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■第97話 街への帰還と、跳ね上がる名声

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


上層階の豊かな生態系と凶悪な魔物たちをやり過ごし、いくつかの浮島のマッピングを終えたところで、僕たちは一旦街へと帰還することにした。


「お疲れ様、魔法少女ちゃん。初の上層階で、ずっと緊張しっぱなしだっただろ? さすがに長旅で疲れさせちゃったね」

「ふぇ……。えへへ、お兄さんの背中と腕の中は安心しますけど……やっぱり、上層の魔物たちは迫力が違って、少しだけ足がガクガクしてますぅ……」


お姫様抱っこで跳躍を続けながら街への帰還ルートを辿る中、腕の中の小さな相棒はコクリコクリと舟を漕いでいた。


バフ魔法の連続使用による魔力消費と、強力な魔物たちと対峙した精神的な疲労。いくら『飛竜の羽衣ローブ』で魔力効率が上がっているとはいえ、レベル一桁の彼女にとっては相当な負担だったはずだ。


「今日は帰ったら、美味しいものを食べて、お風呂に入ってゆっくり休もう」

「はいっ……楽しみです……」


街に到着した僕たちは、まずはパンパンに膨れ上がった素材袋と魔石を抱え、冒険者ギルドへと向かった。


ギルドの重い扉を開けると、いつものように酒場スペースから冒険者たちの喧騒が聞こえてくる。

僕たちが受付カウンターへ向かおうとした、その時だった。


「あっ!! 恩人たちだ!! おーいっ、バベルのバケモノの兄ちゃんと嬢ちゃーん!!」


酒場の奥から、ジョッキを片手に顔を真っ赤にした例の三人組が、ドタドタと駆け寄ってきた。

上層で僕たちがキラ・ガタックから救い出した、あの態度のデカかった連中だ。


「おお、無事に戻れてたんだな」

「当たり前だ! あんたたちに命を救ってもらったんだ、死ぬわけにはいかねえ!」


男はそう言うと、突然ギルドの酒場スペースのど真ん中で振り返り、大声を張り上げた。


「おい、お前ら聞け!! この兄ちゃんと嬢ちゃんは、上層の『キラ・ガタック』を一刀両断でぶった斬って俺たちを助けてくれた、命の恩人だ!! バベルのバケモノってのは、強えだけじゃなくて器もデカい、本物の英雄だぜ!!」

「そうだそうだ! しかも嬢ちゃんのバフ魔法、俺たちの魔法使いの何倍も強力だったんだぜ!!」


三人組がギルド中に響き渡る声で触れ回ったため、周囲の冒険者たちは一斉に驚きの声を上げた。


「マジかよ、あの戦車のクワガタを一撃で!?」

「すげえ……しかも嬢ちゃん、本当に立派なサポーターになってるじゃねえか!」

「おいおい、こりゃあ今夜は英雄の帰還に奢らねえとな!」


次々と飛んでくる称賛と歓声。

以前は陰口ばかりだったギルドの空気が、今や完全に僕たち『デコボコパーティ』を認める熱狂的なものへと変わっていた。


「ひゃああっ……! お、お兄さん、みんなが見てますぅ……っ」

「ははは。まぁ、悪い気はしないな。人助けはしておくものだ」


真っ赤になって僕の背中に隠れる魔法少女ちゃんの頭を撫でながら、僕は三人組に「ありがとう、宣伝助かるよ」と手を挙げて応え、カウンターへと向かった。


「お帰りなさいませ! 上層階の初探索、お疲れ様でした!」


顔馴染みの受付の職員さんも、興奮冷めやらぬ様子で僕たちを迎えてくれた。


「換金と素材の売却をお願いしたいんですが。虫系の魔物の素材って、今の相場はどうなってます?」

「はいっ! 上層の虫系素材は常に需要が高いです! 特にスカイ・スパイダーの毒腺や、キラ・ガタックの甲殻は最高の錬金素材になりますので、高値で買い取らせていただきます!」


