■第120話 堂々の鑑賞と、実力者たちとの一幕の共闘
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それでは、本編をお楽しみください!
隠れて覗くのもなんだかコソコソしていて僕らしくない。
僕は物陰から一歩を踏み出し、堂々と壁に背をあずけ、腕を組んで彼らの鮮やかな戦闘と手際の良い解体作業を眺めることにした。
「……ん?」
真っ先に僕の視線に気づいたのは、耳の聡い支援魔法使いだった。
彼女が視線を向け、次いでタンク、剣士、そしてリーダーの魔法使いが、一斉に僕の方へと振り向いた。
僕が身にまとっているのは、異世界の金属と空気を孕んだ純銀の『飛竜の雲海鎧』。
不審者というよりは、明らかに『タダ者ではない冒険者』の装いだ。彼らは一瞬、身構えるように武器へ手を掛けたが、僕が手ぶらで攻撃意思を示していないのを見ると、ゆっくりと緊張を解いた。
「……あんた、そこでずっと見てたのかい?」
リーダーの魔法使いの女性が、鋭い眼光で僕を射抜くように問いかけてきた。
「申し訳ない、覗き見するつもりはなかったんだ。ただ、君たちの連携が見事すぎて、思わず見惚れてしまってね」
僕が素直に称賛すると、タンクの男が「ガハハ!」と豪快に笑った。
「なんだ、奇特な観客じゃねえか! どうだ、俺の盾の捌きは? 『平凡な重戦士』にしては、悪くないだろ?」
「ああ、素晴らしい受け流しだったよ。力みがなくて、理想的な身体操作だ」
僕の返しに、タンクの男と剣士の二人は「ほう」と感心したように眉を上げた。自分たちの技術の真価を正しく理解できる相手だと察したのだろう。
「お褒めに預かり光栄ね。……それで? 一人でこんな深層まで潜ってくるなんて、あんた、噂の『銀騎士』でしょ?」
魔法使いの女性が、探るような目で僕の全身を眺める。
「ええ、そう呼ばれています。今日は一人で探索の続きをしに来たんですが……どうでしょう、もしよければ、一回だけ一緒に戦ってみませんか?」
「共闘、ですか?」
支援魔法使いの少女が目を丸くする。
僕からの提案に、四人は顔を見合わせた。
「噂じゃ、一人で百の軍勢を消し飛ばすバケモノだって聞いてるけど……私たちのペース乱されないかしら?」
「まあまあ、リーダー。あの銀騎士がどういう戦いをするのか、間近で見られる機会なんてそうないぜ。手合わせ代わりに、いっちょやってみようじゃねえか!」
タンクの男の乗り気な発言に背を押され、魔法使いのリーダーも「……いいわ。一回だけね」と口元を緩めて頷いた。
「ただし、私たちは私たちのやり方を崩さないわよ。あんたは好きに立ち回りなさい」
「了解です。じゃあ、僕は手数を増やす『遊撃』として動きますね」
話がまとまった直後、広間の奥から地鳴りのような足音が響き渡った。
「グルオォォォォッ!!」
現れたのは、巨大な鉄槌を構えた『オーガ・ロード』を筆頭とする、八十体近い深層の強力な上位種集団だ。先ほど彼らが戦った群れよりも、一回りも二回りも規模が大きい。
「チッ、大物のお出ましね! タンク、前を抑えて! 支援魔法、バフを!」
「おうよっ!!」
すぐさま陣形を組む四人。タンクが巨大な鉄槌の衝撃を斜めに受け流し、魔法使いの爆炎が敵の足を止める。相変わらず完璧な初動だ。
だが、今回はそこに『僕』という異物が加わっている。
(さあ、彼らの完成された連携に、僕の『脱力』と『受け流し』をどう噛み合わせるか……!)
僕は『上級バフポーション』を一気に呷り、ステータスを引き上げると、タンクのすぐ脇を疾風のごとく抜け出た。
「なっ……速い!?」
タンクの男が驚愕の声を上げる中、僕は群れの先頭にいたオーガの懐へ滑り込んだ。
「グオッ!?」
振り下ろされる巨腕。僕はそれを力で受け止めず、肩の力を抜いた『雲海の剣』の刀身でスッと撫でるように軌道を逸らした。
ズドンッ! と空を切ったオーガの腕が床を叩き、大きく体勢が崩れる。
「剣士さん、今だ!」
「――ッ、応っ!!」
僕が作り出した決定的な隙を逃さず、後方から飛び込んできた『平凡な剣士』の刃が、オーガの首元を正確に一閃した。
「な、なんてスムーズな体勢崩しだ……! 隙がデカすぎて、斬り込みやすすぎる!!」
「次は右だ!」
僕は息をつく間もなく、右から迫るハイオーク二体の槍撃を、流れるような円運動で同時に受け流し、互いの槍を交差させて自滅させた。そこへ、魔法使いのリーダーの『ファイアストーム』が過不足なく正確に突き刺さる。
(楽しい……! お互いが相手の動きを理解して、最小限の力で『最適解』を重ねていく感覚……!)
かつて一人で暴れ回っていた「ゴリ押しのワンマンプレイ」ではない。
彼らの熟練された連携の隙間を、僕の受け流しと脱力が完璧に埋めていく。僕が10の力で敵を崩せば、彼らが10の力でトドメを刺す。無駄なエネルギー消費は一切ない。
そして最後、群れのボスである『オーガ・ロード』が怒り狂って鉄槌を振りかざした時。
「銀騎士、合わせて!」
魔法使いのリーダーが叫ぶ。
「任せた!」
支援魔法使いのバフを受けた僕が、オーガ・ロードの巨体から繰り出される入魂の一撃を、極限の脱力から『完璧なパリング』で上空へと跳ね上げる。
ガキィィィィンッ!!!
「グ、オ……!?」
空中に両腕を弾き飛ばされ、完全な無防備となったボス。
「これで……決める!!」
僕は溜め込んだ力を解放し、至近距離から一閃。
ズバァァァァァァンッ!!!
純白の『飛ぶ斬撃』がボスの胴体を薙ぎ払い、背後の壁ごと切り裂いて大爆発を起こした。
広間に、静寂が訪れる。
八十体近い深層の絶望的な群れは、たった数分の完璧な連携の前に、一枚の損害もなく全滅していた。
「……ハ、ハハハ」
タンクの男が、脱力したように笑い出した。
「すげえ……なんだよこれ! 俺たち、いつもより半分以下の疲労で、倍以上の大群を片付けちまったぞ!?」
「あんたの受け流し……恐ろしいわね。私たちの攻撃のタイミングと、完璧に噛み合ってたわ」
魔法使いのリーダーが、呆れと深い感心(敬意)の混ざった眼差しで僕を見つめる。
「いいや、僕の方こそ勉強になりました。皆さんの無駄のない立ち回りがあったからこそ、僕も安心して受け流しに集中できたんです。最高の共闘でした」
僕は『雲海の剣』を鞘に納め、四人に向かって爽やかに微笑んだ。
ソロの無双もいい。ひよっこたちの育成も楽しかった。
そして、こうした熟練者たちとの「完成された連携」もまた、ダンジョン攻略の醍醐味の一つだ。
お互いの健闘を讃え合い、固い握手を交わした僕たちは、この迷宮のさらなる深み、そしてそれぞれの冒険の道へと、確かな手応えを胸に進んでいくのだった。
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