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第二十三話

メインヒロイン?の登場回です!

「──それでね!カミラったら私があなたに惹かれるのはおかしいって言うのよ?あんなに気持ちの籠った贈り物と言葉をくれたのに…ねぇ?」

「ははは…いやぁ……それは…妹さんが正しいと思うなぁ…ほら、あれ…よくよく考えたら大人の男が…その、レディにプレゼントするものじゃないしさ…」


 だれかたすけて


 今カフェにいるんだけど…本能的に身の危険を感じたのか、周りの客はみんな逃げるように会計して出てった。

 店員もこっちに近づかずにチラチラ様子を伺ってる…

 おい!俺はお前らの英雄だぞ!?身を挺して助けようとは思わねぇのか!?

 この非国民どもめが!


 休暇取れたと思ったら、バレット中尉たちみんな仕事だったり予定があったりして、暇だからAL4αコロニーの街をぶらぶら歩いてたら…

 “だ~れだ!”って突然後ろから目を隠されて…


「もう、ジャックったら!そんな事気にしなくてもいいのよ?…むしろ、貰ってばかりじゃ悪いし…私からもプレゼントしなきゃよね!」

「ッ!?い、いやぁ!そんな事ないさ!君みたいな素敵なレディと、こうしてお茶ができるだけで十分嬉しいさ!!!(必死)」

「まぁ!お上手!」


 後ろの正面“ワルキューレ”(戦慄)


 最悪のかごめかごめだな!

 俺がなにしたっていうの?

 確かに自分の都合で殺しまくり壊しまくりのパラダイスだけどよぉ…

 ここまでされる謂れは無くない?


「しかし、驚いたな…まさか…君がこんな地方まで来てくれるとは…」

「うふふ…だって…ジャックは中々会いに来てくれないじゃない」


 怖い怖い怖いぃぃぃ!!!!!

 このメンヘラ戦乙女目に光が無いよ!?

 いや、俺が酔っぱらってやったこと次第じゃ、10:0で俺が悪いのか!?

 俺、“必ず君に会いに行く”とか約束したんか!?


 いや、俺は悪くない(確信)

 なぜなら俺は悪くないから(暴論)


「いやぁ…ははは…その……すまない、仕事が忙しくてね…中々会いに行けなかったよ」


 だから殺すなら俺じゃなく海賊どもやアステリアにしてください。


 アッ!ヤバい!不服そうな顔してる!ほっぺ膨らませてる!

 見た目は可愛いけど中身はバケモンだから怖い!!!


 …普通に考えて、この期に及んで仕事のせいにしてる俺って屑なのでは?

 恋人や夫婦間の仲が拗れる原因し、仕事を優先することもあるしな。

 まぁ、俺この怪物女と付き合った覚えはないがな!


「むぅ…そうね…ジャックはここの星系を守る大事なお仕事があるものね…」


 え?わかってくれた…?

 この娘意外と…いや、普通に良い子なんじゃ?

 むしろ、この子をバケモン呼ばわりしてる俺のが酷い奴じゃね?


 いや、普通にバケモンだわ。

 あぶねーあぶねー…危うく外見に騙されそうになったわ。

 こいつの見た目は俺のタイプの超絶美女だけど…初陣で俺の上官や先輩たちをぶち殺しやがって、その後何度も戦場で殺し合った相手じゃん。


 え?そんな相手を前にしてこれ?こいつこわ…

 恨まれてるとか思わんの?

 食玩渡しながら口説いてた奴が恨んでるとは思わんよな(納得)


 まぁ、実際恨んでないし…

 殺してりゃ殺されるんだ。

 哀しいけど仕方ない。


「それに、私だって色々仕事があったから…あの後、全然あなたに会いに行けなかったものねぇ…」


 ちょっとー!“ヴァルハラ・サイバネティクス”?

 もっとこいつが過労死するくらい滅茶苦茶仕事を振れよ!!!

