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契約結婚した妻は最強の護衛騎士でした 〜背が高すぎて敬遠されていた令嬢は、ただ一人の隣で輝く〜  作者: 茉莉花


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第六話:知らぬまま近づく妻

 一週間も経つと、彼女の評判は良好であるとわかった。


 クラリスはすっかり彼女に懐いていた。


「奥様は素敵なお方です。お美しくあり、とても真面目な方ですね。話し方がサバサバしていらっしゃるから皆さん冷たい印象を受けていただけなのでしょうか?私は気品あって良いと思うのですが……」


「気品と言えば、随分と高貴な感じを受けるのですが……」


 こう話すのはアレットだ。


「お出ししているお茶の茶葉の品種名も産地も当てていらっしゃいましたよ。あれは隣国の物で通常ではなかなか手にすることがないものでございます。そのため、どのルートで入手した物なのか確認されました。博識でいらっしゃいますね」


 行商から入手するには相当高額であるか闇ギルドから入手するかになる。我々が隣国の商品を簡単に手に入れられるのは、隣国で事業を展開させているからだ。母方の縁で、向こうには協力者もいる。


「博識といえば……」


 こう切り出したのはマクシムだ。


「奥様はお時間があれば読書をされているのですが、隣国の原書を翻訳も無しに直接お読みになってましたよ。語学が堪能でいらっしゃるようですね」


 そして有能な彼女は暇を持て余しているというのが3人の総意だった。元が引きこもりであったからこの生活が暇を感じさせるとは思えなかったしむしろ自由に自分のやりたいことをしていれば良いと思っていたからだ。


「それにしても、自己評価が低くいらっしゃるんですよね。あれだけ素敵なのに……」


──確かに、彼女は麗しい。


「どんなに私が素敵ですと申し上げても困った顔をされるんです。旦那様一度きちんとお会いになりませんか?」

「え?」

「夫に蔑ろにされているんですよ?ご自分を蔑みますよ。私は成人したばかりですが、それでも初夜に独り寝というのはいかがなものかと理解できますが?」


 愛がそこになかったとしても、いないものとして扱われることは尊厳を傷つけているということか。


「特に奥様に非がないから余計にそう思います」


 クラリスはこの邸で生まれ育ち幼い頃から仕えていることもあり、私に対して距離感が近い。言いたいことをずけずけと言い終えると彼女の元に戻っていった。


(すっかり懐いているな)


 私は横で静かに仕事をしていたはずのロランに目を向けると彼は興味津々といった様子でこちらを窺っていた。


「何だ?」

「あ、いえ。そんなに素敵な方なのですか? 奥様は。私は未だにお会いしたことがございませんから、巷の噂通りならてっきり西棟の担当はしんどいかと思っていましたよ」

「私だって初日しか会っていないからよくは知らない」

「あの、旦那様としてお会いしろとは言いません。使用人らは奥様を慕っているものが多いようですし、家令ジェラールとしてお近づきになって様子を窺っても良いのでは?」

「様子を窺う?」

「はい。妻にお迎えになったわけですから、警戒し避けるのではなく、理解し親睦を深めて味方にお迎えになるのも1つの手では?」

「味方か……」

「事情ももっと詳しくお伝えになって、旦那様のことも理解してもらうのもありですよ。もう一度お会いすることが出来るのかわからない女性を想い続けるよりも、ずっと現実的ではないですか?」

「なっ!?」

「そもそも、そのお方は貴族のお嬢様だったんですよね? どちらかに嫁がれてるのでは? 独身でいらっしゃる可能性の方が少ないですよ。思い出として心にしまっておくだけでもよろしいじゃありませんか」

「そんなことは当たり前だ。彼女とどうにかなりたいなんて思ってない。ただ、私にとって女性として慕う相手は彼女だけだと思っていたんだ。だからこそ誰とも結婚する気はなかったのだが、こればかりは仕方ないだろう……」


 あの人のことだ。私が想いを寄せているのは、かつて私を救ってくれたあの令嬢だ。


 入れ替わった御者によりスラム街に連れ出されてしまった私は貴族を恨む貧民の暴徒に巻き込まれた。王族であるアルナルディ公爵家の家紋は王家と同じく獅子が施されている。狙わずとも、ただスラムに連れ出されるだけで命が脅かされたのだ。貴族の高貴な馬車が向かう方角としてはおかしいと察してくれた令嬢が、騎士を携え追跡して救ってくれた。

 毅然とした風格からデビュタントも終えた貴族のご令嬢だろうと推察した。彼女の手がかりは私の目撃情報だけだからないに等しい。身を護れと教えられたことから無闇に街へ出ることはせず社交も最低限に留めた結果、彼女に再び会うことはなかった。


「なにも奥様を愛せとは言いませんよ。ただ敬意はお示しになった方が良いかもしれませんね。契約結婚です。ある意味協力者ですよ?」

「まあ、そうだが……」

「贈り物をしたり食事に誘わなくても、奥様を気にかけているんだという意思表示は少しあっても良いと思いますよ?」


 その結果、私は彼女の部屋から見下ろせる庭園の花を植え替えるよう指示を出した。直接贈り物をするのは違う。だが無関心ではないと示す程度には伝わればいいと。

 今の庭園の花は華やかで可愛らしい花が並んでいた。それよりもリュシエンヌの印象に近い高貴な白い花に植え替えるよう命じた。その花は彼女のように凛と涼し気に揺れていた。




「そうでした、旦那様。国王陛下からお手紙が届いております」


 中を確認すると結婚の祝辞を述べたいから登城するようにとのことだった。



(本当に祝辞か?)



 妻を帯同するようには書かれていない。宛名も私だけだ。もし指示されていても彼女を連れていくつもりはなかったから好都合だと私だけで登城することにした。


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