第二十二話
早くジャックを地獄に叩き込みたい。
強化人間たちは未成年は里親か養護施設、それ以外の過半数は下士官養成所に引き取られてった。
パイロットにならん奴は、みんな後方とかで軍務に従事するらしいけど、ジョン・ドゥの野郎が拉致した人のほとんどは傭兵なんかのSAFパイロットたちが多かったしなぁ…
「喜んでたなぁ…定期的に機体の整備が受けられて、信頼性の高い正規品のパーツや装備を使えるし、割の良い依頼を見つけなくても給料出るから金欠にならないとか…」
元々は、あんな雑魚どもにボコられて拉致されて売られかけるような、うちの連中と遜色ないカスパイロットだからなぁ…
それが、ランカーの傭兵みたいに第四世代機に乗ったりできずに、非正規品のパーツすら組み込んでる第三世代機以下の機体に乗ってるんだからな…
そりゃ稼ぎもしょぼいか。
「そう考えたら、連中からしたら真っ当な組織に正規雇用ってだけで嬉しいんだろうな。まともな機体も支給されてるし」
「強化人間になったおかげで、バレット中尉未満の素質で凡人の域を出ないとはいえ、そこらのパイロットよりかはマシにはなったな」
俺がゴミみたいに殺してる低位ランカーも、本来はこの銀河でも選りすぐりの猛者なんだよね。
まぁ、Fランク帯のキルディザスター(笑)や八つ橋のヘンリー、バレット中尉くらいの腕の奴は、GISDFのエースや精鋭、レギュレーターズなんかの精鋭にはまあまあいるから、Eランク帯からが真のランカーって言われてるよ。
Fランク帯って入れ替わり激しいし。
「とはいえ…中小の星系では滅多に見ない程の腕利きではあるがな」
なんでそんなのがアルビオン星系に何度も湧いてくんの?
いやまぁ…俺やサリヴァン総司令官みたいなのがいるのが、そもそもバグみたいなもんだしなぁ…
やっぱ俺たちが頭湧いてるのを引き寄せてる?(汗)
やめよう…考えると胃が痛くなる…
強化人間たちの中には、GISDFや他の星系の警備隊や防衛軍なんかの軍事組織上がりの連中もいた。
「流石にEランク帯の腕利きに襲われたら分が悪かったらしいな…まぁ、本人には気の毒だが即戦力はありがたい」
うん、既にまともの軍事訓練を受けている人だと即戦力として、防衛軍に入ってもらえた。
ジョン・ドゥは、捕虜を見た目が良い奴ら以外はぶっ殺してたから、必然と今回入って来る連中は顔面偏差値高いんだよね。
つまり、運がよければ第1パトロール艦隊に目の保養ができるってわけだ!
「そうなってくれるとありがたいな…」
巨乳だったら目線を動かさずに、周辺視野で凝視しなきゃ!(高等技術の無駄遣い)
「それにしても…レン・アサクラか……」
彼はパイロット志望だったけど、未経験者ってことで下士官養成所行きになった。
あいつ主人公感あるけど…どうなんだろうな…
仮に主人公だとしても…
「彼の目にはなにか…強い復讐心のようなものが宿っていた…」
復讐系主人公だったらどうしよ(白目)
復讐の対象がGISDFとかだったらやべぇよ…
「艦隊司令は気がつかなかったが、ずっとあの目で俺たち…いや、俺を見続けていた」
これあれか?本来なら“ワルキューレ”に皆殺しにされたか、再編が必要な状態になったせいで、俺たちがやらされた任務のいくつかは本来なら他の部隊が受け持ってたとか!?
「そうか…これも因果だな。恨みを買っても仕方がない…自業自得というやつだな」
って、納得できる訳ねえだろぉが!!!!
なんで俺が恨みを買わなきゃならんのだ!俺は任務に忠実だっただけだぞ!?
そりゃあ時々上官を誤射して始末…戦死させたことはあるけどよぉ!
あれか!?俺が殺してきた敵の息子か!?
しょうがないじゃん!俺の前に立って生きてられる訳ねぇだろ。
それか…あれかな?何回か独立戦争を仕掛けた星系を鎮圧してるから、俺は故郷を焼き払った怨敵なのか?
「ともなれば…私も覚悟を決めざるを得ないか…」
ヤバくなったらマジで土下座して、ヒルデさんのヒモになるか無改造で“ヴァルハラ・サイバネティクス”の所属パイロットになれないか懇願してみよう!(決意)
俺は色々尾ひれついてるけど、最新鋭機に乗ればトップランカー並みの戦力だし、ワンチャン土下座して懇願すれば無改造で迎え入れてくれると思うんだよね。
最悪の場合、成功率44%以下の手術を受ける羽目にはなるが…仕方がねぇ!
