第三話
今回は戦闘シーンかけて良かった…
一万字超えは流石に長すぎますかね?
サリヴァン総司令官にメッセージを送って一ヶ月。
俺はシャトルに搭乗し、指定されていた惑星AL2の宇宙港に向かっていた。
シャトルのチケットは向こうから手配してくれたんで、俺が払ったのは事前に購入したアルビオン星系のガイドブックの購入費だけだ。
軍服とか一式郵送してくれたから、今それを着て行ってる。
すでに必要書類を送付して必要な手続きを完了しているから、俺は既に書類上は防衛軍の一員になっている。
住む所だけでなく、衣食住まで向こうが保障してくれるらしい。
いやぁ~ありがたいねぇ!この世界じゃ衣食住揃って面倒見てくれるだけでもありがたいからねぇ!
これだけでもあの地獄みたいな四年間が報われるよ!
ガイドブックにはアルビオン星系の地理や産業、防衛軍になどに関することが簡単に書かれている。
あくまでも観光ガイドに過ぎないが、何分辺境星系だと大して情報が出回っていないせいで、調べても出てこない情報もガイドブックにはあったりするのだ。
アルビオン星系は、アルビオンという恒星を公転する五つの惑星と、三つの準惑星からなる恒星系。
ハビタブルゾーンにある惑星AL2とAL3、そして宇宙に浮かぶいくつかの居住コロニーに人が住んでいるそうだ。
俺が向かってるAL2は、地球と違って月が二つもあるみたいだ。
まぁ、実は地球みたいに衛星が一つしかない惑星のがレアだったりするんだけどね?
月って潮の満ち引きに関連があるし、衛星の数が違うとその辺が地球の常識と違ったりするから面白いよなぁ…
そんなくだらない事を考えながら、機内にある運行状況がかかれたモニターを見て、後どのくらいで着くかを確認する。
なにか航路で異常事態が発生して、迂回せざるを得なくなったときにはこのモニターに表示される。
「…後何時間かしたら着くな」
俺は改めてシャトルの中を見渡して思った。
乗客が意外と多いのだ。
この手の辺境にある中小の星系は、シャトルの便も少なく、乗客もまばらでこんなに席が埋まっていることは無い。
やはり、レアメタルの鉱脈が見つかったのが大きいだろう。
大抵の場合、こういう希少資源のある中小規模の星系の中でも軍事力が低い所は、その資源を狙う宇宙海賊や犯罪組織なんかに日常的に脅かされ、そこを出歯亀して来た大企業にまとめて蹴散らされて資源を奪われるなんて事もあるらしい。
たまったもんじゃないよね。
「ガイドブックには、大規模なステラリウム鉱脈発見の前に、アルビオン星系警備隊をアルビオン防衛軍に増強・再編していた事が功を奏したそうだが…実際は、発見後すぐに発表して投資を呼び込もうとしたりせず、軍事力を増強してから発表したのかもしれんな」
十中八九そうだと思う。
じゃなきゃ、今まで警備隊による治安維持が上手くいってたのに、態々サリヴァン総司令官みたいな優秀な退役軍人を集めて戦える軍隊を作ろうなんてしないだろうし…
そう考えると、ここの上層部は結構優秀なのかな?
