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■第80話 気負いと限界、そして悔し涙の役割分担

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


「はぁっ……! はぁっ……! まだ、いけます!」


魔法少女ちゃんは、肩で激しく息をしながらも、必死に浮雲の島を跳躍していた。

僕のサポートを待たずに突っ走り、遭遇した下級の魔物に向かってやみくもに魔法を放つ。その姿は、痛々しいほどに気負い、焦っていた。


「魔法少女ちゃん、少し落ち着いて。魔力も体力も保たないよ」

「だ、大丈夫です! 私、足手まといじゃないですから……ちゃんと、戦えますからっ!」


彼女は僕の制止を振り切り、次の浮島へと『フライ』のポーションを使って飛び移った。

その直後だった。


島の奥にあった分厚い雲が、これまでにないほど激しく渦を巻き、中から強烈な突風が吹き荒れた。


「えっ……!?」


バサァァァッ!!

姿を現したのは、低層階では珍しい、周囲に鋭い風の刃を纏った大怪鳥『ゲイル・ホーク』だった。

クラウドシープのような温厚な魔物とは違う。明確な殺意と、レベル4の魔法少女ちゃんでは到底太刀打ちできない「格上」のプレッシャーが放たれていた。


「――っ! や、やぁぁっ! ファイアボルト!!」


恐怖で足がすくみそうになるのを気合でねじ伏せ、魔法少女ちゃんは前衛に立って杖を振りかぶった。

しかし、放たれた火の玉はゲイル・ホークの纏う突風の壁に弾かれ、虚しく霧散してしまう。


「そんな……効かない……!?」

「キシャアアアッ!!」


怒り狂った怪鳥が、魔法少女ちゃんめがけて急降下してきた。

巨大な鉤爪が彼女の小さな体を捉えようとした、その瞬間。


「そこまでだ!」


ガキィィィンッ!!

僕は彼女の前に一瞬で割り込み、バケモノ級の筋力を込めた『雲海の剣』で怪鳥の突進を真っ向から受け止めた。


「お、お兄さん……っ」

「後ろに下がってて。そぉいっ!」


弾き返した反動を利用し、そのまま鋭く踏み込んで剣を振り抜く。

純白の刃が突風の壁ごと怪鳥の胴体を真っ二つに両断し、ゲイル・ホークは悲鳴を上げて光の粒子へと変わった。コロン、と少し大きめの魔石が雲の上に転がる。


「……はぁ、はぁ……」


静寂が戻った浮島で、魔法少女ちゃんは力なく杖を取り落とした。

そして、そのまま膝から崩れ落ちるようにして、雲の上にペタンと座り込んでしまった。


「私……全然、ダメだ……」


気負って突っ込んだのに、格上の魔物には魔法一つ通用しなかった。

結局、助けてくれたのはまたしてもお兄さんで、自分はただ足手まといになっただけ。その残酷な現実(事実)が、彼女の張り詰めていた虚勢を完全に叩き折ってしまったのだ。


「うぅ……っ、ぐすっ……」


彼女はガックリと項垂れ、両手で顔を覆った。

昨夜はベッドで声を殺して泣いていたが、今はもう、我慢しきれずに小さな肩を震わせて嗚咽を漏らしている。


僕は剣を鞘に収め、彼女の前にゆっくりとしゃがみ込んだ。

そして、俯いて泣きじゃくる小さな相棒に向かって、静かに、けれど真っ直ぐに言葉を投げかけた。


「泣きなよ」

「……え?」


魔法少女ちゃんが、涙でぐしゃぐしゃになった顔を少しだけ上げた。


「それが今の君の実力なんだ。悔しい分だけ泣けばいい。気が済むまで泣いたら、僕と役割分担しよう。それがパーティーだろ?」


優しいだけの慰めではない。

現実を突きつけつつも、彼女を「足手まとい」ではなく「パーティメンバー」として認める、対等の言葉。


「役割……分担……?」

「そう。僕にはバケモノみたいな筋力と体力があるけど、遠くの敵を牽制したり、広範囲を探ったりする『魔法』は使えない。君はまだ体力はないけど、僕にはない魔法が使える。お互いの足りないところを補い合うのが、パーティってもんだろ?」


僕は腰のポーチから、綺麗な水色のポーションを取り出して彼女に差し出した。


「ギルドの連中の言葉なんて気にするな。君は、僕の立派な相棒だ。……だから、泣き止んだら、これからどうやって二人でこの空を攻略するか、作戦会議をしよう」

「お兄さん……っ」


魔法少女ちゃんは僕の言葉を噛み締めるように、ポーションを両手でギュッと握りしめた。

そして、「うわぁぁぁぁんっ!」と、今度こそ声を上げて、溜め込んでいた悔しさと不甲斐なさをすべて吐き出すように大声で泣きじゃくった。


僕は彼女の気が済むまで、ただ静かに、その小さな背中をさすり続けていた。

抜けるような青空の下、彼女の心に降り続いていた冷たい天気雨が、少しずつ、けれど確実に上がり始めていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

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