「レン・アサクラ…君には、私に牙を剥く正当な理由もあるのかもしれない。だが、そう簡単にこの“赤い死神”の首を取れるなどと思うなよ?」
どこまでだろうと俺は必ず逃げてやる!
でも、できれば俺を殺そうとしないでほしいな…
バレット中尉やシドウ軍曹にコールリッジ軍曹と引き合わせてみるか?
あいつらなら、俺がこの星系のためにした事をあいつにも教えてくれる筈だ!
きっと、俺を殺していいのか迷うようになる!
主人公ってそういう葛藤を抱えたりして成長するのが王道だろ?
…王道系じゃなかったらどうしよ。
「一先ずは…彼の任地はAL4αコロニー駐留艦隊になるように取り計らおうか。彼の成長には得難い仲間が必要になるだろう」
シドウ軍曹…コールリッジ軍曹…頑張ってレンくんを俺の都合のいい方向に成長させてくれ!!!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
第1パトロール艦隊旗艦“ブリストル”。
そのブリーフィングルームにて、第1SAF中隊は今回新たに配属された人員との顔合わせが行っていた。
今回は、前回の海賊との戦いで出た欠員を埋めるため、この艦に二名のパイロットが新たに着任することとなる。
「えー、貴官らは栄えある第1パトロール艦隊麾下、第1SAF中隊の一員として──」
中隊長が彼らの前で訓示を行うが、二人の意識はその隣に立つ美丈夫…ジャック・ギャレット最先任上級曹長に向けられていた。
(あ、あれが本物のギャレット最先任上級曹長かぁ…本当にお会いできるなんて…夢みたいだ!)
そんな風に考えながら、ジャックに憧憬の眼差しを向ける未だ少年と言ってもいい年齢の男性、エドワード・ブラッドロー伍長。
彼は兵役検査にて高いQBRCを叩き出し、防衛軍下士官養成所を優等の成績で卒業した有望株である。
当然、優秀な人材はどこも取り合いになるが、彼が第1パトロール艦隊勤務を熱望したため、めでたく第1パトロール艦隊勤務になった。
そんな彼には憧れの人物たちがいた。
アルビオン星系の英雄、サリヴァン総司令官とギャレット最先任上級曹長だ。
(報道映像で見た通りだ!やっぱカッコいい!)
彼は、GISDFのエースや各勢力のランカーたちに憧れを抱いており、ジャックたちがこの星系に来る前のブレイカースクワッド時代から、彼らに憧れの感情を抱いていた。
(この前も悪名高い海賊ジョン・ドゥを討伐してたし…なんて頼もしいんだ!)
(あの物憂げな表情…きっと救えなかった人たちに想いを馳せてるに違いない)
彼は憧れの英雄を見てそう思っていた。
もちろん、大外れだ。
ジャックの脳内には被害者たちのことなど微塵もない。
(ヤベェ…レンくんが恨んでるのは、俺かもしれないと思うと胃が痛くなる…)
(新型機に乗った俺と“ワルキューレ”なら、成長しきる前の主人公を抹殺できるか?でも、できたらやりたくねぇ!ヒルデになに要求されるかわかんないもん!)
(44%未満の最新型強化人間手術の被検体とか絶対なりたくねぇぇぇ!!!!)
(それに…企業とか関係なく何らかの脅威がこの宇宙に訪れるとかって展開だったら…主人公殺したら場合によっては詰む!?)
(落ち着け…落ち着くんだ俺!この世界はゲームやアニメじゃない!それは軍隊生活で散々思い知っただろ!?…でも、俺転生してんだよなぁ)
彼の脳内は自分の未来への懸念で一杯である。
そうとは露知らず、エドワードはキラキラとした目線を彼に送っている。
そんな彼はふと視線を感じて隣を見た。
隣に立っているのは、ショートヘアの黒髪に怜悧な印象を受ける女性。
彼の直属の上官となるアイリ・カウラネン少尉だ。
彼女は一瞬だけ横目でエドワードを見ると、目線を前に戻した。
彼女はGISDFのエースパイロットだったが、腐敗した上官の無能極まりない采配に苦言を呈したために疎まれ、孤立無援の状態に追いやられジョン・ドゥの餌食となる。
その際、強化人間手術成功した暁には相場の倍の金額で、彼女は元上官に引き渡されるところだった。
しかし、ジョン・ドゥがよりにもよってジャックを狙ったため、それは防がれることとなる。
その後、アルビオン防衛軍にてGISDFの階級と同じ少尉として遇されることとなった。
(え?い、今睨まれた?僕なんか怒らせるような事した?さっきから考えてた事全部口から漏れてた?)
