第十話
今回は主人公視点ではありません。
AL2β宙域。
ここには各地から駆け付けた艦、約60隻というアルビオン星系史上最大の艦隊が結成された。
最も、総司令部はこれでも厳しい戦いになると予測していた。
装備や練度の差が圧倒的であり、数の差で押し切れない可能性が大きいからだ。
そんな戦いの中、未だ勝ちの目があると思っている男たちがいた。
ジャックとサリヴァンである。
彼らの目には未だ諦めの感情は浮かんでいなかった。
それどころか、なにやらとち狂った戦術を立案しているようだ。
AL3γ宙域に敵艦隊が到達するまでに、AL2β宙域への到着が間に合うとされた艦隊。
それら全てが出揃い、総司令部からの作戦内容の説明が始まった。
アルビオン防衛軍幕僚長が、各艦隊の司令部へ通信で映像と音声を送り、作戦内容の前に現在の状況を説明する。
『これより、現在の状況を説明する。現在、敵艦隊は進軍経路のコロニー駐留艦隊を蹴散らしながら真っ直ぐこちらへ向かっている』
『コロニーへの攻撃が一切行われていないことから、相手の目標は首都星であるAL2の制圧であると考えられる』
『故に、コロニーに駐留する全ての防衛軍には、相手が攻撃の意思を見せない限り、不用意に交戦しないよう厳命してある』
『現在“確認されている”敵の戦力は、戦艦やSAF母艦を含む大型艦を有する十隻の艦隊と、それらの艦載機である推定で120~130機のSAFである』
『しかしながら、我々防衛軍総司令部は敵の総戦力は10隻だけではない可能性が高いと考えている』
『我が軍の艦隊は基本的には5隻の艦艇で構成されている。そのため、全軍ではなく分艦隊にランカーを乗せ、此方の艦隊を攻撃させていた可能性もある』
『また、敵はこちらの主に駆逐艦と警備艇で構成される艦隊とは違い、戦艦やSAF母艦などの大型艦が存在する分、SAF搭載数や艦砲の射程距離でも此方は劣っていると言わざるを得ない』
『おまけに、SAFは此方の軍の主力機であるコグネイトを耐久力以外の性能で上回る、第四世代機以上の高性能な物がほとんどである』
『また、エネルギー関連の技術に定評のある企業であり、レーザーライフルなどの自社製エネルギー兵器をSAFに装備させているため、旧式でエネルギー耐性に難があるコグネイトでは、一撃でも被弾すれば撃墜される可能性がある』
幕僚長の言葉は、あまりにも救いようのない状況を完璧に分析しきっていた。
皆一様に、顔色を悪くしていた。
ただ、二人を除いて。
『こんなの…まともにやり合って勝てる相手じゃない…』
誰かがそう呟いた。
『ああ、そうだ。“まとも”にやれば勝ち目はない。だから、我々は戦術の定石から外れた作戦を行う』
誰かが漏らした呟きに、サリヴァン総司令官は力強い言葉で返した。
続けて、彼は常軌を逸した正気の沙汰とは思えない作戦を皆に説明する。
『これより、作戦内容を説明する』
『我々は規模や練度、装備で敵に大きく差をつけられている。よって総司令部や参謀本部はまともな戦い方を捨てる事にした』
『まず、我々の艦隊戦力が敵艦隊に打撃を与えるには、我が方の射程内に敵を収めなければならない』
『しかし、敵は巡洋艦以上の艦を揃え、戦艦も擁している。そのため、どうあがいても砲撃戦になれば、射程や威力、艦の耐久力の差で我々が撃ち負ける事になる』
『そこで、魚雷が搭載可能な艦艇の半数で一撃離脱の雷撃戦を行う。もう半数は迂回して敵の背後や側面を突く。少しでも敵の迎撃能力を削るためだ』
彼のその乾坤一擲としか言いようのない作戦にどよめきが広がる。
『しかしながら、これで敵の戦艦やSAF母艦にダメージを入れられなければ、我が軍が息切れしたところをそれらの圧倒的な性能差で引き潰されかねない』
『そこで、艦隊が突入する前に腕利きの乗る数機のSAFによる決死隊によって、敵艦隊前衛に風穴を開ける』
『その後、各艦から発艦したSAFによって穴を広げ、敵艦直掩のSAFや対艦攻撃を行おうとする敵SAFを迎撃。我が方の艦隊はそこから敵艦隊に突入する事になる』
『その場合、敵は艦載機のSAFを迎撃のために発艦させ、こちらの艦隊へ差し向けて来るだろう。だが、それこそが狙いだ』
『如何に企業が冷酷であろうと、自陣営のSAFを砲撃に巻き込んで消し飛ばすことはできないからだ。それで勝てなければ、多くのSAFを無為に失った責を負わされるのだからな』
『この攻撃で、敵の旗艦足り得る戦艦やSAF母艦を沈められれば、後は順当に小型艦同士の消耗戦に持ち込むこととなる』
『こちらは防衛側のため、補給を十分に受けられるようになっている。対して、敵は敵地のど真ん中で消耗戦を強いられるという事だ』
『以上が本作戦“オペレーションブレイカースクワッド”の概要となる』
彼の説明を聞き、各艦隊の首脳陣はこの滅茶苦茶な乾坤一擲の作戦に戸惑うも、それ以外に道はないと覚悟を決めた。
そこにサリヴァン総司令官は爆弾を投げ込んだ。
『言い忘れたがSAF決死隊の指揮官は私だ』
((((((!?))))))
