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第二十話

今回も少し長くなってしまいました…

戦闘シーンって難しいな…

 中央星系、第四惑星“キャピタル”。

 “アステリア・エレクトロニクス”本社、役員会議室。


 そこでは社の経営に関する重要な会議が行われていた。

 議題の中には、アルビオン星系との戦争についてのものも含まれている。


「──このように、技術支援なども含めた大きな譲歩を行う事にはなりましたが、新世代型強化人間などの技術流失を防ぎ、アイアンクラッド・インダストリーのグループ企業化並びに、採掘されたステラリウムの10%を確保!」

「…そして、緊急時に“赤い死神”を戦力として使う事が可能になります!」

「これは、勝者である側のアルビオン星系に利権や戦力を“差し出させた”という点で、政治的には非常に大きな意味を持つのです!」


 交渉を一任されていたルキウスは、この会議の場にて自身の交渉によって得られた成果と、敵対企業の動きについて熱弁していた。


「うーむ…まぁ、艦隊を送り込むよりはこのくらいで矛を収める方が安上がりか?」

「なにを手緩い事を!勢力下の地方星系の暴発を招きますぞ!」

「それは今更では?レギュレーターズを撃退された時点で、そうなることは避けられないでしょう…」

「反乱の鎮圧にギャレットを使えば、奴を地方星系の解放者として担ぎ上げようとはしないのではないかね?」

「“ヴァルハラ・サイバネティクス”や“タイタン・ヘヴィ・インダストリーズ”が介入しかねないというのであれば…」

「しかし…彼らをこのまま野放しにしておくのは危険では?」


 ルキウスが持ち込んだ講和条件に対する、役員たちからの反応は賛成派がやや優勢といったところだ。

 この案は、新世代型強化人間に関する技術流出の防止と利権の確保に加え、アステリアの面子が可能な限り守られるものであり、他の大企業の不審な動きを考慮して妥協案として賛同する者も少なくない。


 当然ながら、ルキウスの政敵であるセバスティアーニはそれを快くは思っていない。


(馬鹿どもが!ここに来て日和やがって!どの道反乱が起きたら他の大企業が勢力圏を貪食することに変わりねぇだろうが!)

(あの無能どもめ!ガキ一人もまともに殺せねぇのかッ!あれがうまくいってりゃあ、今頃侵攻派が大多数だったってのに!)

(ギャレットめぇ…この代償は高くつくぞ!必ずてめぇからなにもかも奪って惨たらしく殺してやるッ!)


 彼が目線を動かすと、そこには彼を睨みつけるデリックの姿があった。

 デリックは状況証拠から、娘が殺された事で自身が侵攻派に与した場合、一番得をする人物…セバスティアーニが裏で糸を引いているのではないかと推測していた。


(儂からラモントのみならず…アンジェラまで奪おうとするとは!)

(必ず貴様を引きずり下ろし、その傲慢の報いを受けさせてやるッ!)


 彼の眼には、セバスティアーニへの強い敵愾心があった。

 尤も、ラモントの件は自身が他者の流す血で息子に箔をつけようとしたのが原因だが…


 セバスティアーニはそんな彼を鼻で笑い、熱弁をふるう政敵を見ながら思考を巡らせる。


(こりゃあルキウスの失脚はなさそうだな…政敵を失脚させるまたとない機会だったんだが…)

(ルキウスの失脚がないなら、今後は奴と副社長の座を争う訳だ。じゃあ、この会議でルキウスを陥れようなんて無茶はしねぇ)


 彼はルキウスのプレゼンを聞く役員たちの様子を伺う。


(役員の反応的に、この中の過半数は賛成しそうだな…となれば)

(この場は、今後の布石と…未だ従ってない役員の中で、俺に従いそうなやつの選定に使う)


 セバスティアーニは、この場でルキウスの政治生命を断つことは不可能と判断し、今後の政争のためアルビオン星系への侵攻に賛成の者を自身の派閥に引き込むことを目論む。


「──よって、この条件で講和すべきであると考えております」


 ルキウスは講和条件のプレゼンを終え、席に着いた。

(他の役員の反応はそれほど悪くはなさそうだが…まだ油断はできん)

