No.102活動記録:空に潜む遺跡と、地上を埋める影
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作品に挿し絵を追加してあります!
よろしければ、本文と合わせてイラストも楽しんでいただけると嬉しいです。
No.102活動記録:空に潜む遺跡と、地上を埋める影
「お目当てのブツ――!?」
おっさんAIがその言葉を口にした瞬間、それまで地面にペタンと座り込んで肩で息をしていたエリカさんが、まるで跳ね起きるような勢いで立ち上がった。
「お宝の場所!? どこ! ねえ!どこにあるの!?」
「どこだよ!? それらしいものなんて目に入らねぇぞ!」
完全に息を吹き返したエリカさんに続いて、アイリスも目を爛々と輝かせて周囲の木々や影をキョロキョロと探し始める。さすがはお宝ハンターコンビ、目ざとさと現金さにおいてはパーティー内で群を抜いている。
「どこだ? サクラはわかるか?」
「ううん。お空にも見当たらないよ、スーちゃん。ヒマリちゃんはわかる?」
「いいえ。私にもそれらしいものは……。もし『衛星軌道上』とかなら、私たちの肉眼ではちょっと捉えられないかもしれませんね」
ヒマリが至極真面目な顔でそんな分析を口にすると、スズカとサクラは「なるほど」と言わんばかりに目を細め、雲一つない空の遥か高みを見上げ始めた。
(……そこまでの高さがあったら、私たちはどうやってそこへ行くのよッ!?)
心の中で即座に突っ込みを入れる。思わずボケをかましてしまうヒマリと、それを素直に信じる二人の天然っぷりに頭を抱えたくなった。
「マオさんたちは何か分かります?」
私が『僕っ娘同盟』の面々に振ってみるも、全員揃って首を横に振るだけだった。
私は溜め息を一つ吐き出すと、浮かんでいるおっさんAIへと視線を向けた。
「おっさんAI。本当に移動遺跡が見つかったのね? 一体どこにあるの? ……それに、さっきから妙な違和感というか、胸を掻きむしりたくなるような衝動に駆られてるんだけど」
『ほう……? それはスイはんだけか?』
おっさんAIはレンズを周囲に向け、全員の反応を確認する。けれど、私以外の誰もそんな異様なおぞましさや衝動を感じてはいないようだった。
『……遺跡が近いからか? いや、遺跡の場所に近づいたからと言うて、そんな反応を示す奴は今まで居らんかったな。壁画や遺物といった、特定のものにのみ反応があったはずや。そうなると……遺跡そのものが『遺物』っちゅうことか……?』
おっさんAIは私からの返答も忘れて一人で思考の海へと潜り込み、ブツブツと解読不能なノイズ混じりの独り言を呟き始めた。
「ちょっと、おっさんAI! 私たちを置いてきぼりにして一人で考察に入らないでよ!」
『おっ、おお! すまんすまん! ちょいと珍しい事例やったからな、つい考え事をしてしもうたわ。……よし、順を追って説明していこうか』
おっさんAIは浮遊位置を少し調整すると、解説を聞くために集まってきた私たちに向かって言葉を続けた。
『まず一つ。お嬢さんらが探していた『移動遺跡』は、このすぐ付近にある。……いや、「この付近にやって来た」と言った方が正しいやろうな』
「やって来た……? 移動する遺跡って言うくらいだから、そりゃ移動はするんでしょうけど……あれって階層間を移動するだけじゃないの?」
