第十八話
屑による幼女を使った謀略が打ち砕かれます。
ジャックがいなければ成功してたかもな!
【悲報】休日消える
「早く…早く…早く繋がれぇ!」
「おにいさん!?後ろ!わたしを誘拐した兵隊さんが!」
「げぇ!?」
車に乗った後、すぐに軍服着た連中がブチギレながら来やがった!
逃げなきゃ蜂の巣だったわ!
クッソ!なんで俺が休日にこんな目に遭わなきゃなんねーんだよ!!!
って!?おいおいおい!!!待て待て待てぇ!?
この乾いた音と車のボディを叩く音は!?
「こいつら…平気で発砲してきやがった!郊外とはいえここ市街地だぞ!?」
「いやあああ!!!!」
人通りねぇからって普通撃つか!?
ここはさっきまでの廃工場群じゃねぇんだぞ!?
これだから過激派って連中は!!!
ああもう!さっきから幼女の泣き声がうるせえ!!!
ちょっと拉致されて、惨殺されかけて、銃声聞こえて、弾が車に当たったくらいで泣いてんじゃねぇよ!(無理難題)
…いや、俺も泣きたい
「この車新車なんだぞ…(泣)」
『…もしもし?』
よっしゃあ!繋がった!
サリヴァン総司令官に速攻で助けを呼んでもらおう!
「もしもし!?サリヴァン総司令官ですか!?」
『おう、今度はなんだ?コロニーが独立戦争でも仕掛けてきたか?』
なんかそんなアニメ前世で見たことあるな…
じゃなくて!
「おにいさん!横からも来てるよぉ!!!」
「殺されかけてた身形の良い幼女を助けたら、我が軍の軍服を着た連中が追って来てます!うわっ撃ってきた」
あークソ!!!この車高かったんだぞ!!!!
“VIPだからいのちねらわれちゃうかな~?”とか言って、防弾仕様のを買ってなかったらお陀仏だったわ!
つっても同じところ撃たれまくったら、防弾ガラスの窓も割れるからあんま余裕ぶっこいてもいられねぇけど!
『は?え?幼女?軍服?…とにかく追われてるんだな?わかった応援を出す』
やっぱ持つべきものは理解ある上司だよな!
「もうやだよぉ!パパぁ!」
「大丈夫だから!頭下げてろ!!!クッソ!新車にバカスカ鉛玉ぶち込みやがって…」
高いんだぞこの車ァ!!!
お前らみてぇな最底辺の屑じゃ一生買えねような値段なんだぞ!?
アッ!ついに防弾ガラス割れたァ!!!
つーか、お前が死んだら俺が拉致して殺したみたいになるだろ!?
大人しく頭下げてろ!
『お前の車のナビゲーションシステムから人工衛星経由で座標を特定して、すぐにそっちへ増援を送る!赤い腕章してるのは味方だから撃つなよ!最先任上級曹長暗殺未遂って名目で兵を動かしてやる!』
やっぱこの人頼りになるわぁ…
「了解!できるだけ早くしてくださいね!あっ!やっべぇ!?」
『おい…うした?お……』
飛んで来た銃弾が顔を掠めた!?
咄嗟に躱さなかったら眉間で煙草吸えるようになっちまうとこだったぜ…
「もしもし?もしもし!もしもーし!!!…マジか」
なんか突然通話切れたと思ったら…
端 末 に 穴 が 空 い て る
「買い換えたばっかなんだが?」
俺呪われてんの?
お祓い行った方が良い?
つってもこんなSFみたいな世界じゃそういうの残ってるか知らんけど。
「パパぁ…ママぁ…ぐすっ…」
「…」
えー、車内の空気は最悪です。
銃弾が車のボディを叩く音と、窓ガラスが割れる音、そして幼女のすすり泣く声が車内に響いています。
たすけて
「…なあ、お嬢ちゃん」
「ふえ?」
「君の名前はなんて言うんだ?いつまでもお嬢ちゃんって呼ぶのもあれだろ?」
今聞く事じゃないだろうが、なんかあった時名前で呼んだ方が反応が良いと思う。
子どもって大人が名前を大声で呼んだら思わず反応するでしょ?(偏見)
しない?あれー?俺はそうだったような…いや、憶えてねーや。
「わたしの?」
「ああ」
お前以外に誰がいるってんだよ。
「…アンジェラ…アンジェラ・エリー・テンプル」
「アンジェラか…いい名前だな」
多分
知らんけど(適当)
「俺はジャック…ジャック・ギャレットだ。よろしくな」
「うん、よろしくね…ジャック!」
呼び捨て?