 そのせいでこうして嬉しくねぇサプライズかまされる羽目になったじゃん!!!


 いや、“だ~れだ!”されたときに背中に当たってたデカπは嬉しいサプライズだったか?

 やってたのがヒルデ・ブランデンブルクでなければ…


「でも…なんでメッセージに返信くれなかったの?」


 うわぁぁぁぁ!!!!また目からハイライトが無くなったぁぁぁ!!!!

 なに?ハイライトくんお散歩!?戻ってきてぇぇぇ!!!


「メ、メッセージ?…俺のメッセージボックス(メールボックスみたいなの)には君からのは無かった筈だが…アドレスを間違えていないかい?」


 つーか、俺アドレスを交換した覚えはない…

 酔っぱらって食玩渡したときか…


 …違う!その辺のタンポポ引き抜いて渡したとき、こいつがやたら喜んでて“おもしれー女”って思ってデートした時だ!

 なんで変装してたとはいえ逆ナンしてきたこいつが、あの“ワルキューレ”Aランク帯5位の怪物…ヒルデ・ブランデンブルクだってわかんなかったんだよぉ!

 もうその頃にはこいつは“ヴァルハラ・サイバネティクス”の広告塔だっただろ!?


 普通は“ワルキューレ”が逆ナンするとは思わねぇからしょうがないよな!


「間違えてなんかないわ。あなたが教えてくれたアドレスよ?あなたがアドレスを変えてなきゃ…ほら?」


 おっ!“ヴァルハラ・サイバネティクス”のグループ企業が出してる最新機種じゃん!

 性能は微妙だから、こいつに水着着せてCMやら広告やら作って、売り上げなんとか伸ばしてるんだってね。


 どーせちょっとしたスペルミスでアドレス間違えてんd…うわ!?なにこの件数ヤバ!

 999+!?これ999件以上送ってなきゃ出ないよ!?

 こいつやっぱ頭おかしいって!!!


「あ、あぁ…じゃあ確認させてもらうよ……え?」


 間違いない…俺のアドレス…?

 なんで?

 あっ、思い出した!デートした後、敵がいつでも自分の寝首を掻けるとこにいたと知って、滅茶苦茶ビビッて受信拒否にしたんだった!


 え?これバレたら殺されない?

 もしかして、食玩あげた時こいつが俺の近くに来てた理由は…

 …ヘラって殺しに来てた?


「ほら…あってるでしょ?なんで返信してくれなかったの?…あっ、言い忘れてたけどこの前のお手紙のお返事ありがとう」


 こいつの情緒どうなっての?

 手紙のお礼言ったときだけは目にハイライトが戻ってたな。

 構われないのが嫌なんか?

 こいつかまってちゃんなんか?

 めんどくさ…


 手紙の返事はほぼ“ヴァルハラ・サイバネティクス”からの親書だと思って、サリヴァン総司令官からも“すぐに失礼じゃない断り方で返書を書け”って厳命されて、ヴァレンタイン議員の秘書に添削してもらって書いたっけ…


 秘書さん“だ、大企業への親書の添削とは…責任重大ですね”って冷や汗掻きながら言ってたし…

 ヴァレンタイン議員の愛の鞭だね。

 あの人は将来議員の基盤を引き継いで政治家になるのかな?


「あ、あぁ…そうだな…うん、アドレスはあってるんだが…俺の端末には…どういうわけか…君のメッセージが届いてないんだ。ほら、見てくれ」


 とりあえず端末を見せるか…


 あっ、そうだ!端末の調子がおかしいから、最近機種変したって事にしよう!

 実際、アンジェラちゃんの一件で端末お釈迦になって、端末を新しくしたしね!


 それに、最近アンジェラちゃんのパパのデリックさんが高級車(しかも新型車でオプション全乗せ防弾仕様!)と、この最新式アステリア製端末をくれたんだよね!

 いやぁ!金持ちってなぁ豪気でいいね!


 よし!前の端末が悪かった事にして切り抜ける!


