第二十五話
新型への乗り換えイベントです。
「搬入急げぇ!」
「おい!マニュアルまだ届いてないのか!?」
「ここにあります!今そっちに持ってきます!」
「おい!傷一つつけるなよ!ジャック坊のピッカピカの新車だからな!」
「ついに…か」
えー…ブリストルのSAFハンガーは大忙しです!
なぜでしょうか?
答えはですね!
俺の新型機が届いたからです!!!!
いやぁ、めっちゃ楽しみ!
アステリアの担当者さんが来るから、ハンガーに行って説明を受けて来いって言われたんだよね!
第五世代機だぜ?第五世代機!!!
「ふっ…我ながら子供染みているが…やはり胸が躍る」
「なにせ、実際にこの身でその性能を味わった事があるのだからな」
コグネイトも悪くない機体だが…如何せん旧式化は否めないからな。
第三世代機は、第四世代機相手に“本体の”スペックは劣ってないけど、SAF用エネルギー兵器が実用化される前の機体だからなぁ…
出力やエネルギー供給速度なんかのジェネレーターの性能や、敵味方双方レーザーライフルなんかを使用することを前提としたエネルギー耐性で大分差がついてんだよね…
そりゃあ、第三世代機で第四世代機とタイマンで戦うのは無謀とか言われるよな!
うん?なんでそれでそんなに戦力差がつくのかって?
ジェネレーターの出力が足りないとエネルギー兵器の威力下がるし、ブースター全開にした時の速度も下がっちゃうんだよね…
だから、第三世代機が作られた頃のジェネレーターだと、エネルギー兵器の威力下がるし、第四世代機用のブースターが満足に扱えなくなるんだわ。
そんで、エネルギー供給速度はなぁ…
ま、読んで字の如くエネルギーを供給する速度ね?
これねぇ、常に動き回る軽量級機で戦うなら一番重要なステータスかもな。
機体のエネルギーはブースター吹かすのにも消費するから、エネルギー切れになるとブースター使えなくなるんだよね。
だから、供給速度低いジェネレーターを載せた軽量級機は、紙装甲で低機動力って産廃になり下がんの。
「この前の任務でそんな敵がいたな。海賊共はアセンブルの基本がわからんのか?」
軽量級機がさぁ…機動力が無きゃ単なる棺桶なんだよ!
そんなこともわかんねーのかな?
わかんねーよなぁ…民間人殺して強くなった気でいる屑共には。
エネルギー耐性ってのは、文字通りのエネルギー兵器への耐性の事ね?
これ低いと一発でお陀仏だよ。
大企業の第四世代機はエネルギー耐性高いから、実弾ならバズーカの一発で中破以上確定の軽量級機が、レーザーキャノンなら最低二発は耐えるって話もある。
で、逆に第三世代機のコグネイトはレーザーキャノンどころか、レーザーライフル一発が致命傷になるのに、実弾ならバズーカにグレネードランチャーを連続でぶち込まれてもくたばらんぐらいしぶとい。
まぁ、つまるところコグネイトでエネルギー兵器持った第四世代機とやり合うのはキツイし、単騎で連携して襲って来る複数機の第四世代機と戦うのは自殺行為ってわけよ。
「そう考えると…俺も捨てたものではないな」
この前の戦いで第四世代機を単騎で千切っては投げした俺…天才じゃね?(事実)
つーわけで、アルビオン星系の愚民共は俺を崇め奉るべきなんだよな!
でもまぁ、これが届いたってことは…本格的にアステリアから扱き使われるんだろうな…
「あのぉ…その、失礼ですが…あなたはギャレット最先任上級曹長でございますでしょうか?」
ん?見慣れないやつだな…
誰だっけ…あっ、そっか!
この人がアステリアから説明で来た人ね!
「ええ、私がギャレットです。あなたは…アステリアの担当者の方ですか?」
「あ、はい。今回、ギャレット最先任上級曹長の機体についてご説明をさせて頂く、アステリア開発局のユーフォン・チェンと申します。その、よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。チェンさん」
やっぱそうか!
この艦の整備士の顔はちゃんと覚えてるもん!
軍人は医者と整備士は敵に回さないのが鉄則だからな!
「あの…こちら、仕様書となっております」
「ああ、どうも…ほう、これは凄い」
うおっ!
マジか…スペックが第三世代機のコグネイトとは段違いじゃん…
ユリウスくんの“ヴァーチュ”は機動性とかでは、これより上とかマジ?