大人の俺を?
英雄である俺を?
…このクソガキはこの辺の子じゃないのかな?
この辺のガキどもは、女児なら無条件で俺にキャーキャー言ってるから、なんか俺の事を初めて見たっぽい言動にはならんし、呼び捨てしたりとかしない筈。
いや、どうかな…?所詮はガキだし(屑)
ちなみに、男児は呼び捨てするしサリヴァン総司令官と俺のどっちが強いか、最強談義してるらしいよ。
頭がキレるのはサリヴァン総司令官だけど、強いのは俺なんで…そこんとこよろしくね?
「よーし…アンジェラ、一先ずは俺の仲間たちの所へ向かうぞ!赤い腕章…赤いのを腕に巻いてる兵隊さんは、お兄さんの仲間だからな!その人たちがいっぱいいる所へ向かうぞ!」
「う、うん!」
よしよし…名前呼んだだけで泣き止むなんて安上がりなガキだな!(屑)
しかし…ファミリーネームがテンプル…ねぇ?
いや、流石にないよな?
うん、ないわ!ここアルビオン星系だぞ?
どうやってあんな出来損ないのチンピラどもが重役の身内を拉致すんだよって!
…拉致した奴らと殺そうとした連中は別なのか?
「ジャック!前!!!」
え?男前?(聞き間違い)
うわっ!?前から車がッ!
「ぬお!?」
「きゃっ!」
あっっっぶねぇ!!!
対向車線から車が来やがった!
「そこまでするか!ッ!?」
なんだ今の破裂音!?
「うおおお!?」
「きゃあああああ!!!」
クッソ最悪!タイヤがパンクしやがった!
相手がバカスカ撃ちやがるから!
こうなりゃもう徒歩で逃げるしかねぇ!
クソ…クソ…クソォォォ!!!
俺の新車があああ!!!
「ジャック…」
「アンジェラ、ここからは走って逃げるぞ」
あ゛ぁ゛!!!クソ!ドアが歪んで開かねぇ!
蹴破るしかない…オラァ!
よし!開いた!
「ふえぇ…」
「大丈夫だ!必ず君を家に帰す!」
「うん…うん!」
俺の新車をスクラップにしやがった屑どもは皆殺しにしてやる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「走れ!アンジェラ!」
「はぁ…はぁ…もうむりぃ…」
「頑張れ!パパとママの待つ家に必ず帰るんだろう!?」
「うん…うん!わたしは!おうちに!帰るの!!!」
市街地の路地。
一人の美丈夫が少女の手を引きながら走っている。
ジャックとアンジェラだ。
ジャックは時折後ろを振り返り、背後から迫る敵へ愛銃を発砲する。
「おいおい…子供のケツを追っかけるなんて…とんだペド野郎どもがいたもんだ!」
彼が引き金を引く度、乾いた銃声と共に何かが倒れる音やくぐもった呻き声が聞こえた。
しかし、彼は途中で足を止める。
「ジャック…?どうしたの?」
不安そうに彼を見つめるアンジェラ。
ジャックは目の前の建物の屋上を睨み、声を張り上げる。
「よう!覗きとは感心しないぜ!」
「コソコソしてないで出てきて来たらどうだ!」
すると、アルビオン防衛軍の軍服を着た集団が路地裏からぞろぞろと現れる。
そして、拍手と共に一人の男がジャックの睨みつける屋上へ悠々と現れた。
その男は左目が義眼のブロンドの長髪をなびかせる美男子だ。
だが、彼の浮かべる冷酷な笑みは見た者を震えがらせるほど恐ろしい。
男は屋上を飛び降り、ジャックたちの前に降り立った。
「久しいな…ジャック」
そう言った男に対し、ジャックは不敵な笑みを浮かべて言った。
「おっとぉ?悪いが今は忙しくてね…熱烈なファンが相手でもサインはできないな」
そんな彼に向かって、この兵たちの指揮官と思われる男が歩み出て言った。
「ジャック・ギャレット!てめぇはもう終わりだぁ!ガキ共々地獄へ送ってやる!」
「俺たちにはこいつが…銀河でも指折りの殺し屋!“百舌鳥” アルバン・ファビウスがついている!」
「てめぇの首を見りゃあクライアントも喜ぶだろうよぉ!」
指揮官は勝ち誇った表情で義眼の男…アルバンに命令する。
「おい!さっさとガキを殺せ!ジャック!てめぇは嬲り殺して死体を晒してやる!」
しかし、アルバンはそれを拒否した。