僕は上層で手に入れた魔石の大部分と、多すぎる素材の一部(スリム・グラスホッパーの跳躍脚や、ラメ・アントの甲殻など)をカウンターに広げた。


「ひぃっ!? こんなに大量の上層素材……! しかも状態が完璧です!」

「あ、ついでにレベル確認もお願いします」

「か、かしこまりました! どうぞこちらへ!」


【レベル:29】

【筋力:355】

【魔力:88】

【体力:321】

【敏捷:278】


「レベル29……! お兄さん、本当にどこまで強くなるんですか……」


魔法少女ちゃんが尊敬の眼差しで見上げる中、素材の売却益も相まって、僕たちはこれまでで一番重い特大の金貨袋を二つも受け取ることになった。


次に向かったのは、西区の『黒猫の宝箱・天空支店』だ。


「お姉さん、上層のレア魔石と、あと虫のはねとかの素材を少し持ってきたよ」

「にゃあああっ! これファット・コオロギの発音翅じゃないの! しかもハイ・スワローの風切り羽まで! 愛してるわお兄さん、これで最高の魔道具が作れるわ!」


黒猫のお姉さんはカウンターを乗り越えんばかりの勢いで身を乗り出し、上機嫌で相場以上の値段で素材を買い取ってくれた。上層の過酷な環境やギミックについても少し報告し、今後の対策アイテムの目星をつける。

続いて、『怠惰な寺院』へ。


「神官ちゃーん、寄進だよ。上層の綺麗な魔石だ」

「むにゃ……あ、すごい魔力……。これでお祈りのノルマが免除されるぅ……。虫の魔物の魔石って、安眠効果のあるお香の材料になるから、すっごく助かるのぉ……ありがとぉ……」


相変わらずクッションに埋もれた神官ちゃんは、魔石を抱きしめて幸せそうにスゥスゥと寝息を立て始めた。


全ての報告と売却を終えた僕たちは、高級宿のレストランの個室で、テーブルに乗り切らないほどの豪華なフルコース料理を頼んでいた。


「さあ、魔法少女ちゃん。長旅お疲れ様、カンパイ!」

「はいっ、お疲れ様でした! カンパイです!」


フルーツの果汁を絞ったジュースの入ったグラスを打ち合わせ、僕たちは極上の肉料理や新鮮な野菜に舌鼓を打った。


「そういえば、今日得たお金だけど……ほら、君の分」


僕は食事の合間に、ギルドと魔道具屋で得た大金が入った金貨袋をポンと彼女の前に置いた。完璧な『山分け』だ。


「えっ!? こ、こんなにたくさん……! わたし、今日は後ろでバフをかけていただけですし、解体もお兄さんが全部やってくれたのに……もらえません!」

「何を言ってるんだ。君のバフがなきゃ、あのハイ・スワローには絶対に追いつけなかったし、炎の壁の誘導も完璧だった。君は立派な相棒として、このパーティに貢献してるんだ。堂々と受け取りな」


僕が真っ直ぐに伝えると、彼女は少しだけ唇を震わせ、やがてポロポロと嬉し涙をこぼしながら金貨袋を胸に抱きしめた。


「お兄さん……ありがとうございます……っ! わたし、もっともっと強くなって、絶対に足手まといなんて言われないように頑張ります!」

「もう誰もそんなこと言ってないだろ? 今日ギルドで、三人組も周りの連中も君の魔法を大絶賛してたじゃないか」

「あ……えへへ、そうでした。なんだか、夢みたいです」


彼女は照れくさそうに笑い、美味しそうにデザートのケーキを頬張った。


食後は、宿の大浴場だ。

もちろん男湯と女湯で別々だが、広々とした湯船に浸かり、長旅の汗と、解体作業で浴びた魔物の血と体液の汚れをさっぱりと洗い流す。凝り固まった筋肉がほぐれ、至福の吐息が漏れた。


部屋に戻ると、そこには含有率100パーセントの特注『雲ベッド』が待っている。


「ふわぁ……。お風呂に入ったら、なんだか急に眠たくなってきちゃいました……」

「限界まで魔力を使ったからな。今日はもう、朝までぐっすり寝な」


パジャマ姿の魔法少女ちゃんが、僕の隣のベッドにダイブし、ふわっふわの雲のシーツに包まれて幸せそうな顔をした。


「お兄さん……今日も、守ってくれてありがとうございました……。明日の冒険も、楽しみですね……」

「ああ。また明日、よろしくね」


彼女が安心しきったスゥスゥという寝息を立てるのを聞きながら、僕も心地よい疲労感と共に目を閉じ、天空ダンジョンのさらなる高みへ思いを馳せながら、深い眠りへと落ちていくのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

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