その爆弾発言に空気が凍る。
万が一、総司令官が堕ちればアルビオン防衛軍の士気は壊滅する。
そこで、艦隊司令の一人が恐る恐るサリヴァンに質問した。
『か、閣下!質問をよろしいでしょうか!?』
『うむ、時間が無い故手短に頼む』
『な、なぜあなたが決死隊を率いる必要があるのですか?あなたが堕ちれば全体が混乱します。なにより、決死隊の士気に関してはギャレット最先任上級曹長がいれば解決するのではないでしょうか?』
((((((よく言ってくれた!!!!))))))
『サリヴァン総司令官、私は彼の意見に賛成です!』
『閣下!どうかご再考を!』
彼がサリヴァンに対して言った発言に、艦隊司令たちは口々に賛同する。
だが、サリヴァンの返答は…
『駄目だ。確かに俺が指揮を執る必要はなく、決死隊にはギャレット最先任上級曹長もいる。だが、敵のランカーは二人だ』
『敵艦隊前衛に彼らが配置されていた場合、ギャレット最先任上級曹長が抑え込まれている隙に、我が方の艦が攻撃を受ける事となるだろう』
『故に、我々が二人で敵ランカーを抑え込み、その隙に他の決死隊のSAFが敵艦隊に風穴を開ける。これは、そのための布陣である』
『他に質問はあるかね?』
理にはかなっているため、艦隊司令たちは押し黙るほかなかった。
なにせ、低位ランカーが率いる数だけは多い海賊の群れに、自軍の艦隊は壊滅的な被害を受けた。
それを当時の第4パトロール艦隊とAL4αコロニー駐留艦隊の練度のせいにして、否定できるほど自分の艦隊の練度も高くなく、なによりもアルビオン星系では英雄視されているギャレット最先任上級曹長の功績を過小評価することに繋がってしまう。
仮に、ギャレット本人がそれを許したとして、彼の周りが許すとは限らない。最悪の場合、後ろからの弾で戦死する羽目になりかねないだろう。
そんな中、皆の期待を一身に背負い、サリヴァンに質問する者がいる。
ギャレット最先任上級曹長だ。
「質問をよろしいでしょうか?」
『うむ、いいぞ』
((((((頼む!最先任上級曹長!あなただけが頼りだ!))))))
(なんだその目は?対案もねぇのにやめろって言えってか?)
「敵が艦隊を分け、この艦隊と交戦し始めた後、敵分艦隊がステラリウム目当てにAL4近郊を襲う可能性もありますが、その場合はどうされるのですか?」
((((((確かにその可能性もあるけど!そっちじゃなくて!))))))
『ギャレット最先任上級曹長、いつものやるしかないんじゃないか?』
((((((いつもの!?))))))