「断る。ガキを殺すのはお前たちが勝手にやれ。俺はジャックを殺せると聞いて話に乗っただけだ」
「貴様の命令に従う理由も義理もない」
指揮官の男は激昂してアルバンに詰め寄る。
「てめぇ…自分の立場わかってのか…?俺が上で…お前が下だ!」
「俺のバックには誰がいるかわかってんのかッ!?俺の雇い主はあの──」
男が自身の雇い主について言及しようとした瞬間、アルバンは彼の顔を掴むと頭蓋を握り砕き、その迂闊でお喋りな口を永遠に黙らせた。
「愚か者が…喋りすぎだ」
アルバンの突然の凶行に、軍服の男たちは思わず動揺する。
無理もない。自分たちの頭目が突然殺されたのだから。
ジャックはその隙にアンジェラを逃がそうと、怯える彼女に話しかけた。
「ここは俺に任せて今のうちに逃げろ」
「え?でも…」
「大丈夫だ。必ず追いつく」
「本当に?」
「ああ、約束する。さぁ、早く!」
「わ、わかった」
彼は走り出したアンジェラを見送ると、アルバンに向き直る。
「…よかったのか?彼女を行かせて。なぜ、俺が彼女の方を向いてる隙に攻撃しなかった?」
アルバンは笑って言った。
「ククク…お前たちを追っているが俺たちだけだとでも?」
「それに、お前の意識は先ほどからあのガキではなく、自分の銃と俺に向いていただろう?隙など晒していないのによくもほざく」
そう言うと、彼は先ほどまでの笑みを消してジャックを睨みつける。
「だが、それ以上に…お荷物のいない万全な状態の貴様を殺さなければ…俺の気が済まんのだ!」
「ゼータ・セクター戦役で貴様に左目を奪われ…あれ以来…幾度も煮え湯を飲まされてきた!」
「俺はなぁ…ジャック!貴様を殺すためだけに“ヴァルハラ・サイバネティクス”の実験体にすらなり…」
「成功率12%の地獄に耐え…体の大部分を機械に置き換える事で、生身では“ワルキューレ”すら凌駕する最強の強化人間となった!」
「ジャック!俺とお前の因縁に今日ここで終止符を打つッ!」
ジャックは無数の殺気と銃口に晒されながらアルバンに向けて言う。
「残念だが…レディとの約束があるんでね。先に地獄で待ってるといい」
「ほざけッ!ジャックゥゥゥ!!!!」
アルバンの殺意と憎悪の籠った叫びと共に、路地裏に無数の銃声と断末魔が木霊する。
銃声と爆音は徐々に静まり、やがてなにも聞こえなくなった。
数分後
「うぅ…」
「ばけ…も…の…め……」
「ぁ…ぁ…」
「おのれぇ……ジャック…ギャレットぉ…」
「どうしよ…これ絶対詰んだなと思って、なんか宿敵っぽい奴出てきたからせめてかっこよく死のうとしたら……なんか…普通に勝っちゃったよ…」
「絶対死んだと思ってたせいで、アンジェラにどこで合流するかとか、どこを目指すかとか言ってないからどこ行ったかわかんない…」
「いや、本当にどうしよ…連絡手段もないし…」
ジャックは無傷で勝利した。
「てか…アルバンって誰なの?…名前に聞き覚えあるからランカー?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
路地を少女は必死に駆けて行く。
「はぁ…はぁ…ジャック…ぐすっ…」
彼女は、背後から聞こえて来た銃声が徐々に止んでいくのを聞きながら、それでも当てもなく必死に走り続ける。
恩人の献身に報いるために、生きて家族の元へ帰るために。
「お、みぃつけた♡」
しかし、そんな思いはいともたやすく踏み躙られる。
「ひっ…やだ…来ないで…」
アルビオン防衛軍の軍服を着た破落戸たちが姿を現したのだ。
「えー…どうしよっかなぁ……ダァメェェ!」
「ハハハハ!!!お前マジで最悪だな!!!」
「殺す前に愉しんでいいか?」
「むしろ、殺してから愉しもうぜ!」
「殺しながら愉しむってのはどうよ?」
男たちは嬉々として彼女の尊厳を踏み躙りながら殺すつもりだ。
「いや…やだ…パパ…ママ…だれか…だれか助けてぇ!」
泣きながら壁際に追いつめられる。
助けを求めるがここには破落戸ども以外誰もいない。
「泣いても助けなんか来ねぇよぉ!!!」
「ギャレットも今頃あの世行きだぜ?」
