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第04話 引き金が引けない人

 その男は店内のショーケースを見て悩んでいる様子だった。

パラカスがそっと近づいて、


 「何かお悩みですか?」

 「えッ! いえ・・・」

 「我慢してはいけませんよ。ストレスが溜まります」

 「実は・・・」

 「実は?」

 「私は自衛官で今度、中東派遣が決まりまして。で・・・いざと言う時、人を撃てるかどうか心配なんです」

 「それは困りましたね。迷っていたら自分が撃たれてしまいますよ」

 「でしょう。この心配事・・・何とかならないものでしょうか」

 「分かりました。ちょっとアナタの脳の中を拝見させてくれませんか?」

 「脳の中?」

 「さッ、あちらの部屋にどうぞ」

 「え? あッ、はい」


パラカスは別室の小部屋へと男を案内する。


 「そこに座ってそのテーブルの上にあるものを頭に被(カブ)ってくれますか」


男は言われるがままにヘルメットの様なモノを頭に被る。

パラカスは垂れ下がったコードをヘルメットのコンセントに差し込み、急いで小部屋から出て、別室のモニタールームに入りスイッチを入れる。

壁の大きなモニターに男の脳内の画像が映し出される。

パラカスはその映像を見て、


 「・・・あ〜あ、コレだ。前頭葉の前の部分、理性をコントロールする線が絡(カラ)んでる。理性が強過ぎてショートしてるんだ。これじゃあ、銃の引金は引けない筈だ。自我(心)のチャンネルをメンテしてリセットしないと闘争心が沸いて来ないな。・・・あッ! そうだ。あのロシアの『スナイパー(狙撃手)の脳』をシナップスで繋いで、男の脳とコラボしてみよう。ところでこの男の職歴はと・・・」


パラカスは海馬に刺激を与えて前頭葉に想起させた。

想起させた映像には、寺で男が正座して経を唱えながら特大の『りん』をりん棒で叩いている姿が映し出される。


 「・・・な〜るほど、彼は『僧侶』だったのか・・・」


パラカスは別室の小部屋に戻り男の頭からヘルメットを外した。

男を見て、


 「アナタは以前、僧侶だったのですか・・・」

 「えッ! なぜソレを」

 「脳に残る過去の残像を拝見させて頂きました。で、これからアナタの脳をチューンアップして行きたいと思います」

 「えッ! チューンアップ? あ、あの値段は?」

 「値段? ネダンはオマカセします」

 「いや、そのあやふやな言葉が一番怖いんです」

 「怖い? 施工(施術)が終わったらその怖さも無くなりますよ。人を人だと思わず銃の引金も引ける筈です。弾は正確に的(マト)に当たりますよ。何しろ元狙撃手の脳を使いますから」

 「狙撃手の脳?」

 「ええ。ロシア兵の狙撃手が使用していた脳です。アナタの目の奥にある網膜(神経節細胞)からその狙撃手の脳の後頭葉(視覚中枢)にシナップスで繋いでチューナップして行きたいと思います。アナタの心配事も無くなり、闘争心もアップして的(マト)への集中力も上がり、命中率も相当上がりますよ」

 「シナップスを繋ぐ? 開頭手術でもするのですか?」

 「手術? この店は病院では有りません。シナップスでアナタの脳と狙撃手の使っていた脳を繋げ、超微量電流を数十秒間流します。それにより絡んだ理性を刺激し、ほぐし(解放)ます」

 「あの〜、その『ほぐす料金』はおいくらですか?」

 「施工時間で計算されます。約3分でお客様の脳内の絡(カラ)んだ理性をほぐし、狙撃手の脳を使ってリセット、解放からリセット迄で30万位でしょうか。アナタの命が亡くなる事と比較すれば安いモノです」

 「3分で30万かぁ・・・分かりました。じゃ、お願いします」

 「ありがとう御座います。これで、アナタは直ぐに狙撃部隊の部隊長に成れます。中東での戦いが楽しみですね。ハハハハ」

                        つづく

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