■第82話 無敵のコンビネーションと、低層階の完全踏破
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もともと、僕はソロで最高難易度の狩場や迷宮の深淵をゴリ押しで踏破できるだけの、バケモノじみたステータスを持っている。
だから、魔法少女ちゃんと役割分担をしてあえて戦闘の手数を増やしたところで、危険に陥るようなことは万に一つもなかった。むしろ、僕が前衛で攻撃を凌ぎながら彼女の魔法のタイミングを待つという少し遠回りで過保護な戦い方も、今ではすっかり息の合った「無敵のコンビネーション」として機能し始めていた。
「お兄さん! 前から来ます!」
次の浮島へジャンプした直後、魔法少女ちゃんが鋭く声を上げた。
分厚い雲が渦を巻き、中から強烈な突風とともに姿を現したのは――先日彼女を絶望させ、悔し涙を流す原因となった、あの大怪鳥『ゲイル・ホーク』だった。
「あっ……」
トラウマの相手を前にして、魔法少女ちゃんの肩が一瞬だけビクッと震える。
しかし、僕は一歩前に出て、振り返らずに背中越しに声をかけた。
「大丈夫。僕たちの作戦通りにいこう。君が崩して、僕が斬る」
「……はいっ! いきます!」
彼女の瞳から恐怖の色が消え、確かな決意の光が宿った。
両手で杖を構え、大きく息を吸い込む。
「えいっ! ファイアボルト!!」
ポンッ! と放たれた火の玉が、ゲイル・ホークに向かって飛んでいく。
怪鳥が鬱陶しそうに突風の壁を展開して魔法を弾こうとした――まさにその瞬間。魔法による牽制で、魔物の意識と視線が完全に彼女へと向いた。
「もらった!」
その一瞬の隙を見逃す僕ではない。
僕は『雲海』シリーズの凄まじい跳躍力で一気に宙へ舞い上がり、怪鳥の完全な死角である頭上へと潜り込んだ。
「そぉいっ!」
純白の刃が一閃する。
僕のバケモノ級の筋力が乗った一撃は、突風の壁ごとゲイル・ホークをあっけなく真っ二つに両断し、光の粒子へと変えてしまった。
「やりました! 倒せましたよ、お兄さん!」
「ナイスアシスト! 君の牽制が完璧だったおかげだよ」
コロンと落ちた魔石を拾い上げながら二人でハイタッチを交わす。
一人では歯が立たなくてあんなに泣くほど怖かった魔物も、二人で息を合わせてかかれば、拍子抜けするほどあっけなく倒せてしまうのだ。
「もう、この低層階に僕たちを脅かすような怖い魔物はいないね」
「はいっ! わたし、なんだかお兄さんと一緒なら、どこまででも行けそうな気がしてきました!」
自信を取り戻した魔法少女ちゃんは、太陽のように眩しい笑顔を向けてくれた。
トラウマを克服し、完璧な役割分担を完成させた僕たちにとって、空の旅は完全にピクニック状態となっていた。
「よーし、あっちの端っこに見える小さい島も行ってみよう!」
「ええーっ!? お兄さん、あんな何もない島まで行くんですかぁ?」
「ダンジョンのフロアは、全部のマスを踏んでマッピングしないと気が済まない質なんだよ!」
ソロ時代からの僕の「ダンジョン探索の面倒な癖」をフルに発揮し、僕たちは空に浮かぶ大小様々な浮島を、文字通り一つ残らず回遊していった。
もちろん、体力の少ない魔法少女ちゃんに合わせて、小まめな休憩をたっぷりと挟みながら。
「ふぅ……お兄さん、お茶にしますか?」
「おっ、いいね。雲海牛のジャーキーもあるぞ」
島を渡り、魔物を狩り、お茶を飲んで景色を楽しむ。
効率だけを求めていたバベルの地下迷宮では絶対に味わえなかった、ゆったりと時間が流れる穏やかな冒険。
そんなスローペースで贅沢な空の旅を続け、ついに最後の浮島の端へと辿り着いた時だった。
「お兄さん、見てください! 上に続く階段があります!」
彼女の指差す先には、さらに上空に広がる少し色の濃い分厚い雲の層へ向かって、光の階段が斜めに伸びていた。
「どうやら、ここから先が天空ダンジョンの『中層階』みたいだね」
見上げると、これまでの抜けるような青空とは違い、少し張り詰めたような空気が上部から漂ってきている。中層階となれば、魔物も迷宮のギミックも、間違いなく一段と手強くなるはずだ。
「今日はここまでにしよう。低層階の島は全部回りきったからね」
「はいっ! 低層階、完全クリアですね!」
「よく頑張ったね、魔法少女ちゃん。この調子なら、上の階層でも絶対に上手くいくさ」
僕が言うと、彼女は嬉しそうに何度も頷いた。
「はい! 明日からも、一生懸命サポートしますからね!」
「うん。じゃあ、明日からは中層階の探索に入ろう!」
僕たちは拳をごつんと軽く合わせ、次回からの新たな階層への挑戦を固く約束した。
夕焼けに染まる美しい空のダンジョンに別れを告げ、充実感と確かな絆を胸に、僕たちは笑顔で今日の冒険を切り上げるのだった。
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