第三十五話
ジャックの帰還
これから馬車馬のように働けよ
「よーし!離れろ!」
「電源に異常はないか?」
「えー…システムオールクリアです。異常は見られません」
レギュレーターズ増援艦隊旗艦のハンガーで、俺は整備されていく自分の機体を眺めている。
乗り込んだ時に挨拶済ませて、割り当てられた部屋でとっとと寝ちゃったから目がさえまくってんのよね…
後、俺は外部の人間だから重要区画には入れないし、出向中と違って社員扱いじゃないから仕事もないから、レギュレーターズの血気盛んな連中とシミュレーターで勝負するくらいしかやる事もねぇし…
クッソ暇だわ
しかし、心配だなぁ…
サリヴァン総司令官がいるとはいえ…
防衛軍はFランク帯のゴミでも艦隊を壊滅に追いやられる雑魚だしなぁ…
「皆無事であればいいが…」
バレット中尉とかランカー殺して名を上げたい連中に群がられるだろうし…
彼が死んだら…
“なんでもっと早く来てくれなかったんだ!”ってレンくんが怒り狂いそう…
とりあえず全力で駆け付けた感出すか…
急かしても艦の速さが速くなるわけじゃないし…
意図的に遅くしてなければな!
アステリアの中には、焼け野原にした後復興支援と称して経済植民地にして、利権と俺の首根っこを抑え込みたいって連中もいるだろうしな。
割に合うのかって?
そもそも、アルビオン星系への侵攻自体割に合わないのにやったんだぞ?
そんなこと大真面目に考える奴がいてもおかしくないだろ…
「しかし…緊急時だったとはいえ、出向先の皆にきちんとお別れを言ってから行く事が出来なかったな…」
ユリウスから、ソンイルさんとリュシーちゃんはなんとか無事で、俺らが敵を撤退に追い込んだらST-4の敵艦隊も撤退したって聞いたな…
無事で何よりだけど…パーシー君たちと違って、離れたとこにいたからなぁ…
パーシー君は“ジャックさんの上司のサリヴァンって人も元ブレイカースクワッドなんすよね?じゃ、きっとクソ強いからジャックさん来るまで持たせてくれるっすよ!”って励まして…励ましか?素で言ってそうだな…
「まあ、パーシーらしいな」
ま、そのくらい楽観的に考えてる方がいいな。
無駄に動揺して精神すり減らすよりいいし。
「しかし、どうしたものか…」
なんか未確認状況で、侵攻軍にトップランカーがいる疑惑があるらしいんだよね。
…流石にサリヴァン総司令官でも厳しいか?
あの人は上位ランカー並みだけど…ヒルデと交戦した時まあまあ粘ってたけど撃墜されてたし…
まあ、機体捨てて脱出して無事生還するあたり流石だよな。
「ギャレットの旦那?ハンガーで機体を眺めて…どうかしたんですかい?」
おん?
ああ、ずっとハンガーで愛機を眺めてたら不審に思われたか?
「やっぱり…アルビオン星系が心配で?」
「ああ、向こうには俺やサリヴァン総司令官が育てた精鋭やランカーがいるとはいえ…約50~60隻の艦隊が押し寄せているんだ。いくら傭兵や海賊なんかの雑多な寄せ集めとは言え…やはり心配だ」
今話しかけてきたのは、レギュレーターズの増援艦隊のSAF部隊の指揮官やってるおじさん。
確か…デニス・オルソンって名前だった筈…
あーそうそう…それでランカーでランクはDランク帯で29位だったな。
上のランクの奴がくたばったり引退したりしてなきゃだけど。
この人は、俺を色々気遣ってくれるんだけど…まず間違いなく、アステリアが俺につけたお目付け役だよな。
「まぁ、そりゃあそうですよねぇ…地元が襲われてるんだ…そりゃあ心穏やかじゃないですよねぇ…」
うん、まぁ…正確には地元じゃなくて言うより現住所だけど…
いや、今住んでる所も地元って言ったっけ?
まあ、俺の出身地はアルビオン星系じゃないんだけどね?
今世の故郷には全くと言っていいほどいい思い出が無かったからなぁ…
日本での記憶にほぼ上書きされてたっけ…
確か…出身地の名前は…なんて言ったっけ?
今生の生まれ故郷には、糞みてぇな思い出しかねぇから碌に覚えてねぇや。
ま、どうでもいいよあんなクソ。
それより重要なのは今のアルビオン星系だよ!