「目の前の敵を始末してから、足の速い船だけで構成した小艦隊で殴り込みですね?」
『『『『『『そんな事をいつもやってたのか!?』』』』』』
遂に彼らは耐え切れずに口に出した。
結局、艦隊司令たちはサリヴァンの意思を変える事はできず、元ブレイカースクワッド二人の異常さを見せつけられ、胃痛を抱えたまま決戦に臨むこととなった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本土防衛艦隊旗艦“ポーツマス”。
この船のハンガーには、自ら志願して集まった決死隊のパイロットたちの姿と彼らの乗機があった。
その面々の中には、ジャックとバレット少尉もいた。
サリヴァン総司令官は、自らの眼前で整列する彼らを見て、誇らしそうに頼もしそうに満足して頷く。
「よく集まってくれた。お前たちは俺の誇りだ!」
「これから、俺たちは敵艦隊に突っ込んで風穴を開けに行く」
「だが、勘違いするなよ?俺たちは決死隊だが、死にに行くわけじゃあない。艦隊に風穴開けた後、発艦して来たSAFに混ざって敵と戦うんだ!」
「いいか!俺たちの後ろにあるのは、AL2とAL3に住む100億人の命だ!」
「それを守り通すまで…決して死なない事を命ずる!」
「なに、安心しろ!戦況が不利なようでも俺たちは必ず勝てる!」
「お前たちにはこの俺と…ジャック・ギャレット最先任上級曹長がついている」
そう言ったサリヴァンの目線の先には、その俳優の様な整った顔に不敵な笑みを浮かべながら、自らの言葉を聞いている右腕の姿があった。
その姿からは他のパイロットとは違ってどこか余裕の様な物を感じた。
「俺たちは必ず勝つ!そして、俺たちの故郷に土足で踏み込んだ連中に、ここに来るべきではなかったと思い知らせてやるぞッ!!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
サリヴァンがそう言って拳を高く掲げると、ジャックを除く皆が熱狂し雄叫びを挙げ、拳をつき出す。
(皆が熱狂していても冷静さを失わず、ただこれからの戦いのことを考えている…ジャック…やはりお前はいつも頼りになる)
サリヴァンは、そんなブレイカースクワッド時代からの右腕の姿を心から頼もしく思った。
そんな中、突然警報が鳴り響く。
そして、艦内放送が敵の艦隊を発見した事を告げた。
『六時の方向!およそ“20隻”規模とみられる敵艦隊を発見!総員、第一種戦闘配置!』
彼はそれを聞いて、パイロットたちへ口を開く。
「聞いたなお前ら!出撃準備だ!」
サリヴァンの言葉を聞いて、パイロットたちは皆それぞれの愛機へ走って行く。
彼もまた、パイロットたちと共に愛機の元へ走って行った。
そして、紺色のコグネイトの前で止まる。
その機体は、左肩に大型ガトリングガン“ICI-C05-VULCAN”を装備しているのが特徴的であった。
そして、左腕にはジャックの機体と同じくパイルバンカーを装備していた。
サリヴァンは、目の前の愛機である紺色のコグネイトを見て、整備兵に尋ねる。
「機体の状態は?」
「いつでも出られますよ!バズーカの弾とミサイルも補給は完了してます!」
「ありがとう!君たちのおかげでこの戦いに勝てる!」
「閣下!ご武運を!」
彼は整備兵に礼を言ってコックピットに入ると、出撃準備が整った機体から離れる整備士たちを他所に全軍に号令をかける。
「各員へ通達!これより、オペレーションブレイカースクワッドを開始する!血路は我らが開く!各員の奮闘を期待する!」
そう言うと、カタパルトに愛機を固定する。
「レイモンド・サリヴァン!“ケントゥリオ”出るぞ!」
彼の愛機“ケントゥリオ”が、カタパルトによって射出される。
その後、続々と決死隊は発艦していく。
隊列を組みながら敵艦隊に向かって行く決死隊。
サリヴァンは突入前に彼らに言った。
「いいか、余程の事が無い限り単騎で戦おうとするなよ。近くの機体とエレメントを組んで戦うんだ!」
彼はコックピット内で彼らの『了解!』という短い返事を聞いていた。
そこへ、自らの右腕からの声が聞こえた。
『了解です。では、私はサリヴァン総司令官の僚機という事でよろしいですね?』
いつの間にか、自身の隣にはジャックの赤いコグネイトがあった。
サリヴァンは口角を上げて言った。