(なにせ、私と密約を結んだ星系の議員たちは、密約が破られる事態になっても交渉の窓口になるか否かを見ているのだからな…)

(もし、講和に失敗すれば私は議員たちとの繋がりを失い、同時に社内での影響力も失う事になる…可決されなければ私は失脚するだろうな)


 ルキウスは緊張した面持ちでそう考えていた。

 彼が着席すると会長が口を開く。


「うむ、確かに…悪くない条件ではあるな。他に意見のある者はいるかね?いなければ決議に移る」


 すると、ルキウスの講和案に対し意義を唱える者がいた。

 そう、セバスティアーニだ。

 セバスティアーニは静かに挙手した。


「…セバスティアーニ君、どうやら意見があるようだな?言ってみたまえ」


 会長はセバスティアーニへ発言の許可を与えた。

 セバスティアーニは立ち上がり、口を開いた。


「ありがとうございます、会長」


「私はかねてよりアルビオン星系への再侵攻を主張しておりました。この主張を変えるつもりはありません。よって、私はこの講和案には反対です!」

「まず、仮にこの条件で講和してしまえば勢力圏の星系はわが社に対し、戦争を仕掛ける事により今より良い待遇を受けられるよう画策するでしょう!」


「地方星系がレギュレーターズを他の大企業の支援なしに撃退した…それも、新世代型強化人間と最新鋭機を擁する部隊をです!」

「これらは今内容を全く精査しない愚か者や、我が社の威信を貶めたい他の企業によるプロパガンダによって、勢力圏の地方星系に広められています!それだけでなく!奴らを支援し我が社の勢力圏に火種をばら撒いている!」

「我が社の足元にて、田舎の猿どもが“アステリアなにするものぞ!”などと気炎を吐いているのです!」


 彼の言った言葉は強ち間違いではない。

 実際に、今回の一件を“アステリアの落日”、“アステリアは落ち目”などと他社は喧伝しているし、それを鵜呑みにしてアステリア・エレクトロニクスに反旗を翻そうとしている勢力を支援している。


 彼のそんな言葉に、セバスティアーニ派の役員たちは声を上げる。


「そうだ!地方の屑どもに甘い顔をするなど言語道断!」

「大アステリアが負けたまま終わるなど…本格的に落ち目だと思われますぞ!」

「見せしめにアルビオンのゴミを焼き払ってやれば、余程の馬鹿でもなければ膝を屈するだろう!」

「馬鹿どもはレギュレーターズを見くびっているのだ!殴りつけて身の程を弁えさせなければならん!」


 他の役員たちはそんな彼らに対し、冷ややかな目線を送る者と賛同する者に分かれた。

 冷ややかな目線を送る者の内、過半数はルキウスの派閥の者だが、中には単に侵攻して得られるものに対して、失うものが多すぎると考えている者もいる。


「うーむ…彼らの言う通りかもしれん…甘い顔をすれば付け上がってビジネスがしにくくなる」

「セバスティアーニめ…社内政治のためなら戦争すら起こすか…失う人員や物資はただではないのだぞ…」

「セバスティアーニ専務の言う通りだ!アステリアこそが勝者でなければない!」

「目先の勝利に拘り過ぎだ間抜けが…最終的な勝利者とならねば意味はないのだ」

「そもそも地方星系の暴発は、レギュレーターズが負けた時点で決まってるようなものでは?」

「アルビオン星系への再侵攻と同時に反乱が起き、敵対企業が侵攻して来たら…ぞっとしますね」

「高位ランカーを送らずとも、大艦隊を送れば勝てるでしょうな。なにせ、ギャレットやサリヴァンがどれほど強くても、一度に一つの戦場にしか存在できないのだから」

「ギャレットに最新鋭機を渡して無双させてみたい」


 セバスティアーニは、そんな役員たちに目線を向けつつ演説を続ける。


(なるほど…あいつと…あいつとあいつは引き込めそうだなァ)

「レギュレーターズの敗退により!我が社の勢力圏で反乱の機運が高まっている!これは講和を結ぼうと関係ない!敵対企業の意向によるものなら、結局我らがなにをしようと支援を受けた屑どもは反乱を起こすからだ!」

「故に!愚か者どもに身をもって教育しなければならない!地方星系による、大企業への反抗などと言う幻想を打ち砕き、のぼせあがった連中の頭から冷や水をかけてやらねばならないのです!」


 そんな彼の言葉をルキウスは冷ややかに聞いていた。


「…愚か者め」

(自分で言っていて気がつかんのか?講和を結ぼうと関係なく反乱が起きるなら、講和すればアルビオン星系に差し向ける戦力を鎮圧に使えるだろうが…)

(わざとそういう主張をして、他の役員の反応を伺っているのか?)