あいつが成長しきった状態で戦ってたらマジで死んでたかもな…
「仕様書にもある通り、この機体AE-05M-EXITIUMは従来の中量級機並みの耐弾性を備えたまま、軽量級機に匹敵するほどの機動性を獲得しています。また、エネルギー耐性は従来の三割増しになっています」
うん、推力ヤバいわ…これGとかヤバそうだな。
従来の中量級機…AE-04M-LAVOROくらいか?
ラボロはコグネイトほどの防御力はないけど、一発バズーカ食らった程度じゃ沈まない程度には耐久力ありそう。
エネルギー兵器兵器の耐性は、元々一発や二発じゃ沈まないくらいだったし、結構高そうだな。
まぁ、当たらないに越した事はないが…
「推力が随分高いが…パイロットにかかるGはかなり高いのではないか?」
うん、これ気になるよね。
あんまGが高すぎてもブラックアウトとかしちゃうし…
俺は、一部のサイボーグ化してる強化人間と違って、足の方に溜まりそうな血液をブラックアウトしないように自動で調節する機能はないしな…
できるのは、筋肉で血液を無理やり送り出したりして気合で耐えるくらい。
「ああ!ご心配なく!コックピットの耐G機能によって、従来の第四世代中量級機…我が社でいう所のラボロとほぼ変わりません!お手元の資料にある通り、かかるGに対してシートが…」
「ふむ、なるほど…」
あー…ほんとだ書いてある。
へー…シートが自動的にGの負荷を逃がしてくれるのねぇ…
むしろ、今までのコグネイトより快適そうだわ。
「頭部のセンサー類ですが、従来の我が社の第四世代機のものより高性能ではありますが…使用する際に消費するエネルギーはその分増えています。消費量は…資料にある通り3割り増しとなります」
「うーむ…ジェネレータ出力と供給速度は?」
「はい、ジェネレーターのスペックは次のページに記載されています。…ご覧の通り、高出力かつ供給速度も非常に高くなっています。ただ、高性能なエネルギー兵器で機体を固める場合は、これでもエネルギー切れになりかねません」
「まぁ、ギャレット最先任上級曹長は実弾武装も交えて戦われるので、それほど関係はないかと…」
なるほど…このセンサー類は性能は良いが…エネルギー消費量がラボロの三割増しか…
まぁ、コグネイトのよりかは遥かに高性能だし、ジェネレーターの性能もいいからそんな気にはならないな。
「なるほど。では、ブースターだが…」
「仕様書の…あっ、次のページをご覧ください」
フーン…推力高いけど…エネルギー消費量が馬鹿高いな。
まぁ、中量級機を軽量級機並みにぶん回せるブースターだもんな。
「えーこちらは“AE-B08-ICARUS”という、その…ロールアウトしたばかりの最新型ブースターでして…推力は凄いのですが…何分エネルギー消費量が凄まじい。ブースターを全開にする際は、機体の制御とエネルギー消費量にお気を付けください」
イカロスねぇ…?
縁起でもねぇ名前だな。
アステリアの連中…俺を試作品や初期ロットのデータ取りに使う気か?
まぁ、いいよ…
「ああ、精々太陽に近づきすぎないように気をつけるさ」
最新型とかプロトタイプってのは嫌いじゃないんでな。
「あ、そうだ。注文していた武装も、一緒に持ってきてくれると伺っていましたが?」
「ええ!もちろん!高出力レーザーライフル“AE-LR22_PHOEBUS”にレーザーブレードの“AE-LB05-PERSEUS”、 プラズマキャノン“AE-PC04-MENELAUS”、プラズマミサイル“AE-PM-03-TRIGLAV”をそれぞれ弾薬や交換用パーツつきセットで三点ずつですね?」
「ええ、そうです。ありがとうございます」
ああ、よかったよかった。
もう持ってきてくれてたね。
「既に機体の塗装は済ませてありますが、これは無料のサービスです!今後とも我が社の兵器を何卒御贔屓に!」
「おお!ありがとう!」
他人の財布でする買い物って最高だよな!(屑)
まぁ、多分武装やパーツをバラで買うのがほとんどだろうな…
それに、“アイアンクラッド・インダストリー”も技術支援を受けながら、コグネイトの耐弾性や信頼性を引き継ぐ第四世代機を開発してるらしいし…
多分、主力機はそっちになると思うな。
「おーい!ジャック坊!機体の搬入と武装の取りつけ終わったぞー!」
「マジかよ!おやっさん、相変わらず仕事が早えな!」
よっしゃあ見に行こ!