「ふむ…まぁ、無能に使い潰されるよりかは良いな…」
ガイドブックを読んでいると、到着前アナウンスが流れてきた。
『このシャトルは、ただいまからおよそ20分でAL2セントラルポート宇宙港に着陸する予定でございます』
『ただいまの時刻は、AL2中央標準時午後7時30分、天気は晴れ、気温は25度でございます』
『着陸に備えまして、皆さまのお手荷物は、離陸の時と同じように上の棚など、しっかり固定される場所にお入れください』
おお、もうすぐ着きそうだな。
アナウンスに従って、ガイドブックを仕舞って荷物を上の棚へ…
二十数分後、俺はシャトルを降りて預けていた荷物を持って到着ロビーに向かう。
メッセージだと迎えの車が表に止めてあるらしい。
宇宙港には中央星系では見た事もない広告が溢れている。
“「我が星系は我が手で守る」アイアンクラッド・インダストリー”
“「家電の事ならお任せください!」ヴォルテック・エナジー社”
“「あっ!こんなところにもノヴァ!工業部品はノヴァ」ノヴァ・プロパルジョン”
“「仕事終わりはこの一杯!」キャンベルタウンビバレッジ”
どれも名前はガイドブックで見たな…
しかし、アイアンクラッド・インダストリーか…
あそこの機体は戦場でかち合うとちょっと面倒くさいんだよなぁ…
実弾相手だとマジで硬いんだよあそこの機体…
しかし、こういうローカルな広告結構好きなんだよなぁ…
沖縄行ったときのオリ○ンビールを思い出すわ~
そんな事を考えながら宇宙港を出て、迎えがいるというエリアに向かう。
確か、迎えは防衛軍のエンブレムが書かれた車で、運転手の兵士が車の外に立って待ってくれてるらしい。
「確か…車を停めてあるのはあの辺だったか…アルビオン防衛軍のエンブレム…あれか?」
目線の先には、ボディに防衛軍のエンブレムの書かれた車に、その側に直立不動で立っている二十代前半くらいの若い兵士がいた。
車の方へ歩いて行って敬礼すると、その若い兵士は緊張した顔で返礼してきた。
う~ん…教科書通りの惚れ惚れするような敬礼。
緊張しててもきちんとできるのは好感度上がるわ。
軍服の着こなしも模範的で上から下まできっちりしてる。
えー…階級章は…少尉!?おいおい…迎えに来たのは士官かよ!?
髪は清潔感のあるスポーツ刈りで、顔は厳つくもどこか幼さも感じる。
そのがっちりした体格からは、常日頃から鍛錬を怠っていない事が窺えた。
「お迎え頂きありがとうございます。少尉殿」
「い、いえ!こちらこそ光栄です!ギャレット上級曹長殿!」
「あっ、申し遅れました!私は、アルビオン防衛軍第1SAF中隊所属、マックス・バレット少尉と申します!どうぞお乗りください!」
「ありがとうございます。バレット少尉」
そう言うとバレット少尉は車のドアを開けてくれた。
うん、すごく真面目な子なんだろうね。
階級が上だからって偉ぶったりしないで、敬意を払ってくれる。
こういう子は、超が付く体育会系の軍隊だとかなり可愛がられるだろうね。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
彼の運転は丁寧なものだった。
俺は防衛軍司令部に着くと、彼の先導で司令室に入室した。
「アルビオン防衛軍第1SAF中隊所属、マックス・バレット少尉、入ります!」
俺は彼と入室し、サリヴァン総司令官に敬礼する。
「ジャック・ギャレット上級曹長殿をお連れいたしました!」
「うむ、ご苦労。二人とも座ってくれ」
着座の許可が出たため、俺たちはサリヴァン司令の前に座る。
「久しぶりだな!ジャック!相変わらずのようで安心したぞ!」
「お久しぶりです!サリヴァン総司令官!ご壮健で何よりです!」
俺たちはお互いに再会を喜び合う。
だが、あくまでも世間話をしに来たわけじゃない…
俺がしに来たのは就職だ。
「さて、積もる話もあるが…本題に入ろう。ギャレット上級曹長、君がここへ来てくれたという事は、また私の下で戦ってくれるという事でいいんだろう?」
「はい、お許しいただけるのであれば、自分はこのアルビオン星系の人々を守るべく微力を尽くす所存です」
内々定かと思ったら、書類選考免除だった…
まぁ、とりあえず面接の基本は自己PRだよな。
ぶっちゃけ顔も名前も知らない、縁もゆかりもない人たちはどうでもいいけど、サリヴァン司令は昔から正義感強い人だったから、こう言っておけば心象も良くなるでしょ。
おっ!満足そうに頷いてる!
こりゃ早速上官の心象良くなったな!
まぁ、GISDF時代で稼いだ二年分の好感度もあるから合格は決まったようなもんだな!
「君ならそう言ってくれると思っていたよ。君の事は、事前に伝えた通り銀河統合宇宙防衛軍(GISDF)と同じ階級である、上級曹長として遇する事になっている」
「ここが、君の配属先と官舎の部屋になる。確認してくれ」
そう言って彼が差し出した書類には、官舎の場所と部屋の番号と所属先が“第1パトロール艦隊”と書かれていた。
なんだ…面接始めるからこれから合否が決まるのかと思ってたよ。
まぁ、でも普通そうだよな。
書類上は防衛軍の一員で、衣食住保障するって言っておいて放り出す訳ねぇわ。
バレット少尉の前で俺の決意が固いって見せたかったのかな?
