第二十七話
レギュレーターズに合流したギャレットくん
これからどうなる?
俺はスタリオン星系防衛のため、レギュレーターズに出向することになった…
『間もなくB-ST-4基地発着場へ到着いたします。安全のためシートベルトをご着用ください』
「ふぅ…いよいよか…」
うわぁ嫌だぁ…
よりにもよって俺の上役ユリウス君とか…
胃に穴が開きそう…
「考えた者は相当な性悪だな…」
ぜってぇ惨たらしく殺す(殺意)
あー…嫌だぁ…輸送艦を降りたくねぇよぉ…
うわぁ…着陸しちゃったぁ…
嫌だぁ…
うわぁ…着いちゃった…え?着いたから降りろ?
「仕方がないか…」
あー…嫌だ…もうユリウス君とは直接顔を合わせず、指示だけされるとかな事を祈るしかねぇよぉ…
向こうだって自分の経歴に泥を塗った相手なんか見たくねぇだろ?
そう考えたら大丈夫な気がしてきたな!
「では、降りるとしよう」
げぇ!?
降りたら既視感を感じる神経質そうなメガネの男がいる!?
副官っぽい奴と…なんかチャラそうな若い男と立ってる…
なんか副官顔色悪くね?
「これはこれは…指揮官直々のお出迎えとは…格別のご厚情痛み入る」
わざわざ出てこなくていいじゃん…
もう笑うしかねぇよ…
これパワハラ祭り確定か?
“あなたはこんなこともできないのですか?”
“一体…あなたは今までなにをやって来ていたのです?”
“ふん、これが元ブレイカースクワッドとは…笑わせてくれる”
うっ!?想像しただけで胃がキリキリして来る…
まぁ、やったら殺r…流れ弾に当たって戦死だけどな!
「ええ、態々我が社が講和条件を譲歩してまで引き入れたのです…恐れをなして逃げられては困る」
「ここに来たからには及第点以上の働きはしてもらいますよ?」
あ、メガネをクイってやった。
エリートキャラでメガネしてる奴って、みんなあれやるイメージだよな。
マジでやるんだな…
「もちろんですとも!なにせ、ブレイカースクワッドはGISDFの椅子をケツで磨くしか能の無能であっても、使えばそれなりの結果を得られる道具でしたからなぁ」
「精々その手腕で私を有効に使って見せてくださいね。指揮官殿?」
言っておくが…舐めた真似したら後ろから撃ってやるからそこんとこよろしくね!
え?アステリアとアルビオン星系の関係が終わる?
大丈夫!タイミング次第じゃ事故にしか見えない方法で上官殺せるから!
気に入らない上官を地獄に送る方法を教えてくれた先輩たち元気かなぁ…
退役した後、何人かはメッセージくれたから生きてるとは思うけど…
先輩たちも強いし、かち合ったら動きでわかるから、うっかり既にぶっ殺してるなんてことはない筈…
「ふん、口の減らない男だ…それが大言壮語ではない事を願いますよ。指示は追って伝えます。明日からは存分に働いてもらうので覚悟しておくように…」
「ウォリック、この男を案内してやりなさい」
「了解ッス!」
普通に腹を押さえる副官連れてどっか行った…
マジで出迎えに来ただけ?
「いやぁ…アンタ凄いっすね!あのユリウス隊長に向かって、相手の能力を疑う前に自分の采配が間違ってないか考えろって言うとか…」
「流石は“狂人部隊”ブレイカースクワッド!肝の据わりっぷりマジパネェ!」
あー…うん…売り言葉に買い言葉でついああ言ったけど…
これ…捨て駒にされたりしない…?
いや、よくよく考えたらGISDFでは俺らはなんもしてなくても捨て駒にされてたな…
な~んだぁ…いつも通りじゃん!(狂人)
心配して損した!(深刻な感覚の麻痺)
「ああ、どうも。あー…ウォリックくんでいいかな?」
「あ、どーもすんません!俺、パーシー・ウォリックっす!気軽にパーシーって呼んでください!カバン持ちますね!部屋まで案内します!」
「ありがとう、パーシー」
おお…こいつ良い奴そうだな。
そうなんだよね…企業勢力だからって末端まで屑ってわけじゃないんだよなぁ…
ま、敵に回ったら普通に殺すけど。
さて…俺のレギュレーターズ生活はどうなるかね…
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さっさと走れ屑どもぉぉぉ!!!」
「「「「「「サー!イエスサー!」」」」」」
「ふん…」
いやぁ…すげぇなレギュレーターズ…
うちのゴミ共とは比べ物にならんくらいの練度だわ…
あのゴミたち、こんな走らせたらすぐ息を切らすのに…
ユリウス君なんて、三周以上先行してる俺の横にぴったり並走してきやがる…
…ちょっとギア上げるか。
「……ッ!」
おっ、ついてきたついてきた…
いやぁ、大したもんだねぇ…
こんだけギア上げたら、バレット中尉でも苦しそうにしながらなんとか後ろをついて来るのがやっとなのに…
顔色も変えずについて来たよ!