「ああ!遅れなかったようでなによりだ!ギャレット最先任上級曹長!」
『無遅刻無欠勤が私の自慢ですよ』
「そうか!では、存分に働いてもらおうかな!」
『おっとぉ?上司の目があるなら杜撰な仕事はできませんなぁ』
彼らは冗談めかしてそう言った。
敵艦隊が更に近づき、対空砲火が近くまで伸び、迎撃のSAFが上がってきている事が目視できるようになる。
決死隊はブースターを全開にそこへ突っ込んでいく。
「決死隊各機へ!エレメントは組めたか?組めてないなら近くのところに入れてもらえ!二機以上ならいいから、三機でも四機でも構わん!」
「組めてない奴がいたらちゃんと入れてやれよ!仲間外れは可哀想だからな!」
彼の言葉で笑いが起きる。
だが、突入すれば乱戦状態となり、彼の言葉も届かなくなる。
そのため、エレメントを組んでいるかどうかは死活問題となる。
サリヴァンらは、向かって来るSAFを蹴散らしながら、敵艦隊に肉薄する。
一番先に、迎撃機の壁をすり抜けて艦隊へ肉薄したのは、サリヴァンとジャックのコンビだった。
「いくぞ、ジャック!まずはあの大物から沈める!群がってくるSAFの相手を頼めるか?」
『では、周りの羽虫は潰しますので、サリヴァン総司令官は艦を潰してください』
そう言って、サリヴァンは近くの戦艦へ攻撃を仕掛けに行き、ジャックは彼を近づけまいと迎撃に向かって来るSAFを次々に墜としていった。
「ふむ、やはり練度が良い。この防空能力の高さはうちの連中にも見習わせたいなっと!」
サリヴァンはブースターを小刻みに吹かし、不規則な機動で対空砲火を躱し、左肩のガトリングガンで対空火器と主砲を沈黙させる。
「確か…この艦はこの辺だったか…」
彼は右肩の誘導ミサイルを敵艦のバイタルパートに叩き込む。
哀れにも敵艦は、その構造的な弱点に攻撃を叩き込まれ、その火力と防御力を活かすことなく沈んだ。
「よし…ジャック!そっちはどうだ!」
『こちらも終わりました』
「では、次だ!」
『あの巡洋艦群はどうです?足が速くて魚雷を積んでるので、残しておいたら後々面倒では?』
「確かにそうだな。では、そうしようか!次はお前が艦をやるか?」
『了解、赤い死神の名を奴らに刻んでやります』
そう言って、彼らは次々に艦を沈め、SAFを撃墜していく。
だが、そんな二人の快進撃は途中で止まる事となる。
『あの識別コードは…ランク45のジャック・ギャレットとランク30のレイモンド・サリヴァンか!』
『ククク…面白い!レイモンド・サリヴァン……奴はこの私…ラモント・デリック・テンプルの獲物に相応しいッ!』
『なるほど…それじゃあ、赤い死神の方は?』
『チャズ、そのような些事はお前が片づけよ。喜べ!この私と“モナーク”が紡ぐ叙事詩の序章を目撃できるのだから!』
『味方に損害を与えまくったランカーが些事ねぇ…』
彼らに立ちふさがったのは、アステリア・エレクトロニクスのランカーであるEランク帯38位のチャズとFランク帯42位のラモントであった。
ラモントは愛機“モナーク”のブースターを全開にし、サリヴァンの“ケントゥリオ”へ踊りかかる。
『我が伝説の一部となれ!サリヴァン!』
「速い…!あの紫に下品な金の縁取りの機体は…アステリアが宣伝してた最新鋭機のレジーナかッ!」
ラモントは愛機の“モナーク”の両肩の三連装ミサイル“AE-PM-03-TRIGLAV”を発射した。
『墜ちよッ!』
「ミサイル!?実弾兵装嫌いなアステリアにしちゃ珍しいッ!」
サリヴァンはそれを左肩のガトリングで迎撃。
すると、打ち抜かれたミサイルが辺り一面にプラズマをまき散らす、プラズマ爆発を起こした。
「プラズマ爆発!?さしずめプラズマミサイルってとこか…連中、SAFのジェネレーターに頼らないエネルギー兵器を開発したか…当たればコグネイトでは一溜りもないな」
『ふん、今ので死んでいればこれ以上苦しまずに逝けたというのに…愚かな奴め!』
“モナーク”は残留するプラズマを躱し、右手のレーザーライフル“AE-LR22-PHOEBUS”とレーザーハンドガン“AE-LH09-SPARK”を連射し、 “ケントゥリオ”へと襲い掛かる。
『そらそら!どぉうしたぁ?サリヴァァァンッ!!!防戦一方では、私が楽しめんだろうがァ!!!』