「実は──」

「は?(威圧)ねぇ、ジャックこのサラとアイリって娘は誰かしら?なんであなたにデートを申し込んでるの?」


 コールリッジ軍曹…カウラネン少尉…

 お前らなんてことしてくれてんの?

 俺になんか恨みでもあんの?

 なんで俺にデートなんか申し込んだの?


 …俺がイケメンだからか!(納得)


 なんでこうなるんだよおおおお!!!!

 タイミング最悪すぎんだろおおおお!!!!


「それは俺がイケメンだからだ」


 ヤバい…ビビりすぎて変なこと言っちゃった…

 一体俺はなにを言ってるんだ?


「イケメン過ぎるから同僚がアプローチして来るんだ。プライベートの話はそんなにしないから、きっと俺はフリーだと思われているんだろうな」


 きっともなにもフリーなんだけどね?


「なにせ、俺の階級は最先任上級曹長…区分上は中将より上で、正式な場でも大将と同等の扱いを受けられる。おまけにランカーでマッチョでハンサムな優良物件だぞ?」

「まぁ、二人にはできる限り傷つけないように断るつもりだったさ!」


 もうどうにでもなれ☆


「ああ…そうね!ジャックがフリーだと思っていたなら、そりゃあ狙うに決まっているものね!」


 よっしゃぁぁぁ!!!!

 賭けに勝ったぞぉぉぉ!!!!!

 俺は生き延びたッ!


「まぁ、そういう事だ。それに…ほら、君の送ってくれたメッセージは本当にないだろ?」

「ええ、本当にないわ…間違えて迷惑メールの方に行ってないかしら?」


 よし!よし!!!

 このまま誤魔化せぇぇぇ!!!!


「そうかもなぁ…一旦端末返して?」

「はい、どーぞ♡」

「うーん…ちょっと待ってくれよ?」

「はーい♡よいしょ…」


 おい…なんで俺の背後に回る?

 なんで俺の首に抱き着く?

 なんで肩の上に顎を乗せてる?

 思いっきり端末の画面見ようとしてない?


 ここカフェの店内だよ?常識無いの?

 無いな!(確信)

 あったら、上官と戦友ぶち殺した相手を逆ナンしたり、その辺のタンポポを渡してきた相手とデートしたりしねぇよな!


「ああ、うん…メッセージはここに入ってたのか…すまない、俺はあまりこういう機械には詳しくないんだ…次からは気を付けるよ」

「よかったぁ♡ジャックは私の事を無視してたわけじゃなかったのね」


 うん、無視どころか無かったことにしようとしてたよ。

 つーか、耳元で囁くのやめて?


「あー…ヒルデ?」

「なぁに?」

「ここは、カフェの店内だから…店員さんに怒られる前に席に座ろうな?」

「はーい…」


 ガキかよてめぇは…

 年齢20代の大人の癖に、落ち着きのねえガキみてぇなことしてんじゃねぇよ!

 俺と同年代…誕生日考えたら俺より年上だろオメェは…


 …こいつは本当に見た目通り大人なのか?

 公式発表では二十代ってことになってるが…

 こいつヴァルハラの会長令嬢なのに、十代後半で病気が完治するまで外へ出られなかったとかで、長い事社交界にも姿を現さなかったらしいな?


 …本当は、そんな過去なんか無くて…“造られた”のは最近って可能性が?

 妹の…カミラってやつも病気だったとかで…他の下の妹は普通に箱入り娘だったとか聞いたな…

 で、みんな強化人間のSAFパイロットで何人かはランカー?

 怪しいにもほどがあるな…


 つーか、あそこの最新型強化人間手術って成功率低いだろ?

 いくら被検体を大量に犠牲にしたからって…社長の娘が全員生還できるほど、成功率は上がらんだろ…

 何人死んでる?