流石に大企業のエリートは違うなぁ…GISDF時代を思い出すよ。
“beep!”
お、ブザーが鳴った。
五分休憩だな。
「五分休憩!息を整え、水分を補給しろ!」
「「「「「サー!イエスサー!」」」」」
おお、元気だな…
マジでうちの連中と大間違い…
「あー…今日やけにきつくないか?」
「今日はあのジャック・ギャレットが教官役だとよ」
「マジで?…よく外様を教官役にしたなぁ」
「隊長は俺らの練度の高さを見せつけたいんでしょ?いい迷惑だけどな」
「強化人間になる前じゃ耐えらんなかったな…これ毎日やってるとかブレイカースクワッドには入りたくねぇや」
フーン…なるほどねぇ…こいつら全員強化人間か?
それにしたって、掛け声も揃ってたからなぁ…
元々の練度の高さが伺えるわ。
「ジャックさん!俺らどうすか!?いい感じでしょ!」
うん、めっちゃいい感じ!
「ああ、素晴らしいな。休憩時間中はともかく、訓練中は弱音を吐くどころか苦しそうな顔すらしないのは中々だ。GISDFの軍人と遜色ない練度だ」
「当然です。我々はレギュレーターズ…言うなればアステリアの武威。この程度で音を上げられては困る」
ユリウス君、今は運動中なのによくメガネつけてるね。
外さないの?
てか、なんで位置がずれないの?
そういうテクノロジーかなにか?
そういや強化人間だし、目が悪いってわけじゃないよね?
メガネ型の端末かなにかなん?
「あっ、ユリウス隊長お疲れっす!よくジャックさんと並走できますね…三周くらい先行してませんでした?」
「ふん、なにを馬鹿なことを…我々は新世代型強化人間だ。ならば、それに相応しい能力を身につけなければならないのは当然です。…貴方こそ、なぜ私同様並走しなかったのですか?」
「あ゛っ゛!」
可哀想なパーシー…
藪蛇だったね…
一緒に走ろうな!
「しかし…よかったのか?レギュレーターズの教官ではなく…俺にやらせるなんて?」
そうそう…教官共に恨まれたりしてたら面倒だしな。
「教官たちですか…我々のすぐ後ろを走っている者たちがいたでしょう?」
「ああ、いたな。それが?」
「彼らが教官たちです」
あー…なるほどね…すぐ後ろを走ってる微妙に圧を掛けてきてる集団は、教官たちだったのねぇ…
本格的にブレイカースクワッド式の訓練の取り込める部分を取り込もうとしてるじゃん…
「うーむ、どう思う?」
「流石に新兵の教練には使えんが…有用だろう」
「この後は、確かシミュレーターによる訓練か…疲弊した状態で戦う感覚を身に着けさせるというわけだ」
「なるほど…パフォーマンスが低下した状態での動きも見るわけだな?」
休憩中もめっちゃ分析してるよ…
やっぱ大企業入れる人間ってだけあってストイックだな…
あと、俺が単なる外部のぽっと出じゃなくて、教官の経験のある元軍のトップガンって肩書あるのがデカいのかな?
「さて、ランニングの後は三十分間を置いてから、何度もペアを変えながらシミュレーターで模擬戦を行うが…自信の程は?」
「ふん、誰であろうと遅れを取るつもりはない。…当然、貴方も参加するのでしょう?」
当たり前だろ…エリートを合法的に気持ちよくボコれるのにやらねぇと思うか?(屑)
模擬戦は格闘訓練と同じくらい好き。
合法的に他人をボコれるしな!(屑)
「ああ、もちろんだ。俄然やる気が出ただろう?」
「ええ、少しは骨のある相手がいるようで安心しましたよ…もっとも、貴方の腕が錆びついていなければの話ですが」
「ははは!それじゃあ、隊長殿に胸を貸して差し上げるとしよう…」
手加減は要らねぇよなぁユリウス君?
「ヒエッ…ギャレットと隊長がバチバチじゃねぇかよ!」
「上層部の無能どもめ!なんでよりにもよってあの人が指揮官してる部隊にあいつ送り込むんだよ!」
「可哀想なパーシー…よりにもよって爆心地にいるよ…」
あ、安心してくれていいぞ!
お前らにも本気出すから☆
本気の俺相手にまともにやり合えたら上位ランカー級だね♪
「へ、へへへ…あの、お手柔らかにお願いします…」
おいおい遠慮すんなよパーシー!
「遠慮する事はない…私を相手に一分持てばDランク以上の実力は確実だぞ?」
「なにを弱気な…貴方には、下位とはいえレギュレーターズ所属のランカーとしての…アステリアの武威たる自覚はないのですか?」
「「パーシー」」
「ひえぇ…」
おー怯えちゃってまぁ…
大丈夫!