「チッ!エネルギー兵器の二丁持ち…それも、片方は連射が効くと来たものか!」
サリヴァンは、ブースターを小刻みに左右へ吹かし、相手の攻撃を巧みに躱していく。
そして、右手のバズーカと左肩のガトリングを同時に放ち、時間差で右肩のミサイルを放った。
『ハハハハハ!!!苦し紛れの抵抗というやつか?そんな攻撃がァ…このモナークの機動性で当たる筈が無かろう!』
「ふむ、なるほど…機動性は中々だ。それに反応も良いし、武装も厄介だが…」
『ぬぅ!?追尾ミサイルだとッ!小癪な!』
「肝心のパイロットに経験が足りないんじゃないか?」
バズーカとガトリングの弾を躱し、追尾ミサイルを振り切ろうとブースターを全開にするラモント。
サリヴァンはミサイルに意識が逸れた隙に、“モナーク”へバズーカを向ける。
その背中を狙う者がいた。
それは、全身をカーキ色に塗られた、アステリアの第四世代機中量級SAF“AE-04M-LAVORO”。
チャズの乗機である“スーパーバイザー”である。
彼は右肩にあるレーザーキャノン“AE-LC07-ARTEMIS”の照準を“ケントゥリオ”へ合わせる。
『あーあ…突っ込んだ挙句このザマか…ユリウスの旦那と違って、ラモント坊ちゃんは話を聞かねぇからなぁ…』
チャズはそう言って、レーザーキャノンを発射──できなかった。
突如、横から飛んで来たグレネードランチャーの榴弾を躱し、彼は攻撃が来た方向へ振り向く。
『ッ!あー…俺も焼きが回ったなぁ…俺の優秀な部下たちは、コグネイトに乗ったDランクの下位ランカーまでなら…連携で圧殺できると思ったんだがなぁ…』
そこには、こちらへ接近して来る無傷の赤いコグネイトがあった。
『“赤い死神”は虚名じゃなかったか…』
『悪いね、ラモント坊ちゃん。精々、サリヴァン相手にちったぁ時間を稼いでくれや』
そう言って、彼は自身の敵に向かって行った。
チャズから見捨てられたラモント。
彼はそうとは知らずにサリヴァンと戦い続けていた。
ラモントが追尾ミサイルをレーザーハンドガンの連射で叩き落すと、そこへすかさずバズーカとガトリングの弾が飛んでくる。
『クソッ!クソッ!クソォォォ!!!私の踏み台の分際でぇ!!!この下郎がァァ!!!』
彼は、怒り狂いながらも辛うじて“ケントゥリオ”からの攻撃を躱し、両肩のプラズマミサイルを六発発射する。
「おー…頭に血が上ったか…それとも疲れたのか…動きが単調になってきたな」
サリヴァンはガトリングでプラズマミサイルを叩き落す。
プラズマミサイルが全て爆散し、大きなプラズマ爆発が起きる。
『はぁ…はぁ…プラズマを超えて攻撃はできまい!さぁ、どこから来る!サリヴァン!』
「プラズマの煙幕は悪くないが…」
『なッ!レーダーに接近反応!?』
ラモントは上や左右を警戒するあまり、足元が疎かになっていた。
ここは宇宙であって、地上ではない。
上や前後左右だけを警戒すればいいわけではないのだ。
そのくらいは彼にもわかっていたが、経験不足が非常時における判断を誤らせた。
機体の足元から背後に回った“ケントゥリオ”。
『後ろッ!』
振り向いて得物を向けようとした“モナーク”に、“ケントゥリオ”の鋭い蹴りが突き刺さる。
『ぐわっ!?な、なぜ私の後ろから!?』
「終わりだ」
体勢を崩した“モナーク”へ、サリヴァンは容赦なく左腕のパイルバンカーを叩き込んだ。
『あっ』
耐久力の低い軽量級機の装甲では、パイルバンカーの一撃を防ぐことはできず、“モナーク”は主と共に爆散した。
「さて、さっき横やり入れようとしたやつが強いようなら、ジャックに加勢しに行くが…」
『こちらギャレット最先任上級曹長、こちらも終わりましたよ』
「流石、仕事が早い!」
通信とともに、チャズを片づけたギャレットが“ケントゥリオ”に近づいてきた。
その後ろには、傷だらけのカーキ色の残骸が浮かんでいる。
「敵艦隊に風穴を開け、敵ランカーも討った。仕事は十分だな。決死隊を拾いながら味方艦隊と合流するぞ」
『了解です』
彼らは生き残った決死隊と合流し、突入した味方艦隊に合流した。
だが、これで終わりではない。
ここからが、本当の戦いとなる事を彼らは未だ知らなかった。
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