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■第88話 空中の奇襲と、うっかり出た『飛ぶ斬撃』

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


強風に逆らっての面倒な「マッピングやり直し作業」を意地で終わらせた僕たちは、その日の探索を終えてギルドへと帰還した。


「ふぅ……。今日はさすがに疲れたね」

「はいっ。でも、地図の穴が埋まってよかったです!」


黒猫のお姉さんが言っていた『超高額で取引される、本来ならいないはずのレア魔物』の気配は、まだ全く見当たらない。どうやら、中層階のさらに奥深く、もっともっと乱気流が激しい最奥のエリアまで行かないとお目にかかれないようだ。


「レア魔物への道のりはまだまだ遠いな。よし、今日は宿でゆっくり休んで、明日に備えよう」


僕たちは含有率100パーセントの雲ベッドで、疲れた体を極上の無重力空間に溶かし、泥のように眠りについた。


翌日。

体力も気力も全快した僕たちは、再びお姫様抱っこ(米俵ホールド)のスタイルで、中層階の後半エリアをゴリゴリと進んでいた。


「魔法少女ちゃん、しっかり掴まってて! 次の島に飛ぶぞ!」

「はいっ! いきます!」


タァァァンッ!!

僕のバケモノ筋力が浮島の縁を蹴り飛ばし、二人の体は大空へ向かって放物線を描く。


これまでは、『島に着地した瞬間に、足元の雲が盛り上がって魔物が出現する』というのが、この天空ダンジョンの絶対的なお約束ルーティンだった。

だから僕も、空中にいる間はただ着地地点を見定めるだけで、戦闘に対する警戒を少しだけ解いていたのだ。


――しかし、ダンジョンは常に冒険者の「慣れ」と「油断」を嘲笑う。


「……えっ?」


僕たちが空中を移動し、次の浮島へあと数メートルと迫った、まさに着地する直前のことだった。

まだ足すら触れていない目標の浮島から、分厚い雲が間欠泉のように大爆発を起こしたのだ。


「キシャアアアッ!!」


雲を突き破って飛び出してきたのは、鋭いくちばしを槍のように突き出した『エアロ・ホーク』の強化個体だった。


そいつは島で僕たちを待ち構えるのではなく、空中にいる無防備な僕たちを狙って、真っ直ぐに迎撃の突進を仕掛けてきたのだ。


「なっ……! 着地前に湧くなんて聞いてないぞ!?」


完全に不意を突かれた。

空中にいるため、ステップで回避することも踏ん張ることもできない。おまけに、僕の左腕は魔法少女ちゃんをしっかりと抱き抱えており、絶対に離すわけにはいかない。


「お兄さんっ!?」

「くそっ……!」


迫り来る鋭い嘴。

このままでは空中で串刺しにされるか、衝突の衝撃で魔法少女ちゃんを落としてしまう。

僕は空中で大きく体勢を崩しながらも、咄嗟に空いている右手で『雲海の剣』を引き抜き、やみくもに横薙ぎに振り払った。


(飛べっ!!)

焦りのあまり、バケモノ級の筋力に加えて、無意識のうちに『あのイメージ』を剣に乗せてしまった。


ズバァァァァァンッ!!!

僕の振った純白の剣の軌跡から、巨大な三日月型の『風の刃』が射出された。

アニメの知識と何千回もの素振りで習得してしまった、僕の秘密の遠距離攻撃――『飛ぶ斬撃』だ。

至近距離から放たれた真空の刃は、突進してきたエアロ・ホークを空中で見事に一刀両断した。


「あ……」


魔物は光の粒子となって消滅し、僕たちは勢いそのままに浮島へとズザーッと滑り込むように着地した。


カランッ……。

着地した僕たちの足元に、真っ二つになった魔物からドロップした魔石が転がってくる。


静寂が訪れた浮島。

僕の腕の中にいる魔法少女ちゃんは、目を限界まで見開いたまま、瞬き一つせずに僕の剣と魔石を交互に見つめていた。


「お、お兄さん……」

「…………」

「い、今……お兄さんの剣から、シュバァッて! 風の刃みたいなのが飛んでいきませんでしたか……!?」


(ヤバい、完全に見られた!!)

僕の背中を冷や汗が滝のように流れ落ちた。

僕は彼女に自信を持たせるために、「僕には遠距離攻撃ができないから、君の魔法の牽制が絶対に必要だ」と言って『役割分担』をしたのだ。


もし、僕が一人で遠距離から魔物を叩き落とせる(しかも魔法より高威力で)と知られたら、彼女は再び「自分は足手まといだ」と落ち込み、せっかく立ち直った自信を粉々に砕いてしまう。


言い訳だ。なんとしても、彼女の役割を守るための言い訳を捻り出さなければ!


「き、気のせいじゃないかな!? 僕の素振りが速すぎて、風が起きただけだよ!」

「いや、絶対に見ました! 剣の軌道から、三日月みたいなのが飛んでいきましたもん!」


誤魔化しきれないと悟った僕の脳細胞が、光の速さでフル回転する。


「あー……! そ、そう、それだ! それはね、この『雲海の剣』の隠し機能なんだよ!」

「隠し機能、ですか?」

「そう! 空中で、しかも腕力のリミッターを外して120パーセントの力で振り抜いた時だけ、圧縮された雲が刃になって飛んでいくっていう……ドワーフのおじさんも言ってたでしょ? 雲を圧縮してあるって!」


僕は早口でまくし立てた。


「す、すごい……! お兄さん、そんな必殺技が使えたんですね!」

「で、でもね! これ、めちゃくちゃ腕に負担がかかるし、何より『全然狙いが定まらない』んだよ! 今のは本当に運良く当たっただけで、普段使ったら明後日の方向に飛んでいっちゃうんだ! だから、やっぱり遠くの敵を正確に狙い撃つには、魔法少女ちゃんの魔法がないと絶対にダメなんだよ!!」


僕は必死に弁明し、「君の魔法が一番正確で頼りになるんだ!」と力説した。

すると、魔法少女ちゃんは目をキラキラと輝かせ、尊敬の眼差しで僕を見つめてきた。


「そうだったんですね……! バランスが崩れた空中で、とっさの機転でそんな大技を……お兄さん、本当にすごいです! わたしも、お兄さんがそんな無茶をしなくて済むように、もっともっと魔法の腕を磨きますね!」

「う、うん! よろしく頼むよ!」


……なんとか、ギリギリで誤魔化しきった。

僕は心の中で盛大に安堵の息を吐き出した。


「(危なかった……。これからは、もっと周囲の気配に気をつけないと)」


着地狩りという新しいパターンを繰り出してきた中層階のいやらしさと、自らのうっかりによる秘密暴露の危機。

冷や汗を拭いながら、僕は魔法少女ちゃんを浮島に下ろし、「さあ、先を急ごう!」と、少しだけ早口で次の探索へと促すのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

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