「死体でいいからあいつのケツを使いたいなァ…」
「お前マジかよ!死体なら男でも女でもいいのかよ!」
「いや、男と幼女の死体にしか興奮しない」
獣どもは追いつめた獲物に手を伸ばす。
「やだやだやだぁ!!!」
「そんじゃ、楽しんでお仕事しますかね♪」
「罪に問われるのはアルビオン防衛軍だってんだから最高だぜ!」
「あー早く星系が燃えるとこ見てぇ…俺それじゃないと興奮しないんだよ…」
「マジで?どんな性癖だよ…」
「ペドホモネクロフィリアがなんか言ってら」
次の瞬間、ヘリのローター音と共に破落戸の一人の頭が弾け飛んだ。
「さて、そんじゃたのぼびょ!?」
「なんだ!?」
「ヘリからの狙撃か!」
「畜生!ガキを拉致して逃げるぞ!」
「足がッ!畜生!最後にジャックの死体を使いたぎゃッ!」
破落戸どもは次々と撃ち殺される。
「おい!ガキィ!てめぇ盾になれ!」
「や、やめっ!」
残った内の一人は彼女を抱え上げ、ヘリからの狙撃への盾にした。
「目標を発見、ヘリに気を取られている隙に人質の救出を行います」
「あがっ!?」
「うわぁぁん!もうやだぁ!」
残りも別ルートから来た防衛軍の本物の兵士に射殺された。
「あれは…赤い腕章…?ジャックの仲間の兵隊さん?」
「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
「え?は、はい…」
「こちら第3憲兵小隊、人質を保護と犯人の確保完了。犯人の内二名死亡。残りは重体です」
『了解、犯人を収容後引き続きギャレット最先任上級曹長の捜索に当たれ』
「了解」
兵士たちは破落戸どもを収容すると、アンジェラを丁重に装甲車に案内する。
「さぁ、こちらへ足元にお気を付けください」
「ありがとう…ねぇ!兵隊さん!」
「はい、どうかしましたか?」
「わたし、ジャック・ギャレットって人に助けられて…その人はあっちで私をにがすために…」
彼女は目の前の兵隊がジャックの言っていた仲間だと理解すると、彼を探してくれるように頼んだ。
「ギャレット最先任上級曹長がッ!?こちらP-01!あちらの方にギャレット最先任上級曹長が!?」
『どうしたッ!えっ!?』
「あっジャック!」
彼らの目線の先には、血まみれでフラフラ歩くジャックの姿があった。
「あぁ…畜生…今日は厄日だ…なんだって俺がこんな酷い目に……」
「愛車はスクラップ……お気に入りの服は返り血まみれで…買い換えたばかりの端末も……放り捨てちゃったけど、データ移行できるから持っておけばよかったのに…」
「もうやだぁ…」
怪我一つしていないが、休日だけでなく色々所有物を失って意気消沈している。
しかし、周りからすれば死闘の末に奇跡の生還を果たしたようにしか思えないのだ。
「最先任上級曹長ぉ!!!よくぞ…よくぞ!!!」
「血まみれだ!担架を!今すぐ担架を下ろせ!」
「ヘリだ!ヘリで今すぐ病院へ!!!」
「え?あの?なに?俺別に何ともないけど?」
ジャックはヘリで病院に搬送され、医師の診断により怪我一つしていない事が明らかになった。
サリヴァン曰く「前々から頑丈だなって思ってたけど、話聞いたら普通は既に何回か死んでないとおかしいんだが?彼は頑丈過ぎやしないか?」との事である。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
惑星AL2、ヴァレンタイン邸。
ここはヴァレンタイン議員の住む豪邸である。
彼は好々爺の様な声色で、サリヴァンと通話をしていた。
しかし、その顔は険しく怒りが滲み出ていた。
「おお!ギャレット君がやってくれたか!」
『はい、現在司令部にて彼女を保護しています。…お手数をおかけしますが、彼女を親元に帰すためにもヴァレンタイン議員のお力添えを頂きたいのです』
「もちろんだとも!幸いにも私はアステリアには伝手があってね!すぐにその子を家に帰すことができるだろう」
『本当ですか?ありがとうございます!どうかよろしくお願いします!』