 セバスティアーニは、もう十分引き入れられそうな役員を確認できたのか、演説を終わらせた。


「故に、私は再侵攻をすべきであると考えております。ご清聴ありがとうございました」


 そう言って席に着いたセバスティアーニへ、会長は一瞬だけ目を向けると再び役員たちに向かって言う。


「…他に意見のある者はいるかね?いないのであれば再侵攻と講和のどちらを選ぶか…決議を行う」


 決議の結果、アステリア・エレクトロニクスはアルビオン星系と和睦をする事が決定した。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 どうも、講和条件に名指しで名前が載った男です。

 なんでこうなった?

 ブレイカースクワッド時代に暴れまくったって言うけど、そうしなきゃ死ぬんだからしょうがなくない?


 ま、これで少なくともアステリアと戦争になる事はなくなったと思いたいね。

 次やったらもう勝てないし…

 全体的に将兵の質が低下してんだよなぁ…


 講和条件なんだけど…

 こっちは、技術支援とこの星系への莫大な資金援助(事実上の賠償金)に、やばくなったらアステリアが援軍を無償で送ってくれる。

 あっちは、アイアンクラッド・インダストリーの関連会社化とステラリウムの10%、相互の関税の撤廃、ユリウスの身柄やラモントたちの死体の引き渡し、そしてヤバくなったら俺が派遣されるって条件になってる。


 向こうが有利過ぎるって?

 戦力差を考えたら、向こうはその気になれば普通に勝てるのに対して、こっちはもう次やったら確実に負けるってくらい差があるし…

 今度、前の侵攻艦隊並みの戦力を送り込まれたら、もうAL4宙域は守り切れないね。

 この前だってギリギリだったし…


 それに、最初はアイアンクラッド・インダストリーは子会社にされて、莫大な資金援助とか無しになりそうなところを交渉でどうにかしてもらったし…

 ぶっちゃけ文句は言えない…わけねぇだろふざけんな!

 なんで俺があちこち転戦させられなきゃならんのだ!


「はぁ…これじゃGISDF時代と変わらんよ」


 なんで雑魚狩りして悠々と暮らしたいのに、またクソ強い連中とやり合わなきゃならんのだ!

 レギュレーターズは、うちのゴミカス練度パイロットたちより腕が上?

 あぁ!もう完全にブレイカースクワッド時代とおんなじだわ!

 あの時も腕利きに囲まれてたしな!


 どうしてこうなった?


「救いなのは…先方が最新鋭機を回してくれることか…」


 俺が出向させられる事があるって聞いて、速攻で条件に盛り込んでもらったわ。

 流石に第三世代機で、第五世代機に乗ったランカーとやり合うのはキツイし…

 最新鋭機は楽しみだけど…ユリウスが乗ってたレジーナはあんまり趣味じゃないんだよなぁ…


「軽量級は機動力が高く、空中戦では滅法強いが…」


 装甲薄いんだよなぁ…

 俺は機動力があるのは良いけど、あんまり装甲減らしたくないから中量級機が好みなんだよね。

 重量級機?硬いのはいいけど、鈍重だから俺のファイトスタイルには合わないんだよなぁ…


「一応、中量級機にしてくれって言ったが…どうなるやら」


 その辺は向こうの都合次第だしなぁ…


 とりあえず、今んとこ暇だから寝ておくか…

 最近、この辺の宙域には俺とバレット少尉がいるんで、海賊も犯罪組織もみんなビビって近づかなくなってんだよね。

 だから、最近は巡回任務中は割り当てられた将官待遇のVIPルームで、優雅な宇宙クルーズを楽しめるってわけだ。


 訓練?ああ、巡回任務終わったらやるよ?

