第03話 モチーフが浮かばない人
それから数日過ぎて・・・。
店の前に一見『みすぼらしい男』が立っていた。
その日の店主は真里矢(女性)である。
パラカスは真里矢に変身してシャッターを開た。
待って居たかの様に男が近づいて来た。
真里矢が、
「あら、いらっしゃい。何かご用ですか?」
「あの~、私に合う脳を探しているんですが」
「アナタに合う脳?・・・お仕事は?」
「画家です」
「画家さん?」
暫く話しを聞いてみると、
「私の脳は限界に達して、あとは死を待つだけだ」
と言う。
どうやらその男、スランプに陥ってる様である。
真里矢はその男を店の中に招き入れ、ソファー座らせて詳しく話しを聞き始めた。
「で?」
結論は「絵のモチーフが浮かばない」と言う。
早速、真里矢は棚の上から数種類の『芸術家』のラベルの貼ったアルコール漬の脳の標本瓶をテーブルの上に置いた。
そして、
「芸術家や作家はスランプに陥り安いのよ。だから一年にいっぺんは脳のメンテナンスをしないといけないわ。メンテナンスにはクリーンアップ、チューンアップ、バージョンアップの三種類あるの。ちょっとアナタの脳の中を拝見させて頂ける?」
と言ってそのみすぼらしい『画家の男』を二つ在る別室の一つに案内した。
その部屋は小さく、まるで電話ボックスの様である。
その小部屋の天井からは数本のコードが垂れ下がっていて、コードの先にはヒューズの様な物が付いている。
ヒューズの先からは順番に数色の灯りが点滅している。
真里矢は画家を見て、
「どうそ、その椅子にお座りになって」
真里矢が優しく男を座らせる。
男が座ると真里はヘルメットの様な物を男の頭に被せた。
そしてヒューズの様に光るコードの先をヘルメットの上部のプラグに差し込んで小部屋を出た。
別室の壁に設置してある120インチの大きなモニター。
モニターを見ながら、
「・・・あ~あ、ここだわ。ここが混線している。脳と自我のバランスが取れてないんだわ。これじゃ本人も死にたく成るのは当然ね・・・な~るほど・・・彼は『抽象画』を描いているのね。・・・そだッ! 一週間前に届いた脳があったわ。確かアレは『カンデンスキー』と書いてあったわね。あの脳を使ってバージョンアップしてみましょうかしら」
真里矢は男の座る小部屋に戻った。
被っているヘルメットを取りながら、
「アナタは抽象画を描いているのね」
「え? 何故、分かったのですか?」
「今、あなたの脳の中を拝見させて頂きました」
「え? 」
「だいぶ混線している様ですわよ。アナタは脳と自我のバランスが取れてない。確かにアナタの才能はもう限界に来てるわ。今お使いの脳を少しクリーンアップした方が良かも」
「クリーンアップ? それって値段が張るのでしょう?」
「 大した金額ではないわ。クリーンアップして、その後、バージョンアップするの。それが終わったらアナタは描いた絵を一枚、即売会にでも出しなさい。おそらく、破格の値段で売買の話しが回って来るはずよ。今回、使用する脳は『カンデンスキー』と云う画家の脳を使いますから」
男は驚いて、
「カッ、カンデンスキー!?」
「つい最近、アナタの様な芸術家にピッタリの脳が入荷したの。ソレを試してみようと思って」
「あの~、その脳を使ってのバージョンアップのお値段は?」
「クリーンアップとバージョンアップのセットで160万」
「160万ッ! いやいや、私には到底無理です」
「代金は絵が売れてからでもよろしいわ。おそらくアナタは今の賃貸アパートからアトリエ付の超豪華マンションに引越しが出来るはずよ。ウフフ」
つづく




