■第127話 旅立ちの挨拶と、まったりへの道
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
心優しきボス・ギガントから『迷宮踏破の証明』を受け取った僕は、その足でまっすぐに冒険者ギルドへと向かった。
「受付ちゃん、ただいま」
僕がカウンターに虹色に輝くクリスタルをコトリと置くと、受付ちゃんは信じられないものを見るように目を丸くし、やがてワナワナと震え出した。
「こ、これは……『はじまりの迷宮』の完全踏破の証……!? しかも、傷一つ負っていないどころか、戦闘の形跡すらないなんて……一体どうやってボスを!?」
「話し合いで解決したんだよ。向こうも争いを好まない性格だったからね」
「ボ、ボスと話し合いでクリア……!? 前代未聞にもほどがあります……っ!」
頭を抱える受付ちゃんに、僕は苦笑いしながら告げた。
「そういうわけで、僕はこの迷宮を卒業するよ。短い間だったけど、色々な依頼を手配してくれてありがとう。助かったよ」
「あ……」
僕の旅立ちの言葉を聞いて、受付ちゃんは少しだけ寂しそうな顔をした。
しかし、すぐにプロのギルド職員としてのキリッとした笑顔を作り、深く頭を下げた。
「こちらこそ、野盗の討伐から初心者たちの育成まで、町のために数え切れないほどのご尽力をいただき、本当にありがとうございました。銀騎士様のこれからの冒険に、大いなる武運があらんことを!」
受付ちゃんに見送られ、僕はギルドの酒場スペースへと足を向けた。
そこには、僕が手塩にかけて(というか勝手に育っていった)サポートした、あの六人の見習いパーティが今日の反省会をしていた。
「みんな、ちょっといいかな。実は、今日でこの町を出ることにしたんだ」
僕の突然の報告に、六人は弾かれたように立ち上がった。
「えっ!? 銀騎士さん、もう行っちゃうんですか!?」
双剣使いくんが寂しそうに声を上げる。
「うん。迷宮の最深部もクリアしたからね。君たちも、もう立派なフルパーティだ。僕がいなくても、絶対にこの迷宮を攻略できるよ」
僕がそう言うと、剣士くんがギュッと拳を握りしめ、真っ直ぐに僕の目(兜)を見つめてきた。
「銀騎士さん。俺たちをここまで育ててくれて、本当にありがとうございました! まだまだ俺たちはヒヨッコですけど……いつか絶対に強くなって、あの受け流しもマスターして、銀騎士さんの背中に追いついてみせますから!」
「私たち、ずっと銀騎士さんのこと忘れませんっ!」
「頑張れよ。君たちの名前が有名な一流パーティとして僕の耳に届くのを、楽しみにしてるからね」
剣士くん、双剣使いくん、タンクくん、弓使いちゃん、魔法使いちゃん、支援魔法くん。
出会った時はボロボロの装備で泣きそうになっていた六人の顔は、今や一人前の冒険者としての確かな自信と決意に満ち溢れていた。
彼らと固い握手とハイタッチを交わし、僕はギルドを後にした。
最後に立ち寄ったのは、町のはずれにある『平凡な寺院』だ。
カラン……。
「あ、一般人様! お待ちしておりました!」
いつも通りパタパタと駆け寄ってきたおさげ髪の神官ちゃんに、僕は最後の寄進として、深層で狩った魔石をすべて手渡した。
「神官ちゃん、今までありがとう。今日でこの町を出発するよ」
「はい……風の噂で、迷宮を完全踏破されたと伺いました。一般人様なら、あっという間にクリアしてしまうと女神様も仰っていましたよ」
神官ちゃんは寂しそうに微笑むと、祭壇の奥から丁寧に包まれた木箱を持ってきて、僕の手に持たせてくれた。
「これ、ありったけの『体力回復ポーション』とバフポーションのセットです。次の街へ向かう道中でも、きっとお役に立つはずですから」
「ありがとう、神官ちゃん。本当に助かるよ。君のポーションがなかったら、あの集団戦は乗り切れなかった」
「ふふっ、一般人様の規格外の戦いっぷり、女神様もいつもハラハラしながら見守っておられましたよ。どうか、次の街でもお気をつけて!」
平凡で素朴だけれど、とても温かい神官ちゃんに見送られ、僕は寺院を後にした。
荷物をまとめ、町の門をくぐる。
振り返ると、木とレンガで作られた平凡な町並みが、青空の下で穏やかに広がっていた。
「最初は集団戦と解体地獄でどうなることかと思ったけど……いい町だったな」
ステータスのゴリ押しから脱却し、脱力と受け流しという新しい技術を身につけた。ソロでの強さを極めつつ、パーティ戦の楽しさも知った。
本当に実りある、濃厚な滞在だった。
「さて、次はギガントが教えてくれた『まったりダンジョン』だな」
僕は地図を広げ、次の目的地へのルートを確認した。
道中、特に険しい山や危険な地帯を越える必要はなさそうだ。なだらかな街道を数日歩けば、その「まったり」の街へと到着するらしい。
「戦い、打ち倒すことだけが冒険ではない……か」
ポーションをガブ飲みして無双するのも最高に楽しいが、あの心優しいギガントが勧めてくれたのだから、きっと何か面白いギミックや経験が待っているに違いない。
初夏の爽やかな風が、純銀の『飛竜の雲海鎧』を優しく撫でていく。
僕は新たな未知のダンジョンへの期待に胸を膨らませながら、のどかな街道を急がず焦らず、自分のペースで歩き始めた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、
下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆(解体作業)のモチベーションが爆上がりします!
ブックマーク登録も、ぜひよろしくお願いいたします!