 やめよう…闇が深いし、俺が幼女とデートして、長い事放置した挙句酔っぱらって口説いた屑になってしまう…


「ところで…」

「なぁに♡」


 うーん…このニコニコして首傾げるの可愛いねぇ…

 でも、中身ヤバ女通り越して社会の闇なんだよなぁ…

 生きた厄ネタだよこの娘…


「その…今日は本当に俺とお茶をしに来ただけなのか?いや!それでも全然構わないんだがな!?」


 俺がそう言うと彼女はニコニコしながら…しかし、少し困ったような顔で口を開く。

 やな予感…


「そうだったらよかったのだけど…今回はお父様からの伝言を伝えに来たわ」


 うわぁ…すげぇヤバそう…


 …あのヒルデさん?

 なんでこっちに寄って来るんですか?

 あの…耳元で何する気?


「“タイタン・ヘヴィ・インダストリーズ”はアルビオン星系に報復を企図しているわ。あなたが“アステリア・エレクトロニクス”の要請で出向した時が狙い目よ」


 なんで今から大体…4時間後に正式に発表される講和の条件知ってるの?

 この後正式に調印式するのよ?

 どこから漏れた?


 …意図的に誰かが漏らした?

 ヴァレンタイン議員がやってるんだといいが…

 それなら、ヴァルハラ相手に手紙を利用した義理を果たしたとか、いざって時の為に交渉してたとかで説明つかなくもないしね…


 うん?講和条件漏らしたら不味いのに教えるのか?

 そうだね!無断で漏らしてバレたらヤバいよね!

 問題なかったらバレなかったか…黙認されたか…ヴァルハラとアステリアを抱き込んでなんかやってるかだな…


「それともう一つ…アステリア社内にあなたの動向を漏らしてる者がいるわ」


 なるほど…大方ここの星系を攻めるって決めて、負けて面子潰されたって連中が報復でやろうとしてるか…

 それか…焼け野原のアルビオン星系を経済植民地化しつつ、ここの防衛戦力として俺を行動不能にするって事か?


 そうなったら、わざわざ俺の事を他の条件を譲歩してまで講和条件に入れたメリットもないし、アルビオン星系は役に立つどころか勢力圏として復興のための物資や金を都合しなきゃいけない完全なお荷物になるわけだ。

 そうなると…最初から侵略して火の海に変えて、一から自分たちで作り直したって同じだし、その方が面子が傷つくこともなかったと…


 なるほど…社内での権力闘争“だけ”を考えるなら悪くない手だな。

 問題はここを占領されたら、戦争で戦力浪費した上に講和条件譲歩してまで勢力圏に加えた星系を、ライバルにボコられた末に失うってわけだ…


 最悪じゃん。

 面子丸つぶれな上に、相手が大企業だから報復も慎重にやらないと、大企業同士の潰し合いっていうなんの特にもならない地獄になりかねないと…

 で、報復しないと周りからは報復できないほど落ちぶれたと思われて、勢力圏貪食祭りの上に反乱起きまくりの奇跡のカーニバルだな!


 しかし…


「なぜ…それを俺に?直接ヴァレンタイン議員の元へ行って、そこで彼に伝えればいいのではないか?」


 実際それに尽きる。

 なんで俺にわざわざ伝えたんだ?

 こいつは…一体なにを考えている?


「ああ、このことは三日後お父様と表敬訪問に向かう時に、お父様から議員に詳細を伝えるわ。でも、あなたがこれを上にすぐ伝えれば…ヴァレンタインのおじいちゃんはどう思うかしら?」


 …自身の頭を飛び越えられて不快に思うんじゃ?


 いや、これ…俺を囲い込もうとしてる!?

 だって、“ヴァルハラ・サイバネティクス”会長の娘婿になり得る相手になにかしたとか…

 確実に報復されるからな。

 それに、なにかした相手が俺だと…軍が動いてくれるかもわからんと…


 それに、あくまでも…詳細は俺ではなく議員に教えるなら…俺は伝言係の小僧って程度で済ませてくれる?