エドワードは彼女に睨まれたと勘違いしていた。
尤も、彼女は横目で彼を見ただけで睨んでなどいない。
「──よって、貴官らの奮闘を期待する!」
彼がそんな事を考えている内に、中隊長の訓示が終わっていた。
「中隊長に敬礼!」
司会役の号令と共に中隊の隊員たちは一斉に敬礼した。
「では、解散!」
司会が解散と号令を出すと、各隊は所属している艦に戻って行く。
二人はブリストルの所属のため、そのままハンガー近くのパイロット待機室に戻る。
待機室までの道中、エドワードは歩きながら自身の前を歩くカウラネン少尉を見る。
(こ、この人が直属の上官か…怖い…さっき睨まれたし…ひょっとしてこの後怒られる?)
彼女に怯えるエドワード。
しかし、彼女は怒ってもいなければ彼に対して悪印象も抱いていない。
(随分若いわね?まだ十代かそこら?この子は新兵なのかしら?)
彼女が彼に抱いた印象はこんなものだ。
彼が待機室に入ると、カウラネン少尉が彼に話しかける。
「今、少しいいかしら?」
「は、はい!大丈夫です!」
エドワードは敬礼してそう言った。
そんな彼に笑いかけながら、彼女は言う。
「ブラッドロー伍長、そんなに緊張しなくていいわ。もう一人の小隊員はまだ着任が遅れるみたいだから…しばらくは私たち二人でエレメントを組むことになるわ」
「もう一人が来るまで、二人だけにはなるけど…よろしくお願いするわね?」
エドワードはそんな彼女の笑みを見て、蛇に睨まれた蛙気分になった。
「こ、光栄です…カウラネン少尉」
(こ、こわい…教官と同じくらいこわい…)
そんな引き攣った笑みを浮かべる彼の胸中を他所に、カウラネン少尉はここでならGISDF時代より、まともな環境で働けると確信していた。
(少なくとも上官の人格はまともそうだし、部下も素行も性格もまともそうね!)
(最近碌な事がなかったけど…命の恩人がすごくハンサムだったし、職場環境もまともそう…ようやく私の運も上向きになってきたわね!)
彼女は部下から初対面で思いっきり怯えられている事に気がついてなかった…
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ブリストル艦内にあるジム。
ここでは、航行中でも体が鈍らないようにトレーニングをすることができる。
そこで、偶々居合わせたジャックとバレット中尉が休憩中に雑談をしていた。
内容は今回新しく入ってきた人員についてだ。
「ギャレット最先任上級曹長、新しく入ってきた二人ですけど…」
「ああ、ブラッドロー伍長は素直そうな子だったな」
「成績も優秀だそうなので期待できそうですね!」
「そうだな。だが、過剰に期待を押し付けすぎて潰してしまう訳にもいかん」
(優秀って言ってもなぁ…この星系基準だし…シドウ軍曹ほどじゃないでしょ。QBRC高いって言っても、そう簡単に特殊能力が目覚めるわけじゃないし)
哀れな事にエドワードは憧れの人からそんなに評価されていない。
まぁ、訓練で必死にジャックについて行こうとするだろうし、いずれ勝手に後輩認定されて死ぬほど扱かれることになるだろう…
「もう一人の…カウラネン少尉ですが…」
「うむ、わかるぞ中尉…」
「「滅茶苦茶美人!」」
「ですよねぇ!」
「ああ!クール系ってやつだったな!」
((あとおっぱいデカかった…これ言ったら引かれそうだな…))
カウラネン少尉は、少なくとも彼らの目の保養にはなりそうであった。
エドワードには怯えられたが、死線を潜り抜けて精神力が強くなったバレット中尉と、比較対象が“ワルキューレ”なジャックは、彼女を第一印象で誤解しなかったようだ。
「いやぁ、おかげで軍務により一層張り合いが出るな!」
「そうですよねぇ!俺も先輩として頑張らなきゃいけないですね!」
新たな戦友と共に、気合を入れ直すバレット中尉。
(カウラネン少尉はGISDF時代にエースパイロットだったと聞く…きっとすぐにランカーになるだろう…俺も負けてられないな!)
そんな彼の隣にいる男の頭は煩悩塗れである。
(いやぁ!眼福!眼福!これで俺の軍務にも潤いが増えたね!…でも、俺あちこち転戦させられるから、あんまりカウラネン少尉の豊満なバストを凝視できない?)
ジャックは今日もくだらない考えをしながら生きている。
とりあえず彼は、彼女の胸を凝視できれば最新鋭機に乗った新世代型強化人間相手でも、一対一なら勝って見せる事だろう。
高評価とブックマークありがとうございます!
これを励みにこれからも投稿を続けていきますので宜しくお願い申し上げます!