『わても最初そう思っとったんや。報告されとる遺跡の形状は、ギルドで『魔導文明』と呼ばれとるエリアに頻繁に存在する遺跡と酷似しとる。せやから、このエリアは本来『原始エリア』と呼ばれとる場所なんやが、ここにその遺跡が存在すること自体がおかしいんや。つまり、エリアの壁を飛び越えてここまで移動してきた……と考えれば、十分に辻褄が合う話やな』
「……なんというか、さらりと聞いたこともない新しい専門用語を使うのやめてもらえるかしら? こんがらがるから」
『あはは、それはすまんな! 一応、専門的な分類名として使いやすいから使わせてもらうで。……でな、ギルドの報告ではその遺跡は『空に浮いている』っちゅう話やった。せやからお嬢さんらも、さっきから空を注意して見とったはずや』
おっさんAIの言葉に、全員が「うんうん」と頷く。
「でも、それらしいものなんて影も形もないわよ? AIちゃんの言葉を疑うわけじゃないけど……私たちの目には、な~んにも映ってないわ」
みんなの疑問を代弁するように、エリカさんが腕を組んで首を傾げた。
『そう。お嬢さんらの目に映っとらんことにも、ちゃんと意味があるんや。……『ミミック』っちゅうモンスターを、お嬢さんらは知っとるか?』
「知ってる! ゲームのやつでしょ! 宝箱に化けてて、開けたらパックンチョされるやつ!」
サクラが元気よく手を挙げて答える。
『せやな。サクラはんの言う通り、ゲーム等でよく登場するモンスターや。そして、このモンスター最大の特徴は『擬態』や。……なんや、このあたりのくだりを話すと、昔のことを思い出すな。スイはん、サクラはん、ヒマリはん』
おっさんAIがわざとらしく私たち三人を指し示す。
その意図を瞬時に察したヒマリが、手をポンと打った。
「ガーディアンを購入しようとした時のお話ですね。確かあの時、AIさんは卵型のガーディアンを計測していた際に、性能と金額が見合っていないと店員さんを怒っていた記憶がありますが」
「ああ、武器とガーティアンを買いにストレージマーケットに行った時のことね。確かあの時にこの伸縮棒を買ったんだわ」
『せやせや! その時にわてはこうも言ったはずや――『ミミックは自分をわざと弱く見せ、相手を油断させて待ち構えるタイプのモンスターや』とな』
「そんなこと言っていた気もするけど……それが今の移動遺跡とどう関係しているのよ?」
私の質問に対し、おっさんAIは直接答えず、カメラレンズを静かに真上――どこまでも広がる青空へと向けた。
『……お嬢さんら。今、あの空には何が『ある(・・)』?』
「何があるって……」
何を当たり前のことを言っているのだろうか。空には青空以外、何も存在しない。強いて言えば、私たちが立っている森の木々の枝葉が端に映り込んでいるくらいだ。
『ゴークくんのエネルギー波砲やと、遺跡自体を破壊しかねんか。……サクラはん』
「うにゅ? なに、おっちゃんAI?」
『あの空に向かって、攻撃魔法を撃ってみてくれへんか。そうやな、一直線に伸びていくビーム系のやつがええ』
おっさんAIの意図はまだ完全には掴めない。けれど、私はサクラに向かって「やってあげて」と頷いてみせた。
サクラは「あいさー!」と元気に返事をすると、『貫通』と『強化』の二冊の魔導書を取り出した。
「あの辺でいいの?」
『せや、あの辺や』
おっさんAIが示した空の何もない空間へと照準を合わせ、サクラが魔導書のページを捲る。
瞬間、極太の一直線に伸びる攻撃魔法が、爆音とともに空へと駆け上がっていった。
――最初は、ただの無駄撃ちに終わるかと思われた。
しかし、サクラの放った攻撃魔法がある程度の高度へと達した、まさにその瞬間。
――パァンッ!!
