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■第87話 突風によるショートカットと、ストーム・イーグルの群れ

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


「そぉいっ!」

「きゃああっ!」


翌日も、僕たちは中層階での『お姫様抱っこ跳躍』によるマッピング探索を順調に進めていた。

果てしなく続くかと思われた浮雲の島々も、地道に一つ一つ渡り歩いていくうちに、ようやく全体の半分くらいまでは到達したようだ。


「ふぅ。中層階も、だいぶマップが埋まってきたな」

「お兄さん、すごいです! このままいけば、中層の完全クリアも遠くないですね!」


腕の中で魔法少女ちゃんが嬉しそうに笑う。

強敵ストーム・イーグルとの戦闘パターンもすっかり確立され、僕たちは完全に中層の環境に順応していた。


――しかし、ダンジョン探索において最も恐ろしいのは、実力不足ではなく『慣れによる油断』である。


「よし、次の島はあっちだ。風詠みのゴーグル……うん、今は風が凪いでるな。いくぞ!」


僕が浮島の縁を蹴り飛ばし、宙へ舞い上がった、まさにその瞬間だった。


ゴォォォォォッ!!

「えっ!?」


凪いでいたはずの空域に、突如として下から強烈な『吹き上げの突風』が発生したのだ。風詠みのゴーグルの予測を完全に上回る、イレギュラーな乱気流だった。


「お兄さんっ!?」

「くっ……! 風が強すぎる!」


僕のバケモノ筋力を持ってしても、空中で完全に軌道を修正することはできなかった。

突風に煽られた僕たちは、本来着地するはずだった島を大きく飛び越え、さらに奥にある広大な浮島へと、放物線を描いて勢いよく飛ばされてしまった。


ズザァァァァッ!!

「いててて……」

「あいたた……お兄さん、大丈夫ですか?」


『雲海』の鎧の衝撃吸収とパラシュートのおかげでダメージはなかったものの、僕たちは見事に予定ルートから外れた島へと不時着してしまった。


「ごめん、完全に油断してた。……それにしても、随分と奥まで飛ばされちゃったな」


立ち上がり、周囲を見渡した僕の顔から、スッと余裕の笑みが消えた。


「……お兄さん?」

「魔法少女ちゃん、杖を構えて。お客さんだ」


バサァッ! バサバサァッ!!

周囲の分厚い雲が渦を巻き、そこから姿を現したのは、全身に鋭い竜巻を纏った巨大な怪鳥『ストーム・イーグル』だった。

それだけなら、いつもの光景だ。

しかし、問題はその『数』だった。


一羽、二羽、三羽……。

これまで必ず「単体」でしか現れなかった中層の強敵が、なんと五羽もの『群れ』を成して上空を旋回し始めたのだ。


「うそ……ストーム・イーグルが、あんなに……!」

「どうやら、こっちの島はあいつらの巣窟だったみたいだな」


魔法少女ちゃんが息を呑み、杖を構える手が微かに震える。


「キシャアアアアッ!!」


五羽の怪鳥が一斉に鳴き声を上げ、全方位から鋭い風のカマイタチを雨あられと降らせてきた。


「魔法少女ちゃん、僕の背中から離れるなよ! いくぞ!」

「はいっ! 『テイル・ウインド』!!」


彼女のバフ魔法で背中を押され、僕は一番近くにいた一羽目のストーム・イーグルの懐へと弾丸のように飛び込んだ。


「はぁっ!」


『雲海の剣』を一閃し、風の鎧ごと一羽目を両断する。

いつもならこれで戦闘終了だ。しかし、今回は違う。

僕が剣を振り抜いて体勢が崩れたその一瞬の『隙』を、残りの四羽が見逃さなかったのだ。


「キシャァッ!」

「うおっ!?」


背後と側面から、怪鳥たちの鉤爪と巨大な風の刃が同時に襲いかかってきた。

咄嗟に身を捻るが、完全に避けることはできず、風の刃が僕の体を直撃する。


ガガガァンッ!!