 今は休憩タイム…間違えた任務中なんだよ。

 休んでるって?休むのも立派な任務の一部です!


「最高だな…俺たちがいるおかげで、ここは本土近辺の次に安全な宙域になってんじゃね?」


 まぁ、なんにせよ貴重な休憩時間だ精々たの──


『航路上に海賊と思しき複数の艦影を発見!総員、第一種戦闘配置!』


 クソが!


「SAFのハンガーへ急ぐか…」


 休憩時間はもう終わりかよ!

 まぁ、いいや…とりあえず雑魚しかいないならすぐ終わるでしょ。

 えー…屑ども嬲り殺しゲームのお時間です。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 AL4α宙域。

 第1パトロール艦隊の前に立ちふさがったのは、自意識過剰なランカーの海賊が率いる五隻の艦隊であった。


 ランカーである頭目は、Eランク帯31位“死神”ジョン・ドゥという男である。

 ジョン・ドゥは、年齢や本名といった個人情報のほとんどが謎に包まれた男で、今の容姿も整形手術で素顔を変えているのではないかと言われている。


「ふむ、あれ第1パトロール艦隊か…フフフ!これでまた私の名が上がるな!」


 そう言って、笑うおかっぱ頭の優男。

 彼がジョン・ドゥである。


「へへへ…ヨハンの頭なら、顔が良いだけでチヤホヤされてる、二つ名パクリ野郎なんか瞬殺ですよ!」


 ジョン・ドゥは、手下を咎めた。


「こらこら!“今の”私の名前はジョン・ドゥだとも!先日、GISDFから追われる身となった、Cランク帯ランカーのヨハンとは別人だぞ!」

「へぇ!すんません!ジョンの頭!」

「うんうん!わかればいいんだ!」


 彼は手下に笑いかけながらそう言った。


「さて!ではそろそろジャック・ギャレットと私のどちらが“死神”を名乗るのに相応しいのか…ここで白黒はっきりつけようじゃないか!」

「そして…戦いの後、生きていたら強化人間手術を受けさせて、君を欲しがる勢力に売る!君は顔も良くて腕も立つから引く手数多さ!」

「今回も早速、お得意様の屈強な美男子を凌辱することが生きがいの大富豪に、君が生きていたら売ってくれとせがまれたからね!」


 この男は自身が勝つ事を信じて疑わない。

 相手が怪物である事を知らずに…


「さて、この男を売り飛ばした後はどうするか…今度は“ワルキューレ”の姉妹を拉致して売ろうか?」

「この前GISDFの女性エースパイロットを“納品”した、自分より遥かに強くて優秀な女性の未来を踏み躙るのが趣味のお得意様が欲しがっていたからなぁ!」

「でも、ヒルデ・ブランデンブルクは僕と結ばれる運命だから、納品はできないかな!」


 彼はこの後の事を考えながら、ハンガーに向かって行く。


「うーん…いつ見ても美しい…名前通りマグニフィセントだぁ…」


 彼は自身の愛機、“マグニフィセント”の前で恍惚とした表情を浮かべる。

 その機体は、全身を上品なワインレッドに塗装した、アステリアの第四世代中量級機SAF“AE-04M-LAVORO”である。

 GISDFでも採用されているこの機体は、一介の海賊が持てるような代物ではない。

 だが、彼はこれを人身売買ビジネスのクライアントたちの出資やコネによって手に入れた。


 機体の武装は、両肩のレーザーキャノン“AE-LC07-ARTEMIS”と二丁のマシンガンICI-MG09である。

 このレーザーキャノンとマシンガンによって、相手を近づかせずに嬲り殺すのが彼のファイトスタイルだった。


「さて…過ちを正しに行こう!」


 彼は愛機のコックピットに入り、カタパルトに機体を固定する。