まるで目に見えないガラスの壁に激突したかのように、攻撃魔法が弾けて消滅したのだ。
そして魔法が打ち消されたその空間を中心に、まるで水面に波紋が広がるかのように、何もないはずの青空がグラグラと歪み、波打ち始め――。
――パキッ。
どこかで、巨大な強化ガラスに亀裂が走ったような、引き裂くような音が静まり返った森に響いた。
「……え?」
波打っていた青空の真ん中に、一筋の白い亀裂が走る。
それは次第に二本、三本と蜘蛛の巣のように増えていき――。
あろうことか、私たちがこれまで当たり前のように見上げていた『青空』そのものが、バリバリと大きくひび割れていったのだ。
「え? ええっ!? サ、サクラなんかやっちゃった!? 空壊しちゃった!?」
サクラが魔道書を抱えたまま、半狂乱になって空を見上げる。
そして、次の瞬間――。
――ズズズズズズズ……。
空そのものが、まるで巨大なホログラムのスクリーンがずれるように、ゆっくりと横へ横へと滑り出していった。
その背後、広大な影となって現れたのは――。
遥か上空を浮遊する、圧倒的なスケールの『巨大未知建造物』だった。
『フッ……あれがお嬢さんらの探していた【移動遺跡】ですわ。全く、光学迷彩どころかギルドの探査波すら誤魔化してくるとはな。せやけど逆に、それが仇になったっちゅうわけや。何もない空間なら通り過ぎるところを、『何もないように見せかけようとした違和感』のおかげで看破できた。……まあ、わてが機体の【目】を最新型にアップデートして来んかったら、絶対気がつけへん程の高度な『擬態』やったろうけどな。わての先見の明を甘く見てもらっちゃ困りますな!』
上空のおっさんAIが何やらどや顔でカメラレンズを光らせているけれど、今の私たちは誰一人としてその言葉を聞いていなかった。
だって――まさか自分たちの真頭上に、これほど巨大な『異物』が隠れていたなんて、誰も予想すらしていなかったのだから。
『さて、お嬢さん方、呆けてる暇はあらへんで! さっきのサクラはんの派手な魔法で、周囲のモンスターが異変に気がついたかもしれへん。あの遺跡に乗り込むんなら、早う動いた方がエエ!』
「あ、そうよスイちゃん! どうするの!? さすがにあんなに高い場所、飛行用の乗り物か魔法でもないと登れないわよ!?」
移動遺跡の発見に興奮冷めやらぬエリカさんが、焦ったように声を張り上げる。
だが、私はこの時のために前もって考えておいたプランを発動させるべく、隣の少女へ視線を向けた。
「スズカ」
「……いいのか、スイ? みんなの前でアレを出しても」
「もうこの際でしょう」
スズカは自身が契約している神霊『ストーム』と『サンダー』の存在を、この場でオープンにして良いのかと確認してくれたのだ。
彼女たちの正体が希少な『神霊』であることと、その出力が規格外であることさえ理解されなければ、まあ大丈夫だろう。最悪、その凄まじい力を知られたとしても、ここにいるメンバーならストームサンダーを強奪しようだなんて良からぬことを考える人はいないはずだ。
……若干、一名ほど強欲で不安な子が混ざっているけれど。そっちは従姉妹なんだし、ヒマリに上手く手綱を握ってもらいましょう。
そう思考を巡らせている間に、スズカが呼応するように二人を呼び出した。
突如として空間を裂いて現れた『ストーム』と『サンダー』の姿に、周囲から「うおっ!?」とどよめきが起きる。
「おいッ! こんな凄そうな隠し球があるなら、さっきの戦闘で出せよ! そしたらもっと楽できたじゃねぇか!」
不安な子代表のアイリスが、さっさと使えと言わんばかりに噛みついてくる。
「残念だけどアイリス、この二人の力は加減が利かない上に強すぎるのよ。この鬱蒼とした森の中で彼女たちの力を使おうものなら、二次災害で私たち全員が御陀仏になっていたわ」
私の身も蓋もない説明に、アイリスは引いた様子で「マジかよ……」と呟き、一応の納得を示してくれた。
ストームとサンダーは一瞬でメカニカルなバイク形態へと変形を遂げる。
「よっしゃ! お前ら、とりあえず乗れるだけ乗れッ!」
スズカが勢いよく跨がり、自身の『空間航行能力』で遺跡と地上を何往復かしてピストン輸送しようとしたところで、私は慌てて待ったをかけた。
