↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/51

通い合う未来

「――ええ、そうです。この遺跡を中心とした観光計画です。」


数人の話し声が近付いてくる。


「この遺跡は、夜は治安も悪く、犯罪の温床になっている。

――よく巡回に来ている職員もいるようですが……」


ドルチェの声だ。


「ここは教科書に載るほど価値があり、知名度も高いのに活用されていない。

観光資源として整備すれば、治安の回復もまとめて改善……」


そのとき、職員の一人が、こちらに背を向けて昼寝をしている男を見つけ、

小さく「アッ」と言った。

――赤い髪で、長身の男など、この町に一人しかいない。


「少し失礼します。

どうぞ、ドルチェ様、続けてください。」


その職員は、急いでフィーネに近づく。


「起きろ!ドルチェ様がこの遺跡の視察に来ているんだ!

うちの恥をさらすな!」


「……ん……」


のびをしながら上体を起こすと、「おん?誰が来てるって?」と聞く。

いつもと違うフィーネの顔に鼻白みながらも、職員は続ける。


「ドルチェ様だよ!今すぐ立ち去ってくれ!フィーネ!」


「ド……ドルチェ? ――なんで、ここに?」


「この遺跡の観光計画の視察だってよ。さあ、分かったら早く……」


「その必要はありません。」


急にドルチェが職員の後ろに立った。

フィーネは反射的にうつむく。


「職員の昼休みの時間は、最後の一分まで彼らのものです。

今は12:57……三分以内に帰ることができれば、全く問題ありません。

――さあ、続けましょう。」


ドルチェは職員を促して、一度も振り返らずに戻って行った。

職員は、「命拾いしたな!」と片目をつぶると、急いでドルチェを追いかける。


フィーネは懐中時計を目にした瞬間「ヤベェ」とつぶやくと、

飛ぶように走り出し、遺跡から姿を消した。


離れた場所から、ドルチェは、そのフィーネの姿を目に焼き付けるように見ていた。

が、職員の視線に気づくと、すぐにやつれた顔に美しい微笑みを浮かべた。


「ああ、先ほど申し上げた、夜にここを巡回している職員は、あの男のことです。」


***


「――今夜のドルチェ様の送別会は、近くの小さなレストランです。

ドルチェ様がね、明日も平日だから、

大げさにせず、時間も短くしましょうってねえ。」


「想像と全然違って、すごく気遣いする方ですよね、ドルチェ様って。」


「分かる!中央のエリート高官って、顎で人を使うのかと思ってた。」


「数日間、目と胃袋の保養をさせてもらったね。」


「今日はフィーネさんにまで保養させてもらってるし。」


「……あれ?フィーネさんは?」


「会計課との会議に出てる。」


「え?あの姿で?――死者出そう。」


課員たちはドッと笑ったが、笑顔のラルゴ課長がパンパンと手を叩いた。


「さあ、皆さん、経費で落ちるお食事会まで、あと少し頑張りましょう!」


***

フィーネは、会計課の長い会議にすっかりうんざりしていた。


「あー、お話し中すみませんが、俺はそろそろ退出していい?

後はおたくらが決定する話だ。」


「もう少しで終わりますから!滅多にない顔……機会ですから!」


フィーネは煙草の煙をため息のように吐きながら、さっきの話を思い出した。


(遺跡の観光計画……アイツ、俺と同じこと考えたのか……)


二人で資料や地図を広げて、書類とにらめっこしたり、

お偉い方に頭を下げている姿が夢のように流れていく。


が、ふと耳を澄ました。


(何か、変な声がしなかったか?)


もう一度耳を澄ますと、外で、人が声を上げている気がする。


「なァ、外が騒がしくないか?」


フィーネは会議室の人々に尋ねる。

皆、一瞬静まって耳を澄ます。


「いや、特に聞こえませんね。」


「そうか……」


また会議が再開したそのとき、ワッという大勢の人間の声が確実に聞こえた。

フィーネは窓に飛んで行って、声の方を見る。


庁舎のエントランスで影になってよく見えない。

窓を開けて、身を乗り出したとき、

フィーネの耳を、しゃがれた怒声が貫いた。


「お前か!騒音公害をかばっている高官は!!」


次の瞬間、床に叩きつけられた白髪がフィーネの目に飛び込んだ。


「ドルチェ!!!」


絶叫したフィーネは、会議室のドアを体当たりして壊し、

廊下や階段の人々を吹っ飛ばしながら、

狂ったようにエントランスに向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。