「ジョン・ドゥ!マグニフィセント!出撃する!」

『了解!お頭ァ!今日も大漁をお祈りします!』


 そんなやり取りの後、カタパルトから“マグニフィセント”が勢いよく射出された。


「ジャック・ギャレット…罪深き簒奪者…」

「私のパーソナルカラーのみならず…二つ名まで真似て英雄ごっことは…恥知らずにも程があるッ!」


 彼は妄言を吐きながら機体を駆り、手下が防衛軍のSAFと交戦する最中へ飛び込む。


「正義の鉄槌を受けろッ!」


『な、なんだぁ!?』

『あっ──』

『こいつッ!ランク31の“死神”だ!』

『お、お頭ァ!こっちは味方──』


 彼は両肩のレーザーキャノンを発射、二条の光線が軌跡上の機体に損傷を与えながら、二機のSAFを巻き込まれた手下諸共爆散させる。


「ふむ、二機しか墜ちないか…田舎者の三流軍隊にしては筋が良い…ジャックは教官としても優秀なのかな?だとしたら…より高く売れるよ!」


『へっ!お頭が来たからにはてめぇらはもう終わりだ!』

『仲間を散々墜としてくれた落とし前は…きっっっちりとつけてもらうからなァ!』


 自分たちの頭目兼エースの到来に勢いづき、浮かれ調子に乗る海賊たち。

 そこへ、“マグニフィセント”に向けて六発の誘導ミサイルが放たれた。


「ん?誘導ミサイル…?これは肩に装備するタイプか…肩部の武装が使える腕利きがいるのかな?」


 そこへ、すかさず放たれたバズーカの弾をジョン・ドゥは躱す。


『お、おかしr──』

「正確な狙いだ…ネズミどもの中に多少はできるのが混ざっていたようだね」


 自分の後ろにいた運の無い手下が爆散したことなど気にも留めず、彼は手下たちを無視してバズーカを撃った者がいるであろう方向へブースターを全開にして向かう。


『ま、待ってください!お頭!あんたがいないと──』

『死ね!クソったれの海賊共!』

「なるほど…あっちの方向からか!さて、ジャックかな?それとも…マックス・バレットとかいう雑魚かな?」


 次の瞬間、彼はロックアラートを聞いて機体を横に滑らせる。


「っと!あぶないあぶない…もう少しで愛機に傷がつくところだった」


 直後、“マグニフィセント”のすぐ横をマシンガンの弾がすり抜けていく。

 放たれた方向から、一機のSAFがブースター全開で近づいて来ているのが見えた。

 その機体は”ICI-F03-COGNATE”の全身を灰色に塗装した機体だった。


「お返しだよ!」


 灰色のコグネイトに向かって、ジョン・ドゥは両肩のレーザーキャノンを時間差で放つ。

 すると、灰色のコグネイトは一発目のレーザーを悠々と躱し、二発目をギリギリで躱した。


「識別反応は…Fランク帯49位マックス・バレット…なんだハズレか」


『この識別反応は…!Eランク帯31位のジョン・ドゥだと!?チィ!なんとか味方から引きはがす!』

『ロビン!ゲイル!こいつは俺が抑える!お前たちはその隙に向こうの味方に合流しろ!』

『了解!ご武運を!』

『了解しました…どうかお気をつけて!』


 バレット中尉は、右肩の誘導ミサイルを撃ちながらマシンガンとバズーカを放って、後から着いて来た二人を追おうとする相手の動きを止めた。


「へぇ…Fランク帯にしてはそれなりにやるじゃないか!」


 しかし、ジョン・ドゥはマシンガンでミサイルを迎撃しながら、バズーカとマシンガンの火線をすり抜ける。


「乗っているのが、コグネイトじゃなければもう少し楽しめたんだが…ねッ!」


『なに!?こいつッ!弾幕をすれすれですり抜けて!?ぐあっ!』


 次の瞬間、弾幕をすり抜けてきた“マグニフィセント”が、バレット中尉の機体に鋭い蹴りを叩き込む。