「機体を見に行きますが…よろしければ一緒にどうです?」
「ええ、ではお言葉に甘えて!」
なんか誘ったらアステリアの人も来てて草
SAF好きなんか?好きなんだろうな(確信)
アステリアの人と連れ立ってハンガーを移動して、手を振ってるおやっさんのとこへ向かう。
「おう、来たかジャック坊!こいつは中々のじゃじゃ馬だぜ!一握りの奴にしか乗りこなせねぇだろうな!」
おやっさんめっちゃ生き生きとしてるねぇ!
そりゃあそうか!SAFに携わりたいからって、退役後にサリヴァン総司令官の誘いにのって来た人だもんな!
噂の第五世代機とか堪らんでしょうよ!
「ええ!この機体…エクシティウムは、我々開発チームが総力を以って作り上げた、アステリアの第五世代機の標語である高機動・高性能を地で行く、凡夫には扱えない…言わば勇者のための魔剣のような機体ですから!」
チェンさんめっちゃ喋るやん。
つーか、開発チームの人だったのか。
オドオドしてたのに、機体の解説始めたらめっちゃ饒舌だったしな。
やっぱこの人SAFが好きなんだろうな。
「右肩に六連ミサイル…左肩にグレネードランチャー…なるほど?ギャレット最先任上級曹長が、プラズマミサイルとプラズマキャノンを選んだのは、武装の使用感を余り変えないためでしたか…」
おお。一発で見抜いたよ。
流石にSAFの専門職の人は違うわ。
「ええ、講和条約で有事には向こうへ出向するので。補給を考えたら、全部アステリア製品で固められるようにした方が良いと思いまして」
「まぁ、実弾武装の方が効きが良い相手もいるので…ミサイルやグレネードランチャーの弾が払底したら装備するつもりです」
さて、早速試運転したいが…
『六時の方向に海賊と思しき艦影を確認!総員、第一種戦闘配置!繰り返す!総員、第一種戦闘配置!』
鴨が葱を背負って来るとはこの事かな?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
AL4αコロニー近辺。
この宙域に再び海賊の魔の手が迫っていた。
海賊たちは、アルビオン防衛軍の警戒網をすり抜け、10隻の艦隊でコロニーへ押し寄せんとしていた。
「キャプテン!見えましたぜ!あそこにギャレットの野郎がいます!」
下卑た表情の小男が、海賊艦隊旗艦のブリッジにて後ろにいる巨漢に言った。
すると、その巨漢は継ぎはぎだらけの顔で凄絶に笑った。
「よぉし…“出資者”様の情報通りだなぁ?」
このキャプテンと呼ばれた男の名は、スピリドン・メシコフ。
現在、Eランク帯35位のランカーである。
彼は裏社会でも名の通った海賊であり、マフィアやギャングの幹部などを拉致して、惨たらしく皮を剥いで処刑する様をアンダーグラウンドで生配信することから、“皮剥ぎメシコフ”という異名で恐れられている。
「“血濡れの髑髏”に“八つ裂きヘンリー”、“百舌鳥”、“死神”…どいつもこいつも裏じゃ名の通った大物だ…」
「信じられるか?アニェッリファミリーやスターヴィング・ウルヴズなんかは、下の連中にギャレットに喧嘩売るなって言い含めてんだぜ?笑っちまうぜ!」
「馬鹿だよなァ!ギャレットが乗ってんのは型落ちの第三世代機だぜ?こういう時こそ、大企業とのコネを活かさなきゃなァ?」
そう言って、メシコフは凶悪な顔で笑った。
すると、艦橋要員の一人が彼に言った。
なにか異常事態が起きたようだ。
「お頭ァ!ボビーの野郎の船が勝手おっぱじめやがった!赤いSAFを見つけたとか言ってやがります!」
メシコフは溜息を吐くと言った。
「しょうがねぇなぁ…ったく!ヤクはほどほどにしろっつったろぉ…あれだな、後で爪剥がし五枚の刑だな」
「んじゃあ、俺たちもおっぱじめ…」
次の瞬間、彼の視界の端にて閃光が奔った。
「おい!なにが起きた!」
「ボビーの船に通信が繋がりません!奴が…“赤い死神”が来やがった!」
「キャプテン!SAFが次々墜とされてやがる!ああ!?敵は一機だとぉ!?てめぇラリってのか!!!普通あり得ねぇだろ!!!」
手下たちの様子を見て、彼の背筋に冷たいものが走る。
(そんな筈ねぇ!無敵のブレイカースクワッドなんて…単なるまやかしだ!あいつに負けた連中が間抜けだっただけだッ!!!)