「待ってスズカ! まず一番初めに、エリカさんとフウカさんの二人を連れて行って!」
「え? 私、最初でいいの!?」
「エリカさんには、遺跡に着いたらすぐにスケルトンを呼び出してほしいんです。遺跡の中で何が待ち受けているか分からないから、スケルトンを先行させて安全を確保したくて。フウカさんには――」
「なるほどねぇ、ぼくがエリカちゃんの護衛役ってところかな?」
「はい。フウカさんの【狐火】なら、万が一の奇襲があっても幻惑や撹乱で逃走経路を作れるでしょうから」
「う~ん……ぼくのスキルの性能をちょっと教えただけで、そこまで戦術を組み立てちゃうかぁ。これは将来、スイちゃんと本気でやり合ったら負けちゃうかもしれないなぁ、ぼくは」
(……任意で着火・爆破・幻覚をこなす極悪スキル持ちのフウカさんに、私が勝てるとは到底思えませんが……)
フウカさんの過剰な買いかぶりにどう答えるべきか迷いつつ、定員に合わせてあと二人、先行組を組み込む。
「わーい! サクラ一番乗りー!」
「ボクかぁ……。まあ、フウカと一緒にみんなの護衛をしておくよ」
サクラと、まだ眠そうに目を擦っているマオさんがバイクの後部へと滑り込んだ。
「大丈夫だと思うけれど……気をつけて行ってね。色んな意味で」
幾らストームサンダーのバイク形態が大型モデルとは言え、運転するスズカの前にサクラ、スズカの後ろに、エリカさん、マオさん、フウカさんの四人がすし詰めの曲芸乗りのようにしがみつく姿は、見ていてヒヤヒヤさせられるものがある。
そして次の瞬間――スズカの空間航行能力が発動し、彼女たちは空間の歪みの中に吸い込まれるようにして、一瞬で遥か上空の移動遺跡へと消え去っていったのだった。
☆★☆★☆
「おっしゃあ! 到着ー!」
スズカの空間航行能力によって、彼女たちは一瞬にして上空に浮遊する移動遺跡へと侵入を果たしていた。
「……なんというか、随分と殺風景な場所ね」
大型バイクから降り立ったエリカが、周囲をぐるりと見回す。
そこに広がっていたのは、綺麗に半円形に切り取られたような石造りの平地だった。所々に申し訳程度に庭木の様に植物が点在している程度で、彼女たちの真反対に位置する外縁付近に、ポツンと小さな神殿らしき建物が鎮座しているだけだ。
「サクラ! サクラ知ってるよ、ここ! 神様の神殿だー!」
サクラが目を輝かせ、ひどく興奮した様子で声を張り上げた。
「え? 神様の神殿ってどういうこと? 遺跡じゃないの?」
「んとね、んとね! マンガでね、こういう場所があるんだよ!」
「あ、マンガの話ね……」
興奮冷めやらぬサクラの純粋すぎる説明に、エリカは一瞬で冷静を取り戻し、すんと表情を戻した。
「んー……遮蔽物はないけど、見た感じ罠らしい罠も見当たらないね。エリカちゃん、スイちゃんの指示通りにスケルトンを召喚してもらっていい?」
「OK~! 今呼んじゃうから待ってて!」
詠唱に入るエリカを護衛するように、マオとフウカが鋭い視線を周囲に走らせる。
「じゃあオレは残りの奴らを連れてくるけど、いいか?」
「うん、スズカさんお願い」
マオから了承を得て、スズカが再び地上へ戻ろうとアクセルを吹かした、その瞬間だった。
バイク形態のサンダーから、機械的な電子ノイズが発せられる。
『*▽△》※……』
「あぁん? 『残滓が強い』? なんのだよ?」
しかし、スズカの問いかけに対し、サンダーはそれ以上の沈黙を貫くだけだった。
スズカは「わけわからん」と首を捻りながらも、空間を穿って地上へと舞い戻っていった。
「さあ! 私の可愛い下僕ちゃんたち、出てきなさ~い♡」
詠唱を終えたエリカが、高らかに号令をかけて地面をバトンで強く踏み叩く。
しかし――。
「……あれ? ほら、あんたらさっさと出てきなさいよ!」
もう一度地面を強く蹴るものの、スケルトンたちが現れる気配は一切なかった。
「……あのさ、もしかしてなんだけど」
「なに、マオちゃん?」
「エリカちゃんのスケルトンたちって、『地中』からしか召喚できないんじゃない?」
「……まあ、いつも地面を割って出てくるんだから、そうなんじゃないの?」
「うん。だからね……ここ、空の上。地面から、浮いてる」
