵の連合軍は統制を失いつつある!未だに戦意のある艦を叩けばすぐに崩れるだろうッ!)
アントシュ司令は興奮を抑えつつ冷静に戦況を分析する。
サリヴァン率いる増援艦隊に加え、ジャック共に駆けつけたレギュレーターズに来援、トップランカー含む多数のランカーの撃破により大勢は決し、敵軍には逆転の目は残されていない。
「ようやく…光明が見えて来たな…」
彼は、艦橋の外で火球と化して消えて行く敵艦と、縦横無尽に敵機を追い立てる友軍のSAFの姿を見てそう呟いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『あ、あいつは!赤い死神だァ!』
『に、逃げろォ!!!』
『ふざんけんなよ!ジャック・ギャレットは来ないんじゃなかったのかよ!?』
えー…屑共嬲りまくりゲーム絶賛開催中でございます!
アルバンと戦った後、レンくんの復讐ゲージ溜まらないようにやってる感出してるし、少なくとも今すぐ暴発することはない筈!
そういや、アルバンの順位って9位だっけ?
9位…アサクラ…復讐…なんかブレイカースクワッド時代に殺した奴に心当たりがあるんだけど…
ま、そんなことより殺戮を愉しみましょ♪
「…墜ちろ」
『あ──』
『嫌だ!嫌だァァァ──』
「この星系を荒らしに来ておいて何を今更…」
『ま、待ってくれ!俺は降参する!だからやめ──』
『に、逃げ──』
unknownから通信?
どうせ傭兵や海賊からの命乞いだろ?
実は、星系側を攻撃した連中の降伏は聞き入れなくていいし、捕虜を取らなくても犯罪じゃないって法律で決まってんだよね!
なんでユリウスを丁重に扱ったのかって?
大企業からのヘイトを稼ぎ過ぎたら、あいつら利益度外視で殴りに来るかもしれないじゃん…
『助け──』
『当たれ!当たれぇ!なんで当たらないん──』
やっぱエネルギー兵器はいいよなぁ…
第三世代機以下は一発でぶっ潰せる!
ただ…第四世代機以降の機体は、致命傷を与えるには何度か攻撃当てないといけないんだよなぁ…
ゲームみたいにチャージ攻撃とかあればなぁ…
俺の愛機を納入して貰ったときチェンさんに名刺貰ったな…
チェンさんとこで作ってもらえないか聞いてみるか。
『ハッ!なにがトップランカーだ!アルバンの野郎が単なる張子の虎だっただけだァ!』
『ジャック・ギャレットぉ…私たちは、今まで何人もお前みたいなのぼせあがった若造をあの世へ送ってきた死刑執行人…我らに遭ったのが運の尽きだぁ…』
『ま、そういうこった!俺たち“サタニスト”の躍進のために死んでくれや!』
お?なんか毒々しい色のちょっと動きの良い機体がいるなぁ…
ランカーか?
えーと、名前は…これから死ぬからいいとして!
ランクは右からFランク41位、Eランク33位、Fランク44位…
こりゃ、雑魚のお徳用パックってとこだな。
そういや、ユージンくんがスコアを競おうとか言ってたな…
トップランカー墜としたから、獲物の質の面じゃスコアは大勝ちしてるけど、数の面でも上回っちまうかもな!
「では、早急に排除するとしよう!」
私の趣味は、ダブルスコアの差をつけて負けて悔しがるエリートに、めっちゃドヤ顔しながら上から目線で“大したもんじゃないか”って言う事です☆
『オイ…あいつらは…!?』
『間違いねぇ!“サタニスト”だ!』
『ランカー狩りに定評がある連中か!あいつらならギャレットも!』
『連中がジャックを弱らせてから俺っちが殺せば…俺っちはランカーの仲間入りじゃね!?』
雑魚共が足を止めてるな…
ハイエナする気か?
馬鹿だな…そんなの上手く行く訳ねぇだろ?
『おい!いつものやるぞ!』
『では、ミサイルを一斉にぃ…』
『外すんじゃねぇぞ!』
お?なんだ?誘導ミサイルに垂直ミサイル…それに加えてバズーカやマシンガンにレーザー?
その程度で俺を殺せるとでも?
「考えが甘いと言わざるを得ないなッ!」
とりあえず誘導ミサイルはプラズマミサイルでプラズマ爆発起こして一掃するじゃん?
で、垂直ミサイルは機体を加速させて潜り抜ければおk!
バズーカやマシンガン、レーザーライフルなんかの火線?
スピードを緩めずに躱すが?
『な!?外しただとッ!?』
『あ、ありえん!?この絶死の砲火を潜り抜けた!?一体どんな認識能力をッ!?』
『おい!ぼさっとすんな!来るぞ!』
まずは…一番近くのお前からだ。
『クッソ!当たらねぇ!』
『畜生!射線が重なる!』
『ミサイルばかりを積んでいる我が愛機ではぁ…援護ができんッ!?』
射線重なるように動いているが…流石に仲間の手前平気で同士討ちはできねぇよなぁ?
