↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/133

■第96話 横取りと、キラ・ガタックの一刀両断

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


上層階の不気味な蜘蛛のコロニーを迂回し、さらに探索を進めていた僕たちの頭上から、あの甲高い風切り音が響き渡った。


「キィィィィィンッ!!」

「お兄さん、またハイ・スワローです! 上空から来ます!」


魔法少女ちゃんの警告と同時、黒い弾丸のような超音速のツバメが急降下してくる。

二度目の遭遇だ。僕たちは前回で完全にこの魔物への連携パターンを構築していた。


「魔法少女ちゃん、前と同じだ! 炎の壁で軌道を絞ってくれ!」

「はいっ! ええいっ、『フレイム・ウォール』!」


彼女の杖から放たれた複数の炎の壁が、ハイ・スワローの逃げ道を塞ぐように展開される。炎を嫌って減速し、直線的な軌道に入ったその瞬間を狙って、僕は剣を構えて跳躍の体勢に入った。


「よし、もらった――」


ドガァァァァァンッ!!!

僕が踏み込もうとしたその瞬間、横殴りの凄まじい雷撃魔法が空の彼方から飛来し、ハイ・スワローの胴体を真っ白な閃光と共に焼き焦がした。


「ギャッ……!?」


悲鳴を上げる間もなく、黒焦げになったハイ・スワローは光の粒子……ではなく、こんがりと焼けた死体となって僕たちの足元の島雲へと墜落した。


「な、なんだ!? 上層の雷雲からの落雷か!?」

「い、いえ、違います! あっちから人が!」


魔法少女ちゃんが指差した先。隣の島雲から、ドヤ顔を浮かべた三人組の冒険者パーティが、虹の橋を渡ってこちらへと歩いてくるのが見えた。


「はっはっは! 悪いなバベルのバケモノさんよォ! そいつは俺たちが美味しく頂かせてもらうぜ!」

「ちょうどいいところに弱った獲物がいたからな! 魔法のいい的にさせてもらったわ!」


彼らは僕たちの前までやって来ると、悪びれる様子もなくハイ・スワローの死体からレア魔石と風切り羽を乱暴に剥ぎ取った。明らかな「獲物の横取り(ラストアタックの強奪)」だ。


「おい、ちょっと待てよ。それは僕たちが戦っていた魔物だぞ」

「あァ? 何言ってんだ、トドメを刺したのは俺たちだろ。文句あるのか?」

「ていうか、バベルの地下でイキってただけの脳筋が、よくこんな小さな嬢ちゃん連れて上層まで来れたよな。どうせ運が良かっただけだろ? 足手まとい連れてウロウロしてっと、そのうち死ぬぜ?」


男たちはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべ、僕と魔法少女ちゃんに向かって散々に口撃(挑発)を仕掛けてきた。


「……っ! お兄さんは足手まといなんか連れてません! わたしがお兄さんをサポートしてるんです!」


普段は温厚な魔法少女ちゃんが、僕を侮辱されたことに腹を立てて杖を構えようとする。僕はその小さな肩をポンと叩いて制止した。


「いいよ、魔法少女ちゃん。行こう」

「えっ……? で、でも……」

「人間同士の喧嘩やトラブルなんて、面倒なだけで一円の得にもならない。あんな連中に関わってる時間が勿体無いから、さっさと離れよう」


僕は元々、ゲームでも現実でも対人戦(PvP)や人間同士のドロドロした喧嘩が死ぬほど嫌いなのだ。

横取りされた素材は惜しいが、ハイ・スワローならまた出遭うこともあるだろう。僕は彼らの挑発を完全に無視して背を向け、魔法少女ちゃんを抱き上げてさっさと別の島雲へと跳躍した。


「けっ! なーにがバベルのバケモノだ、ただの腰抜けじゃねえか!」


背後から下品な笑い声が聞こえてきたが、僕は一切振り返らなかった。

胸糞の悪い連中と別れ、再びマッピングを進めること数十分。


少し大きめの島雲に差し掛かった時、前方から激しい戦闘の音と、悲鳴のような声が聞こえてきた。


「おい、嘘だろ!? なんで魔法が弾かれるんだよ!!」

「硬すぎる! 剣が刃こぼれしたぞ!! ひぃっ、こっちに来る!」


僕たちが島雲の端からそっと覗き込むと、そこには見覚えのある三人組の姿があった。先ほど僕たちの獲物を横取りし、散々難癖をつけてきたあの冒険者パーティだ。


彼らは今、信じられないほど巨大な一匹の魔物に追い詰められていた。

全身がダイヤモンドのようにギラギラと輝く極厚の甲殻に覆われ、巨大なハサミのような大顎を振り回す、戦車サイズのクワガタの魔物――『キラ・ガタック』だ。


「お兄さん……あの人たち、すっごく苦戦してます……」

「自業自得だ。あのクワガタの魔物、異常な硬さで魔法も物理も反射してる。あいつらのレベルじゃ到底敵わない相手だ」


僕が冷ややかに分析していると、逃げ惑っていた三人組の一人とバッチリ目が合ってしまった。


「あ、ああっ! お前ら! 頼む、助けてくれ!!」

「俺たちが悪かった! 獲物は返すから、こいつをどうにかしてくれぇっ!!」


先ほどの威勢はどこへやら、彼らは涙目でこちらに向かって必死に助けを求めてきた。


「……随分と勝手な連中だな」


僕はため息をついた。

さっきは散々馬鹿にして横取りまでしておいて、自分が死にそうになったら助けてくれだなんて、虫が良すぎる。あのまま見殺しにしてしまっても、ダンジョンの掟としては自己責任で済む話だ。