マオが言葉を区切りながら、事もなげに事実を指摘した。
その瞬間、エリカの顔からスッと血の気が引き、事態の致命的な愚かさに気がついた。
「ど、どどうすんのよぉおおおおッ!?」
上空にぽつりと浮かぶ孤島のような遺跡から、絶望に満ちたエリカの叫び声が虚しく木霊していった。
☆★☆★☆
「……なんか今、オバサンが叫んでなかったか?」
地上に残されていたアイリスが、上空の空を仰ぎ見ながら「空耳か?」と首を傾げる。
「……そう? 気のせいじゃないかしら」
私も耳を澄ませてみたけれど、風の音以外にそれらしい声は届いてこなかった。
それよりも、私は周囲の警戒に神経を研ぎ澄ませる。スズカのことだからすぐに戻ってきてくれるはずだが、いつモンスターの群れが襲来してもおかしくない状況だ。
「おっさんAI、モンスターの動きはどう? 私のスキルだけじゃ、ここから広域の索敵まではカバーしきれなくて」
『……あまり芳しくないな。さっきモンスターがやたらと多かったっちゅう話をしとったろ』
「ええ。何か分かったの?」
『確証はまだないんやが……どうも周りのモンスター共、ここ(・・)に集まって来よる』
「それは、私たちを見つけて襲いかかろうとしている……ということでしょうか?」
ヒマリの確認に、おっさんAIは空中であたまを横に振った。
『わてらを狙っとるにしては、あまりにもピンポイントで広範囲からの集まり方や。どちらかと言えば――『引き寄せられておる』と言った方がしっくり来るな』
「……引き寄せられているって、もしかして『あれ(・・)』に?」
コナタさんが差し示した指の先には、上空に潜んでいた移動遺跡があった。
『可能性としては大いにあるやろうな。なにしろスイはんが感じとるあの奇妙な違和感っちゅうのは、遺跡に存在するごく一部の『遺物』に反応する人間特有の感覚や。……ほれ、一階層にあるマトマタの「洞窟住居」に似た遺跡内部にあった壁画を覚えとるか?』
「……ええ。私だけが感じた、あの恐怖を駆り立てられるような焦燥感のある壁画ね」
「遺跡? あの一階層にそんな遺跡なんてあったのかよ?」
「アイちゃん。このダンジョンには各階層に必ず遺跡が存在するんですよ。もっとも、私たちが訪れた場所は発掘隊によって調べ尽くされた、観光名所のような場所になっていましたが」
「へぇー……そっ」
ヒマリさんの丁寧な説明に、アイリスは一瞬で興味を失ったように生返事を返した。
『遺跡にある遺物に反応する人間は千差万別で、反応する奴も居れば全く反応せえへん奴も居る。これは前に説明した通りや。せやけどな……今回のように『遺跡に足を踏み入れても居らん』『遺物を直接見ても居らん』という段階で、スイはんほどの強い感覚が出るっちゅうのは、少なくともわてが知る限りでは今まで一度もない』
「あの移動遺跡は、まだ誰も入っていない未踏の遺跡なんでしょう? なら、ものすごい数の遺物があって、その波動が外に漏れ出ているとかじゃ……」
『可能性としてはゼロではないが、遺物の数が膨大なら、それに見合って反応する人間も増えるはずや。けれどそれがないっちゅうことは……』
「……遺物は、たった一つ。あっても極めて少数。でもそれだと、私だけにこれほどの衝動が走っている理由がつかないわね」
おっさんAIが重々しく機体を縦に揺らした。
「第二便、行くぜッ!」
そこへ、空間を割ってスズカが地上へと舞い戻ってきた。
『考察は後や! 急いで上に移動した方がエエ! もう少ししたら、ここへモンスターの大群が押し寄せてくるぞ!』
「わかったわ! みんな、急いでバイクに乗り込んで!」
私の指示のもと、残されたメンバーが再び曲芸のような態勢でストームサンダーへすし詰めになる。
スズカが空間航行能力を発動させ、私たちが上空へと転移した――まさに直後。
私たちが数秒前まで立っていた地上へ、地鳴りを立てて恐ろしい数のモンスターの群れが雪崩れ込んできた。
それらは攻撃対象を見失ったかのようにその場でグルグルと徘徊し、狂ったように「何か」を探し続けていたのだった。
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