 蹴りが当たったのは偶然にもコックピット付近であり、バレット中尉は凄まじい衝撃に思わず苦悶の声を上げた。


「さて…これで終わりかな?」


 バレット機に対し、ジョン・ドゥは無慈悲にマシンガンを連射する。

 コグネイトの装甲に銃弾が叩きつけられるも、機体の高い耐弾性によってなんとか事なきを得るバレット中尉。


「ほう、第三世代機らしい低スペックかと思いきや…耐弾性は大したものじゃないか」


『うぅ…一瞬意識が飛びかけた…急所に弾が当たらなかったのは運がよかった…!』


 バレット中尉は意識を取り戻し、小刻みにブースターを吹かしてマシンガンの弾を躱す。


「ほう!Fランク帯の雑魚にしては中々やるじゃないか!十分とは言えないが、肩部の武装を使いながら手持ちの火器を使えていた…これはかなりの額になるか?」


 ジョン・ドゥはバレット中尉を売ったら、果たしていくらになるかなどと考えながら、レーザーキャノンを放とうとした。


 その瞬間、突然バズーカの弾が“マグニフィセント”を目掛けて飛んで来た。


「新手かッ!?」


 そこへすかさず、誘導ミサイルが叩き込まれるもジョン・ドゥはそのミサイルをマシンガンで迎撃する。


「ふん!こんなのは単なる子ども騙しッ!?」


 そこへバズーカの弾とグレネードの榴弾が飛んで来た。


「ええい!誰だ!…お前は!!!」


 先程の攻撃を放ったのは赤いコグネイト…ジャック・ギャレットである。


『ふむ、今のを躱せる程度の腕はあるようだな』


「この識別反応は…Dランク帯25位!ジャック…ギャレットォ!!!」


 ジョン・ドゥは眼前の“赤い死神”に対し、顔を歪めながら憤怒の形相で怒鳴る。


「貴様…貴様だけは許さんぞ!よくも…よくも私のヒルデを…“ワルキューレ”を誑かしたな!」


『無事か?バレット中尉』

『は!おかげ様で無事です!先ほどはありがとうございます!』


 ジャックは、敵が放つ高出力レーザーとマシンガンによる弾幕をすり抜けながら、バレット中尉と通信しつつ接近していく。


『敵艦の武装は全て潰し、機関も停止させた。見張りとしてSAF一個小隊を残してある。後は、こいつと手下のSAFを墜とすだけだ』

『こいつは俺がやる。お前は向こうの友軍に加勢しろ』

『は!了解です!ギャレット最先任上級曹長!』


「…ッ!なぜ当たらない!」


 ジョン・ドゥはジャックを近づけまいと、レーザーキャノンとマシンガンを乱射するが、レーザーキャノンを連射をしたせいで冷却が必要になり、一時的に使用が出来なくなってしまう。


「な!?レーザーキャノンが!チッ!少しばかり使い過ぎたか!」


『レーザーが止んだな。クールタイムが来たのか?まぁ、やる事は変わらん』


 ジャックはそこへ容赦なく誘導ミサイルを発射、間髪入れずにバズーカ放つと一拍遅れてグレネードランチャーを放つ。


「舐めるなよッ!私は“死神”だ!貴様が赤いパーソナルカラーにする前から…“赤い死神”と名乗る前から…私は赤いSAFに乗り、“死神”と呼ばれてきた!」

「私こそが…私こそが!ヒルデ・ブランデンブルクの伴侶たる“赤い人”なんだッ!」


 彼はそんな叫びと共に、ミサイルを迎撃してバズーカの弾をギリギリ躱す。

 しかし、爆炎に隠れたグレネードランチャーの榴弾には気がつかず、飛んで来た榴弾を食らってしまう。


「ぐうっ!?直撃…なっ!?」


 “マグニフィセント”のコックピット内のモニターには、左肩のレーザーキャノンが破損して使用不能な状態になった事、SAFの左腕の機能に異常をきたしている事が表示されている。