すぐに泣いたり笑ったりできなくなるから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
スタリオン星系近郊、“タイタン・ヘヴィ・インダストリーズ”勢力下の星系にて、スタリオン侵攻艦隊が着々とその準備を進めていた。
侵攻艦隊の旗艦にて、侵攻部隊の指揮官がランカーたちを集めてブリーフィングを行っている。
「スタリオン星系侵攻作戦において、障害となる敵方のランカーはこいつらだ…優先排除目標としてきちんと頭に入れておけ」
そう言って、アステリア勢のランカーとその乗機の写真を並べる、白髪をオールバックにした鋭い目つきの屈強な中年男性。
彼こそが部隊の指揮官であり、Cランク帯17位の侵攻部隊では最高位のランカー、ギルバート・グレイブスだ。
「ほーこれはこれは…Cランク帯一人にDランク帯一名、Eランク帯一名、Fランク帯二名ですか…ランカーの数では互角ではありますなぁ」
そう言ったのは、無気力そうな無精ひげの中年男性ボリス・イヴァノフだ。
現在Dランク帯26位である。
「しかしながら、隊長とユリウスでは隊長のランクが上で、Dランク帯もこちらは二名にも関わらず向こうは一人だけです」
そう言ったのは虚ろな目をした青年、Fランク帯46位強化人間104号だ。
彼は元々、タイタン・ヘヴィ・インダストリーズの捕虜になった敵対企業のパイロットで、記憶を消された後同社の最新鋭強化人間手術を受けさせられた哀れなモルモットである。
そんな彼の発言を鼻で笑って口を開いたのは、スキンヘッドの男性。
「数やランクだけで物を考えるな…ランクはあくまでも指標にすぎん。下位ランカーになったばかりのバケモンが、格上を食らって躍進するなんてこともある」
この男の名はマクシミリアン・ルイス。現在、Dランク帯29位。
彼はランクが強さを表すという考えに猜疑的だ。
そんな彼の言葉を聞き、顔中に悪趣味な入れ墨を入れたモヒカンの女が言う。
「へぇ?なに?あんたジャックとかいうぽっと出にビビってんの?無敵の特攻野郎ブレイカースクワッドなんて信じてるわけ?」
彼女、Eランク帯35位カチュア・レードフは彼を馬鹿にしたようにそう言った。
ルイスはそんな彼女へ不快そうな態度を隠すことなく言った。
「事実として、ブレイカースクワッドと呼ばれる精鋭部隊は実在し、奴はその部隊の隊員だった。そして、実際に瞬く間に今の順位へと駆け上がった」
「それが警戒するに足る理由と理解できない貴様は正しく愚か者でしかない。死ぬなら周りを巻き込まずに一人で逝け」
そう言った彼に彼女は憤怒の形相で詰め寄る。
「んだとてめぇ…ユリウスのカマ野郎の前に私がてめぇを地獄に送ってやろうか?ああ?」
「はっ!手を動かすのは遅いのに口はよく回るな!仕事ができない人間の典型例だな!ええ?」
まさに、一触即発という状況だ。
「おいおい!お前ら落ち着けって…仲間内で殺し合ってどうすんだよ!?」
ボリスは二人の間に割って入って止める。
「おい!104号!手伝ってくれ!」
自身の方向を振り返ってそう言ったボリスへ、強化人間104号は平坦な声で答えた。
「私の命令されたタスクにそのようなものはありません」
「おいおいおい!明らかそんな言ってる場合じゃあないだろぉ!」
すると、それを静観していたギルバートが口を開く。
「いい加減にしろ屑共…ここは幼稚園じゃないんだぞ。104号のようになりたくなければ今すぐやめろ」
「も、申し訳ございません」
「チッ!」
つい先程までいがみ合い、いつ殺し合いを始めてもおかしくなった二人は委縮し、嘘のように大人しくなった。
そんな二人を見て、ギルバートはゴミを見るような目で見つめ、鼻で笑うと話を始める。
「いいか、俺たちが優先的に墜とすべきなのは指揮官であるユリウス…そして、この男“赤い死神”ジャック・ギャレットだ。指揮官のユリウスは言うまでもないが、この男はアルビオン星系の最高戦力」
「上は面子のためにも此奴を殺したくて仕方がないらしい…馬鹿馬鹿しい話だが、わざわざギャレットを墜とせば特別ボーナスを寄越すとまで言っている」
ジャックを墜とせば特別ボーナス。
それを聞いて、強化人間104号以外の全員の目線がジャックの顔写真と乗機である“ハングドマン”の写真に注がれる。
「へぇ、そりゃ気の毒に…」
「この男をぶっ殺すだけでボーナスなんて、ケチなお偉いさんにしちゃ大盤振る舞いじゃないのさ」
「哀れな…この若造はもはやこれまでだな」
そんな部下たちを見て、ギルバートは冷酷な笑みを浮かべる。
(ジャック・ギャレット…お前には同情するよ)
(甘ちゃんのサリヴァンは…この銀河で長生きするには、大企業には逆らうなって教えてくれなったんだろう?)
(そのことをこの俺がその身で教えてやろう…)
「同じ元ブレイカースクワッドの誼でなァ…」
彼の呟きは誰の耳に入るも事無く消えていった。
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