 そもそも…俺表敬訪問のこと知らんけど?

 軍とかが警備固めなきゃならんのに…俺が知らないってなると…

 マジで軍の上層部のごく一部しか知らされてない…ガチガチに情報統制してるって事か?

 じゃあ…これヴァレンタイン議員は俺の方に先に情報が行くって知ってるんじゃね?


「俺が…この情報をどう扱うか…試してるってことか?俺が迂闊な奴じゃないかどうか確かめようって?」


 つまり…俺はこの情報をできる限り漏洩しないようにしなきゃならんわけだ…

 もう基地に戻ったら暗号通信でいいよな!うん!


 どうせ漏れたら漏れたでなにか考えてんだろ…

 俺が期待外れだった場合の事を想定できないのが、議員や大企業のトップなんぞ務まらんだろうしな…


 なんで俺がこんなことに関わらなきゃならんのだ(憤怒)

 俺は一エースパイロットとして、雑魚狩りしながらチヤホヤされたかっただけなのに!


「ふふふ…お父様はあなたに期待していらっしゃるわ」

「ヴァレンタイン議員も…か?」

「うふふ…」


 こわいやだおうちかえりたい

 ぽんぽんいたい


「わかった…すぐに基地へ戻り、暗号通信で上に伝えよう。…それにしてもこんな街中にあるカフェの中で話してよかったのか?」


 うん、マジでね。

 それでお前が処分されるなら兎も角、連座で俺も逝ったら最悪なんだけど?


「あら、私がそんなに迂闊だと思って?」

「なるほど…」


 不自然にぞろぞろと出て言った客はそういう事か…

 全員サクラで実質貸し切り状態だったのか…


 横目で店員を見る。

 ニッコリと笑顔浮かべて会釈してくる。


 なるほど…この店自体がヴァルハラの仕込みだったのか…

 随分大掛かりな…


「ここのコーヒーは好きだったんだがなぁ…これが終わったら無くなったりしないかい?」

「心配しないでジャック。ここはこれからも営業を続けるわ」

「そいつは良いニュースだ」


 行きつけの店が無くならないのはせめてもの救いか…


「だからこの店はこれからもデートで使えるわ!」


 救いはないの?


 しかし、この店自体が仕込みか…

 そうすると…メッセージに関する件は…客を全員退出させるまでの時間を稼ぐための狂言か?


「メッセージの件だが──」

「もちろんこれからはちゃんと返信してくれるわよね?ね?(圧力)」

「はい」


 違った。こいつ普通にヤバい奴だった。


 助けを求めるように店員の方を見る。

 無言で顔を背けられた…

 こっちを向け(怒)


「あっ、支払いなら気にしなくていいわよ?今回は“私たち”のおごりだから」

「そうか…それじゃあ、レディを置いて行くのは名残惜しいが…仕事はすぐに済ませなきゃな。基地に戻って暗号通信で今のを伝えて来る」


 一刻も早くここから逃れたい。


「そう、それは仕方ないですわね…」


 残念そうにしてる。

 見た目が良いから一瞬可哀想とか思っちゃった。

 俺が前世の容姿だったら、もう思いっきり引っかかって何もかも彼女に捧げてたかもな。


 やっぱ自分の顔が良すぎて、可愛ければ何でも良いの精神が無くなったのが痛いな。

 それがあれば苦しまずに済んだのに…

 まぁ、仮にそうだったら破滅に向かって一直線になるだろうがね!


「じゃあ、私は明日の朝までこのコロニーにいるから、デートしたくなったら連絡してくださる?(圧)」


 めっちゃ笑顔で圧かけてくるじゃん…

 そんなにデートしたいのか…


「ああ、終わったら連絡する」


 休日が接待で潰れるサラリーマンってこんな気分?

