表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/21

笑う影

黒い影は、ゆらゆらと揺れていた。


吹き飛ばされた腕が、

霧のように崩れ、

そして再び形を取り戻していく。


「……再生してるのかよ」


ラクサスが口角を吊り上げる。


だが、その目は鋭い。


「面倒くせぇな」


ギンの鎖が静かに鳴る。


「普通の魔物じゃないですね」


凜は刀へ手を添えたまま、

影を見据えていた。


白い装束が雨に濡れる。


長い黒髪が静かに揺れた。


「これまで報告されていた残滓より、明らかに濃い」


「濃い、ねぇ」


ラクサスが拳を鳴らす。


バチバチと雷が散る。


「なら、ぶっ壊せばいいだけだろ」


次の瞬間。


地面が砕けた。


ラクサスが一瞬で距離を詰める。


雷を纏った拳が、

黒い影へ叩き込まれた。


ズドォォォン!!


轟音。


衝撃で周囲の家屋が揺れる。


だが。


「……っ」


ラクサスが眉をひそめた。


拳が、

“沈んでいる”。


黒い泥に殴り込んだみたいに。


影の身体が波打つ。


そして。


グニャリ、と。


“笑った”。


「チッ!」


ラクサスが飛び退く。


その瞬間。


無数の黒い針が、

影の身体から放たれた。


ガガガガガッ!!


地面。

壁。

木々。


雨の中、

黒い針が突き刺さる。


タカが巨大な槍を振るう。


暴風のような一撃で、

針をまとめて弾き飛ばした。


「散開しろ!」


低い怒声。


その直後。


凜が前へ出る。


スッ――


刀が抜かれた。


細く鋭い銀閃。


一切の無駄がない。


影が消える。


だが。


凜は迷わなかった。


キィィン!!


背後で火花が散る。


いつの間にか現れていた黒い腕を、

凜の刀が受け止めていた。


「……速い」


ユウキが息を呑む。


凜は表情一つ変えない。


「鷲津さま、下がってください」


静かな声。


だが。


影は凜を見ていなかった。


その“顔のない顔”は、

ずっとユウキを見ている。


ぞわり、と寒気が走る。


その時。


ハンゾウが背後へ現れた。


「……斬る」


鎖鎌が閃く。


ガギィン!!


黒い輪郭が裂ける。


しかし。


切れたはずの身体が、

すぐに繋がる。


「……不死か」


ハンゾウが低く呟く。


ギンが鎖を構える。


「いや、違いますね」


片目が細くなる。


「“形が定まってない”」


その瞬間。


影が、

ゆっくりとユウキへ手を伸ばした。


まるで。


確かめるみたいに。


ユウキの呼吸が止まる。


怖い。


身体が動かない。


頭の奥で、

また雷が弾けた。


バチッ。


空気が震える。


次の瞬間。


黒雲が渦巻いた。


「……は?」


ラクサスが空を見上げる。


轟音。


雷鳴。


そして。


ズドォォォォン!!


雷が落ちた。


真上から。


一直線に。


黒い影へ。


白い閃光が、

村全体を飲み込む。


衝撃。


大地が揺れる。


雨すら蒸発した。


やがて。


光が消える。


そこには。


黒い影が、

片膝をついていた。


「……まだ立つのかよ」


ラクサスが笑う。


だがその時。


影の口のような裂け目が、

ゆっくり開いた。


『――雷』


声。


低い。


歪んだ声。


静寂が落ちる。


誰も動かなかった。


ユウキの心臓だけが、

異様にうるさい。


影はなおも、

ユウキを見ていた。


まるで。


“雷山家”そのものを、

知っているみたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