■第78話 極上の寝坊と、魔法少女ちゃんのレベルアップ
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
「……んあ? あれ、今何時……」
翌日。
ふんわりとした究極の無重力空間の中で、僕がようやく重い瞼を開けた時、窓から差し込む太陽の光はすでに真上から部屋を照らしていた。
「……えっ。うわあああああっ!! 昼だ!!」
僕は含有率100パーセントの雲ベッドから、バケモノ級の筋力で強引に跳ね起きた。
「魔法少女ちゃん、起きて! もうお昼近くになってるよ!」
「ふにゃぁ……お兄さん、まだむりですぅ……雲さんが私を離してくれません……」
「ダメだダメだ、起きるんだ! ほら!」
雲の海に沈んでスライムのようになっていた魔法少女ちゃんを引っ張り起こし、僕たちは慌てて着替えて宿を飛び出した。
天空ダンジョンへと続く道を猛ダッシュしながら、僕たちは責任をなすりつけ合った。
「お兄さんが起こしてくれないから、こんな時間になっちゃったじゃないですかー!」
「僕のせい!? 魔法少女ちゃんこそ、あのフワフワのベッドに完全に飲まれてたじゃないか!」
「だ、だってあのお布団、気持ちよすぎるんですもん……! お兄さんだって涎垂らして寝てましたよ!」
言い合いをしながらも、二人とも心の底では分かっていた。
あんな「重力が完全に消滅する究極の寝具」で、一度の目覚まし(すらないが)でスッキリ起きられるわけがないのだ。含有率100パーセントの実力は、冒険者の生活リズムを破壊するには十分すぎる威力を持っていた。
昼過ぎからスタートした、天空ダンジョンでの2日目の冒険。
「そおぉいっ!」
「きゃああっ! ふ、フライ!」
昨日と同じように、僕は『雲海』シリーズの装備の跳躍力で島から島へと飛び移り、魔法少女ちゃんは『フライ』のポーションで必死に食らいついてくる。
現れたクラウドシープや、鳥の魔物を協力して(実質、僕が9割方斬り捨てて)討伐し、魔石を回収していく。しかし、今日のペースは昨日以上に遅かった。
「お兄さん……ゼェ、ゼェ……もう、無理です……足が、パンパンで……」
「えっ、まだ三つしか島を渡ってないよ?」
「私、魔法使いなんですよぉ……。こんな体育会系のダンジョン、体力が保ちません……」
魔法少女ちゃんは、浮雲の島にペタンと座り込んで息を上げてしまった。
バケモノステータスの僕と違い、彼女は純粋な駆け出しの魔法使いだ。ジャンプや着地の連続は、彼女の少ない体力をあっという間に削り取っていく。
「仕方ないな、ここで少し休憩しよう」
すぐバテてしまう魔法少女ちゃんを休ませながら、僕はのんびりと空の景色を眺めた。
出発が遅かった上に、休憩ばかり挟んでいるため、ダンジョンの攻略は全くと言っていいほど進まない。
夕暮れ時になり、街へ帰還した僕たちの手元には、ソロ時代の僕が見たら卒倒しそうなほど『少ない』魔石しか集まっていなかった。
「……ごめんなさい、お兄さん。私のせいで、全然魔石集まりませんでした……」
「いいよいいよ、最初はこんなもんだって。怪我なく帰ってこれただけで十分だよ」
落ち込む彼女を励ましながら、僕たちは街の食堂で夕食を済ませた。
そして宿に戻ると、あの恐ろしい含有率100パーセントのベッドが待っていた。
「明日は絶対に寝坊しないようにしようね……」
「はいっ、頑張って起きます……むにゃ」
決意も虚しく、ベッドに潜り込んだ僕たちは一瞬で意識を空の彼方へ吹き飛ばされ、泥のように眠りについた。
そして3日目。
「起きて! 魔法少女ちゃん、今日は朝だよ!」
「うぅぅ……おきましたぁ……」
なんとか気合で雲の魔力(寝心地)に打ち勝った僕たちは、無事に朝からダンジョンへ出発することができた。
「えいっ! ファイアボルト!」
ポンッ! と放たれた魔法少女ちゃんの魔法が、空飛ぶ魔物の羽を少しだけ焦がす。
「ナイス牽制! そぉいっ!」
僕がすかさず踏み込み、雲海の剣で魔物を両断する。
3日目ともなると、魔法少女ちゃんも少しずつジャンプでの移動に慣れてきたようで、休憩の回数も減ってきた。
少しずつ、少しずつだが、確実に先の浮島へと進んでいる実感がある。
「はぁ、はぁ……っ! お兄さん、あそこにも魔石が落ちてます!」
「よし、回収回収っと」
夕暮れ時になる頃には、僕たちの腰の袋には、初日の倍くらいの魔石が集まっていた。
もちろん、ソロ時代の僕が一日で乱獲していた「麻袋いっぱい」の量には到底及ばないが、二人で協力して少しずつペースを上げて集めた魔石の重みは、なんだかとても誇らしかった。
「よし、今日はここまで! ギルドに換金に行こう!」
「はいっ!」
夕方の冒険者ギルドは、いつものように賑わっていた。
カウンターで換金(誤字で監禁されそうになったが、無事に換金だ)を済ませた後、僕は受付の職員さんに頼んでみた。
「あの、この子のレベルを確認したいんですけど」
「はい、承知いたしました。こちらのステータス測定板に手を置いてください」
魔法少女ちゃんが、ドキドキしながら金属の板に小さな手を乗せる。
淡い光が浮かび上がり、数字が形作られていった。
【レベル:3】
【筋力:12】
【魔力:18】
【体力:11】
【敏捷:14】
「わぁっ! あ、上がってます! レベル3になってます!」
「おおっ! おめでとう、魔法少女ちゃん!」
第一部の頃の僕がそうだったように、駆け出しの頃のレベルアップの喜びは格別だ。
横で見ている僕の「レベル20超え・全ステータス三桁」というバケモノ数値から見れば、彼女のステータスはまだまだ弱弱のヒヨッコだ。それでも、この3日間の彼女の頑張りが、確かな数字として表れたのだ。
「私、レベル3になりました……! お兄さんのおかげです!」
「いやいや、君が頑張って歩いたからだよ。まだまだ弱いけど、これからももっと頑張ろうな」
「はいっ! もっと強くなって、お兄さんの役に立ちます!」
涙目で喜ぶ魔法少女ちゃんの頭をポンポンと撫でてやりながら、僕はギルドの食堂で「天空豚のハンバーグ」を注文した。
「今日は魔法少女ちゃんのレベルアップ祝いだ! 遠慮せずにお腹いっぱい食べなよ!」
「わぁぁっ、ありがとうございます!」
美味しいお祝いご飯を二人でつつき合い、笑顔の絶えない夕食の時間を過ごす。
ソロの効率プレイを捨てて得た、こんな温かくてのんびりとしたパーティ生活。これもまた、異世界冒険の醍醐味だ。
その夜も、僕たちは100パーセントの雲ベッドの圧倒的な包容力に身を委ね、平和で幸せな疲労感とともに、深い眠りへと落ちていくのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、
下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆(解体作業)のモチベーションが爆上がりします!
ブックマーク登録も、ぜひよろしくお願いいたします!