「いやいや、もし今回この企みを潰すことが出来なければ…講和が潰れていてもおかしくなかったかもしれん…本当によくやってくれた!君たちのおかげだ!」
「今回の件には厚く報いよう!」
『いえ、今回は私よりもギャレット最先任上級曹長を筆頭とした将兵のおかげです。私はいいので、彼や今回救出作戦に参加者たちに報いてやってください』
ヴァレンタインは今回の一件を重く受け止め、サリヴァンらに厚く報いると約束した。
最も、サリヴァンは自分以外の将兵に報いるように頼み、それを固辞したが…
『一つお願いが…』
「うむ、なにかね?なんでも言ってくれ!叶えられる範囲で叶えよう!」
ヴァレンタインは、サリヴァンに自身の力の及ぶ範囲内で、願いを叶える事を約束した。
それを聞いて安心したか、サリヴァンはヴァレンタインに頼んだ。
『彼女をそちらで預かって頂けないでしょうか?その…こちらでは少なくとも我々首脳陣は、彼女に害を与える事は決してないのですが…』
『彼女の兄のことを考えると、軍内ではあまり安心できないのです…それに、私は彼女からすれば兄の仇なので…』
そう言うサリヴァンに彼は快く応じた。
「ああ…確かにその通りだね…相分かった!こちらで彼女を預かろう!なに、ここには年の近い孫娘もおる!退屈も寂しい思いもしなくて済むさ」
『何から何まで…どうもありがとうございます』
「いいさ!むしろ、これはこちらから申し出ようと思っていた事だからねぇ」
その後、彼らは一言二言喋って通信を終えた。
「なんたることか…この私のあずかり知らぬところで…この星系が破滅しかけていたとはッ!」
彼は好々爺の仮面を被り切れず、思わず激昂した。
「どうやら…私は君を…買いかぶっていたようだ…」
「慎み深さに欠けるというのは訂正しよう…」
「お前は無礼で下劣で思慮に欠けた抹殺すべき愚か者だッ!」
ヴァレンタインは、どうあってもこの星系を焼き尽くしたくて仕方がないらしい、娘婿の政敵を思い浮かべて殺意を滾らせた。
しかし、彼も長く政治家をやっているだけあり、怒りに飲まれずにそれを胸の奥にしまい込み、いつもの好々爺めいた顔に戻った。
「さて…今回もギャレット君には助けられたね。一体どうやって今回の件を彼は察知したのだろうね?」
ジャックが聞けば「察知してないです!偶然です!」と答え、サリヴァンが聞けば「トラブルの方から彼の元に転がり込むようですな」と言うだろう。
彼の中でのジャックの評価は鰻上りだ。
「しかし、ルキウス君はいいタイミングでデリック君を派閥に誘ってくれたね。彼は情で動くところがあるからね」
「おかげでルキウス君の下に着いても、娘の事を想えば不平不満は言いにくくなるだろうからな」
「さて、彼が無事に副社長になれるように手伝わねばな。最も、この星系を経済植民地にされるわけにはいかんから、財界との利害調整は考えなくてはなぁ…」
「ルキウス君にある程度は花を持たせなくては…せっかく講和が出来ても…あの愚か者が副社長になっては意味が無い」
彼の中で娘婿のルキウスの評価が上がった。
そして、彼の権力闘争を更に援護を加えることを決意した。
「彼女のこの星系での立ち位置を考えれば、本来はあり得ない好待遇だからねぇ。いやぁ、ギャレット君とサリヴァン君が行動力があり、思慮深い理性的な人物で助かったよ」
ジャックが聞けば「いや、すみません…ラモントの妹って知りませんでした…」と言い、サリヴァンが聞けば「えー…胃に穴が空くかと思いました」という事だろう。
こうして、愚者の謀略はサプライズジャックで無効化され、政敵の勢力が更に強大化する結果に終わった。
「なんかアンジェラのパパのデリックさんから高級車が届いた!それに…これは最新式の携帯端末!?やったね!ありがとうデリックさん!」
「やっぱあの娘金持ちの家の娘だったんだな!いやぁ、無事に帰れてよかったよかった!」
後日、デリック・ノーマン・テンプルは娘の恩人にお礼の品を贈ったそうな。
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