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契約結婚した妻は最強の護衛騎士でした 〜背が高すぎて敬遠されていた令嬢は、ただ一人の隣で輝く〜  作者: 茉莉花


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第七話:知らぬまま、心を占めていく

「この度の結婚報告には驚いた。しかしまずは祝いの言葉を述べよう」

「ありがとうございます」


 私が対面しているのは国王だ。国王からの招集で登城した。


「で?相手は?」

「ギルメット伯爵家のリュシエンヌ嬢です」


 名前を聞くや否やかすかに息を呑むのが窺えた。


「ほう……、彼女を選ぶとは。目が高いな」


(目が高い?たしかに彼女は有能だと知ったが、それ程有名な話だったか?)


「今回呼び立てたのは祝辞と、今後のあり方についてだ。末娘まで嫁いでは王家の人数が減ってしまってな。なかなか王太子の元に子が授からぬ状況では、そなたは我が王国にとって貴重な王族男子だ。その心積もりでいて欲しいというのが儂の思いだ。のう?王位継承権を持つヴィルジールよ」


(いったいどの口が言っている?)


 はたまた牽制か。


 アルナルディ公爵家に刺客を仕向けているのは他でもない王家だ。大人しくしていろということだろうか。


「私が彼女を妻に娶ったのは表に出ることを好まないと聞いていたからです。私も表に出るのは好みませんから邸で二人仲睦まじく過ごしていく所存です。今後も今まで同様、王族として必要な場面ではお手伝いさせて頂きますが、それだけでございます」

「そうか。では必要な場面では声をかけさせてもらおう」


 国王陛下は私の発言に笑みを浮かべている。

 余計なことはしないということが伝わったのだろうか。

 邸に戻るその道中、今回は襲われることはなかった。


 何かあるのは王宮に出向いたり帰路の間だ。酷い時は王宮内の夜会で襲われている。

 その時は王太子妃殿下の護衛騎士が護ってくれた。……あの護衛騎士の動きは、妙に記憶に残っている。そもそも不審者を侵入させている近衛騎士は何をしているのか。どう考えても怠慢ではなく私を狙ったものだとわかる。




「どのようなお話だったのですか?」


馬車の中でロランに聞かれた。


「ああ、貴重な王族男子である心積もりでとな。それと、リュシエンヌ嬢のことを娶ったのは目が高いと言われたよ」

「奥様が優秀であるのは国王のお墨付きということですか?」

「彼女はただの引きこもりではないのか。そもそも傲慢令嬢の噂はどこから湧いたのか。下調べが不十分だったな」

「人員を考えれば仕方ないですよ。我々も外部との接触は最低限ですし……」

「とはいえ、良い方向での誤解だ。少し彼女に歩み寄っても良いかもしれないな」




しばらくして、クラリスから心配ごとがあると報告を受けた。


「奥様の食が細いんです。正確にはお食事の量が減りました。日に日に痩せていっている気もするんです。もう少し腕も足も肉付きが良かった気がするんですが……」

「何か心当たりはあるのか?」

「いえ、特には。いつも同じような毎日をお過ごしですし……」


 さすがに体調を崩すのは見過ごせない。体力が落ちてしまっては体調不良に繋がる。食事が満足に摂れていないのは問題だ。


「わかった。……私が行く」




 久しぶりに彼女の元を訪ねた。彼女の前にジェラールとして立った。


「奥様、何かご不便等はございませんか?」

「ないわ」


 質問に即答で返ってきた。

 しかし、ないと言われてもクラリスの言うように初日よりも明らかに線が細くなっている。美しかった彼女を何がそうさせてしまったのか。

 会話をしてみればどうやら引きこもっているが故に運動不足らしい。乗馬をしたいと言う彼女の為に二人乗り用の馬を用意してみれば、一人で乗れるという。貴族令嬢で乗馬を嗜む者もいるだろうが、あまりにも熟練され、さらに言えば慣れていた。


「ずいぶんと慣れていらっしゃるんですね。よくお乗りになられていたんですか?」

「ええ」


 彼女は淡々としている。


「普段はどの様にお過ごしだったのでしょうか?」


 私は少しずつ探りを入れた。


「……、そうね、何をしていたかしら。これといっては。同じ毎日を過ごしていたわね」


 引きこもっていたのならば代わり映えのない毎日だっただろう。質問の仕方を間違えたか。

 すると今度は彼女の方から話しかけられた。私が持つ爵位の話だった。誰から聞いたのか。だが話し方から察するに子爵であることを聞いたのだろう。


「まあ、そのようなところですね。マクシムには敵わないことも多いですが、助けてもらいながら上手くやっていますよ」


 公爵夫人に対する回答としてあっていただろうか。私は公爵で夫なのだが、今は子爵の家令だ。なんだかややこしくなってしまった。


「ねぇ、時々このように乗馬をしても良いかしら?私の腕前は十分に理解してもらえたでしょう?一人でも構わないかしら?」

「いえ、お一人というのは許可出来かねます。私かロランならばお付き合いしますし、外に出られるのであれば護衛もつけましょう。奥様用の馬もご用意致しますよ」


 彼女を護るための引きこもり生活だ。一人で外に出るのはもっての他。ましてや王家に婚姻の事実が知れ渡った今、より気を引き締めなければならない。護らねばならない命が増えたのだから護衛を増やしておくべきだったと後悔した。


「でも、邸の使用人は最低限の人数しかいないじゃない。私のために人員を割く必要はないわ」


 彼女は邸のことをよく理解していた。公爵邸の切り盛りなどさせていないにも関わらず。


「それでしたらこうしましょう。私にとっても良い息抜きになります。美しい景色を分かち合うお供に私をお連れになりませんか?」


 少なくとも私が護ってあげればよい。それに私につく護衛も彼女を護るためだからという名目で帯同させられる。彼女は一瞬驚いていたが、今までに見たことのない穏やかな笑顔を見せてくれた。


 邸までは(かけ)(あし)で帰った。貴族女性がここまで乗馬が上手いということにも驚いたが、前を行く彼女の後ろ姿はとても美しく、その背中はどこかで見たはずだと、なにか確信めいたものがあった。

 それにしても、たった数時間を共に過ごしただけで、彼女の魅力に充てられた気がした。使用人らが慕うのが今更ながら理解できた。


 ロランは彼女に会ったと言っていた日から浮き足立ってるような気がした。もしかしたら今日の私のように彼女の魅力に充てられているのかもしれない。そう思うと、遠乗りのお供にロランを候補に挙げるべきではなかったと、ほんの少しだけ思った。


そして、この日を境に、なぜか彼女のことが頭から離れなかった。


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