「ああ、残してきた皆も弱くはないし、サリヴァン総司令官も凄腕なんだが…トップランカーがいるかもしれないのではな…」
マジでね…トップランカーのヤバさはヒルデで身に染みてる…
俺が、前世のゲームやアニメの知識を基に編み出したマニューバでなんとか食らいついてたら、“面白い動きね!”とか全方位通信で言ってきて動きを学習され出して劣勢だよ?
おかしくない?
「トップランカーはヤバいですからねぇ…あいつらの処理能力ってどうなってんだか…」
お?オルソンさんはトップランカーとやり合って生き延びた事が?
いや、レギュレーターズのトップがトップランカーだったから、訓練の時に思い知らされたのかな?
確か…今は結構高い地位にいるんだっけ?
「うちの副社長も化け物染みてて…あのレベルだと流石にきついですなァ…」
あ、今副社長なんだ。
なんか前は常務とか聞いてたんだけどね…
「ああ、Aランク帯の怪物でない事を祈るしかない…尤も、相手がトップランカーという時点で、銀河で十本の指に入る強者が敵だということに変わりはないのだが…」
全くやんなっちゃうよね…
「ところで…オルソンさんはなぜここに?…ひょっとして、心配して見に来てくれたんですか?だとしたら申し訳ない」
まあ、どうせ監視対象が不審な行動を取ってるから、余計なことしないように声を掛けてたんだろ。
わざわざそれを口にする必要もないがな。
「あー…それもあるんですけどね?ユージン坊ちゃんがギャレットの旦那はどこだって言うもんですから…」
「なるほど…大方シミュレーターで負け越しているのが悔しいんでしょうね」
「ははは…んまぁ、そういう事なんですよ…」
オルソンさんも大変だねぇ…
ユージン・ハミルトン…あいつもアステリアの重役の息子で、新世代型強化人間かつCランク帯20位の俊英って評判なんだよね。
そんな奴が俺に突っかかって来てるのは…ユリウスに勝ったからか?
ユリウスも重役の息子で新世代強化人間だし、なによりユージンよりランク上だしなぁ…
ライバル視しててもおかしくないし…
ユリウスに勝った俺に勝ちたいんか?
まあ、元気があって大変結構。
いつまで続くか見ものだな。
「それじゃあ、軽く揉んでやるとしますかねぇ…」
「ははは…ユージン坊ちゃんもCランク帯の列記とした上位ランカーなんですがねぇ…やっぱ、ギャレットの旦那は規格外ですわ…」
なにを今更…
ブレイカースクワッドは、規格外以外一部の豪運野郎を除いて一年以内に空の棺桶でお葬式よ。
格闘訓練に参加させてくれるならもっとわかりやすく俺の規格外っぷりをその身に刻んであげるよ?
「ま、まあ…もうすぐで着く筈なんで…それまでの暇つぶしって事で……格闘訓練はマジに勘弁してくだせえ…」
あら?声に出てた?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アルビオン星系外縁部。
サリヴァン率いるSAF部隊が、第5パトロール艦隊が消息を絶った地点へと向かっていた。
その先頭にはサリヴァンの乗機“ケントゥリオⅡ”の姿がある。
「いいか、件の“百舌鳥”は俺たち第9SAF中隊が相手をする。お前たち特別志願SAF中隊は撃墜された友軍の救助を頼む」
『『『『『了解!』』』』』
彼は麾下の部隊に指示を出すと、第4SAF中隊などの部隊へ通信で呼びかける。
「こちら、防衛軍総司令官レイモンド・サリヴァン!よくぞ持ちこたえてくれた!諸君らは我が軍の誇りである!」
『サリヴァン総司令官…?来てくれたのか!?』
『や、やった!助かるぞ!』
『なんで…もっと早く…』
『来てくれたぞ!サリヴァン総司令官たちが来てくれたぞ!』
無線を聞いたパイロットたちの安堵の声がまばらに聞こえる。
(クソ!聞こえてくる声が少ない…!間に合わなかったか!もっと早く駆けつけられていれば!)