鈍い音が響き、僕の体は数メートルほど吹き飛ばされた。


「お兄さんっ!!」

「大丈夫だ!」


『雲海』の鎧の圧倒的な防御力のおかげで、傷一つ負っていない。だが、攻撃を食らって吹き飛ばされるというのは、なんとも言えず『鬱陶しい』。


「くそっ、一羽に集中すると他のヤツから横槍が入るのか!」


僕が体勢を立て直す間にも、怪鳥たちは上空から波状攻撃を仕掛けてくる。

魔法少女ちゃんも懸命に『ファイアボルト』を放って牽制してくれるが、相手は五羽。彼女の手数だけでは到底カバーしきれない。


(『飛ぶ斬撃』でまとめて薙ぎ払いたい……! でも、魔法少女ちゃんの前ではまだ秘密にしておきたいし!)


「魔法少女ちゃん! バフを連続で頼む! 一撃離脱で確実に数を減らすぞ!」

「は、はいっ! えいっ、『テイル・ウインド』!」


僕は彼女のバフを受け、再び跳躍する。

一羽を斬り伏せ、横から飛んでくる風の刃を鎧で強引に受け止めながら、また次の一羽へと飛び移る。


ガキンッ! ズバァッ!


「鬱陶しいな、お前らっ!!」


ダメージはないが、連続で攻撃を食らって体勢を崩されるのは非常にストレスだ。

僕は鎧の防御力に完全に物を言わせ、風の刃を無視して強引に距離を詰め、力技で三羽目、四羽目と次々に両断していった。


「これで……最後だっ!」


最後の一羽が放った渾身の竜巻を正面から剣で切り裂き、そのまま本体を一刀両断する。

魔物が光の粒子となって消滅し、島の上に複数の高級魔石がコロンと音を立てて転がった。


「はぁ、はぁ、はぁ……っ」


僕が肩で息をして剣を下げると、魔法少女ちゃんもヘナヘナとその場に座り込んでしまった。


「お、終わりましたか……?」

「ああ。全部片付いたよ」


僕たちは顔を見合わせ、どちらからともなく大きなため息をついた。


「いやぁ……無事だったけど、さすがに群れで来られると鬱陶しさが段違いだな」

「わ、わたしも……連続で魔法を使いすぎて、もう魔力がカラッカラですぅ……」


彼女は杖を放り出し、雲の上に大の字に寝転がってしまった。

大量の高級魔石を回収できたのは大収穫だが、僕もあちこちから攻撃を食らって精神的にかなり疲労していた。


「よし、今日はここで長めの休憩にしよう」


僕はポーチからお茶とジャーキーを取り出し、魔法少女ちゃんの隣に腰を下ろした。

二人で雲の上でお茶を飲みながら、乱れた息を整える。


「……お兄さん、ごめんなさい。私がもっと上手く牽制できてれば、お兄さんがあんなに攻撃されずに済んだのに……」

「気にしなくていいよ。鎧のおかげで痛くも痒くもなかったし、君のバフがなきゃあいつらに追いつけなかったんだから」


すっかり空高く昇った太陽を見上げながら、僕はふと、あることに気がついた。


「……あ。そういえば僕たち、突風で飛ばされたせいで、途中の島をいくつかスルーしちゃってるな」

「え? は、はい。そうですね」


僕の中の『面倒くさいゲーマー気質(マッピングは隅々まで埋めないと気が済まない病)』が、ムクムクと頭をもたげてきた。


「魔法少女ちゃん。休憩が終わったら、ちょっと戻ろうか」

「えっ? 戻るんですか?」

「うん。飛ばされた区間のマッピングをやり直さないと、地図に穴が空いちゃうからね!」


僕が当然のように言い放つと、魔法少女ちゃんは目を丸くした後、力なく「ええーっ……」と苦笑いして肩を落とした。


「お兄さん……本当に、マッピングに命かけてますね……」

「ダンジョン攻略の基本だよ! さあ、休んだら出発だ!」


群れの強敵を倒した達成感も束の間。

僕たちは再びお姫様抱っこの体勢になり、強風に逆らって「来た道を戻る」という、非効率極まりないマッピングのやり直し作業へと戻っていくのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

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