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■第130話 魔道具の吹き出しと、手探りの大採取

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


「ぐぬぬぬ……ッ! だめだ、油断すると意識がフワフワ飛んでいく……!」


ポケットから『気付けのポーション』を取り出し、ちびちびと口に含む。

ミントのように鋭い刺激が喉から鼻へと突き抜け、重く濁りかけていた頭が「シャキッ!」と一瞬で冴え渡った。


「ふぅぅーっ! よし、効いてきたぞ!」


神官ちゃんが「どうしても我慢できなくなったら」と言っていた意味がよく分かった。このポーションは、このダンジョン特有の強力な脱力オーラに対する、唯一にして最強の抗体なのだ。


ポーションの力を借りて気力を振り絞り、さらに洞窟の深部へと進むと――ついに、誰も踏み込んだ形跡のない手つかずの広場へと辿り着いた。

壁一面に妖しく輝く鉱石の結晶が群生し、足元には見たこともない珍しい高山植物や薬草がびっしりと生い茂っている。


「うわあ……! ここ、宝の山じゃないか!」


すると、右手に持っていた『反応のツルハシ』が激しくピコンピコンと光り出し、左手の『誘導のハサミ』がぐいぐいと特定の薬草へと僕の手を引っ張り始めた。

しかも驚いたことに、魔道具の頭上に可愛らしい漫画のような『吹き出し』がポコンッと浮かび上がったのだ!


『発見!【星銀鉱ホシギンコウ】だぞ! 武器に混ぜると軽量化と魔力付与の効果がある激レア鉱石だ!』

『こっちこっち!【まったり微睡みマドロミソウ】だよ! 煮出すと極上の安眠効果がある高級ハーブだよ! 根っこに薬効が凝縮されてるんだ!』


「なにこれ、すごっ!? 名前だけじゃなくて効能まで教えてくれるの!?」


黒猫のお姉さんの言葉に嘘はなかった。

これなら知識のない僕でも、何が貴重な素材なのかが一目瞭然だ。

テンションが上がった僕は、さっそく目の前の壁に浮き出た【星銀鉱】に向かってツルハシを振り下ろした。


「よしっ、まずは鉱石から採掘だ!」


――バコンッ!!!


「あっ!?」


力強く振り下ろした瞬間、手元で嫌な破壊音が響いた。

長年の(ポーションガブ飲み)戦闘で培ってしまった僕のバケモノ筋力と、慣れないツルハシの扱いが災いしたのだ。狙いが少しズレて結晶の真っ芯を叩いてしまい、激レアなはずの【星銀鉱】は見事に粉々に砕け散ってしまった。


『ああっ! 力任せに叩いちゃダメだぞ! 結晶の継ぎ目を優しく狙うんだ!』


吹き出しがショックを受けたような絵文字と一緒にアドバイスを出してくる。


「う、うわあ……もったいない! ごめんごめん、次は慎重にやるよ……っ」


冷や汗をかきながら、今度はそーっと力を抜いて、結晶の周囲の岩肌を慎重に削っていく。

だが、力を抜きすぎると岩が削れず、少し力を込めるとまたヒビが入ってしまう。剣の『受け流し』や『脱力』とはまた違う、非常に繊細な力加減が要求された。


「くっ……戦闘より加減が難しいぞ、これ……!」


汗だくになりながら、なんとか二塊目の【星銀鉱】を綺麗に削り出すことに成功した。


『お見事!【星銀鉱】ゲットだぞ!』

「ふぅ……一苦労だ。次はあっちの草だな!」


気付けのポーションを一口含んで頭をシャキッとさせ、今度は足元に生える【まったり微睡み草】に向かい合った。

誘導のハサミが示す通り、茎を切るのではなく、薬効が凝縮されているという「根っこ」ごと掘り起こそうとしたのだが――


「……あ」


ここで僕は、重大なミスに気がついた。

ハサミの刃では、当然ながら硬い土を掘り返すことなんてできない。

だからといって、手元にあるもう一つの道具――巨大な『反応のツルハシ』を地面に振り下ろせば、繊細な薬草の根っこなど木っ端微塵に切り刻んでしまうのは目に見えている。


『根っこを傷つけずに掘り出すんだぞ! 丁寧にね!』

のんきにアドバイスを出してくる吹き出しに、僕は思わず頭を抱えた。


「ツルハシじゃデカすぎるし、ハサミじゃ掘れない……! なんで僕はスコップを買ってこなかったんだーーっ!!」


痛恨の選択ミス。

まさか採取にこんな多種多様な道具が必要だったなんて。黒猫のお姉さんの店で、スコップも一緒にセットで買い込んでおかなかった自分を猛烈に呪った。


(街に戻ったら、絶対に真っ先にスコップを買いに行こう……!)

心に固くそう誓いつつ、今さら引き返すわけにもいかない。


仕方なく、僕はツルハシの尖った先端を木彫りのノミのように少しずつ地面に突き立て、指先で土を泥だらけになりながら掘り返すという、果てしなく地道な手作業を余儀なくされた。


「チビチビ……ッ! くそっ、だらけそうな意識を保ちながら、手作業で土掘り……っ!」


周りではオークやスライムたちが「むにゃむにゃ……」と気持ちよさそうに居眠りを決め込んでいる。その平和な光景とは裏腹に、僕は一人、気付けのポーションと格闘しながら、力加減に冷や汗を流し、爪の中に泥を詰めて必死に根っこを掘り起こしていた。


『すごいぞ!【まったり微睡み草】の根っこを無傷で採取成功だ!』

「はぁ……はぁ……採れた……っ!」


たった一株の薬草と一塊の鉱石を得るだけで、全身からどっと汗が吹き出す。


だが、試行錯誤しながら自分の手で丁寧に素材を傷つけずに採取できた瞬間の達成感は、これまでの戦闘では味わえなかった泥臭くも確かな喜びがあった。


「よし……コツは分かってきたぞ! スコップがないなら工夫でカバーだ!」


忍び寄る「まったりオーラ」の誘惑、加減の難しさ、そして道具の不足という三重苦に冷や汗をかきながらも、僕は気力を振り絞り、手つかずの宝の山へと再び立ち向かっていくのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

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