サリヴァンは、もっと早く駆けつける事が出来なかった己の不甲斐なさに歯噛みした。
そんな中、特別志願SAF中隊の偵察型コグネイトが、こちらの方向へ高速で接近する反応を探知した。
『高速で接近する反応あり!この識別反応は…Bランク帯9位…!』
「なるほど…“百舌鳥”が早速俺たちを嗅ぎつけたか…さっきも言った通り、あれは俺たちが相手する。特別志願SAF中隊は離脱して友軍の救助へ!」
『『『『『了解!』』』』』
さしものサリヴァンも、相手がトップランカーとあれば普段のような飄々とした態度は消え失せ、その顔には警戒の色が浮かんでいる。
(アルバンめ…ジャックに何度も煮え湯を飲まされたのが、余程腹に据えかねていると見える…)
「さて、ジャックが来るまで持たせたいが…!イケるか…?」
彼はレーダーに映る、自らの方へ猛スピードで近づいてくる機影を見てそう言った。
「来たかッ!総員散開!」
サリヴァンが部下にそう指示を飛ばし、斜め上へブースターを吹かして飛び退いた瞬間、超高速で射出されたレールキャノンの弾頭と数条のレーザーがその付近を突き抜けていった。
「やれやれ…間一髪だったな…」
(一瞬、動くのが遅れていたら食らっちまってたな…)
彼はまるで虚勢を張るかのように不敵な笑みを浮かべて言った。
「お前ら…奴さんのご登場だぜ?…あれの動きは俺が止める。お前らは攻撃食らわないように動き回りながら攻撃を加えろ!」
『『『『『了解!』』』』』
その彼の目線の先には、凄まじい加速力で自身に襲い掛からんとする“コンフィデンス”の姿があった。
「来やがったなァ…」
『レイモンド・サリヴァン…腕は落ちていないだろうな?』
“コンフィデンス”は、出会いがしらに“ケントゥリオⅡ”へ右肩の誘導ミサイルを放ちながらレーザーライフルを発砲。
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎いってか?ジャックの何もかもを踏み躙らなきゃ気が済まないらしいなッ!」
『貴様を殺せば…ジャックはさぞかし嘆く事だろうな!』
“ケントゥリオⅡ”は、ミサイルを左肩の大型ガトリングガン“ICI-C05-VULCAN”で迎撃しつつレーザーを躱す。
そして、右肩の誘導ミサイルを撃ちながら右手のバズーカを連射する。
『流石にこの程度で墜ちるほど腕は錆びついていないようだな』
「こんなのに付き纏われるとは…ジャックも運が無い…“ワルキューレ”に始末して貰えないか頼むように言ってみるか?まあ、絶対あいつは嫌がるが…」
アルバンは、“コンフィデンス”の左肩のレールキャノンを放ち、サリヴァンが撃ったミサイルとバズーカの弾を撃ち抜き誘爆させる。
そして、ブースターを全開にして爆炎を突っ切る。
『さて、もう一段ギアを上げていくぞ』
「おいおい!?あの機体…第五世代機並みの機動力か!?」
サリヴァンは、不規則な動きで相手の放つレーザーを躱しながら、右肩のミサイルと左肩のガトリング、右手のバズーカを放って弾幕を張る。
アルバンは、ブースターを全開にしたまま弾幕へ突っ込み、ミサイルやバズーカの弾をレーザーやレールキャノンで撃ち抜きガトリングの弾を逸らしていく。
「タイミングは勘で計るしかねぇか…!」
『部下の使い方は前に戦った“不死鳥”の方がよかったぞ?…終わりだ』
“ケントゥリオⅡ”を目掛け、“コンフィデンス”がその勢いのまま蹴りを放とうとする。
「…3…2…1!ブースター点火!」
『躱した…?そうか、態と追いつめられたように見せかけ、俺が蹴りを放つように誘導していたのか!』
“ケントゥリオⅡ”は、サリヴァンの神憑りの操作によってギリギリで蹴りを躱し、左腕のパイルバンカーを叩き込もうとする。
「油断し過ぎじゃないかァ?アルバンさんよ!」
『いいぞ、それでこそ元ブレイカースクワッドだ!』
しかし、それはアルバンのレーザーライフルの早打ちによって止められる。
「うおッ!?あの体勢から!?だが、今だ!撃て!」
『『『『『了解!』』』』』