メシコフは脳裏を過る、“手を出してはいけない相手に手を出した”という考えを振り払い、ハンガーへ向かう。
「キャプテン!?どこ行くんスカ!」
「俺が直接…ギャレットの野郎の化けの皮を剥いでやるッ!!!」
メシコフはハンガー来ると、彼の愛機“タンナー”のコックピットに入る。
“タンナー”は、タイタン・ヘヴィ・インダストリーズの主力機”THI-MM04-CYCLOPS”を、まるで皮を剥がされた人体のような悪趣味な色に塗装した機体だ。
両手には”THI-MG-03”というマシンガンを持ち、右肩にはレーザーキャノンAE-LC07-ARTEMIS、左肩には”THI-T3-6”という六連誘導ミサイルを装備している。
「あり得ねぇ…あり得ねぇんだよ!この俺が…怯えるなんてッ!!!」
彼は自身の感じ続けているをれを必死に否定しながら、機体をカタパルトに固定する。
「ギャレット…てめぇは…俺に殺されなきゃいけないんだよォ!!!」
メシコフは、膨れ上がるジャックへの恐怖を抑え込むかのように吠え、勢いよく艦を飛び出した。
「どこだ…どこにいやがるッ!」
彼はレーダーを血眼になって睨みながら、冷たい宇宙空間を疾駆する。
そんな彼の正面で、手下の船が次々と爆沈するのが見えた。
そして、レーダーが次々と消えていく味方のSAFと彼の方向に高速で向かって来る反応を捉える。
「い、いたァ!ギャレットォォォ!!!」
彼はブースターを全開にして、ジャックと思われる反応の元へ向かう。
「殺す…殺してやるぅ…てめぇなんざ…てめぇなんざ生きたまま皮剥いで殺してやるッ!!!」
彼が反応の近くに行くと、そこには爆沈する艦に照らされるシャープで洗練されたシルエットがあった。
そして、それは彼の方へ近づいて来る。
「は?おい…冗談だろ?」
それは明らかに、ドラム缶を思わせる見た目のコグネイトから、あまりにもかけ離れた姿をしている。
呆然とする彼へ、追い打ちをかけるかのように表示された情報には、Dランク帯25位ジャック・ギャレットと表示されていた。
「ああ……畜生…畜生…畜生ッ!!!」
なぜ、マフィアやギャングが今のうちにとジャックを叩こうとしなかったのか…
それは、単にジャックが強いからというのもあるが、アステリアと講和が成立した時点で、彼は第四世代機以上のSAFに乗り換えて来るのは秒読みだったからだ。
そんなこともわからない愚か者は、こうしてめでたく地獄を見る事となった。
「だったらァ…実力でねじ伏せりゃいいだろうがァ!!!」
メシコフは、“タンナー”の右肩のレーザーキャノンを発射しながら、両手のマシンガンで弾幕を張る。
しかし、“赤い死神”は高出力レーザーと鉛玉の弾幕を踊るようにすり抜ける。
「クソ!クソ!クソォ!!!」
彼は恐怖に歪んだ顔でモニターを見つめ、自身に向かって猛スピード突き進む赤い機体を消し去ろうと操縦桿を引く。
“タンナー”は後方に下がりつつ、ミサイルを放ちながらマシンガンを発砲。
「来るなッ!来るなァァァ!!!」
ミサイルをレーザーで迎撃し、マシンガンによる弾幕をすり抜ける“赤い死神”。
赤いSAFは先ほどの仕返しとばかりに、“タンナー”へレーザーを撃ちながらミサイルを放った。
「ミサイルッ!?こんなもん当たるかよォ!」
下位とはいえ腐ってもランカー。
彼はレーザーによる射撃を躱しながら、ミサイルを迎撃する。
だが、赤いSAFは彼の動きを先読みし、偏差射撃でレーザーを当てた。
「ぐっ!?クッソ…一発食らった!“出資者”からこの機体を都合して貰ってなきゃ死んでたぞ…!」
“タンナー”のコックピット付近に当たった一撃は、装甲を少し溶解させたが奇跡的に機体の機能には一切支障がなかった。
そこへ、すかさずグレネードランチャーの榴弾とミサイルが飛んで来た。
「は…ははは…はははは!!!なんだよ…新型って言っても大した事ねぇじゃねぇかよぉ!ええ?ギャレットくんよぉ?」
「全然攻撃が当たってないし、当たっても大して効いてねぇじゃねぇか!!!」
メシコフは、自身が一度も攻撃を当てられていない事を棚に上げて、ジャックを嘲笑する。
(俺なら殺せる…勝てる…勝てるんだッ!)