 いや、命の危険が無い分あっちのがマシか…



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「──という訳でタイタン・ヘヴィ・インダストリーズは俺がいない時に来るっぽいですよ」

『そうか…そうか…ふぅぅ……』


 サリヴァン総司令官めっちゃ頭痛そう。

 俺も頭痛いわ。


 この後、頭痛の素とデート…マジで勘弁…

 裏の事情知らなきゃ喜べたんだがねぇ…

 あれ、厄ネタ塊だし…


『…詳細は表敬訪問の際に伝えるそうだな』

「はい、彼女はそう言っていました」


『…今回の表敬訪問をお前が知らないという事は…どういうことかわかっているな?』

「総司令官たち以外は限られた人間しか知らない案件ですね?」

『そうだ…はぁぁぁ……ジャックが条件で…したのは……だったか…』


 うーん…今小声で俺のがどうのこうの条件がどうのこうのって言ったよな?

 あれか?警備担当から俺を外した?

 わざわざ俺を見極めるために?なんで?

 まぁ、いいや…知ったところで面倒なだけだ。


 そろそろこの人の胃に穴空きそうだよな。


『お前の…秘匿回線で連絡するというこの判断は正しい。すぐに狸ジジ…ヴァレンタイン議員に伝えておこう』


 今、この人狸ジジイって言いかけた?

 こりゃあかなり弱ってるな…

 あの人が狸な訳ないじゃん!


 ありゃ毒蛇だよ。

 それも噛まれると、のたうち回って苦しみ抜いてから死ぬ毒を持ってる。


『…お前も災難だったな』

「はい、この後“ワルキューレ”の接待です。なんであいつ俺に執着するんですかね?」

『うわぁ…』


 マジでなんでなんだろ?

 顔“だけ”なら俺と同じくらいの男が求婚してきたりとかしなかったん?


『これは俺の予想だが…彼女の周りの男は、彼女の事を自身の人生の勝利の証である、単なるトロフィー兼情欲の捌け口としてしか見ていない』

「あーそれわかります。俺もよく名声と顔目当てのクソ女寄ってきますから!」

『俺も!』


「仲間っすね!最悪だ!」

『おう!最悪だな!』


「『HAHAHAHAHAHA!!!!』」


 いやぁ…マジで有名人になると蛆虫みてえなのが這い寄って来るんだよな!

 糞が!


『で、話を戻すぞ』

「はい」


『まぁ、彼女のまわりには彼女を道具として扱うか、股間と脳が直結した奴しかいなかったわけだ。そこに超絶イケメンのおもしれ―男の登場ってわけだ!』

「え゛?俺その辺のタンポポ引き抜いただけですよ?しかも、その前に逆ナンされて断ってますよ!」


『だから面白いんだろ?』

「確かに、俺のこのハンサム顔に靡かないやついたら“おもしれー女”って思います!」

『だよな!俺も!』


『で、お前は一歩前に踏み出せないティーンエイジャーみてぇに、デートした後ホテル行かなかったんだろ?』

「はい、普通に一緒に遊びました!楽しかったです!」

『おお。銀河で唯一“ワルキューレ”とデートした男の貴重な意見だな!』


 普通に一緒に遊園地行っただけだったんだよな。

 この世界マジで庶民の金じゃ遊園地のチケット買えないんだよなぁ…

 今の給料なら買えるし、なんなら永年パスポート(二人までなら無料で入れる)とか貰ったから今すぐ行けるしね!


 遊園地すら一部の特権階級の娯楽って凄いね…

 遊園地貸し切って養護施設のガキども連れてったら、俺この星系に永遠に残る伝説になれるくね?


『つまり…お前は逆ナンを一回断って、性欲を剥き出しにしなかったわけだ…よく我慢できたな!ブレイカースクワッドで我慢できそうな奴は俺とお前以外いないし、ウィリーのやつなら最初からホテル行く前提でデートするぞ?』

「そりゃあ…付き合ってるわけでもない相手とそんな関係になるつもりはないし…なによりあちこちで恨みを買ってるのに、そんな無防備な状態を晒せるわけないじゃないですか…」


『お堅いな!まぁ、おかげでお前がハニートラップに引っ掛からないから安心だな!』

「ぶっちゃけ、できちゃったとかで責任取りたくないです!」

『ヤればできるがヤらなきゃできないもんな!』


『「HAHAHAHAHAHAHA!!!」』


 そっかぁ…おもしれー男に見えたのか…

 それだけでここまで執着する?


