■第73話 案内人さんとの道中と、含有率65パーセントの決意
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
「実を言うと、銀騎士様。私、このまま一番上の『天空の浮島』までご案内するよう、占い師様から言いつかっているんです」
「えっ、上までずっと一緒に来てくれるの?」
「はい! ……ご迷惑、でしょうか?」
「とんでもない! むしろ大歓迎だよ!」
絶世の美女である案内人さんの口から告げられたその言葉に、僕は兜の中で密かに歓喜の舞を踊っていた。
そんなわけで、僕と案内人さんの、さらに上層を目指す二人旅が始まった。
これまではバケモノ級の筋力に任せて猛ダッシュで階段を駆け上がっていた僕だが、今日からは違う。彼女の歩幅に合わせ、景色を楽しみながらのんびりと登っていくのだ。
「ふぅ……ふぅ……っ。やっぱり、この辺りまで来ると空気が薄くて、少し息が上がっちゃいますね」
数時間歩き続け、案内人さんの足取りが重くなってきたのを見て、僕はスッと彼女の前にしゃがみ込んだ。
「ほら、乗って。少し休むといいよ」
「えっ!? お、おんぶですか!? ダメですよ、銀騎士様だって重い鎧を着てらっしゃるのに!」
「俺の体力は底なしだから大丈夫。遠慮しないで」
僕が半ば強引に背中を向けると、彼女は「……す、すみません」と赤くなりながら、僕の背中にふわりと身を預けてきた。
「よっと!」
立ち上がる際、彼女を落とさないように下からしっかりと太ももを支える。
その瞬間。純銀のガントレットを外していた僕の素手に、彼女の柔らかいお尻の感触がほんの少しだけ触れてしまい、心臓がドックンと跳ね上がった(もちろん、これは絶対に内緒だ)。
だが、ふと冷静になって気づく。
背中には彼女が密着しているはずなのに、女の子特有の『胸の柔らかい感触』が、背中に一切伝わってこないのだ。
(ああっ……! 俺の着ている純銀の鎧の物理防御力が高すぎるせいで、感触が完全にシャットアウトされている……っ!)
なんという痛恨のミス。お尻の感触に気を取られて鎧を脱ぎ忘れるとは。
兜の中で「むむむ……っ!」と血の涙を流して悔しがる僕をよそに、案内人さんは「見晴らしがいいですねぇ」と無邪気に笑っていた。
そんなドキドキと悔しさの道草を挟みつつ、僕たちは楽しく歩き通し、無事に第八の宿場町へと到着した。
「さあ、この街の代表の方に手紙を届けに行きましょうか」
「俺も一緒に行くよ。その方が、宿の手配とか色々とスムーズだしね」
昨日のように彼女が安宿に遠慮してしまわないよう、今回は最初から一緒に行動して、同じ宿に泊まってもらう作戦だ。同行した方が色々と安心である。
二人で代表の屋敷を訪ね、手紙を渡すと、第八宿場町の代表はパァァッと顔を輝かせた。
「おおおおっ! 第六宿場町を救ってくださった銀騎士様! そしてお連れ様! よくぞ当街へお越しくださいました! ささっ、街で一番の最高級宿へご案内いたしますぞ!」
代表の猛烈な歓迎を受け、僕たちは流れるように最高級の宿へと案内された。
そして、個室の豪華な座敷で、極上の『雲海牛と空ウズラのすき焼き』を二人でつつきながら、最高の夕食を堪能した。
すっかりお腹も膨れ、幸せな気分に浸っていた時のことだ。
ニコニコ顔の代表が、宿の主人を引き連れて部屋にやってきた。
「銀騎士様! 食後はぜひ、当宿自慢の『雲海絶景の温泉』で旅の疲れを癒やしてください! お二人のために、特別に『貸切の混浴』として手配させていただきましたぞ!」
代表は「どうです、気が利くでしょう?」と言わんばかりにサムズアップを決めている。
(いや、余計なお世話だろ! 案内人さんが困るじゃないか!)と僕が断ろうとすると――。
「……あ、あの。銀騎士様さえよろしければ……私、背中、流しますよ……?」
彼女は顔をほんのり赤く染めながら、乗り気な様子で上目遣いをしてきた。
「…………はい。喜んで」
数十分後。
湯けむりが立ち込める、広々とした絶景の露天風呂。
純銀の鎧を脱いだ僕は、お湯に肩まで浸かりながら、心臓が口から飛び出そうになるのを必死に堪え、覚悟を決めていた。
「お待たせしました……」
湯けむりの向こうから歩いてきた案内人さんを見て、僕は危うくお湯を吹き出しそうになった。
彼女はバスタオルなどを巻くこともなく、気兼ねなく完全に全裸の姿で現れたのだ。
(ええええっ!? い、いや、落ち着け俺!)