サリヴァンは、無茶な姿勢で放たれたレーザーライフルの一撃を躱すと、機を伺っていた部下たちに攻撃命令を下す。
第9SAF中隊の隊員たちは、皆既に隙を晒した“コンフィデンス”に狙いをつけていたため、サリヴァンの命令にノータイムで応じると一斉に攻撃を開始した。
『墜ちろォ!』
『よくも友軍を好き勝手墜としやがったな!』
『くたばりやがれ!』
「流石の奴と言えど、あんな体勢からではこの弾幕を躱し切れッ!?」
“コンフィデンス”に襲い掛かる弾幕の雨。
しかし、アルバンはブースターを駆動させ無理やり姿勢を戻すと、右肩のミサイルを弾幕に向け発射する。
間を置かずに自身へ襲い掛かる弾幕を踊るようにすり抜ける。
『なんだあの動きは!?』
『攻撃が…まるですり抜けてるみてぇだ!』
『一発一発目で見てやがるのか!?弾幕の中でミサイルやらなにやら見分けられるのかよぉ!?』
ミサイルなどの爆発物を攻撃して爆破、その爆風で実弾を逸らし他の爆発物を誘爆させる。
躱しているのはほぼレーザーだけという事実。
それを目の当たりにして、サリヴァンを除く第9SAF中隊の面々は一様に戦慄する。
その光景はまるで、第4SAF中隊の時の再演であった。
「なるほど…ミサイルなどの爆発物の誘爆を利用して、実弾を逸らしているのか…で、レーザーは最低限の動きで躱すという訳か…俺もレーザーライフルを持ってくるべきだったか?さて…どうしたものか…ミサイルを撃つのをやめさせるか?」
サリヴァンはアルバンの動きを冷静に見極め対策を考える。
「お前ら!ミサイルやバズーカ、グレネードを撃つのをやめろ!」
『し、しかし…それでは総合的な火力が!?』
『それに、ミサイルの迎撃に割いている火力が…』
「致し方ない…そうでもなければ奴に攻撃が当たらん!」
彼はミサイルなどの爆発物を使わずに、銃弾とレーザーだけの弾幕を張る事に決めた。
(とはいえ…ミサイルなんかの爆発物のおかげで、俺たちへの攻撃が減っていたのも事実…だが、それ以外に打つ手はないか)
「いいか!ミサイルなんかを撃たなくなれば、相手はその分弾幕を躱すのに別の方法を使わなければならなくなる!だが、その分ミサイルなどに対して食らわせていた攻撃が、俺たちに向かうだろう!お前ら!動き続けて的を絞らせるな!俺が奴をできる限り抑え込むが抑えきれる保証はない!」
『『『『『了解!』』』』』
そんな銃弾とレーザーのみの弾幕を、“コンフィデンス”は数発食らいながらも狙いをつけづらい不規則な動きで躱していく。
『ふむ、ミサイルなどを使わなくなったか…思い切った考えだが…その分攻撃に割くリソースが増えたぞ?さあ、どうするサリヴァン!』
「チッ!数発は当てたが…しょうがねぇ俺が抑え込む!お前らは一旦下がってまた攻撃の機会を伺え!」
サリヴァンは部下に指示を飛ばすと、ミサイルとバズーカを撃ちながらブースターを左右に吹かして“コンフィデンス”へ向かって行く。
『ふむ、ミサイルやバズーカは使わなくなったと思ったが…なるほど、煙幕代わりに使ったか』
「とにかく…こいつの足を止める!」
“ケントゥリオⅡ”のガトリングが火を噴き、消えかけの爆炎が千切れ飛び無数の弾丸が“コンフィデンス”に襲い掛かる。
しかし、アルバンはその攻撃をギリギリで躱す。
「この程度では足は止まらんか!」
『爆炎を煙幕代わりに攻撃…先ほどの“不死鳥”共よりかは良いが…そう簡単には当たってやれんなァ』
アルバンはミサイルを連射しながらレールキャノンを発射。
ミサイルを振り切ろうと横に飛ぶサリヴァン。
「一息を吐く間もないなッ!」
“ケントゥリオⅡ”は、避け切れない数発のミサイルをガトリングで迎撃しつつ、咄嗟に逆方向へブースターを吹かしてレールキャノンの弾を躱す。
『どうした?これで限界か?』
そこへすかさず、アルバンの“コンフィデンス”が鋭い機動で接近し、レーザーライフルで“ケントゥリオⅡ”を追い立てる。
「がッ!?油断も隙も無いな!」
(コグネイトなら今のでやられていたか!)