「よし、関わらずにやり過ごそう。あいつらは放置して別のルートをマッピングだ」

「…………」

「……ん? どうした、魔法少女ちゃん。行かないのか?」


僕が背を向けても、彼女はその場から動こうとしなかった。

ローブの裾をギュッと握りしめ、悲痛な叫び声を上げる三人組と、容赦なく大顎を振り下ろそうとするキラ・ガタックを交互に見つめている。


「……お兄さん。あの人たちは、意地悪でしたし、すっごく嫌な人たちでした」

「ああ」

「でも……わたし、目の前で人が死んじゃうのを、見捨てることはできません。お願いします、お兄さん……あの人たちを、助けてあげてください……っ」


彼女は僕を見上げ、まっすぐな瞳でそう懇願した。

……本当に、この小さな相棒はどこまでも優しくて、純粋だ。

そんな彼女の頼みを断れるわけがない。


「……はぁ。わかったよ。君がそこまで言うなら、助けてやるか」

「お兄さん! ありがとうございます!」


僕は苦笑しながら『雲海の剣』を抜き放ち、彼女に向かって力強く頷いた。


「魔法少女ちゃん、いつも通り頼むぞ!」

「はいっ! 『テイル・ウインド』!!」


彼女のバフが僕の背中を強烈に押し出す。

僕は『飛竜の雲海鎧』の脚力で島雲を蹴り飛ばし、絶体絶命の三人組の頭上を飛び越えて、キラ・ガタックの目の前へと立ちはだかった。


「ギチチチチィィッ!!」


獲物を庇うように現れた僕に対して、キラ・ガタックが激怒してその凶悪な大顎を挟み込もうとしてくる。


「硬い甲殻だろうが関係ない。僕の筋力ステータスなら、力押しで叩き切れる!」

「はぁぁぁぁぁっ!!」


僕のバケモノ級の筋力と、最高クラスのバフの相乗効果。

渾身の力を込めて振り抜いた『雲海の剣』は、ダイヤモンドのように輝くキラ・ガタックの極厚の甲殻を紙のように易々と切り裂き、そのまま戦車サイズの巨体を『一刀両断』にぶった斬った。


ズバァァァァァァンッ!!!


「ギ、チッ……!?」


キラ・ガタックの巨体が綺麗に真っ二つに分かれ、地響きを立てて雲海の上に崩れ落ちた。


「…………えっ?」

「う、嘘だろ……? 俺たちの攻撃がかすりもしなかったあのバケモノを……たった一撃で……?」


背後で腰を抜かしていた三人組が、信じられないものを見るような目で僕の背中を見上げている。


「ふぅ……。よし、解体しなきゃな」


僕は彼らの呆然とした視線など気にせず、いつものようにポーチから解体用ナイフを取り出した。


ブチッ、メチャァッ、ゴリッ。

僕は血と体液にまみれながら、キラ・ガタックの『輝く大顎』と『煌めく重甲殻』を剥ぎ取り、最後に特大のレア魔石をえぐり出した。


その鮮やかで躊躇のない凄惨な解体作業を見て、三人組はさらに顔を青ざめさせてガタガタと震えている。


「あ、あの……バベルの、いや、お兄さん……」


解体と魔法少女ちゃんの『ウォッシュ』による洗浄を終えた僕の元へ、三人組が這いつくばるようにして近づいてきた。


「さ、さっきは、本当にすいませんでしたぁっ!!」


彼らは雲に額を擦り付ける勢いで、深々と土下座をした。


「俺たちが馬鹿でした! あんなバケモノを一撃で倒すなんて……あんたたちは本物の実力者だ! 嬢ちゃんのバフ魔法も、信じられないくらい凄かった!」

「命を救っていただいて、本当にありがとうございます! 横取りした素材は全部返します、どうか許してください!」


先ほどの傲慢な態度は綺麗に反転し、彼らは涙ながらに感謝と謝罪を述べてきた。どうやら、本当の実力差と恐怖(と、僕の血まみれの解体作業)を見せつけられたことで、完全に目が覚めたらしい。


「素材はいいよ。ハイ・スワローくらい、またいつでも狩れるから」


僕が肩をすくめて言うと、彼らはハッとして顔を上げた。


「そ、そんなわけにはいきません! 俺たちみたいなクズを見捨てずに助けてくれたこのご恩は、絶対に忘れません! もし次に何か困ったことがあれば、俺たちが必ず手を貸しますから!」

「ああ! 盾にでも囮にでも、何でも使ってくだせえ!」


彼らは何度も何度も頭を下げながら、逃げるように自分たちの帰還ルートへと去っていった。


「……だってさ。よかったな、魔法少女ちゃん」

「えへへ……はいっ! ああやって素直に謝ってくれましたし、助けてよかったです!」


彼女は嬉しそうに微笑み、僕の横に並んで歩き始めた。

嫌な連中に関わってしまったと最初は思ったが、結果として上層階での『恩を売った味方』を作ることができた。それに、キラ・ガタックの極上の素材と魔石も手に入ったのだから、収穫としては十分すぎる。


(なるほど……情けは人の為ならず、か)

人助けはしてみるものだなと、少しだけホクホクした気分になりながら、僕たちは再び天空ダンジョンの奥地を目指して歩みを進めるのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆(解体作業)のモチベーションが爆上がりします!


ブックマーク登録も、ぜひよろしくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。