もし、やるんだったらお互いに次の瞬間撃たれるかもしれないって思いながら、俺を相手に戦う羽目になるもんなぁ?
「両肩だけでなく、両手に手持ちのミサイルか…火力の高さは厄介だが…所詮は歩く弾薬庫だ」
えーまずは!両肩と両手のミサイルポッドやミサイルランチャーをレーザーライフルでぶち抜きます!
『まさかこれほどとは──』
33位はスクラップに早変わり!
残りは2匹!
『狙いは俺じゃないだと!?』
『ビオがやられた!?こんな短時間で!?』
さて、次は…41位の方にしようか!
『おい!二人掛かりで行くぞ!』
『ああ!そうでもなきゃこいつは止められねぇ!』
へぇ…あの動き…二人掛かりなら俺を殺れるとでも?
「浅はか…としか形容できんな」
蟻が2匹に増えただけで…巨象を殺せるか?
無理に決まってんだろ!
『な、なんで当たらねぇんだ!』
『ぐぅ!?ひ、被弾した!』
さて、お目当てじゃない方には適当にプラズマミサイルで誘導して、グレネード叩き込んで放置して…
『な!?手負いのあいつじゃなく俺を狙うだと…舐めやがってぇ!!!』
無傷の方を先にやらなきゃ無傷で撤退しちまう…
「そうなれば面倒だ」
だから先に地獄へ叩き墜としてやるよ!
『クソ…クソクソクソォ!!!なんで…なんで当たらねぇ!』
「なるほど…偏差射撃で狙っているのか」
まぁ、不規則に動く“ハングドマン”を捉えられないんだけどね?
とりあえず、こっちに撃ってくる誘導ミサイルをレーザーライフルで撃ち抜きながら、プラズマミサイルぶち込んでキック!
『ぐぶぅッ!お…げぇ…』
お、姿勢制御装置が硬直したか?それとも中のパイロットがグロッキーか?
動きが止まったな…じゃ、レーザーブレードでお終いよ!
「終わりだ」
『あ──』
『ヨーランまで!?こいつ…バケモンだ!やってられるかよぉ!』
あ?逃げるつもりか?
まぁ、いいけど…
「背中ががら空きだ…」
プラズマミサイルを逃げる敵の背後にぶっ放す。
そんでプラズマミサイル目掛けてレーザーライフル発射。
『あっ!?な、なんだ!?ブースターが損傷!?ミサイルは当たらねぇ筈だぞ!?』
レーザーじゃ一発で足を止められるかわからんけど、プラズマ爆発でブースターイカれたなら足は止めざるを得ないよな!
「終わりだな」
『こうなりゃ…てめぇも道づ──』
随分と武器を向ける速さが悠長だったな…
とりあえずレーザーブレード以外の武装全ブッパで爆散させたわ。
俺が攻撃すんの速すぎて対処できなかったのかな?(笑)
『三分も経たずに…ランカー三人がやられただと!?』
『や、やべぇ!逃げるぞ!』
『畜生!あいつ全然無傷じゃねぇかよ!』
おーおー…野次馬共が逃げてくわ…
「……手前勝手な理由で攻め込んでおいて…生きて帰れるとでも思っていたのか?」
だから大人しくここで死んで俺のスコアになりなさい。
ん?
『あ──』
『被弾!?嘘だろ──』
『た、助けてく──』
あ゛っ゛!?俺のスコアが!
やったのはどこの馬鹿だよ!!!
「…友軍の攻撃か?」
『よう!さっきぶりだな!』
サリヴァン総司令官!?
なんだよもぉ…俺のスコア横取りしたのアンタかよぉ…
「サリヴァン総司令官…ご壮健なようでなによりです!閣下もここの敵戦力の漸減に?」
ここ一番敵が多く群がってるとこだしな…
そりゃあこの人が第9SAF中隊連れてきてもおかしくねぇわ。
『おう、お前のおかげでハンズフリーだからな。劣勢の友軍の元へ救援に向かい、敵を漸減しているところだ。お前もそうだろ?』
「はい、ここは多数の敵ランカーが確認されていましたので…私が行って撃破していました」
まあ、アルバン以外は雑魚ばっかだけど…
Cランク帯もいたらしいけど…
レギュレーターズ来た時点で割に合わないって逃げたらしいね。
傭兵らしいっちゃ傭兵らしい選択だよな。
『流石だな!それじゃあ、俺たちで他の連中が来る前にこの辺のやる気がある奴ら刈り取っちまうか!』
「スコアが稼げない他の連中には悪いですが…侵略者共に容赦なんぞ必要ありませんな!」
俺たちアルビオン最強コンビに敵う相手はいねぇよ!