どうやらこの世界において、混浴の場に素っ裸で入ることは「ごく普通の文化」らしい。彼女に悪びれる様子や過剰な恥じらいはなく、自然な動作でお湯に浸かり、僕の隣に寄り添ってきた。
世界観としては普通でも、健康的な青年の精神には刺激が強すぎる。僕は鼻血が出ないように必死に理性を保ちながら、夢のような混浴タイムを過ごした。
そして。
完全にのぼせ上がった状態の僕たちが案内された寝室には、部屋の中央に、とてつもなく巨大なベッドが一つだけ鎮座していた。
「お客様。当宿のベッドは、雲含有率65パーセントでございます。ごゆっくりとお休みください」
宿の主人がニヤリと笑って襖を閉める。
含有率65パーセント。それはもはや、布団という概念を超えた「底なしの雲の沼」だった。
僕と案内人さんがその巨大なベッドに潜り込んだ瞬間。
ボッフゥゥゥゥゥゥゥンッ……!!
あまりの反発力の無さと雲の吸引力に、二人の体がベッドの中央に向かってズブズブッと引き寄せられ、何気なくピッタリと密着してしまった。
「あ……」
「……ご、ごめん。くっついちゃったね」
お風呂上がりの温かい体温と、彼女の甘い匂いがダイレクトに伝わってくる。
僕がドギマギして身動きが取れずにいると、案内人さんがふと顔を上げ、僕の目を見つめて、とんでもないことを口にした。
「……今夜は、ちゃんと手を出してくださいね」
「……えっ!?」
予想外すぎる爆弾発言に、僕の思考は完全に停止した。
上目遣いで微笑む彼女の目は、冗談を言っているようには見えない。
含有率65パーセントの極上の寝心地と、腕の中にいる絶世の美女。そして、彼女からの明確な誘い。
バベルの塔の悪魔戦よりも過酷な理性のストッパーは、ここでついに限界を迎えた。
(……覚悟を決めるしか、ない……男として!)
大雲海の上に浮かぶ第八宿場町の夜。
極上の雲のベッドの上で、僕は腹をくくり、そっと彼女の肩に腕を回したのだった。
翌朝。
窓から差し込む優しい朝の光で、僕はゆっくりと目を覚ました。
含有率65パーセントの雲のベッドは、どれだけ動いても極上の柔らかさで体を包み込んでくれている。
ふと隣を見ると、そこにはスゥスゥと心地よさそうな寝息を立てる、案内人さんの美しい寝顔があった。
「……ははっ」
無防備で幸せそうなその寝顔を見た瞬間、僕の胸の中に、これまでの冒険にはなかった温かい安堵感がスッと広がっていくのを感じた。
昨夜の甘い記憶を反芻しながら、僕は彼女が起きるまで、その寝顔をいつまでも優しく見守り続けるのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、
下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆(解体作業)のモチベーションが爆上がりします!
ブックマーク登録も、ぜひよろしくお願いいたします!




