↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/135

■第123話 空振りの囮作戦と、狡猾な野盗たち

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


翌朝。太陽が昇り始めたばかりの薄暗い時間帯。

僕は商人ギルドが用意した、大型のほろ馬車の荷台の中に身を潜めていた。


「出発するぞ」


御者台に座る、みすぼらしい商人に変装した熟練冒険者の合図とともに、馬車がゆっくりと動き出す。

ギシギシと揺れる薄暗い荷台の中。外の様子は幌の隙間から僅かに窺える程度だ。


街道の前後や森の中には、熟練パーティの面々が気配を完全に殺して潜伏し、僕たちの馬車を追従しているはずだ。


(……緊張するな。いつ飛び出してきてもいいように、準備しておかないと)

相手が人間である以上、魔物のように単純な殺気だけで突っ込んでくるとは限らない。弓での遠距離からの奇襲や、倒木を使った足止めなど、どんな罠が張られているか分からないからだ。僕は『雲海の剣』の柄を固く握りしめ、神経を研ぎ澄ませた。


しかし。

待てど暮らせど、一向に野盗は現れなかった。

これまで頻繁に出没していたという襲撃ポイントを一つ、また一つと通過していくが、森は鳥のさえずりが聞こえるばかりで、全くの平和そのものだ。


(……おかしいな。これだけ無防備な商人の馬車が通っているのに、全くエンカウントしないぞ? もしかして、ギルドの動きを察知されて作戦がバレたのか?)

疑念を抱いたまま荷台で揺られ続けること数時間。

結局、ただの一度も襲撃を受けることなく、僕を乗せた囮の馬車は、山の向こうの隣町へと平和裏に到着してしまった。


「……ダメだったな。完全に空振りだ」

「どうやら、奴らも闇雲に襲っているわけじゃないみたいね。私たちの動きを警戒したのかしら」


隣町の入り口で合流した熟練パーティの魔法使いリーダーが、忌々しそうに舌打ちをする。


「仕方ない、このまま手ぶらで戻るのも癪だ。少し細工をしてから戻ってみよう」


僕は隣町で、馬車に少しばかりの「装飾」を追加することにした。

いかにも金持ちの商人が好んで使いそうな、無駄に豪華で派手な布飾りを幌に巻きつける。さらに、荷台には見えないように大量の石や砂袋を「重り」として積み込んだ。


「これでよし。車輪が重みでギシギシ軋む音がして、いかにも『金目で重たい荷物がたっぷり詰まっていますよ』って感じがするだろう?」

「なるほど、欲を掻き立てて食いつかせる作戦か。悪くねえな」


タンクの大男がニヤリと笑う。

これ以上ないほど「美味しそうな獲物」に加工された囮の馬車に再び乗り込み、僕たちは来た道を引き返し始めた。


(さあ、今度こそ食いついてこい……!)

僕は荷台の中で息を殺し、いつでも飛び出せるように身構えた。


だが――。

夕暮れ時になっても、街道はやはり静寂に包まれたままだった。


「…………来ないね」

「ああ……影も形も見えやしねえ」


結局、復路でも野盗が現れることはなく、僕たちは完全な空振りのまま、元の町へと帰還することになってしまった。


「うーん……今日は完全にハズレの日だったのかな。それとも、やっぱり警戒されてるのか」


首を傾げながらギルドの扉を押し開けた僕たちを待っていたのは、ひどく青ざめた顔をした受付ちゃんだった。


「あ、銀騎士様っ……! 皆様、ご無事でしたか!」

「ただいま。ごめん、野盗は現れなくて空振りだったよ。どうやら今日は襲撃を休んでたみたいだね」


僕が苦笑いしながら報告すると、受付ちゃんは悲痛な顔で首を横に振った。


「違うのです……! 銀騎士様たちが山へ向かっている間に、別のルートを通った商人の馬車が……襲われました」

「なっ……!?」


僕と熟練パーティの面々は、弾かれたように顔を見合わせた。


「別のルートって……奴ら、俺たちが主要な街道で網を張ってるのを完全に把握して、裏をかいたってことか!?」


タンクの男がギリッと歯を食いしばる。


「……ただの力任せのゴロツキ集団じゃないわね。町の情報収集も、偵察も、かなり高度に組織化されてるわ」


魔法使いのリーダーが、眉間を険しくして呟いた。

こちらの戦力と配置を完璧に把握し、もっとも手薄になった場所を的確に狙い澄まして襲撃をかける。

相手は、僕たちが想定していた以上に狡猾で、知恵の回る連中だったのだ。


「……参ったな。力や受け流しだけじゃ、どうにもならない相手か」


ただ罠を張って待つだけの単調な作戦では、二度目も必ず裏をかかれるだろう。

ギルドと連携し、さらに一歩踏み込んだ、奴らの裏の裏をかくための新しい作戦を練り直す必要がある。


「受付ちゃん、襲われた馬車の詳しい状況と、被害に遭った場所の情報を全部出してくれるかな」


迷宮の最深部攻略は、もう少しだけお預けだ。

見えない敵との知恵比べに、僕のゲーマーとしての負けん気が静かに火を噴き始めていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆(解体作業)のモチベーションが爆上がりします!


ブックマーク登録も、ぜひよろしくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。