「でも…それだけでそんな執着します?」

『お前速攻で彼女のアドレスを受信拒否にしたろ?』

「はい」


『メッセージ送るって言ったんだろ?』

「はい」


 おい…まさか…これが裏目に出たのか!?


『で、ガン無視してたわけだ。なぁ、ジャック…ワインってどうやって作るか知ってるか?まあ、詳細は省くが潰したぶどうを密閉して発酵させるんだ』

「あー…出来上がっちゃったんですね」

『いや、その時は多分まだ発酵はしなかっただろう…精々ぶどうを潰しただけだ…』


『だが…それだけなら…多分、問題なかったんだ…』

「ま、まさか…」

『ごめんな…止めてやれなくて』


【悲報】食玩渡しながら情熱的に口説いたのが不味かった


「そんな…馬鹿な…あり得ない…」

『まぁ、ここでお前が素面なら…彼女を上官の仇やらなにやらって言って拒絶して終わってたし、向こうもそれで納得したんだろうが…』

「でも…そんな…ここまで……あり得ない!」


『まぁ、嫌われたと思ってた気になる相手が熱烈に口説いてきたわけだ…で、自分から送ったメッセージは無視されるし、全然会いに行けないと来たものだ…』

「発酵されちゃったの…?」

『ああ、芳醇にな』


「俺が…イケメン過ぎたのが悪かったのか…!?」

『なにを馬鹿な事をと言いたいが…マジでその可能性が高いよな。でも、考えてみたら当然か』

「なにがです?」


 いくらなんでも…おかしいでしょ!?

 俺がイケメンだからって!!!


『だってお前…顔だけじゃなく軍人として優秀だろ?そして、パイロットとしてもトップランカー級、極めつけは強化人間を平気でぶちのめせる圧倒的な生身での戦闘能力…』

「守られたくなっちゃった?」

『その可能性が無くはないが…本質はそこじゃない』


 じゃあ、なんだよ…

 俺がイケメンで強いから守られたくなったんじゃなきゃなんだよ!

 俺に近づく女の何割かはそうだったぞ!?


『お前は彼女が守らなくてもいい相手だ』


 は?何言ってんの?

 あいつが俺の事守らないのは当たり前だろ…


 ん?そういう事じゃない?

 じゃあ…あっ


「弱みにならない…!」

『そういう事だ。彼女を服従させようとお前を拉致して人質に取ろうとしたらどうなる?』

「下手人どもぶちのめした後拷問加えて、目的と裏で糸引いてる奴を吐かせて、黒幕気取りのゴミを惨たらしく殺します…」

『お前俺が思ってるよりやべー奴?まぁ、そういう事だ。お前は身内に加えても守るどころか、逆に守ってさえくれるってわけだな』


『で、それがイケメンな上におもしれー男な訳だな。そりゃあ逃がさんよな』

「じゃあ、彼女が異様に重いのは?」

『そりゃあ多分本人の気質じゃね?』


 適当だな…

 つまり、あれか?俺は銀河一強いメンヘラに関わっちゃったのが運の尽きってこと?

 せめて顔と能力のどっちかが低けりゃマシだった?


『後は…』

「まだあるんですか!?勘弁してください!」

『ああ…ちょっと…この残業と連勤を繰り返した頭脳に…最悪な想定が浮かび上がってな…聞きたくないなら構わないが…どうする?』


 この人の言う最悪の想定って結構当たるんだよなぁ…

 一応聞いておくか…


「聞きたくないですが、いつも戦場で総司令官の最悪の想定が当たってたので…どうかお聞かせ願います…」


 あー…やだ!聞きたくない!


