消えた村
雷柱を目指して森を駆ける。
先頭を走るのは斬寺だった。
軍服の裾をなびかせながら、一切迷いなく進んでいく。その後ろを剣硝、ミスト、ギン、凜、シエル、そして俺が追った。
気付けば朝日が昇り始めていた。
だが空は暗い。
頭上には黒雲が広がり、雷鳴が絶えず響いている。
「近いな」
剣硝が呟く。
確かにそうだった。
雷柱は先程よりも遥かに大きく見える。
そして森を抜けた瞬間、俺達は言葉を失った。
村があった。
いや、正確には村だった場所だ。
建物は残っている。
畑もある。
井戸もある。
だが、人がいない。
一人も。
静かすぎる。
まるで時間だけが止まったようだった。
斬寺がゆっくりと村へ入る。
誰も喋らない。
風の音だけが聞こえていた。
家の扉は開いたまま。
食卓には食べかけの料理。
洗濯物も干されたままだ。
つい数時間前まで人がいたようにしか見えない。
「本当に誰もいない……」
俺が呟く。
凜も周囲を見回していた。
「争った形跡もありません」
「襲撃なら死体が残る」
斬寺が低く言う。
「だが何もない」
異常だった。
村人全員が突然消えた。
そんなことがあるのか。
その時だった。
ミストが一軒の家の前で足を止める。
何も言わない。
ただ地面を見つめている。
斬寺が近付く。
「見つけたか」
ミストが静かに頷いた。
全員が集まる。
そこには黒い跡が残っていた。
焦げ跡のようにも見える。
だが火ではない。
影だ。
地面に染み込んだような黒い痕跡。
ギンの表情が変わる。
「影の残滓ですね」
「やっぱりか」
シエルが舌打ちする。
するとミストが突然、村の中央を指差した。
誰も何も聞いていない。
だが全員が理解した。
何かある。
俺達は村の広場へ向かった。
そして見つける。
広場の中央。
大きな石碑。
その表面に、新しい傷が刻まれていた。
文字だった。
『雷は目覚める』
その一文だけ。
だが、その文字を見た瞬間。
俺の背筋に寒気が走った。
なぜか分からない。
だが嫌な予感がした。
その時だった。
ゴロォォォォン!!
空が鳴る。
巨大な雷柱がさらに膨れ上がった。
そして。
村の外れ。
黒い影が一体。
ゆっくりと立ち上がった。
続いて二体。
三体。
四体。
影は増えていく。
まるで最初からそこに埋まっていたかのように。
斬寺が長刀を抜く。
剣硝も静かに刀へ手を掛けた。
「来るぞ」
低い声が響く。
影達はゆっくりとこちらを見た。
そして次の瞬間。
一斉に地面を蹴った。