サリヴァンは、不規則な機動でレーザーを躱すも、その内一発がコックピット付近に当たり装甲を溶解させる。
そして、崩れた姿勢のままミサイルとバズーカを煙幕代わりに放つ。
「これで体勢を立て直す時間が少しはッ!?」
彼が機体の姿勢を立て直した瞬間、爆炎を切り裂き数条のレーザーが奔る。
咄嗟にレーザーを躱した“ケントゥリオⅡ”の前に“コンフィデンス”が回り込む。
『なるほど…流石に元ブレイカースクワッドというだけあって、中々どうしてやるじゃないか』
「レーザーに気を取られ過ぎたか!」
“コンフィデンス”は“ケントゥリオⅡ”に蹴りを入れようとするが、サリヴァンはそれをなんとかギリギリで躱す。
「総員攻撃準備はできているか!?」
『攻撃準備完了しています!』
『いつでもどうぞ!』
『号令がかかったら奴さんは蜂の巣です!』
サリヴァンは部下が攻撃態勢に入ったかどうかを確認する。
第9SAF中隊の隊員たちは攻撃準備を整え、彼の言葉に力強く応えた。
(よし…既に敵は俺の狙いに感づいている事だろう…奴は俺が足を止めた瞬間を狙うと思っているだろう…いっそ…俺諸共撃たせるか?弾幕の中でならお互い自由には動けん…そこでなら…あの機体の加速力は活かせない筈!危険だが…やるしかないか!)
「よし、では命令したら俺諸共撃て!でなければ当たらん!」
『えっ?総司令官諸共…!?……了解』
『り、了解!』
『りょ、了解…』
サリヴァンは、自分諸共撃たせなければ相手に有効打を与えるのは難しいと考え、自身に対するフレンドリーファイアを許容した。
しかし、それは単なる死なば諸共の自暴自棄ではない。
相手の脅威的な加速力を封じるための策だ。
(友軍の座標は常に把握している…ならば)
「俺なら躱せる…!」
また、彼には友軍の弾を躱し切るという自信があった。
「さあ来い!アルバン!」
『なにか企んでいるな?いいだろう…その程度踏み越えられなければジャックには勝てまい』
“コンフィデンス”が右肩のミサイルを撃つと同時にレールキャノンを発射。
“ケントゥリオⅡ”は、ミサイルをバルカンで迎撃しながらレールキャノンを回避し、ミサイルとバズーカを連射。
「パイルバンカーを打ち込みに来た瞬間…そこを狙う!」
『ふむ、ここまでは既視感のあるつまらん展開だが…』
“コンフィデンス”は、レーザーライフルでミサイルを叩き墜としながら“ケントゥリオⅡ”に接近する。
“ケントゥリオⅡ”がバズーカやガトリングで弾幕を張るも、“コンフィデンス”はそれを最小限の動きで躱し、ブースターを全開にして急接近する。
『どう出るサリヴァン?よもやこれで終わりという訳ではあるまいな?』
「来るか…!」
そして、アルバンは“コンフィデンス”の左腕のパイルバンカーを振りかぶるが、“ケントゥリオⅡ”の目の前に来た瞬間突如レーザーライフルを発砲。
「ッ!?クソ!やられた!」
サリヴァンは突然のレーザーを躱し切れず、機体とミサイルポッド、そしてメインカメラに一発ずつ被弾してしまう。
『なにかを狙っていたようだが…お前の策は失敗に終わったようだな』
確実にとどめを刺すべく、“ケントゥリオⅡ”へパイルバンカーを振りかぶる“コンフィデンス”。
『援護します!』
『あなたがやられたら終わりです!』
「まだだ!やれと言うまで撃つな!」
サリヴァンは、冷静に部下たちの叫びを切り捨てながら被弾したミサイルポッドをパージしつつ、ホワイトアウトしたメインカメラから狙撃用のガンカメラに切り替え、自らに高速で迫る“コンフィデンス”を視認。
『躱したッ!?一体…ガンカメラか!』
「よし!撃てぇ!」
ブースターを全開にして飛び退き、パイルバンカーによる一撃を躱す。
それと同時に、サリヴァンは部下へ指示を飛ばす。
『『『『『了解!』』』』』
サリヴァンの指示と共に第9SAF中隊の隊員は一斉に攻撃。
『総司令官自ら囮になるとは…だがァ!』
しかし、アルバンは彼らの予想を上回る怪物であった。
“コンフィデンス”はブースターを全開にして、無茶な姿勢から無茶な機動で大きく旋回して初撃を躱し、ブースターを左右に吹かして第9SAF中隊へ接近する。
「あの体勢から躱し切れるのか!?…いかん!末端から削られる!」
(クソ!こいつは予想以上の化け物だ!耐G能力なら“ワルキューレ”すら上回っているか!?)