『うむ…そうか…“ワルキューレ”に関する噂っていくつもあるよな?』

「はい、あいつらはクローンだから、死んでも代わりが出てきて“ワルキューレ”を継承するだとか…“ワルキューレ”姉妹の僚機のエインヘリヤルって男性強化人間たちは、実は拉致されて洗脳された後、強化人間にされた行方不明の下位ランカーだとか…どれもこれも碌でもないですね」


『その中に、彼女たちは…病死した会長の娘の遺伝子を改造して作った素体に、最新式の強化人間手術を施したものって説があるんだが…』

「もしかして…見た目より実年齢はずっと幼いとか?」

『そう、それだ…』


 病死した会長の娘の遺伝子で作ったって話は知らなかった…


 しかし、実年齢幼女説か…あの態度といい…食玩で喜んでたのといい…

 妙に信憑性があるような…

 これのなにが嫌って…実年齢幼女のヒルデに何人もの男が求婚してるし、性的な目で見てるってことね?

 で、なにが最悪って俺が幼女とデートした人になること…


『それで…精神年齢って…肉体と同じ年齢にはならないよなって…』


 待て…おい…じゃあ…ヒルデの中身って幼女なわけ?

 俺は実年齢も精神年齢も幼女な相手とデートしたってこと?

 つまり…ヒルデ・ブランデンブルクは幼女?

 俺はペドフィリア?

 俺の英雄として築き上げた全ては……何もかもおしまい?


 くぁwせdrftgyふじこlp


「くぁwせdrftgyふじこlp」

『うわぁぁぁぁぁぁ!!!???ジャックが壊れた!?』


『落ち着け冷静になれ!!!』

「こんにちは、どうもペドフィリアです」

『正気に戻れ!!!!』


『俺が今から言う事を復唱しろ!』

「ふくしょう?」

『そうだ!まだ手を出してない!』

「まだてをだしてない」


『一緒に遊園地に行っただけ!』

「いっしょにゆうえんちにいっただけ!」

『実質保護者!』

「実質保護者!」


『サリヴァンが勝手に言ってるだけ!』

「サリヴァンが勝手に言ってるだけ!」

『ジャック・ギャレットは馬鹿』

「ジャック…ちょっと!?」


『おう、正気に戻ったか。全く…おかしなことを気にする奴だな…手を出してないなら問題ないだろうに…』

「お、お手数をおかけしました…幼女とデートしたのがショックで…」

『法律上、彼女の年齢はお前と変わらないし、多分おそらくきっと捕まりはしないから安心しろ…それに、あくまでも俺の予想だからな』


 すみません…デートの時別れ際にキスしました…

 しかも、ディープなやつです。

 墓場まで持って行きます。

 マジで幼女だったら殺されかねないので…


『普通に考えたら面食いのイカレ女ってのが有力だろうな』

「…そうですね!」


 でも、技術的には可能だから倫理とか無視すれば普通にできそうな時点で、転生してきた俺よりよっぽどあり得そうなんだよなぁ…


『報告は以上か?』

「はい、雑談にまで付き合ってもらってありがとうございます」


『気にするな!俺も色々ありすぎて、気分転換したいし胃に穴が空きそうだったんだよ!まぁ、お前が壊れたままだったら胃が蜂の巣だったけどな!じゃあ、デート逝ってらっしゃい』

「は!ありがとうございました!」


 今、いってらっしゃいのニュアンスおかしくなかった?


 まあ、とりあえずこれ以上胃が痛くなるようなことはそうそう起きないだろ…

 起きないよね?(懇願)


 俺は基地を出て端末を開く…

 “着信25件”、“新着メッセージ62件”


 胃が痛い


よかったな!ジャック!

お前に相応しいヤバ女だぞ!


高評価とブックマークありがとうございます!

これを励みにこれからも投稿を続けていきますので宜しくお願い申し上げます!

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