まぁ、確かに固いっちゃ固いな
地元のイケメンエースとしてちやほやされたい(断固たる決意)
パトロール艦隊に俺を入れたのは、前線で海賊や傭兵なんかをしばき上げるのを代わりにやらせて、司令官の職務に専念するためかな?
まぁ、そうでなくてもその辺の海賊や傭兵に、後れを取らないだろうエースがいれば、二正面作戦とかもできるしなぁ。
でも、とりあえず一つだけ確認したい事があるから聞いておくか…
「質問をよろしいでしょうか」
「ああ、いいぞ」
「IMLMAへの登録はいつやれば良いのでしょうか?自分には自前のSAFが無く、未だ登録は…」
そう、GISDFのパイロット以外は、IMLMAに登録しないとSAFに乗っちゃいけないって法律になってんだよねぇ…
破ると厳罰に処されるという…
で、これはSAFが無いと登録できないようになってる。
でも、海賊や犯罪シンジケートなんかのパイロットは登録してない事が多いらしい。
犯罪者で登録してるやつは、自分の実力に自身があるか、余程の馬鹿か、その両方だろうな。
「ああ、それならこちらでやっておくから安心してくれ。必要書類は送ってくれたしな。すでに、書類上はうちに所属している事になっていると連絡しただろ?なら当然パイロットとして宛がわれた機体もあるだろ?」
「ありがとうございます!」
おお。面倒な手続きを代わりにやってくれるのはありがたい。
あそこ、一応公営ってことになってるから、例に漏れずお役所仕事なんだよねぇ…
それで手続きが煩雑とかボロクソに言われてる。
「質問は以上か?」
「はい、質問は以上です。ギャレット上級曹長、謹んで拝命致します」
そう言って、俺たちは退出許可をもらって司令室を退出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一ヶ月後、俺は第1パトロール艦隊旗艦“ブリストル”のSAF用ハンガーにいた。
俺はあの後、バレット少尉に先導されて直属の上官の元へ向かい着任の挨拶をした。
彼が所属してる第1SAF中隊もパトロール艦隊の麾下だったし、なにより彼もこの船に乗っていた。
顔見知りがこの船に増えてよかったよ。
その後、この一週間自分の乗機とは対面できないまま、軍務に励むこととなった。
そして、ようやくIMLMAのライセンスが発行されて、職務の一環としてSAFに触る時間が作れるようになったのだ。
それまでは、自分の乗機を見に行く暇もなかった…
上級曹長は、特定の分野…俺の場合はSAFの専門家であると同時に、方針の策定、状況分析、各種規制の説明などを担う首席参謀でもある。
そして、上級曹長は大隊級以上の部隊において、指揮官である将校に対して先任下士官として助言を行う重要な役割を果たす必要がある。
それはアルビオン防衛軍においても変わらない。
それどころか、教官が足りていないせいで自分も教官として指導することになった。
シミュレーターで指導した際に、バレット少尉以外の指導しているパイロットたち全員に、頭のおかしい物を見るような目で見られた。
せめて宇宙空間で重力とかないんだから、もっとブースターを使いなって…
エネルギー切れになったら、ジェネレーターが補充するまでブースターが使えない?
エネルギー切れにならずに蜂の巣になれば結局死ぬよ?
そりゃ、ゲームと違って操縦ミスの事故で死ぬ事もあり得るけどさぁ!
事故で死ぬのも戦場で死ぬのもくたばる事には変わりねぇだろ(暴論)
まぁ、SAF乗りじゃない艦長や艦隊司令たちは、GISDFの精鋭部隊仕込みの訓練だって無邪気に喜んでたがな…
「これが…俺の乗機か…」
俺の目線の席にあったのは、まるでドラム缶を思わせるシルエットのSAF。
“ICI-F03-COGNATE”という機体。
それをベースにジェネレーターやブースターを最新のもの(と言っても大企業製の物と比べれば旧式も旧式)に換装し、本来は全身サンドイエローの塗装だったのを赤く塗装したものだった。
「フレームは第三世代中量級機のコグネイト…こいつはエネルギー耐性に難があるが、実弾や爆発には滅法強い」
「ヴォルテック・エナジー製ジェネレーターの”VE-G-03_AMPERE”かぁ…エネルギー供給性能が低いな。エネルギー管理が大変そうだ」
「ブースターはノヴァ・プロパルジョン製の”NP-B-12_COMET”…一方向への直線推力は凄いがなぁ…」
俺としてはジェネレーターとブースターは変えたいんだよなぁ…
「武装は右手にバズーカの”ICI-BZ-03-IRONBAZ”、左手はパイルバンカーの”IC-P01”…パイルバンカー!?」
急にロマン武装来たな!?
