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■第85話 抱っこ跳躍と、移動する島雲の強敵

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


中層階の入り口(最下層の浮島)までなんとか降りきった僕たちは、再びマッピングをやり直しながら上層を目指すことになった。


「風詠みのゴーグル、よし。魔法少女ちゃん、風が止むのを待って……今だ、ジャンプ!」

「はいっ! フ、フライ!」


乱気流の軌道を読み、風の切れ目を縫うようにして慎重に島から島へと渡っていく。

しかし、数時間もそんなことを繰り返していると、バケモノステータスでせっかちなソロ気質を持つ僕の「面倒くさい」という感情が限界に達しつつあった。


「あー……いちいち風を待つの、テンポが悪いな。それにまた突発的な乱気流が来たら、魔法少女ちゃんが飛ばされちゃうかもしれないし」


僕は少し考えた後、ポンッと手を打って彼女に向き直った。


「よし。魔法少女ちゃん、ちょっとこっちおいで」

「え? 何ですか、お兄さ……ひゃあっ!?」


僕は彼女の体をヒョイッと持ち上げ、そのままお姫様抱っこ(というか、米俵を抱えるような安定した横抱き)にしてしまった。


「お、お、お兄さん!? 何してるんですか、恥ずかしいですぅっ!」

「いや、これなら乱気流に巻き込まれても絶対に離れ離れにならないだろ? 万が一落ちても僕がパラシュートを開けばいいし、僕の筋力と『雲海』シリーズの装備なら、君を抱えたままでも余裕でジャンプできるからね」

「そ、それはそうですけどぉ……!」


顔を真っ赤にしてジタバタする魔法少女ちゃんを腕の中にしっかりホールドし、僕はそのまま浮島の縁を力強く蹴り飛ばした。


タァァァンッ!!

「きゃあああああっ!?」


僕の跳躍は、強風や乱気流の軌道など一切無視して、次の島へと一直線に弾丸のように飛び移った。風に煽られても、バケモノ級の筋力で強引に軌道を修正して着地する。

これぞ物理ステータスによるゴリ押しだ。


「よし、めちゃくちゃ快適だ! このまま一気に進むぞ!」

「お、お兄さんのバカァァァッ! 酔いますぅぅっ!」


魔法少女ちゃんの抗議(悲鳴)をBGMに、僕は彼女を抱えたまま、ものすごいスピードで島から島へと飛び移ってマッピングを進めていった。


そうして猛スピードで進むこと数時間。

視界の先に、これまでの固定された浮雲の島とは違う、奇妙な動きをしている島を発見した。


「おっ、見て魔法少女ちゃん。あの島、動いてるぞ」

「うぅ……目が回る……えっ、本当だ。島ごとゆっくり移動してますね」


それが、ギルドの職員さんが言っていた中層階のギミック『移動する島雲』だ。

動き自体はそれほど高速ではない。タイミングを合わせれば飛び移るのは簡単そうだ。


「よし、あそこに渡るぞ。しっかり掴まってて!」

「はいっ!」


動く島雲の軌道を予測し、僕は魔法少女ちゃんを抱えたまま大きく跳躍した。

見事に島の中心に着地した、その瞬間だった。


ゴォォォォォォッ!!!

これまでの乱気流とは比べ物にならない、暴力的なまでの暴風が島雲を包み込んだ。


「ッ!? 風が……!」


暴風の中心から姿を現したのは、全身に鋭い竜巻を纏った巨大な怪鳥『ストーム・イーグル』だった。

それまでの低層階の魔物とは明らかに一線を画す、圧倒的な強者のプレッシャー。中層の本格的な魔物のお出ましだ。


「お兄さん、降ろしてください! 私が牽制します!」

「頼む!」


僕の腕から降りた魔法少女ちゃんは、新しい『空風の杖』を構え、力強く呪文を詠唱した。


「えいっ! ファイアボルト!!」


渾身の火の玉が怪鳥に向かって飛んでいく。

しかし、ストーム・イーグルが纏う竜巻の鎧は想像以上に分厚かった。火の玉は風の壁に触れた瞬間にシュンッと掻き消され、牽制にすらならない。


「ダメです! 魔法が風に弾かれちゃいます!」

「キシャアアアッ!」


怪鳥が上空に舞い上がり、そこから鋭い風のカマイタチを雨あられのように降らせてきた。

僕は魔法少女ちゃんを庇いながら、剣で風の刃を弾き落とす。


(厄介だな……飛ぶ斬撃を放てば一発だけど、ここでは秘密にしておきたいし。でも、僕の剣さえ直接あいつに届けば、あの風の鎧ごと両断できるはずだ)