彼は凶悪な笑みを浮かべながら、ミサイルと榴弾へ向けてレーザーキャノンを発射。
六発のミサイルと榴弾によって大きな爆発が起きる。
「は…ははは!!!やっぱてめぇは大した事ねぇんだよ!ジャック・ギャレットォォォ!!!」
メシコフは、ジャックを殺しコロニーを略奪しつくした後、ジャックに怯えていた裏社会の大物たちを屈服させ、大企業や元老院すらも跪かせる未来を思い描いた。
しかし、その愚かな誇大妄想は爆炎の向こうから、間を置かずに放たれた一発のレーザーに中断させられる。
「…あ?ぐわっ!?クッソなんだ!?」
一発のレーザーが左肩のミサイルポッドを直撃。
中のミサイルに誘爆し、機体に大きなダメージを与えたのだ。
「く、クソォ…左腕は…使えねぇだと!?」
しかし、それを嘆く暇はない。
回り込んできた“赤い死神”が、レーザーを放ちながらミサイルを撃ってきたのだ。
「クソ!クソ!クソォォォ!!!どこで…どこで間違えた!なにを間違えた!」
彼は残った右手で必死にミサイルを迎撃しながら、ブースターを吹かして不規則に動きながら赤いSAFと距離を取ろうとする。
「レーザーキャノンさえ…レーザーキャノンさえ使えりゃ…左腕が無くたって!」
今レーザーキャノンを使えばエネルギー切れを起こし、一瞬ブースターが使えなくなって距離を詰められるため、決して使う事が出来ない。
「ぬわっ!?」
“タンナー”は飛んで来たグレネードランチャーの榴弾を躱す。
次の瞬間、ブースターを全開にした赤いSAFが強襲。
「ぐわああああッ!?」
スピードを緩めることなく“タンナー”の胴を蹴り抜いた。
「あ──」
衝撃で一瞬意識の飛んだメシコフ。
彼が最期に見たのは、“赤い死神”が振るうレーザーブレードの光だった。
次の瞬間、“タンナー”は主諸共爆散。
宇宙の藻屑となった。
『こちら、ジャック・ギャレット。敵ランカー、スピリドン・メシコフを撃破。これより残敵の掃討に移る』
こうして、愚か者がまた一人“赤い死神”に命を刈り取られた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ふー…よかったよかった…
いやぁ…新車は最高の乗り心地だね!
「第五世代機か…凄まじいな」
いやぁ…こうして乗ってみると…マジでやべぇな。
よく俺はユリウスに勝てたなって…
「「「「バンザーイ!!!バンザーイ!!!バンザーイ!!!」」」」
え?なんか知らない連中がハンガーで万歳三唱してんだが?
…とりあえず機体を降りるか
「おう、戻ったなジャック坊!」
「どうでしたか!最高の乗り心地でしょう!?」
あ、おやっさんとチェンさんだ。
乗り心地か…そうだなぁ
「最高の乗り心地だった。だが、次は操縦桿の遊びを少なめにしてくれ」
まぁ、精々微調整ってとこよね。
機体自体は文句なし。
最高だね!
「しかし、あそこで万歳三唱してる人たちはどこの誰なんだ?」
全員見覚えのない顔なんだよなぁ…
アステリアのスタッフか?
「ああ、彼らは私と一緒に来たアステリアのスタッフです。搬入作業のためにこの艦にいたんですよ」
「相手の機体はタイタン・ヘヴィ・インダストリーズのサイクロプスだったでしょう?ランカーの乗った、敵対企業の主力機を我が方の最新鋭機が無傷で撃破してるんだから、万歳三唱するのも無理もないですよ!」
「なるほど…」
そういうもんなの?
まぁ、いいや…
「そういや、ジャック坊。せっかく新型になったんだ。そろそろ機体名決めたらどうだ?」
おやっさんもそう思う?
まぁ、そうね…そろそろ決めようと思ってたんだわ。
候補の中から、今の俺の状況に相応しいやつがあったし…
そうだな…それにするか!
「ああ、実は考えてるのがあるんだよ。“ハングドマン”だ」
「“ハングドマン”吊られた男ねぇ…“自己犠牲”や“忍耐”か…エンブレムとして、機体に吊られた男を描くかい?」
「ああ、左肩に描いてくれ」
まさに今の俺にぴったりだよなぁ?
態々、アステリアに出向するんだから…
向こうのお仲間殺しまくってるから、ぜってぇ針の筵だぜ?
講和が成立して、ユリウスも帰ったし…
向こうで直接の上役があいつだったらクソほど気まずいし、扱い悪そうだから勘弁してほしいね…
高評価とブックマークありがとうございます!
これを励みにこれからも投稿を続けていきますので宜しくお願い申し上げます!