スペック表を見たところ、当たりさえすればコグネイトの装甲も粉砕できるとの事…
つよい(小並感)
「一撃必殺はいいな…右肩には誘導6連ミサイルポッドの”ICI-M16-6L”、左肩には大口径実弾グレネードランチャーの”ICI-G03-CRAG”か…パイルバンカー以外は割と手堅いな」
「とりあえず、誘導ミサイル避けようとした所にバズーカぶち込み、動きが止まった相手にグレネードからのブーストキック(ブースター全開で突っ込んで蹴る)かパイルバンカーかな?」
とりあえず、ほとんどの敵はこれで確殺だな!
「よう、ジャック坊!」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「おやっさん!?あんたもアルビオン防衛軍に来てたのか!」
「おう、サリヴァン司令から“あなた以上にSAFの整備に詳しい人間を知らない”なんて口説かれちまってよぉ。退役後もSAFに携わりたいと思ってたんでな、俺もここに来たってわけだ」
彼は第3独立機動遊撃大隊の整備班長だった人だ。
俺たちが地獄のような戦場で生き延びることができたのは、この人のおかげと言ってもいい。
「いやぁ、本当に助かるぜ!おやっさんほど、腕の立つメカニックに機体を預けられるんだ…ここに配属されたのはマジでラッキーだったな!」
「おうよ!大船に乗ったつもりでいてくれよ!」
「あっ、そんな事より挨拶が遅れてすみせん!マジで整備班にはすぐ挨拶に行くつもりだったんだが、ここ一週間激務で…」
そう言って、俺が中々挨拶に来れなかった言い訳を口にしようとしようとすると、おやっさんは手をひらひら振って口を開いた。
「あぁ、気にすんな。うちのヘボパイロット共をかなり揉んでやってたみたいだな。その調子でもっと機体を丁寧に扱うように指導してやってくれ」
「あいつら大して動いてねぇのに、ブースター吹かせまくったり、相手を蹴飛ばしたりしてたお前らと同じくらい機体をガタガタにしやがる…マシなのはマックス坊やくらいだな」
「大体あいつらは無駄に被弾が多いんだよ!相手が実弾ばっかだからどうにかなってるものを…相手がレーザーライフルなんかのエネルギー兵器持ちだしたらどうするつもりなんだ!それに毎度毎度…」
ああ、うん…おやっさん相当不満が溜まってるみたいだな…
とりあえず大人しく俺が相槌打ちながら、不平不満を受け止めておこう…
パイロットは医者と整備士だけは敵に回さないもんだ。
「あれ、班長。どうしたんですか?」
「そこにいるのはもしかして?」
丁度、休憩が終わった整備士たちが集まってきた。
おかげで様でおやっさんの愚痴が止まった。
「おう、紹介するぜ。こいつが噂の新しくやって来たスーパーエースだ」
「ご挨拶が遅れて申し訳ございません!第一パトロール艦隊に配属されました。ジャック・ギャレット上級曹長です。これから何卒よろしくお願いします」
俺は整備士たちに帽子とって頭を下げた。
「ああ!この人がそうか!」
「あのヘタクソたちを少しはマシな腕にしてやってください!」
「バレット少尉以外酷いんですよ?」
「あいつらコグネイトが頑丈だからって平気で敵の攻撃受けてんだ!」
ああ…出るわ出るわ整備士たちのパイロットに対する不平不満の数々…
こりゃ相当だな…
まぁ、俺が着任して初日に教官役やれとか言われるぐらいだしなぁ…
まともな教官もまともじゃない教官も足りてないんだなぁ…
ちなみに、俺は多分まともじゃない教官。
あれか?増員しようとしたはいいものの、肝心の教官とかが足りてなくて、低い練度のまま前線に出さざるを得ないのかな?