“ケントゥリオⅡは、慌てて“コンフィデンス”の後を追うが、時すでに遅く端から食らいつかれていた。
『一つ!』
『振り切れな──』
『クソ!こいつなんで当たらな──』
『二つ!』
「これ以上はやらせん!」
『思いの外早く来たなサリヴァン!』
第9SAF中隊が二機撃墜されたところで、サリヴァンが左肩のガトリングを放ちながら割って入る。
『右肩の武装を失い、手数の減ったお前に…俺が止められるとでも?』
「こいつは…流石にきついな」
サリヴァンは、バズーカを“コンフィデンス”に向けて放つが躱され、反撃とばかりに放たれるレーザーとレールキャノンをなんとか躱す。
「致し方ないか…お前ら!こいつを俺たちだけで倒すのは困難だ!ジャックが来るまでの持久戦に切り替えるぞ!俺が矢面に立つ!援護を頼む!」
『『『『『了解!』』』』』
アルバンを、自分たちだけで倒すのが困難と認識したサリヴァンは、持久戦に切り替える構えだ。
「こいつのミサイルやレールキャノンなどの武装は、レーザーと違って弾数に限りがある…できる限り消費させれば後に戦うジャックが有利になるはずだ」
サリヴァンは、部下の援護射撃を受けてなんとか減った手数を補いながらアルバンと戦う。
『なるほどな…ジャックが来るまで時間を稼ぐつもりか?』
『あ──』
しかし、今までは第9SAF中隊の被害は出ていなかったが、サリヴァンの手数が減ったために “コンフィデンス”を抑えきれず、徐々に撃墜される機体が出始めた。
「このままではじり貧だなッと…考え事をする余裕もないか」
コックピットの中で苦々しい顔を浮かべるサリヴァン。
“ケントゥリオⅡ”は相手の攻撃を避けきれずに徐々に傷が増えていく。
「ぐぅ!?しまった!」
一瞬の判断ミス、彼はミサイルを迎撃しながらレーザーを躱している際に、アルバンが完璧なタイミングで放ったレールキャノンの直撃を受けてしまう。
ウォーバディの高い耐弾性により、なんとか撃破は免れたが姿勢制御装置が一時的に硬直、操縦不能状態に陥る。
『終わりだな…それなりに楽しめたぞ』
「クッソ…脱出装置は…生きているか!」
(脱出レバーを引いた後は宇宙遊泳しながら運よく救助されることを祈るだけか…ブレイカースクワッド時代を思い出すなァ…)
その瞬間、第9SAF中隊のSAFがサリヴァンを救おうと飛び込んできた。
『総司令官を殺らせるなぁ!』
『彼が墜とされたら終わりだ!』
『この野郎!サリヴァン総司令官から離れろ!』
『当たれ!当たれぇ!』
その甲斐あってか、“ケントゥリオⅡ”から“コンフィデンス”を引き剥がすことに成功する。
『なんだ貴様ら…上官より先に死にたかったのか?』
しかし、それは自分たちがアルバンに狙われるという事と同義である。
『く、来るぞ!』
『や、やってやる!やってやるぞ!』
『この数だ…そう簡単にやられるかよ!』
『返り討ちにしてくれるわ!』
第9SAF中隊は急接近して来る“コンフィデンス”を相手に気炎を吐く。
そして、弾幕を張るも“コンフィデンス”はそれをすり抜けて来る。
「おい!やめろ!無茶だ!」
そんなサリヴァンの叫びも空しく、第9SAF中隊の弾幕を“コンフィデンス”はすり抜け、彼らに襲い掛かる筈だった。
彼らと“コンフィデンス”の間を一条の閃光が通り抜ける。
「この識別反応は…来てくれたか!」
その時、この戦域全体のアルビオン防衛軍に同じ通信が入った。
『こちらは、レギュレーターズ増援艦隊!これよりアルビオン防衛軍を援護する!』
レギュレーターズが増援で駆け付けたのだ。
それが意味するのはある男の帰還でもある。
『識別反応…Cランク帯17位…ジャック・ギャレット!ついに来たか…ジャック!』
アルバンの目線の先、そこにはレーザーライフルを向ける赤いSAF…“ハングドマン”の姿があった。
『こちら、ギャレット最先任上級曹長。これより敵ランカーを排除する』
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