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復讐の相手

「ドルチェ。」


フィーネは、グラスを持つドルチェの指を優しくつついて、焼き栗を握らせる。

ドルチェはそのフィーネの指先をそっと握る。

受け取られ損ねた焼き栗が、机から転がり落ちて、コツンと音を立てる。


「――話せるか?」


ドルチェは、頷くようにフィーネの指先に唇をつける。


フィーネは、わけも分からず苦しくてたまらない。

唇をつけられた指を微かに動かして、ドルチェの唇の間に差し入れる。


「十年前のモレンド副首相暗殺の容疑を、私の父オッターヴィオがかけられたことで、

母が死に、父も拳銃で自死した……

真犯人はお前を召喚した宗教団体の元信者……

以前、そう話したな?」


「うん……」


ドルチェはフィーネの指を唇から離して、静かに握る。


「その後首相に就任したのは、少数派閥から選ばれたブレス……

三年くらい経って、景気が悪化して、

ブレスの人気が急落したときに首相に返り咲いたのは誰だか……知ってるな?」


フィーネは青い瞳を見開いてドルチェを凝視し、掠れ声を振り絞る。


「セーニョ……ダル・セーニョ……」


「そう。ブレスの前任のダル・セーニョだ。

――父とモレンドは、ダル・セーニョがスキャンダルで退陣することになって、首相の座を争った。

そのダル・セーニョが、ブレスの後に返り咲いたわけだ。」


ドルチェに握られたフィーネの手が、冷たく汗ばんでいく。


「そのダル・セーニョは、今から五年ほど前に、失言問題で退陣。

それから今に至るまでは、現首相のシーミレ。


なあ、フィーネ……」


ドルチェは静かに呼び掛ける。


「お前はこれまで、【中央】から命令を受けていると言っていた。

私もそれだけ聞いていたから、現首相周辺だと思っていた。

でも、その【中央】というのは、現首相周辺じゃなく……


ダル・セーニョじゃないのか?」


フィーネの指がピクリと動く。


「ドルチェ……それ以上踏み込むな。またお前の命が狙われるんだ。

今後は失明どころじゃ……」


「聞いてくれ、フィーネ。

――ダル・セーニョは……」


ドルチェは、澄んだ静かな声でフィーネに告げた。


「モレンドを暗殺し、私の父に濡れ衣を着せた人間。


――私が復讐をしようとしている奴は、ダル・セーニョだ。」


急にフィーネは、ドルチェに握られた手を振り離し、

椅子から立ち上がろうとして転げ落ちた。

机の瓶や果物が音を立てて散らばる。


「嘘だ!!」


フィーネは叫んだ。

その青い目にみるみるうちに涙が溢れる。


「嘘……嘘だ!!」


叫ぶ声は震え、立ち上がろうとして、また転がる。

ドルチェも叫ぶ。


「フィーネ!どこだ?ここに来てくれ!」


「嫌だ!……嘘だ!」


「落ち着け、フィーネ!」


「嫌だ、嫌だ!」


「ここに来い!フィーネ!」


その瞬間、フィーネは動きを止め、フラフラとドルチェに近づき、

ドルチェの前で跪く。

ドルチェは手探りでフィーネの肩に手を置くと、

自分も椅子から降りて跪き、膝を寄せる。


「私のご主人様(マイン・ヘア)……お許しを……」


「何を……何を言うんだ、フィーネ。」


ドルチェはフィーネの頭を抱き寄せる。


「貴様は何も悪くない……泣かないでいい。」


フィーネはドルチェの手から頭を引き離して、泣き叫んだ。


「でも、俺は……俺は……ダル・セーニョに使役されていた!

ずっと……!ずっと……!!

ダル・セーニョの命令を受ければ、【終局(エンデ)】を解放してきた!!」


「フィーネ……フィーネ……」


「だから!……だから!!

俺は、オメェの父親の……ことも……たぶん……絶対……!」


フィーネは頭を激しく振って、ドルチェの手から逃げようともがく。


「フィーネ!」


ドルチェは急に、フィーネのワイシャツを引きちぎるように開くと、

その心臓のない、

悪魔のタトゥーが刻まれた左胸に、


かぶりつくように歯を立てた。






9月16日完結予定です。後半は恋愛描写も濃くなり、二人の身体的な関係も進展します。


『十二支の鼠の少年王は猫を愛したい』も連載中です。

全133話、完結まで執筆済み。毎日更新予定。

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