うーん…この典型的な中小星系の悲哀よ…
しかし、なんで俺は上級曹長になれたのかな~?
上級曹長って俺みたいな凡人じゃなくて、新兵の教育もなんでもござれな士官の頼れる味方みたいなのじゃねぇの?
企業が散々やかしてその尻拭いをさせられたり、企業同士の政争に軍人も民間人も大勢巻き込まれて死んだりした、あれとかそれとかこれの口止め料かな?
多分そうだね糞だよ糞
そんな事を考えながら、俺は整備士たちの不満に相槌を打ち続ける。
ある意味、うちのカス練度パイロットどものおかげで、挨拶遅れた俺へのヘイトが向いてないのかな?
『ジャック・ギャレット上級曹長、至急ブリッジまで来てください』
ん?呼び出し?
なんかやらかした覚えはないんだけど…
えっ、なに?怖い…
「申し訳ない。司令からの呼び出しですので…」
俺はそう言いうと急いでブリッジへ向かった。
なんかやらかしたとかじゃありませんように。
生きた心地のしないまま、ブリッジのドアの前に立つ。
ブリッジのドアは普段は自動ドアみたいになってる。
ロックすることもできるけど、その場合退艦が間に合わなくなるとかだから、使い道は限られてるよな。
そんな事を考えていると、無情にもドアは自動的に開く。
中には顔色の悪い司令たち…
なんか震えてない?
これ滅茶苦茶やらかしてる?
終わった♡
「ジャック・ギャレット上級曹長、出頭いたしました」
もうどうにでもな~れ☆
「よくぞ来てくれた……ふぅぅぅ…前置きはなしで要件だけを言うぞ」
あ、これひょっとして俺宇宙の藻屑コース?
宇宙遊泳楽しみ(錯乱)
「…AL4αコロニー駐留艦隊から増援の要請が届いた」
なんだ普通に仕事の話だわ…
心配して損したわ。
最近忙しすぎて気が変になってたわ。
考えたら俺なにも叱責されるような真似はしてないしな。
「その内容は…現在…大規模な海賊の艦隊にAL4αコロニーが襲われている…その数は30隻!撤退すれば確実に民間人は略奪の対象となるッ!」
あー…そりゃあキツイね。
相手も型落ちのポンコツで、こっちは整備状態のいい型落ちだけど、普通に数で負けてるしね。
コロニー駐留艦隊はサウスダウン級警備艇五隻の編成。
で、パトロール艦隊はブリストル級駆逐艦一隻に、サウスダウン級警備艇四隻の編成。
第1パトロール艦隊が増援で駆け付けたときに、もし駐留艦隊が無傷でも戦力差は三倍だな。
「現在、既に第4パトロール艦隊が駆けつけたが、戦況は芳しくない…圧倒的な不利だッ!」
なるほど…第4パトロール艦隊は勇敢だな。
おかげで勝ちの目が増えたよ。
「仮に、我が艦隊が駆けつけたとき、どちらも無傷であっても敵の戦力は我が方の倍だ」
「サリヴァン総司令官が艦隊で向かっているが…AL2からでは間に合わんッ!」
「最悪な事に敵の首魁は…ランク48位の化け物ッ!“血濡れの髑髏”キルディザスターだッ!」
ふーん…要は、地方で弱い者虐めしてスコア稼いでるなんちゃってランカーの巣窟Fランク帯の例に漏れず、弱そうな相手を嬲って悦に浸る単なるチンピラか。
つーか、こういう犯罪者は登録取り消せよ…まぁ、どうせ企業の連中がお互いの駒を削り合うのに不都合だから、元老院に規制させないように働きかけてんだろうけど…
しかし、キルディザスターって…馬鹿みてぇな名前だな…
ま、雑魚だな。
「頼む!サリヴァン総司令官と共に、死線を潜り抜けてきた君だけが頼りだ!」
「どうか、君の知恵を貸してくれ!頼む…」
おっ、この上官いいな…
素直に相手にものを頼むし、味方を見捨てようとしたりしない。
GISDFの腐れ上層部に爪の垢煎じて飲ませたいね。
でも、まぁ…
「こんなのは、“ブレイカースクワッド”ではいつもの事です。さぁ!いつも通り仕事をしましょう!」
むしろ、もっと酷い状況もあったしね。
「私に考えがあります。戦場からある程度の距離で私は先行し、敵艦隊に突入します」
「そして、敵機や艦艇を削りつつ敵首魁を撃破します」
「その後、支援砲撃を行ってSAFを突入させてください。動揺し、浮足立っている敵ならば、訓練途中の彼らでも倒すことができるでしょう。外側にいる敵を砲撃で削る事も忘れずに」
どうせ、ああいう海賊ってのは大抵、リーダーが無理やり力で纏め上げてんのがほとんどなんだよね。
だから、こういう斬首戦術が一番効果的だったりする。
「な、なにを言っているんだ!?」
「そんな事不可能です!」
は?何言ってんの?そのくらいブレイカースクワッドじゃ当たり前…
いや、それじゃあ世間一般だと異常なのか?