全員殺っちまおうぜ!
『おっと、俺たちも混ぜてくださいよ!』
『総司令官と最先任上級曹長だけで私たちは仲間外れですか?』
『よくないですなぁ…そういうのはァ…!』
『我々も連中には腹に据えかねてるんですよ?』
おいおい…空気読めよなぁ…
まあ、サリヴァン総司令官が俺みたいに部下も連れずにその辺ウロチョロするのもあれか…
こいつら放っておくわけにもいかないだろうし…
「そんじゃ皆で蹴散らしましょうや」
『おう、今の俺たちなら怒ったカミさん以外なにが来ても怖くねぇや!』
「『『『『『『HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!』』』』』』」
そんな風に談笑しながらも手を止めず、俺たちは屑共嬲りまくりゲームを続行する。
『ああああ!!!!』
『死ね!死ね!!!死ねぇ──』
『こいつら…!強い──』
『わ、割に合わねぇ!撤退す──』
いやあ、早いな!思ったより早く敵が片付くぞ!
流石に精鋭ってだけあっていい動きだわ。
…そういや、第4SAF中隊って俺とバレット中尉のいる第1SAF中隊や、サリヴァン総司令官率いる第9SAF中隊にに次ぐ精鋭だったんだよな?
どんな部隊だったんだろ?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アルビオン防衛軍大型救助船。
この艦は艦隊の後方にて、救助された撃沈艦のクルーや撃破されたSAFのパイロットを受け入れる役目を全うしていた。
野戦病院のようにごった返す船内で、一人の男が簡易ベッドの上で目を覚ました。
(ここは…どこだ?病院…にしてはやたらとごった返しているな…なんていうか…そう、GISDF時代に担ぎ込まれた野戦病院って感じだ)
彼は霞がかった頭で思考しつつ、寝起きでぼやけている目で辺りを見回す。
辺りは、彼と同じようにベッドに寝かされた負傷者で溢れ、軍医や従軍看護師が忙しそうに行き交っていた。
(そうだ!部下たちは!?あの化け物はどうなった!?おい!誰か!)
「ぅ…ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!」
彼は誰か人を呼ぼうと声を上げようとして激しくせき込んだ。
「え?あっ!先生!患者の意識が戻りました!」
そんな彼に気が付いた看護師が軍医を呼びながら彼に急いで近づき処置をする。
軍医が意識を取り戻した彼の元にやって来ると質問をする。
「意識を取り戻したのか!?あと少しで死体安置所に送られる筈だったのだが…それよりも、この指が何本かわかるかね?」
「二本だ…」
「ではこれは何本かわかるかね?」
「一本…」
「ならこれは?」
「五本だろ?目はちゃんと見えてますよ…」
「ふむ、では所属部隊は?」
「第4パトロール艦隊麾下第4SAF中隊…あってます?」
「ああ、正解だ。どうやら受け答えには未だ異常が見られないようだ」
掠れた声で軍医の質問に答えた彼は、自身の所属している部隊に何が起こったのか尋ねた。
「なあ、先生…俺がやられた後…第4SAF中隊はどうなった?」
軍医は沈痛な面持ちで彼の問いに答える。
「無事に生き残ったのは半数だけ…後はここや母艦にいるか…あるいは…とにかく、部隊としては全滅判定だそうだ」
それを聞いた彼は、散っていった戦友を想って静かに目を閉じる。
「そうか…済まない…俺がもっと時間を稼げなかったばかりに……なぁ、先生…“百舌鳥”は…アルバン・ファビウスはどうなった?」
彼は、絞り出したような声で散っていった戦友に詫びると、自分たちを打ちのめしたトップランカーがどうなったのか尋ねた。
「サリヴァン総司令官率いる増援艦隊が到着し、彼が第9SAF中隊と共に相手をしていた。その後、レギュレーターズの到着と共に駆けつけたギャレット最先任上級曹長が討ち取った。彼が戦友の仇を討ってくれたよ」
軍医の言葉を聞き、彼は拳を強く握りしめながら尋ねた。
「…第4パトロール艦隊は…どうなったんですか?」
「全艦健在だ。君たちが、必死に時間を稼いだおかげで増援が間に合い、なんとか直掩と対空砲火で敵を凌ぎ切れたようだ」
「そうでしたか…」
彼は安堵したようにそう言った。
「まあ、なんにせよこれだけの増援が来たんだ…遅からず戦いは終わる。君は立派に使命を果たしたんだ…今は休みたまえよ…リカルド大尉」
軍医はリカルド・ロドリゲス大尉にそう言った。
不死鳥は再び灰の中から蘇る。
不死身って事はいつも取り残されるって事なんだよなぁ…
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