「こ、こんな!こんなことがあっていい筈がない!私は…“死神”なんだぞ!?」


『識別反応、Eランク帯31位ジョン・ドゥ。二つ名は…“死神”ねぇ?』


 ジョン・ドゥは半狂乱で、冷却が完了した右肩のレーザーキャノンを放つも簡単に躱される。


「ふ、ふざけるな!私は“死神”だぞ!?そう簡単に墜ちるものかッ!」


『まぁ、自分を無敵と勘違いした典型的な屑だな。さっさと墜ちろ』


 再び、ジャックが放った誘導ミサイルを迎撃しようとするも、今は左手のマシンガンを使用できないため効率が大きく落ちる。

横へブースターを吹かし、撃ち漏らしたミサイルを振り切ろうとする。


「な、なぜだ!第三世代機が…第四世代機に敵う筈がない!そんな馬鹿な事があるものかッ!!!」


『しかし、第四世代機とは珍しいな…この辺では、第三世代機以下しか出てこないからなぁ…しかし、こいつは腕も機体もユリウスには劣るな』


 そう言いながら、ジャックはバズーカを相手の左半身に叩き込む。


「ぐわぁッ!ま、まだだ!」


 一瞬気絶しつつも、スパークする機体のコックピットの中で、未だに吠えるジョン・ドゥ。

 しかし、今回ばかりはそのまま気絶していた方が良かっただろう。


『終わりだ』


「え?」


 彼が意識を取り戻した瞬間、正面のモニターには左腕のパイルバンカーを叩き込もうとしている、赤いコグネイトだけが映っていた。


(赤い…死神───)


 最後の瞬間、パイルバンカーが突き刺さる音を聞きながら、彼は自身の命を刈り取りに来た死神を幻視した。


『敵ランカー、ジョン・ドゥを撃破。…了解、残敵の掃討に入ります』


 ジャックは、そう言って通信を切った。

 それから数分後、残敵は一人残らず死んだ。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 えー…屑どもを叩き潰してブリストルに帰艦しましたが…誰も俺に歓声を上げません(憤怒)


 オイオイ…ユリウスの件でお前らの中の俺のイメージにインフレ起きてね?

 と、思ったら…なんか違う?

 みんな…ハンガーに置かれた…押収品?を見てるよ…

 うーん、俺も見に行くか!


 人だかりでなんにも見えないし…とりあえず、近くにいた奴に聞いてみる☆


「そこの君!すまないが…一体なにがあったのか教えてくれないか?」

「え?あ、は!ギャレット最先任上級曹長!我々は押収品を見ていました!」


 押収品?わざわざみんなで見に行くんだし、いつもみたいな禁止薬物とかじゃないんだろうな…

 なんか人一人が入れそうなカプセル?

 とりあえず、人込みをかき分けて見に行く!?


「おいおい…マジかよ…」


 あー…あの屑もうちょい嬲っておけばよかったな。


「さ、最先任上級曹長…これは…なんなんですか?」


 お、バレット中尉じゃん。

 君も見に来たんだね。

 まぁ、なにってそりゃあ…


「ああ、商品…だろうな」


 よくもまぁ…こういう事する奴いるよな…

 ん?どうしたバレットくん?


「商品って…どこからどう見ても人間じゃないですか!人身売買は違法な筈です!」


 ああ…君はこういうの見るの初めてだったのか…

 もうちょい配慮すべきだったわ…ごめん。


 まぁ、でもいつかはこういう事する奴が、普通にいるって事を知る羽目になっただろうな…


「ああ、そうだ。だから、ジョン・ドゥとその手下は指名手配されてたんだよ」


 確か、そういう感じの罪状とかついてた気がする。

 あれ、指名手配されてんのはジョン・ドゥだけだっけ?


「こいつら多分普通の人間じゃない。強化人間だ」


 その方が金になるからね…だから、大抵の場合は強化人間に改造してから売っぱらう。


 俺は目の前の人間が入ったカプセルを見る。

 どいつもこいつも美形揃い…どういう理由で捕まえられたのかは…まぁ、お察しの通りです。


「ん?」


 カプセルには個人個人の名前が載ってるんだが…

 その中に一際異彩を放つものがあった。


「レン・アサクラ?」


 ユーマ・シドウ軍曹と同じ…なんか日本人っぽい名前…

 これは…


(ひょっとして、主人公ってシドウ軍曹じゃなくてこっちだった?)

(明らかになんかありそうな名前だわ!)


 俺はカプセルの中で眠る彼から目を離せない。

 とてつもない不安感に駆られる…


「これ、とんでもない事に巻き込まれた感あるよな」

「そうですね…こんな…人身売買なんて!」


 うん、そうだねバレットくん。

 でもな、俺が感じてるのはそうじゃないんだよ…

 なんか、大勢の運命を捻じ曲げたような…取り返しがつかないって感覚だ…

 俺が物語の本来の流れをぶっ壊してしまったような…そんな感覚だ


高評価とブックマークありがとうございます!

これを励みにこれからも投稿を続けていきますので宜しくお願い申し上げます!

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