「いえ、可能です。私はかつて、ルガルバンダ戦役にてSAFを四機、巡洋艦を三隻沈めました。その際、敵の旗艦を撃沈することができました」
とりあえず、実績で殴っとくか…
ここには、俺以上に実戦経験豊富なやつはいないし。
「もし、私が敵首魁を仕留める事が出来なかったとしても、あの規模の艦隊ならば一機のSAFに艦艇を数隻沈められただけで動揺は広がります」
「それに、もし仮に奴が出てきて他の友軍に襲い掛かったなら、急行して私が奴を抑えます」
「とにかく、敵に我々が付け入る隙を作る…動揺を与える必要があります」
数で押してる連中は、大抵の場合数が減ってきたら目に見えて勢いが無くなるんだよなぁ。
それに、味方が恐慌状態になってるとこに行けば、十中八九キルディザスター(笑)とご対面できるっしょ。
「君は…それが本当に可能だと思うのかね?」
「はい、可能です」
「勝算は如何ほどだ?」
「100%です」
司令は心配性だな…まぁ、無理もないな。
司令の立場だったら俺もそうなるわ。
俺がランカーならこの問答も無かったんだろうなぁ…
時間の無駄。
「そんな…無茶ですよ!?こんなの自殺行為だ!」
この艦長、さっきからずっと否定的な事しか言わないのな。
いや、まぁ…常識で考えたらそうなんだけどさぁ…
でも、状況が無茶苦茶だからしょうがないじゃん…
「我々は軍人です。守るべきものを守るためには、無茶でも無謀でもやり遂げねばなりません」
もうめんどくせぇし建前でごまかそう。
「私は君のその勇気と覚悟…そして、無私の献身と力なき民への深い愛に、心から敬意を払う…」
勇気と覚悟はともかく、後の三つはなに?
そんなん持ってないけど?
まぁ、いいや…
「では、決まりですね?」
異論を挟む者は誰もいなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
AL4α宙域。
海賊の艦隊を前に、コロニー駐留艦隊や第4パトロール艦隊は必死に応戦するも、それも虚しく圧倒的な劣勢であった。
「ヒャハハハ!!!オイオイ!サリヴァンの野郎がいなきゃこんなもんかよォ?」
一つまた一つと爆散し、閃光と化して消えていくアルビオン防衛軍の艦艇を見て、船のブリッジで狂ったように嗤う髭面の男。
この男はキルディザスターその人である。
彼はその残忍さから“血濡れの髑髏”という異名で恐れられた。
彼の異名は、血の様に赤黒く塗装して大きな髑髏の絵を描いた悪趣味な船に乗り、胴に大きく髑髏を描いたSAFに乗っている事からついた。
「へへ、もうすぐですね!お頭ァ!」
「コロニーを陥としたら、女ども集めて楽しみましょうや!」
「ウヒョ―!お頭最高!」
彼らは、無軌道に殺しと略奪を楽しむ、典型的な早死にする宇宙海賊であった。
しかし、頭目の強さに惹かれた同類の海賊が集まり、大規模な海賊艦隊を形成したことにより、各星系の守備隊や企業の私兵を返り討ちにする程に勢力を拡大した。
最も、彼らが今までのさばっていられたのは、偶々大企業やGISDF…そして、真の強者に目をつけられなかっただけである。
彼らの悪運も今日ここで尽きる事となった…
「ん?お頭ァ!大変です!妙な敵が船を次々と沈めてやがります!」
手下の一人が、自分たちの艦隊に起きた異変を察知した。
「ああん?妙な敵だァ?ハッ!サリヴァンが泡食って飛び出してきやがったかァ?」
「い、いえ!サリヴァンの野郎じゃありません!コイツは…赤いコグネイト!?なんだこいつ!?連中ランカーの傭兵にでも金を積んだのか!?」
画面に映し出されたのは、海賊のSAFを一機また一機と墜としていく、赤いSAFの姿であった。
キルディザスターはその凶相を歪めて嗤う。
