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契約結婚した妻は最強の護衛騎士でした 〜背が高すぎて敬遠されていた令嬢は、ただ一人の隣で輝く〜  作者: 茉莉花


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第十二話:公爵の計画、妻の忠誠

「へ、陛下!なぜ止めなかったのです⁉」

「私はこのままでいるつもりはない。もう、わかるな?」


 国王は、王妃から視線をヴィルジールに移す。


「さて、ヴィルジールよ。今、聞いた通りだ。お前は、相応しい相手を伴侶に選んだ」


 ヴィルジールのリュシエンヌを支える腕に力が入る。

 リュシエンヌはヴィルジールから国王に視線を移した。



「この王太子に代わり、この国を治めよ」



「お断りします」








「……なんだと?」


 即答したヴィルジールの発言が飲み込めなかった国王は、聞き返すことしかできなかった。


「おわかりになるでしょう?なぜ私がこの国を守る意志がないか……」


「この国は、私を守るどころか、私から命を奪おうとしておりました。この血ゆえに、狙われ続けたのです。そう、あなたの、家族から……」


国王はヴィルジールから目をそらす。


「母は身ごもった時にその新しい命と共に絶たれた。父は王家を離れたにもかかわらず断たれたのです。そこの、あなたの妻の策略によって」


「……」

「……わ、私が首謀だとなぜ言い切れるのです?」


「後を絶たないからですよ。その後も私は狙われ続けている。国王陛下に申し入れているにも関わらず、何も変わらないからですよ」


「……え?」


「端から知っておられるのですよ、陛下は。貴女が主犯だということを」


 王妃は青ざめていた。


「知っておきながら何もされない。身内の悪事を見て見ぬふりだ。王妃殿下の策略も、王太子殿下の怠慢も」


 ヴィルジールに顔を上げられずにいる国王は、目を泳がせていた。


「王妃殿下、そんな王太子の為に必死に他の継承候補を抹消することに躍起になっているのは何のためですか?あなたの尊厳の為ですか?全く国の為にならぬその無駄な努力、価値はないですね」


「王太子妃殿下も仰っておられましたね。不利になるものを排除して、地位を維持なさろうとすると。私を排除することに力を注ぐのではなく、その地位に相応しいと努力をなさる方が先決でしょう。それを促して差し上げるのが貴女のするべきことだったのではないですか?」


 王妃は扇を握りしめ震えていた。



「私は、この場をもって、公爵位を返上いたします」



 ヴィルジールは高らかに告げた。

 その言葉に、場内の空気が凍りついた。




「な、なに⁉」


 国王は思わず立ち上がった。


「私はこの国を捨てます。私を見捨てたこの国をね。本日はそれをお伝えするべく参加したまで」


「な、な、で、では、リュシエンヌ。そなたは、そなたはこの国に残るであろう?この国に忠誠を誓った騎士であったのだから」


 それには場内がざわつき始めた。


「ああ、そ、そうだ。そなたはこの国で最も妃に相応しい。この国を支えるのだ。──では、王太子の伴侶となれ。王太子も今度はそれを望んでおったしな」


「お断りします」







「んな!なんだと⁉」


 即答したリュシエンヌの発言に驚いた国王は、すぐさま聞き返す。



「なぜ、私がそこの王太子殿下の伴侶にならねばいけないのですか。こんな、自分よりも弱く、低く、努力を知らぬ方に」


「んな!」


 今度は王太子が声をあげる。


「貴方は、誰に護られていたと思っているのですか?──王太子妃殿下の護衛騎士は優秀だったでしょう?」


 リュシエンヌは顎先を少し上げると、王太子を見下ろした。


「ま、まさか……」


 先ほどの国王が語ったこの国に忠誠を誓った騎士という言葉の意味が、ようやく皆の懐に落ちていく。



「……では、いつも王太子妃様の後ろにいらっしゃった『麗しの騎士様』が、彼女だったっていうこと?」



 どちらかの婦人の声がこだました。


 その瞬間、わーっと歓声が上がった。


 国王が発言しようにも騒ぎが収まらない。側近が声をあげる。



「静粛に!静粛に‼」



 静かになったところで、国王は述べた。


「で、……では、リュ、リュシエンヌよ。その忠誠をもって、国の為に戦って、は、くれないか?」


 国王の声量は徐々に小さくなっていった。


「お断りします。──私は王太子妃の護衛騎士を辞しております。この国に忠誠などございません。今、私が忠誠を誓うのは、夫のヴィルジール・アルナルディなのですから」


 ヴィルジールはリュシエンヌに目を向ける。

 リュシエンヌはやわらかく微笑んだ。それを見たヴィルジールもまた穏やかに微笑み返した。



「では、参ろうか」


「ええ」



 二人は、マリレーヌと同じように、開かれた重い扉の先へと歩んでいった。

 もう振り返ることはなかった。


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