怪鳥は上空を素早く飛び回り、僕のジャンプでもギリギリ届かない位置から攻撃を仕掛けてきている。


「魔法少女ちゃん! 牽制じゃなくて、僕をサポートしてくれ!」

「えっ!?」

「僕がジャンプする瞬間に、僕の背中(足元)に向かって、君の風の魔法で『追いバフ』をかけてくれ! その勢いで一気に間合いを詰める!」


僕の意図を瞬時に理解した彼女は、「はいっ!」と力強く頷いた。

これこそがパーティの強みだ。


「いきます……! お兄さん、飛んで!」

「そぉいっ!!」


僕が浮島を蹴って上空の怪鳥に向かって跳躍した瞬間、魔法少女ちゃんが杖を振り抜いた。


「『テイル・ウインド(追い風)』!!」


ドワァァァッ!

彼女の杖から放たれた強力な突風が僕の背中を押し上げ、僕の跳躍スピードはミサイルのように急加速した。


「うおおおおおっ!!」


怪鳥が驚いて回避しようとするが、バフを受けた僕のスピードの方が圧倒的に速い。

一瞬で怪鳥の懐、竜巻の鎧の内側へと潜り込んだ僕は、渾身の力を込めて『雲海の剣』を振り抜いた。


ズバァァァァァァンッ!!!

純白の刃が、ストーム・イーグルの風の鎧ごと巨体を真っ二つに両断する。

悲鳴を上げる間もなく魔物は光の粒子となって四散し、動く島雲の上にコロンと一つの魔石が落ちた。


「ふぅ……ナイスバフだ、魔法少女ちゃん! 完璧なタイミングだったよ!」

「やりました! 私の魔法、お役に立てましたか!?」

「もちろん。君の魔法がなきゃ届かなかった」


着地した僕が魔石を拾い上げると、それは低層階で集めていたものとは全く違う、淡い翠色に透き通った、明らかに「高級そう」な魔石だった。


「おおっ、綺麗だな。さすが中層の強敵のドロップ品だ」


その後も、僕たちは抱っこ跳躍で島を渡り、強敵には彼女のバフ魔法を合わせて倒すという新しいコンビネーションで、着実に高級魔石を回収していった。


「よし、マッピングもやり直したし、今日のところはこんなもんだろう」


夕暮れ時。僕たちは一旦ダンジョンを抜け出し、街のギルドへと帰還することにした。

冒険者ギルドの扉を押し開けた瞬間、酒場にいた冒険者たちが僕たちの姿を見て、一斉に目を見開いた。


「お、おい……嘘だろ!?」

「銀装備の兄ちゃんと、あの小さい魔法使い……生きてたのか!?」


どうやら、昨日夕方になっても帰還しなかった(不時着して下まで降りていたからだが)僕たちは、中層の乱気流に巻き込まれて遭難・死亡したと思われていたらしい。


「あの乱気流の日に中層に行って、無事に帰ってくるなんて……」

「やっぱりあの兄ちゃん、ただのソロじゃなかったんだな……」


ざわめく冒険者たちをよそに、僕はカウンターに向かい、ドンッと麻袋を置いた。


「すいません、今日の分の換金をお願いします」


受付の職員さんが麻袋を開け、中身の魔石をトレイに広げた瞬間。


「こ、これは……!! ストーム・イーグルの魔石! しかもこんなに大量に!?」

「「「ええええええっ!?」」」


中層の強敵からしかドロップしない、透き通った高級魔石の山。

それをたった一日で、しかも「足手まとい」と呼ばれていた小さな魔法使いを連れて回収してきたという事実に、ギルド中の冒険者たちの度肝を完全に抜いてしまったようだ。


「……確認いたしました。素晴らしい成果です」


職員さんが震える手で魔石を査定し、ずっしりと重い金貨の袋を渡してくれた。


「やったね、魔法少女ちゃん。今日の成果はバッチリだ」

「はいっ! お兄さんのバフ係、これからも頑張ります!」


周囲の驚愕の視線を背に受けながら、僕たちは笑顔でギルドを後にした。

足手まといなんかじゃない。僕の背中を押してくれる立派な相棒と共に、中層階の攻略は最高のスタートを切ったのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

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