「ヒャハハハ!!!なんだァ少しは骨のあるやつがいるじゃねぇかァ!」
「よォし!俺が直接ぶっ殺してやるよッ!!!」
そう言って、彼はやんややんやと喝采する手下を尻目に、愛機のあるハンガーへと向かう。
ハンガーに鎮座する、キルディザスターの愛機“スーパージェノサイド”。
これは”ICI-F03-COGNATE”をベースに、“タイタン・ヘヴィ・インダストリーズ”の傑作第二世代重量級機、”THI-MM02-GIGANT”の脚部に換装し、積載量と姿勢安定性能を強化したもの。
武装は右手に”ICI-MG09”というマシンガン、左手には”KIM-W-07_SAW-TOOTH”というチェーンソー、左肩には以前“アステリア・エレクトロニクス”の輸送船から強奪した、”AE-LB07_ARTEMIS”という強力なレーザーキャノンを装備している。
「さぁてェ…今度の奴はどんな悲鳴を聞かせてくれるかねェ?」
カタパルトに愛機を固定しつつ、凶悪な笑みを浮かべるキルディザスター。
「スーパージェノサイド!出るぞォ!」
血濡れの髑髏が今宵も己を獲物の血で染めんと躍り出た。
『ひぃ!?出たぞォ!奴だ!キルディザスターだ!』
『当たれ!当たれよ!』
『うわぁぁぁ!来るなぁぁぁ!!!』
「まずはお前らからァ!」
キルディザスターは狼狽え弾を大きく旋回して躱し、近くにいた敵を左腕のチェーンソーの餌食にする。
そして、別の敵に右手のマシンガンを発砲して牽制。
『あっ!ああ!!!あああああ!!!やめてぇぇぇ!!!かあさぁああん!!!』
アルビオン防衛軍の正式採用機、コグネイトは重装甲で物理攻撃に対して高い耐性を持つ。
しかし、今回に限ってそれはパイロットにとって、コックピットブロックの装甲を削られる音を聞きながら死んでいくという、地獄の様な時間が延びる皮肉な結果となった。
『クッソォ!この糞野郎がァ!』
仲間を殺され激昂する防衛軍のパイロット。
彼は怒りに任せ、スーパージェノサイド目掛けてバズーカを発射。
その瞬間、キルディザスターは自らがパイロットを殺害し、未だ爆散していないSAFを盾にした。
バズーカの弾が何かに命中し、宇宙空間に爆炎が広がる。
『やったか!?』
「ハァーイ残念!お前も逝っちまいなァ!」
スーパージェノサイドが爆炎を突き抜けて強襲、先ほどバズーカを撃った敵にチェーンソーで斬りかかる。
『クソォ!サリヴァン総司令官!申し訳ございま──』
哀れにも、辞世の句を言い終わる前に彼は爆発四散した。
「あーあ…斬り方が悪かったせいで、すぐに壊れちまったよォ…」
まるで、玩具が壊れてしまったかのような言い草で吐き捨てるキルディザスター。
『ひ、ひぃ!こ、こんなの…勝てる訳ねぇ!』
残った一人は恐怖のあまり敵前逃亡。
しかし、キルディザスターは無情にも、彼にレーザーキャノンの照準を向ける。
「オイオイ…まだ戦ってる仲間を見捨てるなんていけないなァ?」
「悪い子はァ…お仕置きだァ!!!」
スーパージェノサイドの左肩のレーザーキャノンから閃光が奔る。
『え?』
背を向けて逃げていた防衛軍のSAFは、背中から高出力のレーザーに打ち抜かれ、すぐに仲間の後を追う事となった。
「さぁ~てェ?本命くんはどこかなァ?…おっ?」
スーパージェノサイドのセンサーが高速で接近する物体を捕捉。
機体のカメラがそれを捉え、コックピットのモニターに映し出す。
「ハッハァ!早速お出ましかァ!」
それは先ほど船を沈めていた赤いコグネイトだった。
「くたばりなァ!」
キルディザスターは、赤いコグネイトに向けてレーザーキャノンを発射。
しかし、相手はそれをバレルロールで躱した。
「外したッ!?」
次の瞬間、赤いコグネイトが右肩の誘導ミサイルを放った。
「チィッ!誘導ミサイルかァ!」
彼は、自身を追う六発のミサイルを振り切ろうと、ブースターを吹かして横へ飛ぶ。
「ッ!?クソォ!!!」
次の瞬間、飛んで来たバズーカの弾にギリギリ気がついて躱そうとするが、自身を追ってきたミサイルにバズーカの弾が命中。
バズーカの弾と六発のミサイルの爆発から、完全に逃げ切る事はできずに左腕のマニピュレーター諸共チェーンソーを破壊された。
「よくも…よくもォ!!!俺のスーパージェノサイドに傷をつけやがったなァ!!!」
激昂するキルディザスター。
彼は静止した赤いコグネイトを見て、それに向けてレーザーキャノンの照準をつける。
「くたばりやがッ!?ぐわァァァ!!!」
だが、高出力レーザーが発射される前に、相手のグレネードランチャーの榴弾が見事命中。
しかし、実弾と爆破には強い重装甲のパーツで組まれたSAF、スーパージェノサイドはそれでも撃破には至らなかった。とはいえ、いくら機体が頑丈でもパイロットはその衝撃に耐えられず、強い衝撃を受けてすぐに動く事はできない。
「クッソ…この俺がァ…殺してやるゥ!」
彼は呪詛を吐きながら復帰し、姿勢を立て直した。
そんな彼が目にしたものとは──
「え?」
目と鼻の先まで接近した、赤いコグネイトがパイルバンカーを振りかぶる姿であった。
次の瞬間、彼は愛機のスーパージェノサイド諸共火球に変わった。
彼が殺してきた、多くのSAFパイロットと何も変わらぬ、なんともありふれた最期であった。
『こちらジャック・ギャレット、キルディザスターを撃破。引き続き敵艦への攻撃を続行する』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
第1パトロール艦隊旗艦“ブリストル”のブリッジ。
敵首魁、ランク48位の怪物である、キルディザスターの撃破の報告に沸く指揮所にて、艦隊司令は感動に打ち震えていた。
しかし、いつまでもそれに浸っている訳にはいかない。
真っ先に気持ちを入れ替えた彼は、鋭く指示を飛ばす。
「敵が崩れる!遠慮することは無い!屑どもの横っ面を思いっきり殴ってやれ!」
「SAF隊突入準備!各艦は援護射撃を行え!SAFの道を作るんだ!」
艦隊司令は指示を出すと、この作戦を提案して来た命知らずのスーパーエースとの会話を思い出す。
『我々は軍人です。守るべきものを守るためには、無茶でも無謀でもやり遂げねばなりません』
それはこの世界では余りにも眩しい姿だった。
弱者は虐げられ、強者は私利私欲のために暴虐を尽くす。
この世界では、正規の訓練を受けた軍人であっても、これほど絶望的な状況では救援要請を握りつぶし、コロニーの市民が虐殺されても知らぬ存ぜぬを貫く者も少なくない。
そんな中、虐げられる弱者を守ろうと無茶を承知で、わが身を顧みずに戦う…
まさしく英雄の姿である。
艦隊司令と艦長は、自然と彼に対して敬礼をしていた。
(ギャレット上級曹長、君は宣言通りやってのけたのだな…)
「敵艦隊外縁部の艦に砲撃を加えろ!SAFの退路を断たせるな!」
戦闘は一時間後に終息した。
海賊艦隊は首魁と半数の艦艇を失い四散。
残党は各星系の防衛組織に狩られることになった。
今回の戦いの後、絶望的な状況にあったAL4αコロニーを救ったアルビオン防衛軍は、歓呼の声で迎えられることになった。
そして、一際大きな喝采を浴びた者がいた。
ジャック・ギャレット上級曹長。
現在、ランク48位のFランク帯。
アルビオン星系で二人目のランカーにして、海賊たちからは“赤い死神”と恐れられる英雄である。
「司令が言ってた、無私の献身と力なき民への深い愛ってなに?」
…少なくとも傍から見れば英雄である。




